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<対談>MYTH & ROIDとTK(凛として時雨) 『Re:ゼロから始める異世界生活』4th seasonエンディングで鳴らす刷新サウンドはこうして生まれた

インタビューバナー

Interview & Text: 榑林史章
Photos: 石川浩章

 放送開始から10周年を迎えたTVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』シリーズ。心を引き裂かれるような痛み、心臓をわしづかみされるような苦しみ。それらを乗り越えた果てに訪れる感動が視聴者を魅了してきた。

 そんなダークファンタジーの金字塔である本作を音楽で彩ってきたMYTH & ROIDは、本シリーズを語る上で欠かせない存在だ。TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』4th seasonエンディング主題歌「Ender Ember」に参加するのは、轟音のギターサウンドとハイトーンボーカルを武器に、『東京喰種トーキョーグール』など多彩な作品のテーマソングを手がけて知られるTK(凛として時雨)。交わりそうで決して交わることのなかった両者が初タッグを組み、リスペクトしながらも互いの個性をバチバチにぶつけ合って誕生したこの奇跡の1曲は、どのようにして生まれたのか。MYTH & ROIDのTom-H@ck(ギター/プロデュース)、KIHOW(ボーカル)、hotaru(作詞)、そしてTK(凛として時雨)はこの日、初対面を果たし、制作の舞台裏を語ってくれた。

左から:Tom-H@ck、KIHOW、TK(凛として時雨)

──二組がコラボレーションする情報が解禁された時から、ネットが大いに盛り上がりました。反響をどのように受け止められたか、互いに対してどういう印象を抱いていたのかなど、実際に曲作りが始まる前段階でどんなお気持ちだったか教えてください。

Tom-H@ck:僕はTKさんの音楽を昔から聴いていて、音像や音楽性など自分が曲を作る時の参考にもさせていただいていたんです。なので遠くで観ているだけでも十分で、どこかで交わる世界線が存在するとは考えてもいませんでした。ネット上では「この二組ならカッコイイ曲ができそう!」という期待感にあふれた反応がすごく多くてうれしかったし、とても光栄なことだと思っています。

hotaru:実は10年くらい前にMYTH & ROIDの初代マネージャーが、「もしもコラボレーションするなら、TKさんがすごく合うと思います」と名前を出していたことがあったんです。僕もその時からMYTH & ROIDとしても、Tom-H@ckの作家としての部分でも、きっと合うだろうというイメージを持っていました。

KIHOW:日本国内だけではなく国外も含めて、ネットでは興奮しているリアクションが多かったので嬉しかったです。なかには「混ぜたら危険」みたいなことを言っている方もいて(笑)。「この二組がどうやって融合するのか、想像できそうでできない」という感想を拝見して、私も確かにそうかもしれないなと思っていました。

TK:僕はアーティストやアニメタイアップ曲のプロデュースワークをしていくなかで、リファレンス(参考曲)として「MYTH & ROIDさんのこういう曲の感じで」とよくお名前を聞くことが多かったので、曲を聴くようになったんです。神秘的な音像と、腰から突き上げるような低音とボーカルの絡み具合が独特で、あまり聴いたことのない質感だったことが強く印象に残っています。ただ僕がやっているバンド“凛として時雨”は、ギターロックのなかでもわりと激しめのジャンルで、(それを)インディーズの頃からやって来ていて。MYTH & ROIDさんとはダークな部分は共通するけれど、存在しているエリアが異なっているという印象だったので、僕も「交わりそうで交わらない」というイメージを持っていました。

──TKさんは「交わりそうで交わらないイメージを持っていた」とおっしゃいましたが、実際にコラボが決まってどのように交わろうと考えたのですか?

TK:最初にお話をいただいた時は、純粋にMYTH & ROIDさんとのコラボだったらおもしろいものが作れそうだと思いました。でも僕はリゼロの歴史の中で新参者ですし、長く愛されている作品のファンの人たちのなかでは、MYTH & ROIDさんの音楽を待ち望んでる人も多いと思うんです。作品がディープになればなるほど、様々なシーンや感情が色濃く焼き付いているわけですし。それは僕自身も『東京喰種トーキョーグール』など作品に長く関わるなかで感じていたことなので、あくまでもMYTH & ROIDさんの作る世界観がベーシックにあって、その上に僕が自分の持っているエッセンスをすべて注ぎ込んでいくかたちだったらできるのではないかと。

──TKさんは今回のタイアップのお話をいただいてから、改めて『リゼロ』のアニメをご覧になったのですか?

TK:お話を頂いてから初めてシナリオを拝見しました。今回僕が呼ばれた意味を考えた時、今までの物語が持っている質感とは違う展開になっていくことは想像できました。実際に原作を読んだらかなり“重め”の展開だったので、僕の中にもある絶望の先に見える何かを音楽的に出せればいいなと思いました。

hotaru:4th seasonは主人公のスバルが“死に戻り”(死ぬことで特定の日時に戻る能力)する回数が極めて多い章なんです。今までもたくさん死んでるけど、「まだ死ぬのか!」っていうくらい死ぬ。僕は、ファンの皆さんがシナリオのどこをどう楽しみにしているかを気にしていて、「今までで一番ハードだ」という意見がやっぱり上がっていました。でも考えてみれば毎回そう言われてきたのが『リゼロ』で、ハードさを毎回更新しているところが『リゼロ』のすごさであり魅力なのだろうなと思います。

──そういう魅力は、きっとテーマソングに対する期待感にも言えることだと思います。MYTH & ROIDさんがアニメ『リゼロ』のテーマソングを担当するのは、挿入歌を含めると今回で6曲目になりますね。

Tom-H@ck:鈴木このみちゃんやnonocちゃんへの楽曲提供も含めたらもっとになります。『リゼロ』は作品そのものが持っている吸い寄せのパワー、吸引力みたいなものがすごく強いので、アイデアが枯渇するみたいなことを感じたことはありません。常に作品自体から“道しるべ”みたいなものが示されている印象です。


──今回のエンディング主題歌「Ender Ember」は、作詞をMYTH & ROID、作曲をMYTH & ROID,TKという共作ですが、どういう流れで作られていったのですか?

KIHOW:最初にリモートで顔合わせのような打ち合わせをして、そこで流れをざっくり決めてからは、Tomさん(Tom-H@ck)とTKさんによる音源のラリーが繰り返されていった感じです。

TK:Tom-H@ckさんが作ったベーシックとなるデモが、「本当にラフなんで気にしないでください」という前置きと一緒に送られてきました。ただ僕はシンセでメロディを弾いたデモをもらったのが、生まれて初めてで……。

Tom-H@ck:そうだったんですか!?

TK:はい(笑)。そもそも曲をいただく機会がなくて、東京スカパラダイスオーケストラさんとコラボさせていただいた「クローズド・アーカイヴ VS. TK (凛として時雨)」もメロディ部分を空白にしてから、好きに作り替えていったので、シンセのメロディをどう解釈していいのかわからなかったんです。シンセメロを抜いたものを送っていただいて、自分で好きに構築しなおすところから始めました。KIHOWさんがソロで歌っているAメロはTom-H@ckさんが作った元のメロディのままです。僕はああいうメロディを歌えないので、そのままKIHOWさんに歌っていただきました。冒頭の一瞬で、KIHOWさんにしか歌えない声色がMYTH & ROIDさんの世界に引き込むのは本当に流石でした。

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──Tom-H@ckさんのデモにTKさんが新たなメロやサウンドのアレンジを加えたデモが届いて、聴いた時はどういった印象でしたか?

Tom-H@ck:「キタ!」って思いましたね。めちゃくちゃカッコよくて、「さすが!」って言うのは失礼かもしれないけど、思っていたものとは違う角度の想像していた以上のものがきたから「これはスゲェ!」って。どなたかが作ったものを聴く時、僕はリスナーの立場になるんですけど、それで「めちゃくちゃいい!」と思ったわけだから、「これはすごく受け入れられるぞ!」と。ちょうどツアー中だったんですけど、楽屋でみんなと一緒に聴いてすごく盛り上がったし、TKさんのスタッフさんからも「すごくエネルギーのあるいい楽曲ができました!」と熱量あるLINEが届くくらい、本当にいいものでした。

hotaru:僕は、TKさんとKIHOWちゃんの2人の声がラララの状態で入った段階で初めて聴いたんですけど、Tom-H@ckやKIHOWちゃんと会った時に「めっちゃいい!!!」って伝えました。作詞をする者から言わせてもらうと、ラララだけであれだけいいと、歌詞をどう当ててもラララを超えるのが難しくなるんです。だから、めちゃくちゃプレッシャーでしたね。曲がむちゃくちゃよかっただけに、歌詞はめちゃくちゃ難しかったです。

KIHOW:(リモートで)初めてご挨拶した時にお話できたらよかったのですが……私は歌手になる前からTKさんや凛として時雨の曲を聴いてきたというか、歌ってきていまして。

TK:その話は初めて聞きました(笑)。

KIHOW:カラオケのデンモクが凛として時雨の「Telecastic fake show」だけで埋まるくらい、特に学生の頃は楽曲を楽しんで聴いていたので、今回のコラボレーションが決まった時は「奇跡が起きた!」と思うくらいの衝撃でした。初めてTKさんの歌がMYTH & ROIDのデモと合わさったものを聴いた時は、自分が好きで聴いたり歌ったりしてきた声が聴こえることが不思議で現実味がなかったです。そこから一旦気持ちを落ち着かせて、私もいつもと同じ自分であれるように切り替えて、歌をどう乗せていくかという作業をしたんですけど……。最初にデモを聴いた時は、ただただ嬉しい気持ちでいっぱいでした。

TK:僕もうれしいです。ありがとうございます。そもそもMYTH & ROIDさんってベールに包まれたところがあるじゃないですか。特にKIHOWさんは、けっこうドライな感じの人なのかなと思っていたので、ちょっと意外です。

KIHOW:好きでいるほど、どう言葉にしていいかわからなくなってしまって、少し距離を取る形になってしまっていました。制作中はただずっと感動していて……。

TK:そうだったんですね(笑)。

──TKさんと言えば、あのハイトーンのボーカルが特徴的で、それは今回の「Ender Ember」でも存分に楽しむことができます。KIHOWさんはボーカリストとして、TKさんが作られたメロディや歌をどう感じましたか?

KIHOW:メロディ上で普段は通らないラインみたいなものがあって、「ここはいつもの発声でないほうがより美しく聴こえる」と感じる部分はありました。そういった意味で普段なら抜いて歌うところをあえて張って歌う、といったことを今回はやってみています。部分的ですけど、その歌声が自分としても新鮮でした。

TK:KIHOWさんはどんなメロディでも歌えるだろうと思っていましたけど、驚いたのはいわゆる平歌の部分です。Tom-H@ckさんが作ったAメロはいわゆるMYTH & ROIDのメロディで、起伏がそんなにない分、息の量のコントロールがうまい人でなければなかなかあの質感では歌えないんです。それをKIHOWさんは見事に表現されていて、「ここにそんな色気が入ってくるのか!」と。自分だったらあんな感じで歌えないので驚きました。儚さと芯にある強さを声で両立させるのはすごく難しいこと。僕は押すか引くかしかできないので(笑)、その間をきちんと歌えるのがすごいなと思ったし、それがMYTH & ROIDの歌を印象づけている大きな部分なのだなと思いました。

KIHOW:そんなふうに細かい部分まで受け取っていただけていたことがすごくうれしくて、少し照れてしまいますね……本当にありがとうございます。

──あとは、やっぱりギターですよね。特に後半はTKさん節のギターがガンガンで。

Tom-H@ck:ベーシックなバッキング部分は僕が弾いていますけど、飾り付けとか色合いはすべてTKさんのアレンジです。僕がすごく勉強になったのは、Bメロから入ってくるギターのアルペジオ。聴いただけではわかりづらいのですが、アコースティックギターが重ねられていて、アコギが入るのと入らないのでは、印象がまるっきり変わるんです。しかもリズムがポリリズムみたいで、「これが“凛として時雨”のシグネチャーサウンドだ!」って思いました。

TK:アレンジの部分では『リゼロ』自体が持つMYTH & ROIDさんへの信頼感を踏まえ、MYTH & ROIDの新曲という世界観で行ったほうがいいと思ったので、前半はあえてTom-H@ckさんが作られたデモから構成はほとんどイジっていません。Tom-H@ckさんがおっしゃったアルペジオはBメロの冒頭から流れるんですけど、そこで僕の歌も同時に入ってくるんです。そこからいきなり自分のシグネチャーサウンドだったり、声やメロディによって、僕っぽくなったりしたらおもしろいだろうなと。最初はMYTH & ROIDの感じで始まって、Bメロでガラッと世界観を変えるアレンジを狙いました。

──アコースティックギターに関しては?

TK:アルペジオはギターを10本くらい重ねていて。コードの複雑な絡みが好きなので、それを歌の裏に重ねています。

Tom-H@ck:10本と言っても複数本を1本にまとめたものが10本ですからね。僕は音そのものにその人の生き方が表れると思っていて、特にギターなど手で弾く楽器はそれが生々しいんです。TKさんのギターサウンドはまるでTKさんの生き様のようで、カッコよすぎて鳥肌が立ちました。

TK:逆にTom-H@ckさんのギターの音色は、僕のギターでは出せないものです。真逆というか。存在を激しく主張するわけではないけど、ずっとボトムを支えてくれている感じ。だから逆にバッキングはTom-H@ckさんに全部お任せしようと思って。“うるさい”音が僕です(笑)。

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“初期衝動” みたいなものはもの作りに大事なんです

──歌詞についても聞きたいのですが、hotaruさんはアニメ『リゼロ』の4th seasonを表現するにあたって、どのように考えたのですか?

hotaru:今回シャウラという新しいキャラクターがいて、400年くらい塔で一人で待たされていた子なんです。KADOKAWAさんとの打ち合わせでも方向が示されていましたし、今回はそのシャウラを特にイメージした歌詞になりました。ただ、楽曲が解禁されてからこの曲は「スバルの曲だ」という反応もありました。僕よりずっと長く作品を追いかけている人にはそう聞こえるかもしれないし、歌詞ってそもそも抽象性があるものなので、僕は「なるほど。そういうふうにも聞こえるんだな」って。

TK:自分が思っていたものと違うものとして解釈されるのは、歌詞の持つおもしろい部分でもありますよね。ただ僕が思うのは、作品をずっと長く追いかけている人の温度感よりも僕たちの温度感が低いことは決してあってはならないということ。それは言葉を扱う時により感じます。僕もシリーズが積み重ねられて愛されている作品に参加する時は、それまでのクールを脳と細胞に叩き込むのが大変でした。それでも、それができてやっとスタートラインに立てる状態ですからね。

──ファンと同じくらいの熱量を自分のなかでどれだけ生み出せるか、自分のなかでどれだけ熱くなれるかが、制作におけるポイントかもしれませんね。

Tom-H@ck:僕なんか爆音で音を鳴らして、踊りながら作っていますから(笑)。前にSNSで「自分が作って踊るくらいいい曲だったらヒットする」ってコメントしたこともあるんですけど、聴いた時に思わず体が動いちゃうとか、“初期衝動”みたいなものはもの作りに大事なんです。最初にTKさんからのデータを聴いて興奮した時に感じたものは、まさしくそれだったと思います。

TK:すごくわかります。僕は脳内が踊ります(笑)。

──せっかくの機会なので、KIHOWさんからTKさんに何か質問はありますか?

KIHOW:ライブの前夜に作業をしてデータを送ってくださったとスタッフから聞きました。寝ずにライブであの高いトーンが出せることが衝撃だったのですが、身体の状態は高い音を出すのに影響はないのですか?

TK:12月に日本武道館でライブがあったんですけど、その当日の朝までレコーディングして、データをお渡ししてから武道館に向かったんです。この曲の作業に夢中になって気づいたら朝5時になっていて、実際ちょっと死にかけました(笑)。そもそものレンジがかなり高いので早い時間は全然出ないですが、不眠で声が出づらいみたいなのは体感としてはないかもです。

KIHOW:そうなのですね……! 本当にすごいです……。

──今後ライブで「Ender Ember」を披露する機会はありますか?

KIHOW:個人的な願望ですが、いつかライブで一緒に歌わせていただきたいです……!

TK:生でやることを想定せずに自由に作ったので危ないですね……。

Tom-H@ck:僕も一度、生で一緒のステージに立ってみたいです。芸人さんとか人前に立つ職業の方によくいらっしゃるんですけど、さっきまで普通に話していたのに、ステージに立った瞬間“凶気”のオーラを放つ人ってほんとうによくいるんですよね。謙遜する人ほどそうで、失礼かもしれませんけどTKさんもかなりヤバそう!

TK:よく言われます(笑)!

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