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<インタビュー>Billboard Global Power Players vol.18 村松俊亮 ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役会長

米Billboard誌が、アメリカ以外の国で音楽ビジネスの成功を牽引しているリーダーを称える【Billboard Global Power Players】。各国から音楽業界を牽引するリーダーが並ぶ中、ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役会長 村松俊亮が、初めて選ばれた。今回、本選出を記念し村松氏へインタビュー。YOASOBIやCreepy Nuts、米津玄師など国内外でのヒット曲を輩出する中、どのように社員を牽引してきたのか、また自身が理事長を務めるCEIPAが主催する【MUSIC AWARDS JAPAN】の課題と可能性について、話を聴いた。
(Interview & Text: 高嶋 直子 / Photo: 辰巳隆二)
働いているみんなが萎縮してしまうのが、一番良くない
――2005年にソニー・ミュージックレコーズ(現ソニー・ミュージックレーベルズ)の社長、2019年にソニー・ミュージックエンタテインメントの社長、2026年からは会長に就任され、20年以上にわたってヒットアーティストを輩出したことが讃えられて、今回選出されました。ここ最近でも、YOASOBIやCreepy Nuts、米津玄師など所属アーティストが国内外のチャートで躍進を続けています。
村松俊亮:ありがとうございます。音楽だけでなく、多様なファンクションを持っているという当社ならではの相乗効果が表れているのだと思います。ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)の事業は非常に多岐にわたっていて、レコード会社やアーティストマネジメント、アニメやゲームの企画製作や、イベント企画、ホール運営など世界でも類を見ない、総合エンタテインメントカンパニーです。基本的には、毎日アーティストやクリエイターの皆さんと切磋琢磨しながら、0から1を生み出すことに注力していますが、何かを1から立ち上げるというのは非常に難しいし、関われる人もごく一部。一方、生み出された1を無限大にするということも非常に大切で、それに関わるスタッフは数多くいます。その両方を兼ね備えている企業であり、それを繰り返しながら成長していくことを、社員には伝え続けています。
――宣伝課長に就任された時、当時の社長から「村松のところは、社員が楽しそうに、高いモチベーションで仕事に取り組んでいる」と評価されたというインタビューを拝見しました。
引用:https://www.rikkyo.ac.jp/closeup/alumni/2022/mknpps000001zf72.html
村松:すごく小さなレーベルを担当していた頃ですね。いつかなくなるかもしれないけど、「ヒット作が出ない」「売上が上がらない」と縮こまっていても仕方がないので、楽しく仕事をすることと、ヒット曲を出すための気概だけは見せようと新人発掘に力を入れていました。それが評価されて社長に就任することになったんですが、「今、担当している新人アーティストがヒットしなかったら代表を退きます」と言ったんです。それがORANGE RANGEで、デビュー以降立て続けにヒット曲を出すことができました。働いているみんなが萎縮してしまうのが、一番良くないなと思っていたので、SMEの社長に就任した時も、「挑戦」というキーワードを皆に伝えています。
当社が、CBS・ソニーレコード(現:ソニー・ミュージックエンタテインメント) を創業したのは1968年のことです。当時は、キングレコードさんや日本コロムビアさんなど数多くのレコード会社が存在する中、新興レコード会社としてこの業界に参入しました。なので、当時の創業メンバーは、裸で真っ暗な海に飛び込むような気持ちだったでしょう。それと比べると我々は澄んだ青空のもと、白昼の綺麗な海に、シュノーケルを付けて泳いでいるくらい、設備も制度も整っている中で働けています。なので社員にはのびのびと泳いでほしいし、安心してどこまでも深く潜ってもらいたい。
私自身、これまでたくさん失敗をしてきましたが失敗から学ぶことの方が絶対に多いです。なので、若いうちにたくさん失敗してほしいと伝えています。

コンテンツは相互に影響しあって広がっていく
――SMEの会長のみならず、日本レコード協会の会長であり、CEIPAの理事長も務められています。日本は、2033年までにコンテンツ分野の海外売上額を20兆円まで引き上げるという目標が掲げられていますが、音楽業界の課題は何でしょうか。
村松:2022年から南場智子さん(ディー・エヌ・エー代表取締役会長)と一緒に、日本経済団体連合会のクリエイティブエコノミー委員会委員長を務めています。就任したころは、コンテンツ産業に対する、各省庁の意識はそこまで高くありませんでしたが、コンテンツの海外売上額が半導体や鉄鋼業を超える規模まで成長し、景色が変わってきたように思います。高市首相もおっしゃっていましたが、海外の首脳陣と話していると、ゲーム『ポケットモンスター』やアニメ『鬼滅の刃』など、日本のアニメやゲームから話題が盛り上がることが多いそうです。
とはいえ今の海外売上額が6~7兆円なので、7年後までに約3倍に増やすというのは、オーガニックな成長ではなし得ません。補正予算も政府全体で、これまでの倍以上になりましたが、予算が増えても正しく使わないと効果は出せません。韓国にはKOCCAのような国に紐づいたコンテンツ専門の組織がありますが日本にはないので、省庁を横断したコンテンツ専門組織を作っていただくように、依頼し続けています。今、最も海外売上額が高いコンテンツはゲームで、その次がアニメです。そのどちらにも音楽は必ず使われています。コンテンツは相互に影響しあって広がっていくので、ゲーム、アニメ、漫画などそれぞれの業界を横断して支援する国の機関が必要だと思っています。
――特に御社は、グループ会社にアニメの企画製作を手がけるアニプレックスがあるので、アニメやゲームとのコラボは得意分野の一つです。
村松:4月に開催したCreepy Nutsのニューヨーク公演を観に行きましたが、すごい熱狂でしたね。アニメ主題歌に起用されている「Bling-Bang-Bang-Born」も「オトノケ」も、会場の皆さんは日本語で熱唱されていました。もちろん、藤井 風さんのようにアニメ主題歌ではなく、海外でヒットしているケースもありますので、一概には言えませんが 一人でも多くの人に届けるのであれば、アニメは手段として非常に有効です。いま海外で聴かれている日本の曲ベスト100のうち、8~9割がアニメやゲームに関連しています。そして多くは、アニメやゲームの中で音楽を聴くだけに留まっていて、そのアーティストのファンになっていただくところまで、辿りつけていません。そのために大事なのは、ライブやイベントだと思っています。良いパフォーマンスをして、熱狂が生まれれば、そこから自然にバズは生まれてきます。SMEとしてもCEIPAとしても、そういう起爆剤を生み続けたいと思っています。
――Creepy Nutsは【Coachella Valley Music and Arts Festival 2026】に初出演し、米ビルボード誌のベストアクト10にも選ばれるなど、大きな話題となりました。
村松:素晴らしかったですよね。先日、バッド・バニーの来日公演を見ましたが同じ盛り上がりを感じました。おそらく会場にいる人のうち、スペイン語を理解されている方はそんなに多くなかったと思いますが、キャッチ―だし体が自然に動いて。あらゆる国の人にアプローチできるようなリズムやアレンジが考えられていました。Creepy Nutsにも同じ可能性を感じていて、彼らの多様なクリエイティビティをもっと煮詰めていくと、より世界に広がるのではと思っています。
Creepy Nuts - Otonoke - Live at Coachella 2026
――日本国内についてもお聞きします。2025年の音楽マーケットは、グローバルの6.4%よりも大きい、8.9%という成長を見せました。特にフィジカルセールスの復調が大きく貢献しましたが、デジタルとの両立をどのように考えていますか。
村松:ファンとのタッチポイントは強くしていくべきだと思いますので、パッケージの売上が前年より伸びているというのは素晴らしい結果だと捉えています。CD全盛期は、その週のベスト10が翌週には一作もチャートインしておらず、年間で最も聴かれた曲が見えづらかったですが、ストリーミングによって長く聴き続けられる曲が可視化されたことによって、1年を代表する曲が生まれやすくなったのではないでしょうか。なので、長く聴き続けられる曲を作るクリエイティブと、ファンダムを通じて大きなヒット曲を作っていくというクリエイティブの両方が必要だと思っています。
――いまグローバルではスーパーファン、日本では推し活の市場が注目されていますが、"スーパーファン"と、"推し活”というそれぞれの言葉に違いは感じますか。
村松:顧客単価の高いファンがスーパーファンで、お金を使う、使わないに関わらずアーティストやファン同士でコミュニケーションをとりながら応援しているのがファンダムでしょうか。いずれにしても、ファンの熱量を伝導していくのが非常に重要です。そして、その発火点の熱量は高ければ高い方が良い。それを果たせるのがライブだと思っています。日本の音楽やカルチャーが好きな人が数十万人規模で集まるようなイベントを、世界中で開催していきたいと思っています。
日本でのアワード開催は、それくらい皆の目標だった

――最後に、まもなく【MUSIC AWARDS JAPAN】(以下、【MAJ】)が開催されます。昨年開催してみて感じられた課題と、今年の意気込みをお聞かせください。
村松:先日、レコード協会から2025年の音楽メディアユーザー実態調査が発表されました。2019年以降、音楽に対して無関心であると答えていた人が増加し続けていたのですが、昨年久しぶりに減少したんです。【MAJ】の成果かどうか分かりませんが、アニメやゲーム、スポーツやSNSなど数多くのエンタテインメントが溢れている中、どれだけ音楽に時間を割いてもらえるのかは非常に大切なことです。今後、【MAJ】やCEIPAの活動が貢献できればと思っています。
これまで音楽業界における5つの団体はそれぞれお互いをリスペクトしあっていて、こういうアワードをやりたいという気持ちは何十年も前から多くの人が抱いていました。私は「自分が言い出しっぺだ」と思っていますが、同じように思っている人がこの業界には何十人もいると思います(笑)。日本でのアワード開催は、それくらい皆の目標でした。
そんな中、音楽の聴き方やメディアが変化し、音楽の聴かれ方も変化してきて、「今がチャンスだ」と思い、昨年【MAJ】を立ち上げました。準備期間も短かったですし、全て手探りだったので、50点が取れれば良い方だと思っていましたが、私は結果的に100点満点だったと考えています。とはいっても、昨年の【MAJ】は「0回目」だと捉えています。まだ「1回目」ではないんです。国際的な音楽賞として、まだまだ世界に認知されている訳ではありませんから。5年、10年と続けていくことで世界にも認知され、権威も備わってくるのだと思っています。今年から再スタートの気持ちで取り組んでいきます。
――今年も、プレミアセレモニー、グランドセレモニーともにYouTubeで配信されますし、世界での広がりを期待したいですね。
村松:同時に大切なのが「レコード演奏・伝達権」です。これまで海外の商業施設やレストランなどで、日本のアーティストの楽曲が流れた場合、日本では作詞家作曲家へ著作権の使用料は支払われていましたが、アーティストや演奏者へは支払われていませんでした。これについては積年の課題としてずっと解決に向かって働きかけていたのですが、ようやく5月15日に著作権法改正案が閣議決定され、今国会での成立が目指されています。コンテンツ産業が国の基幹産業と位置付けられ、著作権法に対する法整備も整い、【MAJ】も2回目が開催され、日本の音楽のグローバル化は一層加速する見込みです。アーティストにとって、【MAJ】で受賞することが誇りになり、それを名刺にして世界に売って出ていけるようなアワードへと成長させていきたいと思っています。
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