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<現地レポート>英国発【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL】、16世紀の邸宅でジャズ×ソウル×ヒップホップが交錯



コラム

Text: 近藤麻美

待望の日本開催がついに決定。今年も、イギリス南部サセックス州で7月3~5日の3日間にわたり、【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL】(以下、ラブ・シュプリーム)が開催された。現地の熱気はもちろん、会場を彩ったパフォーマンスやファンの盛り上がり、ここでしか知ることのできない舞台裏まで、本国開催ならではの魅力を余すところなくお届けする。

2013年にスタートしたイギリス発の当フェスティバルは、新型コロナウイルスの影響で2020年は開催中止となったものの、その後も着実にファン層を拡大。2026年は過去最大規模での開催となり、14回目を迎えた今年は、ラブ・シュプリームならではの個性を確立するとともに、英国のフェスティバルシーズンを代表する恒例イベントとしての地位を確かなものにした。

会場となったグリンデ・プレイス(Glynde Place)は、16世紀に建てられたエリザベス朝様式のマナーハウスで、サウス・ダウンズ国立公園の豊かな自然に囲まれている。なだらかな丘陵地帯と牧草地が織りなすサセックス・ダウンズの雄大な景色を一望できる絶好のロケーションにあり、その歴史ある敷地で開催されることから、英国の多くの大規模フェスティバルとは一線を画す、ゆったりとした親密な雰囲気を醸し出している。

ラブ・シュプリームの大きな特徴は、その音楽プログラムにある。主流チャートのヘッドライナーはもちろん、伝説的なジャズアーティストとソウル、R&B、ファンク、ヒップホップを融合。ラインナップは音楽の質と芸術性を重視したキュレートで、新しいアーティストの発見を楽しみたい人にも、有名アーティストの演奏を心待ちにしている人にも魅力的なものとなっている。そのため、来場者は、ジャズ愛好家や長年の音楽ファンはもちろん、家族連れや若い世代まで幅広く、世代を問わず誰もが思い思いのスタイルで音楽を満喫できるフェスティバルとして親しまれている。

ラブ・シュプリームは、最大規模のイベントを目指すのではなく、厳選されたラインナップ、優れた音響、快適な施設、そしてインクルーシブな雰囲気を通して、特別な体験を提供することに重点を置いており、リラックスした大人の雰囲気と音楽のクオリティの高さが評価され、英国でも屈指の「ブティック・フェスティバル(小規模ながら質の高いフェス)」として人気を博している。筆者は今回、フェスティバル最終日に足を運び、その一日の様子を中心に会場の雰囲気やライブ・パフォーマンスを取材した。

ロンドンから約2時間強のドライブで会場に到着。エントランスでリストバンドをもらい、まずはVIPエリアへ。メインステージ横に設置されたVIPエリアには、バーと特設ステージが設けられ、来場者たちは、テーブルやベンチに腰を下ろし、ビールやワインを片手に談笑しながら、デッキチェアなどで思い思いにくつろいでいる。また、同エリアでは、ポップアップ・パフォーマンスや対談セッションなども行われる。

VIPエリアを出て会場を散策。フェスティバル・オーガナイザーの担当者による案内で、会場内を巡りながら、フェスティバルの歴史やコンセプト、各エリアの見どころについて話を伺うことができた。

会場中央には、小型の観覧車やメリーゴーランドなど、移動式遊園地が設置されており、子どもたちの歓声が響く、家族連れに人気のエリアだった。会場内には、子ども向けエリア「Little Supremos(リトル・シュプリーモス)」も設けられ、工作やサーカス体験、ファミリーヨガ、キッズパレードなど、多彩なプログラムを開催。さらに、有料のクレッシュ(託児所)では一時預かりサービスも用意されており、小さな子ども連れでも安心してフェスティバルを楽しめる環境が整えられていた。

オフィシャル・マーチャンダイズのショップも多くの買い物客で賑わっていた。パーカーやTシャツは豊富なカラーとサイズ展開で用意され、フェスティバルの記念品として人気を集めていた。公式プログラムもここで購入することができた。

会場内には、英国を代表するインディペンデント・レコードショップ、ラフ・トレード(Rough Trade)が手がける「Jazz Lounge & Rough Trade」も設けられていた。出演アーティストの作品をはじめ、ジャズやソウル、ファンクの名盤を厳選して販売するほか、ラフ・トレードのオリジナルグッズやアパレル、書籍なども充実。人気のトートバッグを手にする来場者の姿も多く見られた。ラフ・トレードがキュレートするラウンジスペースでは、併設のバーでドリンクを片手にゆったりと過ごせるだけでなく、著名人によるトークセッションやDJも開催。ライブの合間に対談や音楽談義に触れられるという、音楽ファンにとって魅力的なスポットとなっていた。

会場の一角では、英国の水資源支援チャリティー「Frank Water(フランク・ウォーター)」が給水サービスを実施。リユースボトルやリフィル用リストバンドを購入すると、会場内の給水ステーションや移動式の「Frank Tank」で冷たい浄水を何度でも補給できる仕組みだ。使い捨てプラスチックごみの削減につながるだけでなく、収益は気候変動の影響を受ける地域での安全な飲料水や衛生環境の整備を支援する活動に充てられており、フェスティバルのサステナビリティへの取り組みを象徴する存在となっていた。

音楽だけでなく心身のリフレッシュを目的としたウェルネスエリアも設けられていた。ヨガや瞑想、リラクゼーション体験に加え、マッサージ・セラピー・テントやホットタブも用意され、日常の喧騒から少し離れて心と身体を癒やせる空間となっている。音楽を楽しむ合間にひと息つき、自分自身と向き合える時間を過ごせるのも、ラブ・シュプリームならではの魅力だ。

メイン会場を出て、キャンプエリアへ。ラブ・シュプリームでは、快適さを重視したグランピング・エリアも用意されている。テント設営の手間なく滞在できるプレミアムな宿泊スタイルで、ベッドや家具を備えた空間でゆったりと過ごすことができる。自然豊かなグリンデ・プレイスの環境を満喫しながら、ホテルに近い快適性とフェスティバルならではの開放感を両立できる点も、大人の音楽ファンから支持を集める理由のひとつだ。本年は420張のグランピング・テントが用意され、すべて完売。さらに、エリア内には清潔なシャワールームやキャンパー専用バーも併設され、快適な滞在をサポートする設備が充実していた。

再び、メイン会場に戻り、<NORTH DOWNS>ステージへ。太陽が少し傾き始めた17時30分、メインステージに登場したのはシスター・スレッジ。2017年にジョニ・スレッジが逝去した後も、「Sister Sledge ft. Sledgendary(シスター・スレッジ・フィーチャリング・スレッジジェンダリー)」として活動を継続している。現在は、創設メンバーのデビー・スレッジを中心に、娘のカミーユ、息子のデヴィッド、そしてジョニの息子タデウスらがステージに立ち、まさに「ファミリー・グループ」としてその音楽的遺産を受け継いでいる。さらに、長年のメンバーであるターニャ・ティエットも加わり、往年の輝きを保ちながら、新たなエネルギーを融合させたパフォーマンスを披露した。

セットは、Chicのカバー曲「Everybody Dance」で幕を開けた。ステージ前から会場中央付近まであふれた観客は、冒頭から繰り出されたダンサブルなナンバーに歓喜し、思い思いに体を揺らしながら盛り上がる。続いて「He's the Greatest Dancer」、「We Are Family」とディスコアンセムが次々と披露されると、会場の熱気はさらに高まった。楽曲ごとにメインボーカルが入れ替わり、ダンサーとしても活躍するタデウス・スレッジがブレイクダンスを披露するなど、シスター・スレッジの伝統を受け継ぎながらも、第二世代ならではのフレッシュなエネルギーが加わったステージとなった。メンバーは、「Lost In Music」で、息の合った完璧なコレオグラフィーを披露し、「Thinking of You」では美しいハーモニーで観客を魅了。どの曲もダンスフロアの定番として愛され続ける名曲ばかりで、世代を超えて楽しめるステージを作り上げた。そして最後は、Chicの名曲「Good Times」。晴れ渡ったサセックスの午後の空の下、会場全体が一体となる、まさにこのフェスティバルのセットとしてふさわしい締めくくりとなった。



シスター・スレッジ終了後、<Bands and Voices>テントを覘くと、ライブ演奏だけでなく、スポークンワードやダンスバトル、パフォーマンス・アート、合唱ワークショップなどが行われ、多彩なカルチャーを体験できる空間となっていた。

フリー・ナショナルズを見るため、再び<NORTH DOWNS>へ。タイトなリズムセクション、重厚なベースライン、ファンキーなドラム、そして滑らかなメロディーが織りなすサウンドは、1970年代のソウルやファンクへの敬意を感じさせながらも、現代的で洗練された響きを備えている。屋外ステージならではの開放感とサウス・ダウンズの雄大な景色が相まって、心地よいグルーヴが会場一帯へと広がっていった。ファンク、R&B、ネオソウルを横断する彼らの音楽は、スタジオ音源で知られる楽曲をライブならではの躍動感と即興性によって新たな魅力へと昇華。リラックスしたジャムセッションのような自由さと、観客を巻き込むダイナミズムが見事に共存し、一体感あふれるアンサンブルでオーディエンスを自然と踊らせた。

この日のハイライトのひとつは、ロンドンを拠点に活動するR&B/ソウルシンガー、エミリア・アナスタジアがスペシャルゲストとして登場した場面だ。力強くもソウルフルな歌声が加わることで、バンドとの鮮やかな化学反応が生まれ、ステージはさらなる熱を帯びていく。【グラミー賞】ノミネート歴を持つ彼らのセットは、週末を通しても屈指の名演となり、<NORTH DOWNS>は巨大なダンスフロアさながらの熱気に包まれた。

セットでは、ハービー・ハンコックの「Trust Me」やラビ・シフレの「My Song」といったカバーも披露。しかし、最も印象的だったのは、「この曲は、今は亡き偉大なマック・ミラーと共作したんだ」という紹介とともに演奏された「Time」だった。エミリアがカリ・ウチスのパートを歌い、スピーカーからはマック・ミラーのボーカルが流れる。亡き盟友への深い敬意がオーディエンスにも浸透した瞬間だった。今回のパフォーマンスは、フリー・ナショナルズが受け継いできたソウル・ミュージックの精神と、ヒップホップ以降の感覚を自然に溶け込ませた彼ら独自のR&Bを鮮やかに体現していた。

フリー・ナショナルズのステージを後にし、少し早めに<SOUTH DOWNS>へ移動。キャパ6,000人の会場は、ヘッドライナーのガブリエルの登場を待つ観客ですでに大きな期待感に包まれていた。集まったオーディエンスには女性の姿も多く、彼女が長年にわたり支持され続けてきた存在であることを感じさせる。赤いケープをまとい、美しいロングヘアをなびかせながら登場したガブリエルは、90年代ポップソウルの魅力を凝縮した、ノスタルジーあふれるステージを披露。一流のバンドと2人のバッキング・ヴォーカルを従え、優しく温かみのある歌声で、時代を超えて愛される楽曲の数々を届けた。

「この曲は、辛い出来事との決別を歌ったもの。絶望的な状況の中でも希望を持ち続け、踏ん張ることの大切さを歌っています」と語り、始まったのは代表曲「Rise」。ガブリエルは、自身が経験してきた葛藤や人生の中で感じた思いを、その言葉と歌声に込め、観客と分かち合った。続いて「Dreams」、「Out of Reach」などのヒット曲が披露されると、会場は大合唱に包まれ、彼女の歌が世代を超えて人々の心に残っていることを証明した。ステージでは、事前に寄せられたファンからのプライベートなメッセージを読み上げる場面もあり、観客との距離の近さを感じさせる瞬間も生まれた。セット途中、声のコンディションを整えるためガブリエルが一時ステージを離れる場面もあったが、その間はバッキング・ヴォーカリストたちがステージを引き継ぎ、ホイットニー・ヒューストンの「I Wanna Dance with Somebody」やルーサー・ヴァンドロスの「Never Too Much」といった名曲を披露。観客を飽きさせることなく、会場の熱気を保った。

そして最後は、ディオンヌ・ワーウィックの名曲「Walk on By」のカバーで締めくくり。穏やかながらも確かな重みと強烈な熱量が宿るガブリエルの圧倒的なステージ・プレゼンスは、長年にわたり愛され続けてきた楽曲の魅力をさらに引き立て、ユーフォリックな余韻に包まれた贅沢な時間は、あっという間に過ぎ去ってしまった。

ガブリエルのステージ終了後、大急ぎでメインステージ<NORTH DOWNS>へ向かうと、このフェスティバルの大トリを務めるデ・ラ・ソウルは、すでに熱狂の渦を巻き起こしていた。1989年のデビューアルバム『3 Feet High and Rising』でヒップホップの歴史を塗り替えた彼ら。2023年2月にはオリジナル・メンバーのデヴィッド・“トゥルーゴイ”・ジョリクールが急逝し、3人組だったデ・ラ・ソウルは、2人体制で活動を継続。それでもポス(Posdnuos)とメイス(Maseo)は、ステージの随所でトゥルーゴイへの思いを語り、その存在を称えながらライブを進めていく。

この日は英国では唯一となるフルライブバンド編成でのパフォーマンス。メイスのターンテーブルとオリジナルのサンプリング音源をライブ演奏と融合させることにより、「Me Myself and I」、「Ring Ring Ring (Ha Ha Hey)」、「Buddy」、「Stakes Is High」といった代表曲には、オリジナル以上ともいえる厚みと躍動感が加わった。

ポスとメイスは、長年連れ添ったコンビならではの息の合った掛け合いを披露しながらも、まるでデビュー当時のような瑞々しいエネルギーを放つ。メイスは時折DJブースを飛び出し、ステージを縦横無尽に駆け回ったかと思うと、「罵り言葉を口にするたびに、子ども一人一人に1ポンドずつ払うよ!」と冗談を飛ばして笑いを誘い、一方ポスも、「おい、そこの奴! スプリフ吸ってんのか? 子どももいるんだからやめておけ!」とユーモアを交えながら観客との距離を縮めていく。終始、彼らは軽妙なやり取りで会場全体を巻き込みながら、一体感を生み出していく。「手を上げて!」「みんなでバウンスしよう!」という呼びかけに応え、観客は大合唱とクラップで応戦。世代を超えて愛される楽曲の数々が鳴り響くなか、彼らの音楽が数十年の時を経てもなお色褪せないことを改めて証明した。

そして迎えた終盤、「The Magic Number」が始まると、会場の熱気は最高潮に達する。歓喜と郷愁が入り混じるアンコール無しの75分、感動的なフィナーレは、この週末を締めくくるにふさわしい圧巻のステージだった。

このようにして、3日間にわたる【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL】は幕を閉じた。開催期間中は天候にも恵まれ、サウス・ダウンズの雄大な自然の中で、音楽とともにゆったりとした時間が流れていた。来場者数はのべ6万人。会場には、目当てのアーティストの演奏に耳を傾ける熱心な音楽ファンはもちろん、日常の喧騒を忘れてリフレッシュする人、家族や友人と穏やかな時間を過ごす人、芝生に寝転びながら思い思いの時間を楽しむ人など、実にさまざまな人々の姿があり、それぞれが自分らしいスタイルでフェスティバルを満喫している様子が印象的だった。



そんな【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL】の約3年ぶりの日本公演は、2026年11月に開催。今回、初めての東京開催だ。秋の紅葉を眺めながら旬の味覚と美酒を楽しむこの時期、東京開催となる【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2026】で、至上の愛と至福の音楽体験を。新しく進化したジャズの形がここで見られるだろう。

ヘッドライナーにはデ・ラ・ソウルが決定している。今回は貴重なバンドセットでのパフォーマンスが決定。かつ日本国内で唯一の来日公演でもある。また、日本代表としてプロデューサー/トラックメーカーのSTUTSも出演。自身の作品制作やライブと並行して、数多くのプロデュース、コラボレーションやTV・CMへの楽曲提供など活躍の場を広げているSTUTSは、2016年に同名義での初作品となる1stアルバム『Pushin’』をリリース。ソロアーティストとしてのキャリアを歩み始めてから2026年で10年を迎え、その節目となる日本武道館も即日ソールドアウトするなど大活躍を見せている。今回の【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL】もバンドセットの特別なステージを見せてくれる。

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