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<インタビュー>斉藤由貴×武部聡志フルオーケストラコンサート 40年の絆が紡ぐ、新しい扉

Interview&Text:田中久勝 / Photo:石阪大輔
薬師丸ひろ子、川崎鷹也、KREVAに続く、日本を代表する音楽プロデューサー・武部聡志がプロデュースを手掛ける大好評のオーケストラコンサートシリーズ第4弾【billboard classics「斉藤由貴 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志】が、9月17日・兵庫(兵庫県立芸術文化センター)、25日・東京(昭和女子大学人見記念講堂)、10月2日・神奈川(ミューザ川崎シンフォニーホール)の3都市で開催される。 斉藤のデビュー以来、数々の名曲を共に生み出し、長年にわたり彼女の音楽的支柱であり続けるピアノ・音楽監修の武部と、指揮・編曲を手がける若手実力派・岩城直也と共に、未知の領域に挑む。斉藤由貴の歌手デビュー40周年を経て迎える、60歳のバースデーアニバーサリーを華やかに彩る特別なステージになる。このコンサートに向けた濃密なセットリスト会議を終えたばかりの3人を直撃し、この特別なコンサートの見どころ、互いに抱く音楽的リスペクト、そして斉藤の表現者としての歩みについて語ってもらった。
── 武部さんプロデュースシリーズ第4弾に、まさに満を持してという感じで、40年来のお付き合いの斉藤由貴さんが登場します。
武部聡志: このビルボードクラシックスのプロデュースシリーズを始めたときから、僕の中では「いつか必ず由貴ちゃんとフルオーケストラのステージをやりたい」という強い想いがありました。むしろ、意外と早いタイミングで実現したなという感覚すらあります。彼女とは彼女の歌手デビュー以来、もう40年以上の付き合いになります。由貴ちゃんの作品に関しては、誰よりも僕が一番熟知している。どんな風に曲が生まれ、どんな想いが歌詞やメロディに込められているか、彼女がどういう風に歌うのかを誰よりも分かっているからこそ、スムーズに物事が進む部分もある反面、実は非常に難しい挑戦でもあるんです。今回の大きなテーマは、オリジナルアレンジを作った僕自身ではなく、若い岩城直也君という瑞々しい感性を持った音楽家が彼女の楽曲に新たな息吹を吹き込むということ。配置や響きを熟考し、それを若手中心のNaoya Iwaki Pops Orchestra (NIPO)が演奏したとき、名曲たちが全く違った表情を見せてくれるはずなんです。それを僕自身が一番楽しみにしていますし、皆さんにもそこを目撃してほしいというのが最大の狙いです。
── 斉藤さんは、今回のお話を武部さんから聞いたとき、率直にどのように感じられましたか?
斉藤由貴: 包み隠さず言わせていただくと……「怖い」というひと言に尽きます(笑)。「大丈夫かしら」という不安が今も胸を占めています。岩城さんとNIPOの皆さんとは、武部さんの45周年をお祝いする【武部聡志音楽活動45周年プレミアム・オーケストラ・コンサート】(2023年)でご一緒させていただいて、そのときは「卒業」「MAY」「悲しみよこんにちは」の3曲を歌わせていただいたんです。でも、フルでやった経験がないので……。私はそんなに声量のある方でもないし、良くも悪くも自分のボーカルは「不安定」だという自覚があるので、オーケストラという、技術的にものすごく高いレベルで緻密に構築された完璧な音楽の海の中に、私のこの頼りない歌声がうまく噛み合うのだろうか、皆さんの足を引っ張ってしまうのではないかという大きな懸念材料が、実は今もあるんです。

── 斉藤さんはご自身の歌声を「不安定」と表現されましたが、長年ポップスシーンの第一線で多くのシンガーを見てこられた武部さん、そして指揮・編曲を担う岩城さんから見て、シンガー・斉藤由貴の魅力はどこにあると思われますか?
武部: 僕はその不安定さこそが彼女の唯一無二の「持ち味」であり、最大の武器だと思っているんです。彼女の歌声が持つ独特の「浮遊感」、どこか地に足がついていないような、つかみどころのない魅力。これはいくら歌唱技術を磨いても、他の誰にも真似できるものではありません。音楽にはピッチが正確だとか、声量があるとか、そういう技術的な優劣だけでは測れない“心揺さぶる根幹の魅力”がある。由貴ちゃんの歌には、聴き手の心を一瞬でその世界に引き込む圧倒的な表現力があるんです。今回のコンサートでも、完璧に構築されたオーケストラの豊かなソノリティと、彼女の持つ浮遊感溢れる歌声が混ざり合ったとき、化学反応というか、融合が起きて今までとはまた違う、全く新しい次元の表現が生まれるはずです。
岩城直也: 僕も2023年にご一緒させていただいたとき感じたのは、聴き手を包み込むような"安心できる不安定さ"というか。それがいいなと思えるんです。予定調和にきれいにまとまったものより、多少いびつでも、そこから生まれるものの方が魅力的だと感じていて、今回、全編を通して斉藤さんとオーケストラがセッションできることは、アレンジャーとしても指揮者としても、本当に贅沢な挑戦だと感じています。
── 斉藤さんの楽曲は、武部さんがオリジナルアレンジを手掛けられた作品を含め、元々ストリングスや美しいメロディラインなど、オーケストラとの親和性が非常に高い印象があります。
武部: そうですね。当時の僕らのアプローチとして、いわゆる80年代の典型的なアイドルポップスとは一線を画すものを作ろうという強い意志がありました。当時のアイドル界は、打ち込み主体の派手なチャキチャキしたポップスと、僕らが由貴ちゃんと目指したような、どこか文学少女的な薫りのする叙情的な路線に二分されていたんです。
── 確かに当時の斉藤さんとその音楽には“淡い”とか“儚さ”という雰囲気を感じていました。
武部: 僕はそういう世界観が大好きだったし、チーム全体が斉藤由貴というフィルターを通して、今までになかった芸術性の高いポップスを作ろうという意識で動いていました。他のアイドルとは、ちょっと一線を画していましたよね。甘えたくなるような柔らかさがありながら、歌詞や歌の芯を聴くと、実はすごくしっかりした強い女性なんだなというのも伝わってくる。その両立が由貴ちゃんの表現だったんじゃないかと思います。今回のコンサートではこれまでの曲を単にクラシカルに整えればいいということでもないんです。多少いびつでも、不安定でも、そこに「女優・斉藤由貴」として演じるように歌うシーンが重なることで、劇的な空間が生まれる。今回の岩城君のアレンジによって、当時の制作意図をベースにしつつも、今の由貴ちゃんだからこそ表現できる“大人の瑞々しさ”を引き出したいと考えています。
── 岩城さんは、オリジナルアレンジを手掛けられた武部さんがすぐ隣にいる環境で、今回の大役を務めるわけですが、プレッシャーや具体的なアレンジへのアプローチについて教えてください。
岩城: プレッシャーがないと言えば嘘になりますが、それ以上に音楽家としてこれほど光栄でエキサイティングなことはありません。先日も武部さんから、例えばデビュー曲の『卒業』(1985年)について、「吹奏楽のようなイメージで、素朴なブラスのイメージを意識して作ったんだよ」という貴重なお話を伺いました。オリジナルを作ったご本人が隣にいて、当時の生々しい制作意図や時代背景を時を超えて直接受け継ぐことができる。その上で2026年の現代において、それをフルオーケストラという巨大な楽器へどう落とし込むかという対話を重ねられるのは、僕にとって宝物のような時間です。先ほどのセットリスト会議でもファンの方が絶対に聴きたい名曲はもちろん、アルバムの中に眠っているマニアックだけれど本当に美しい楽曲もいくつか候補にあがりました。フルオーケストラの総力を挙げて空間を壮大にエキスパンドさせる部分もあれば、あえて楽器数をストイックに絞り込んで、例えば斉藤さんの歌声とピアノだけで濃密な空間を作ったり――。その伸縮幅、変幻自在なチョイスによって、斉藤さんの多面的な魅力を引き出したいです。
斉藤: 武部さんにアレンジしていただいた、アイドル時代からのヒット曲をたくさん歌うことは間違いありません。それに加えて、意外な曲も入ってくると思います。
── 武部さんプロデュースのこのオーケストラシリーズにおいて、一貫して最も大切にされている哲学とは何でしょうか?
武部: 例えばKREVAをフィーチャリングした時も、本来フルオーケストラでやるようなジャンルの音楽ではなかったかもしれないけれど、フルオーケストラでやることで、演奏する僕らにとってもすごく新鮮なステージが生まれたんです。予定調和にきれいにまとまったものを聴かせるのではなく、いかにも“オーケストラで歌う模範解答”にならないボーカリストが来てくれることで、また違うパフォーマンスが生まれる。由貴ちゃんにも、そういうことが起きたらいいなと思っています。

斉藤: ひとつ言えるのは、たぶんお客さんは、ハラハラしながら観ることになると思います(笑)。「大丈夫か」と思いながらスタートして、少しずつ安心していただけたら。もし本当に不安になったら、私、武部さんのピアノの横あたりにじりじり後ずさっていくかもしれません。そのときは「あ、ハラハラしてるんだな」と思っていただければ間違いないです(笑)。
── 去年は斉藤さんの歌手活動40周年記念ツアーがありました。今回はもちろんフルオーケストラが入ることが最大の違いですが、どう差別化していきますか?
武部: 去年の40周年記念ツアーは、オリジナルに忠実にやりました。でも今回は、僕自身もまだやったことのないパターンを岩城君に委ねています。このシリーズで僕らが大切にしているのは、単なる懐古主義で昔の曲を懐かしむことではなく、素晴らしい楽曲を今、新鮮なアレンジで届けること。音の瑞々しさを、何より大事にしたいんです。
── 斉藤さんは表現者としての40年をどんなふうに捉えていますか?
斉藤: 私、歌にしても演技にしても、自分でこう展望を持って「これからこうなるぞ、頑張るぞ」という感じでやってきた40年ではなかったんです。その時々に不安になったり、「大丈夫」と思いながら、ステージに立った瞬間や、セリフをしゃべり始めた瞬間、共演の方との距離感を測った瞬間に、ふっと何かが生まれる。その場所で生まれる刹那的なエネルギーだけを頼りに歌ったり演じたりしてきました。ある意味、ずっと一か八かで勝負してきたんです。
武部: 由貴ちゃんは音楽的な勘がすごく鋭い。練習や積み重ねというよりも、その瞬間、瞬間に生まれたものを、いかに正確にエネルギーへと転換していくか。そのスピード感を大事にしている人だと思います。だからこそ、40年以上一緒にやってきても、由貴ちゃんの歌には毎回、僕自身も驚かされるところがある。今回のフルオーケストラも、由貴ちゃんのその瞬発力がどんな化学反応を起こすのか、僕自身が誰よりも楽しみにしているのかもしれません。
── このコンサートを楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。
斉藤: 私にとって、これは新しい試みです。フルオーケストラということで楽しみにしてくださる反面、クラシックコンサートということで身構えてしまうお客様もいらっしゃると思います。でも本来、クラシックやオーケストラって、身構えるものじゃないと思うんです。いろいろな楽器があって、音色があって、「あ、こっちからこんな音が聴こえる」「あっちからこんな力強い響きがやってくる」、そして最後にシンバルが「ジャーーンっって鳴ってかっこいい!」というように、純粋な音の驚きや色彩の美しさを楽しむものだったはずですから。どんなことが起きるか、新しい扉が開く瞬間を、お客様も一緒にハラハラ、ワクワクしながら、気軽に楽しんでいただけたら本当に嬉しいです。
武部: 僕は長く音楽をやってきましたが、クラシックだから、ポップスだから、演歌だからと優劣をつけて向き合ってきたわけじゃないんです。いいものはやっぱりいい。いい曲を、いい形で、その瞬間に生まれたフレッシュな音として届けること。それが僕ら音楽家の使命だと思っています。40年以上前に由貴ちゃんと出会い、一緒に作品を作ってきた僕らが、今、還暦というひとつの節目に、若い岩城君の力も借りながら新しい斉藤由貴の歌を届けられる。こんなに幸せなことはありません。「卒業」をはじめ、皆さんがよく知る曲が、オーケストラの音の中でどんな表情を見せるのか。それはきっと、僕らにとっても客席の皆さんにとっても、この日この場所でしか出会えない一度きりの瞬間になるはずです。ぜひ会場で、その瞬間に立ち会ってほしいです。
公演情報

【billboard classics「斉藤由貴 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志】
2026年9月17日(木)
兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2026年9月25日(金)
東京・昭和女子大学 人見記念講堂
OPEN 17:30 / START 18:30
2026年10月2日(金)
神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール
OPEN 17:30 / START 18:30
出演:斉藤由貴
ピアノ・音楽監修:武部聡志
指揮・編曲:岩城直也
管弦楽:
【兵庫】NIPO×神戸市室内管弦楽団
【東京・神奈川】Naoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)
チケット:
全席指定 13,000円(税込)
公演公式サイト:https://billboard-cc.com/saitoyukiXtakebe
主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
制作協力:ハーフトーンミュージック
後援:米国ビルボード、ビクターエンタテインメント
<注意事項>
※未就学児入場不可
※枚数制限:おひとり様各公演1申し込み最大4枚まで
※車椅子をご利用のお客様は、お問合せ先までご連絡ください
※チケットはおひとり様1枚必要となります。チケットを紛失された方、または当日お忘れになった方はご入場できません
※必ず公式サイトに掲載の注意事項をご確認の上、チケットをお求めください
<ご来場のお客様へのお願い:https://billboard-cc.com/notice>
公演に関するお問合せ:
【兵庫】キョードーインフォーメーション 0570-200-888(12:00~17:00/土日祝休)
【東京・神奈川】ディスクガレージ https://info.diskgarage.com/
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