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<インタビュー>Billboard Global Power Players vol.14 岡田武士 ワーナーミュージック・ジャパン代表取締役社長兼CEO

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 米Billboard誌が、アメリカ以外の国で音楽ビジネスの成功を牽引しているリーダーを称える【Billboard Global Power Players】。各国から音楽業界を牽引するリーダーが選ばれた中、ワーナーミュージック・ジャパンの代表取締役社長兼CEOの岡田武士が、初めて選出された。今回、本選出を記念し岡田氏へインタビュー。アーティストの海外展開や、スーパーファンや推し活の市場の可能性など、幅広く話を聞いた。
(Interview & Text: 高嶋 直子 / Photo: 辰巳隆二)


千葉雄喜主催の音楽フェスティバルも実現したい

――2024年12月にワーナーミュージック・ジャパンの代表取締役社長兼CEOに就任されました。就任から約1年半が経ちましたが、どのような1年間でしたか。

岡田武士:2025年度は、【MUSIC AWARDS JAPAN 2025】で最優秀海外ポップス楽曲賞を受賞したロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」を筆頭に、フィジカルおよびデジタルの両面で多くのアーティストの作品を成功裡にリリースすることができ、会社の成長につながりました。「ヒット曲を生み出す」や「アーティストをブレイクさせる」ということは、常に我々の優先目標ではありますが、CEOに就任してからはこれを加速するための組織づくりに注力しました。

また、ワーナーミュージック・グループとしてのグローバルネットワークや各市場での専門性を活かし、日本のアーティストの世界を舞台にした活躍を後押ししたいと、入社当初から語ってきましたが、これについても少しずつ芽が出始めています。海外本社や各国支社で日本のアーティストを支援する機運が高まり、戦略的に連携を取れる体制が整ってきました。日本のみならず海外でもこれから成果を出していけると確信しています。
今年5月には、Number_iがアメリカの名門Atlantic Recordsとレーベル契約を締結しました。


――2025年7月には、千葉雄喜さんと包括契約を締結されました。

岡田:現在、千葉雄喜はLAを活動の拠点にしています。最近では、コロンビア出身のFeidとコラボレーションした「Medellín Takai」をリリースしました。他にも、様々な海外アーティストからコラボレーションをオファーが続いており、日本のアーティストの海外展開の一つのモデルケースになるのではと思っています。

また、Lil Moshpitとコラボした「アニョハセヨ」をリリースしましたが、こちらは韓国やアジア圏を中心にバズを起こし、UGCも数多く投稿されています。日本やアメリカだけでなく、曲によっては世界中の様々な国や地域で火がつき、グローバルヒットへと広がっていく可能性があると感じています。他にも日本では、海外アーティストも招聘した千葉雄喜主催の音楽フェスティバルも実現したいと思っています。



Feid, Yuki Chiba「Medellín Takai」

――日本の音楽業界は、いかに輸出を伸ばしていくかに力が注がれています。2033年までにコンテンツの輸出額を20兆円に成長させるには、何が必要だと思いますか。

岡田:今、様々な日本のアーティストが世界に広がり始めていますが、まだまだ個別の事例であったり、特定のジャンルや楽曲に留まっています。今後、日本の音楽がより世界にムーブメントとして大きく広がるためには、J-POPという“面”で見せていく必要がある。日本には、アイドルやロック、ポップなど多様な音楽ジャンルが共に存在し、時に影響しあい、それぞれが人気です。それらを面として見せるには、どうするのが良いかが課題だと思います。

これは、当社だけで実現できるものではないので、今年も6月に開催される【MUSIC AWARDS JAPAN】のように、様々なジャンルの音楽やアーティスト、関連するカルチャーを包括的に世界に紹介できるような取り組みが増えていくと、より広く認知されるようになるのではないでしょうか。


――世界で認知されているK-POPのようなイメージですね。

岡田:韓国は14年前から、アメリカで【KCON】を開催していますし、メディアの使い方も上手です。音楽番組が放送されると、すぐにYouTubeなどにも公開されますし、グローバルに届ける前提で様々な発信がされていると感じます。日本の音楽も、海外に向けてまとめて発信できるようなプラットフォームやメディアがあれば、世界を舞台にした日本のアーティストの活躍もより加速していくのではと思っています。


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  1. 「ここ最近は、2000~2010年頃の楽曲がよく聴かれている」
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ここ最近は、2000~2010年頃の楽曲がよく聴かれている


――国内の音楽市場についてもお伺いします。2025年は、前年比8.9%増と世界の音楽市場の6.4%を上回る成長を見せました。配信市場の成長に加えて、パッケージの売上も大きな伸びを見せましたが御社はいかがでしたか。

岡田:ここ数年で、日本でもストリーミングが広く普及しました。そのような中でも、CDは引き続き売れていて、依然として世界最大のフィジカル市場をキープしています。ファンの心をくすぐる、付加価値を感じられる日本仕様のフィジカルは、近年海外からもニーズが高まっており、成長ポテンシャルはまだまだ大きいと感じています。今後は需要を一層伸ばしていくために、フィジカルの価値を再定義することが重要だと考えています。

実際に他国のワーナーの幹部や担当者からは、とにかくフィジカルのことを聞かれるんですよね。「日本では、まだタワーレコードでCDが売れている。日本のショップには、何か魔法が掛かっているんじゃないのか?」って(笑)。

もちろん魔法でもなんでもなくて、他国では早々にクローズしてしまったフィジカルビジネスを、日本はずっとやり続けてきたこと。そして、アーティストを好きになってくれたリスナーに、アーティストの魅力をより深く感じられるような体験や付加価値を提供し続けてきたことが理由だと思います。


――今後、ストリーミング市場は縮小して音楽はスーパーファン向けになるという考えもありますが、どのように予想されますか。

岡田:ストリーミング市場もまだ伸びしろがあると思います。たとえば、中国のテンセントミュージックには、有料と無料の会員種別だけでなく、様々なプランバリエーションが用意されています。課金方法も定額サブスクリプションだけでなく、都度課金するなどの様々なオプションも考えられるでしょう。

他にも、アーティストを応援したいというファンのニーズに応える方法は、CDを買ってもらう以外にも、もっとあるのではないでしょうか。


――スーパーファンは、日本では推し活と表現されています。ですが海外におけるスーパーファンと、日本の推し活は少しニュアンスが異なるようにも感じます。

岡田:海外のワーナーミュージックのスタッフも「推し活」という言葉自体は知っているんですが、日本の推し活の熱量は正しく伝わっていない気がしますね。海外で「スーパーファン」というと、一度でもアーティストのグッズを買ったことがあったり、ライブに行ったことがある人を指しているので、日本のように、異なるメンバーがジャケット写真になった複数バージョンのCDが制作され、これらが熱心に求められるといった日本の推し活は、イメージしにくいようです。


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注目されているカタログ楽曲の価値と、その可能性

――また、スーパーファンの市場とともに注目されているのが、カタログ楽曲の価値です。日本の音楽の価値も、多様性と蓄積と表現されていますが、カタログの可能性については、いかがでしょうか。

岡田:ワーナーミュージック・グループには、グローバル全体でカタログのマーケティングを担当する部門があり、カタログの価値をさらに高めていくために、日々Luminateなどのデータなどを参考にしながら、企画やマーケティング施策を考えています。

ここ最近では、2000~2010年頃の楽曲がよく聴かれている印象です。シティポップのように突然海外で盛り上がる場合もあるので、UGCも含めてそういう兆しをいち早く見つけ、これを大きくする取り組みを行うことが重要です。最近だと、ワーナー・イタリアの社長から「サル・ダ・ヴィンチ(Sal Da Vinci)の曲が日本でバズっている」という連絡を受けました。各国のチームとは日々連携しています。



サル・ダ・ヴィンチ「Per sempre sì」

――新曲よりカタログの方が多く聴かれる国が増えてきました。

岡田:物理的にカタログは増え続けますから、ストリーミング市場が大きくなればなるほど、収益に占めるカタログのシェアは増えていきます。カタログの価値の高め方については、グローバルで知見が蓄積され、ベストプラクティスが共有されています。一方で、日本は今後も新曲に引き続き予算やリソースを割いていくつもりです。国内市場はもちろん、海外輸出も重要と考えており、昨年から、ワーナーのLAオフィスに日本人のスタッフを常駐させました。これまでにも、現地にインターナショナルチームはありましたが、アメリカ以外の国を全て担当しているので、日本の音楽も、イギリスも南米も韓国も全て担当しています。昨年から日本専任のスタッフを置いたことで、話が非常にスムーズに進むようになり、結果を生み出しつつあります。こうした日本の成果を受けて、韓国や他国のスタッフも常駐させた方が良いのではという案も出ています。

またコミュニケーションという点では、私自身もなるべく出張する機会を作るようにしています。先日は、グラミー賞のタイミングで渡米しましたが、ちょうどアメリカでは実写ドラマ版『ONE PIECE』がヒットしていたので、その話をよくされましたね。日本のコンテンツが他国でヒットすると、日本に対しての興味が高まるので、色々なアイディアや提案も出してもらえたりします。

洋楽では、米国アーティストのAshnikkoが、4月から放送されているアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』4th seasonで鈴木このみさんとコラボレーションしました。日本の音楽を輸出するというのは、日本のアーティストが海外に行くだけではなく、日本の文化やコンテンツと、海外アーティストがコラボレーションすることで広がるケースもあります。そういったコラボは今後も積極的に行っていくつもりです。



――まもなく6月13日に【MUSIC AWARDS JAPAN】の2回目が開催されます。どのようなことを期待されますか。

岡田:今年は東京で開催されることになり、イベントの数もとても増えています。日本の音楽のグローバルプレゼンスを高め、世界のオーディエンスに素晴らしいアーティストたちを紹介する、とても意義深く、ポテンシャルの高いアワードだと思いますので、我々も成功に向けて協力していきます。

2024年12月にワーナーミュージック・ジャパンのCEOに着任してから、アメリカの音楽ビジネスとの違いを感じました。それぞれ世界で1位と2位の音楽市場ですが、アメリカではエンタテインメントの仕事に携わっている人へのリスペクトを強く感じます。音楽やカルチャーに関わる仕事が、社会的にすごく尊重されていて、羨ましく感じました。日本でもこうした環境が変わると、産業としてさらに盛り上がるのではないでしょうか。【MUSIC AWARDS JAPAN】も経済産業省や文化庁からの協力を得ており、いまやコンテンツ産業は日本の基幹産業に位置付けられています。こうした積み重ねで音楽業界の見え方が少し変わってくると、より一層グローバル展開も加速していくと感じています。


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