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<コラム>上白石萌音、10年目に贈る『bouquet』~そして凱旋ライブと主催フェスへ~(後編)

Text: 佐藤優奈
前編でたどってきたのは、上白石萌音のデビューから10年間の道のり。「歌うように演じて、演じるように歌いたい」という思いを胸に、出会った人や楽曲、経験してきた舞台を大切に歌い継いできた。そして2026年9月9日、その集大成として、オリジナルアルバム『bouquet』をリリース。
「楽曲提供していただくことは、一輪ずつ花を、命を託していただいているようなこと」。彼女は『bouquet』というタイトルに込めた思いをそう語っている。収録楽曲は全10曲。この10年で出会い、育んできた縁が、ジャンルの垣根を越えて一枚のアルバムに束ねられた。まずは、その花束を一輪ずつほどいてみたい。
『bouquet』一輪の花、それぞれの縁
アルバムの幕開けを飾るのは「ワンダー」。作詞は上白石が、作曲は大橋トリオが手がけた。大橋からは、過去に「Little Birds」「スピカ」の提供を受けている。2021年には大橋トリオのアルバム『NEW WORLD』に「ミルクとシュガー duet with 上白石萌音」で参加するなど、共演を重ねてきた。編曲まで含めれば、最も多くの楽曲に関わってきたアーティストである。この曲は、子どもの無垢な視点を通して、見慣れたはずの日常に新たな世界を見つける喜びを描いた、温かく瑞々しい一曲だ。軽やかでぬくもりに満ちたメロディが、アルバムの幕開けにふさわしい柔らかな空気を運んでくる。
上白石萌音「Wonder」
角舘健悟(YOGEE NEW WAVES)による作詞・作曲で綴られたのが「March」だ。アジサイをイメージに制作を依頼され、巡る季節を駆け抜けていく歓びと、美しい時間が過ぎ去っていく儚さが、躍動感あふれる言葉で表現されている。グルーヴィーで心地よいメロディに、上白石の透明感のある歌声が響きあう。角舘はこれまでにアルバム『kibi』に「ひかりのあと」を提供。【Mone Kamishiraishi『yattokosa』Tour 2023】の東京公演にはゲスト出演している。
続く「メタセコイア」は、街路樹などでよく見かける「平和」を花言葉に持つ落葉針葉樹。作詞・作曲は、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴。音楽特番での共演をきっかけに、これまで上白石は、大森著作の絵本『メメント・モリ』の朗読劇や、【Mrs. GREEN APPLE presents “CEREMONY”】にも出演している。大森ならではの鋭く、繊細な筆致が光る切迫感のある1曲だ。
上白石萌音「メタセコイア」
GLIM SPANKYの松尾レミが作詞、亀本寛貴が作曲を務めたのは「Trophy」。GLIM SPANKYは横浜赤レンガでの主催フェス2日目、10月4日のBAND ACTとしても出演が決まっている。「勝利・栄光・栄誉」という意味を持つ月桂樹をイメージに制作されたこの曲は、道を切り拓いてきた者へ贈るアンセムだ。この曲は、プロバスケットボールリーグ『りそなグループ B.LEAGUE 2026-27 SEASON』の公式テーマソングに決定している。上白石はレコーディングを振り返り、「スポーツの躍動を頭の中でイメージしていました。GLIM SPANKYさんが作ってくださった、荒野に吹く追い風のようなサウンドと、真っ直ぐな言葉たちをぜひ聴いていただきたい」と語っている。
「ひとひら」の作詞・作曲を手がけたのは、水野良樹(いきものがかり)。水野が楽曲を提供するのは、2021年の紅白歌合戦で歌唱した「夜明けをくちずさめたら」と「まぶしい」を含めた3曲目。2024年にはいきものがかりのライブ【こんにつあー2024】にも参加しており、楽曲提供者と歌い手という関係を越えたつながりが育まれてきた。「ひとひら」は、春が光を帯びる中、置き去りにされそうな孤独や痛みにそっと寄り添うあたたかな楽曲に仕上がっている。
上白石萌音「Hitohira」
andropの内澤崇仁が手がけたのは「hanamichi」。内澤と上白石は、俳優デビュー時から縁がある。これまで「ストーリーボード」「ハッピーエンド」の作詞作曲やカバー曲のアレンジなど、歌手活動初期から関わりを深めてきた。「内澤さんの声や曲を聴くと仕事を始めたての頃のまっさらな強い心を思い出します」と上白石が語るように、「初心」という意味を持つ「鈴蘭」をイメージに制作された。この曲は、祝福と別れの象徴である“花道”と名付けられ、「ハッピーエンドのその続きを」という思わずニヤリとする歌詞が盛り込まれている。10周年という節目を飾るのにぴったりな1曲だ。
絢香が作詞・作曲を担当した「Cotton」は、柔らかな強さに満ちたバラードだ。上白石はデビュー当時のインタビューで「絢香さんがすごく好き。カバーアルバムでは、その曲の世界観を大事にしながらも自分の色に染めてしまうところがすごいんです」と憧れを口にしていた。当時はリスナーとして語っていた憧れの存在から、今回はじめて楽曲を託された。絢香の歌声にいつも包まれているような感覚を感じていたという上白石が「誰のそばにもある小さな優しさ」というイメージを伝え、それを元に制作された。
上白石萌音「Cotton」
「生きて」は、答えのない日々や移ろう季節のなかで、喜びも哀しみも丸ごと分かち合いながら共に歩み続けることの尊さを描いた人生賛歌だ。スターダスト☆レビューの根本要が作詞・作曲を手がけた。スターダスト☆レビューは、上白石が初めてライブに足を運んだ邦楽アーティストで、家族全員がファンだという。そして過去に「ブラックペッパーのたっぷりきいた私の作ったオニオンスライス」をカバーリリースもしている。番組での共演やスターダスト☆レビュー主催のイベントに出演させてもらう等、これらの縁が楽曲提供、そして鹿児島での共演につながった。
「asebi」は、忙しない日々の緊張の糸をふっとほどき、ほろ酔いの微睡みのなかで自分を取り戻していくひとときを描いた1曲。「あなたと二人で旅をしましょう」という意味を持つ植物・馬酔木をテーマに、共に気ままな旅をする仲でもある友人の藤原さくらからの提供曲だ。藤原とは、2017年のアルバム『and...』収録曲「きみに」で作詞を手がけてもらって以来の付き合い。今年2月には藤原のアルバム『uku』に、「だって ずっと このまま? feat. 上白石萌音」でデュエット参加も果たしている。
そしてアルバムの最後を飾るのが、サラ・ブライトマンとのデュエット「あなたとわたし(ムヘール・コントラ・ムヘール)」だ。作詞・作曲はホセ・マリア・カーノ。原曲は、スペインの伝説的ポップグループ・Mecanoが1988年に発表した『Mujer contra mujer(女性対女性)』で、スペイン語圏において同性愛への理解と権利を象徴する歴史的なバラードとして知られる。ミュージカルの舞台にも数多く立ち、サラ・ブライトマンが主演したミュージカルのサウンドトラックを聴いて育ったという上白石の、この10年の歩みがどこかで重なって見える1曲でもある。
こうして並べてみると、『bouquet』は単なるコラボレーション企画ではなく、10年間の人間関係の記録でもあることがわかる。初回限定盤には、この10年を彩ってきた「なんでもないや (movie ver.)」「一縷」「ハッピーエンド」「白い泥」や、「アルデバラン」「366日」のカバーなど、【Mone Kamishiraishi "yattokosa" 26《texte》】からライブ音源の一部が収録されていて、歌手活動の軌跡に少しだけ触れることができる内容になっている。
故郷・鹿児島から、感謝を込めて
9月20日・21日には、約5年ぶりとなる地元・鹿児島凱旋ライブ【Mone Kamishiraishi 10th Live《bouquet》for HOME】が、西原商会アリーナ(鹿児島アリーナ)で開催される。
初日20日はツーマンライブとして、スターダスト☆レビューが共演。前述の通り、上白石が初めて邦楽ライブを観たアーティストであり、ファンを公言してきた特別な存在だ。地元での凱旋公演に、思い出のバンドを迎える(翌21日はワンマン公演)。
今回の鹿児島公演は、単なる里帰りではなく、10年という時間を故郷とともに振り返る場になるだろう。歌うことを覚えた幼い日々から、日本武道館、そして自身の主催フェスへと続いている。
【コメント動画到着!】上白石萌音「Mone Kamishiraishi 10th Live《bouquet》for HOME」
初めての主催フェスは横浜赤レンガで
10月3日・4日には、上白石にとって初めての主催となる野外フェス【Mone Kamishiraishi 10th Live《bouquet》for ALL】が、横浜赤レンガパーク野外特設ステージで開催される。これまで数々のツアーやワンマンライブを重ねてきた上白石にとっても、自らがホストとなってフェスを主催するのは初めての試みだ。
初日10月3日のBAND ACTは、androp、MONGOL800。MONGOL800のキヨサクからはアルバム『name』収録の「チョイス」の提供、そして「奇跡のようなこと」では歌詞の提供を受けており、「チョイス」はMONGOL800自身もライブで歌っているという。
GUEST ACTには、『カムカムエヴリバディ』主題歌「アルデバラン」を歌唱したAI、その「アルデバラン」の作詞・作曲を担当し、上白石に「懐かしい未来」を提供した森山直太朗。ここに佐藤栞里、屋比久知奈が名を連ねる。屋比久知奈とは、2023年のミュージカル『ジェーン・エア』でジェーンとヘレンの二役を役替わりのWキャストとして演じた間柄だ。
2日目10月4日のBAND ACTは、adieu(上白石萌歌)、大橋トリオ、GLIM SPANKY。実妹・上白石萌歌と、歌手としては初めての姉妹共演が実現する。奇しくも、adieuとしての活動が10周年を迎えるまさにその日に、姉の主催フェスへの出演となった。それぞれ違う音楽を奏でてきた姉妹が、この日どんなステージを見せるのか注目したい。GUEST ACTには、武道館公演にもサプライズ登場した井上芳雄、角舘健悟、風間俊介、そして「夕陽に溶け出して」の提供者であり、【ap bank fes '25 at TOKYO DOME】でも共演してきた小林武史が出演する。
androp、大橋トリオ、角舘健悟——この10年で幾度となく名前が挙がってきた面々が、初の主催フェスというステージに、あらためて集う。2日間を通して見えてくるのは、上白石萌音というひとりの歌い手を軸に、異なるフィールドの表現者たちが緩やかにつながっていく姿だ。
振り返れば、彼女の歌手活動は、いつも誰かとの出会いから始まってきた。野田洋次郎との即興のデュエットがきっかけとなった歌手デビュー。各楽曲提供者から託された曲の数々。井上芳雄をはじめとする共演者と歌った舞台の楽曲。『bouquet』に収められた10曲は、その歩みの中で結ばれた縁の証しであり、9月の鹿児島、10月の横浜赤レンガは、その縁をもう一度確かめる場になる。
2026年秋、これまで摘み集めてきた一輪一輪が大きく花開く。上白石萌音は、支えてくれたすべての人への感謝を、歌という形でもう一度手渡そうとしている。
リリース情報

オリジナルアルバム『bouquet』
2026/9/9 RELEASE
<通常盤(CD only)>
UPCH-2297 3,850円(tax in.)
<初回限定盤(2CD:デジパック仕様 / 三方背スリーブケース、フォトブック付き)>
UPCH-7860/1 6,600円(tax in.)
予約はこちら
公演情報

地元鹿児島凱旋ライヴ
【Mone Kamishiraishi 10th Live《bouquet》for HOME】
会場:鹿児島・西原商会アリーナ(鹿児島アリーナ)
2026年9月20日(日)開場16:00/開演17:00 ※ツーマンライブ
バンドアクト:スターダスト☆レビュー
2026年9月21日(月・祝)開場15:00/開演16:00 ※ワンマンライブ
初の主催野外フェス
【Mone Kamishiraishi 10th Live《bouquet》for ALL】
会場:神奈川・横浜赤レンガパーク野外特設ステージ
2026年10月3日(土)開場11:00/開演13:00/終演19:00(予定)
バンドアクト:androp、MONGOL800
ゲストアクト:AI、佐藤栞里、森山直太朗、屋比久知奈
2026年10月4日(日)開場11:00/開演13:00/終演19:00(予定)
バンドアクト:adieu(上白石萌歌)、大橋トリオ、GLIM SPANKY
ゲストアクト:井上芳雄、角舘健悟(YOGEE NEW WAVES)、風間俊介、小林武史
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