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<コラム>Nakamura Hak アニメ『とんがり帽子のアトリエ』と共に注目を集める謎多き女性シンガーソングライターの実態と可能性──6/13配信ライブも必見



<コラム>Nakamura Hak アニメ『とんがり帽子のアトリエ』と共に注目を集める謎多き女性シンガーソングライターの実態と可能性──6/13配信ライブも必見

取材&テキスト:平賀哲雄|ライブ写真:小杉歩

 豊作と言われる2026年春アニメの中でも一際異彩を放っている作品と、その物語を音楽で深く色濃く劇的に引き立てているアーティストに注目が集まっている。魔法使いに憧れる少女・ココを主人公としたファンタジー作品『とんがり帽子のアトリエ』と、そのエンディングテーマ「ただ美しい呪い」「夜に浮かぶ」「光り」を担当する謎多き女性シンガーソングライター・Nakamura Hak(ナカムラハク)。

ただ美しい呪いが 無邪気に光りさえ千切る情景を──

 『とんがり帽子のアトリエ』の原作は、白浜鴎による講談社『月刊モーニングtwo』にて連載中の人気マンガで、2018年の「このマンガがすごい!」オトコ編で6位を記録。「マンガ大賞」や「講談社漫画賞」にもノミネートされ、全国書店員が選んだおすすめコミックの一般部門では1位を記録した。また、海外での評価も非常に高く、アメリカ、フランス、韓国、スペインの様々なアワードで幾多数多の賞を受賞してきた。

 そのアニメ版が今年の4月より放送開始されると、あまりに美しい映像のクオリティに加え、魔法使い見習いの女の子たちの奮闘劇というポップな題材ながら、主人公が無邪気さゆえに起こしてしまった残酷な事件をはじめ、人を救う為の魔法がいとも簡単に人を不幸にしてしまう可能性もあるという、リアリティのある設定と衝撃的なストーリーでもって、世界中のアニメファンの中で一気に注目を集めることになった。そして、そのエンディングに流れるNakamura Hakの楽曲たちも物語や登場人物の心情との親和性の高さ、痛みを感じさせるほどの世界観や歌唱表現力でもって絶賛されている。

【TOKYO NODE × maximum10 presents Nakamura Hak - Plugless Live】

▲Nakamura Hak(ライブ写真:小杉歩)

 “中村「 」____無名”=Nakamura Hakは、歌とアコースティックギターのみで録音された数曲をもって、この春にデビューした新人シンガーソングライターだ。リリースした音源はすべて、修正、編集、一切なし。プロフィールには「終わりの手前に、彼女の音楽はある。」と記されている。このコンセプトからして只者ではない空気を漂わせていたが、アニメ『とんがり帽子のアトリエ』のエンディングテーマとして流れてきた「ただ美しい呪い」で、彼女の音楽と歌声を初めて耳にしたときの衝撃は凄まじかった。(※なお、一発録りの無修正・無編集という録音スタイルのため、アニメバージョン音源も、フル尺音源からの切り抜きではなく、それ専用に新たに録音した別音源となっている。)


▲「ただ美しい呪い」Music Video(Anime ver.)

 「ただ美しい呪いが 無邪気に光りさえ千切る情景を ただ愛おしい呪いで すべてを一間に奪って失ってしまうなら 1秒だって、永遠に 君に絶望が滲むのを見たくない」──と、主人公がその無邪気さゆえに最愛の母を石化してしまう絶望的なシーンともシンクロするフレーズ。それをアコースティックギターの音色だけを頼りに、暗闇の中で歌い叫ぶように響かせるその声は、Nakamura Hak自身の中にも潜む愛と絶望を剥き出しで表現してしまっているようにも感じられ、一晩中その衝撃の余韻が消えなかったことを憶えている。

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異例の3曲のエンディングテーマをひとりで担当

 また、アニメのエンディングテーマは、基本的に1作品1クールに1曲用意されるのが通例。しかし『とんがり帽子のアトリエ』は、メインのエンディングテーマ「ただ美しい呪い」以外にも、第3話と第5話、また、第8話で、それぞれ別のエンディングテーマがオンエアされた。

 仕立屋の職人である母親から習った技術で「ある、私の魔法!」と、主人公が魔法使いの弟子入り試験を乗り越えていくストーリー。そんな第3話の最後を彩った楽曲「夜に浮かぶ」は、Nakamura Hakの「正しさで飛べ 正解もないんなら、どうせ 正しさで舞え ほら、傷は隠さず 抱いて 正しくありたいと望む君が もう一人で心を灯せるよう」と歌う声が、孤独の中でも強く正しく生きられるよう劇中の主人公の、或いは我々の背中を押すように優しくじんわりと響き渡り、視聴者の涙を誘った。さらに、生まれつき世界が銀色に覆われて見える目(ゆえにあらゆるものの色の違いが分からない)の持ち主と主人公のストーリー。その第8話のラストシーンで流れてきた「光り」も、絶望の中でも希望を見出そうとするフレーズと音色が沁み渡る、Nakamura Hakの心の深いところまで手を伸ばさんとする歌の在り方が象徴されたナンバーとなっていた。


▲「夜に浮かぶ」Music Video(Anime ver.)

 ここまで紹介してきた『とんがり帽子のアトリエ』エンディングテーマの3曲「ただ美しい呪い」「夜に浮かぶ」「光り」は、6月10日リリースの1st Single CD『ただ美しい呪い』に全曲フルサイズで収録されるので、ぜひチェックしてもらいたい。なお、「ただ美しい呪い」「夜に浮かぶ」はデジタルシングルとして先行配信中。「光り」は現状サブスク含めデジタル配信なしだが、MVが前2曲とあわせてYouTubeで公開されているので、そちらもご覧いただきたい。


▲「光り」Music Video(Anime ver.)

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マイクもアンプも一切使用しないプラグレスライブ

 さて、それらの楽曲と共にデビュー直後から注目を集めている彼女だが、Nakamura Hakの音楽を知るうえで欠かせない配信ライブ【TOKYO NODE × maximum10 presents Nakamura Hak - Plugless Live】が5月29日に開催されたので(現在、YouTubeにてアーカイヴ映像が公開中)、そちらのレポートもここに記したいと思う。


▲TOKYO NODE × maximum10 pre. Plugless Live(YouTube)

 Nakamura Hakは前述した通り、修正も編集も一切なし。アコギ一本一発録りの弾き語りスタイルでレコーディングしているアーティストだ。現在、CDのみで発売中の1st E.P.『白は夢』の表題曲は、多数のラジオ局にパワープレイ楽曲として選出されたが、そこでオンエアされる各局ごとの専用音源を、これまた全曲分それぞれ一発録音するという他に類を見ない試みも。一方、「音楽と歌声が(表現できること・表現したいことの)すべて」という理由から、顔出しもインタビュー稼働も一切なし。そんな音以外のパーソナルな部分をことごとく排した独自のスタイルで音楽活動している彼女らしい、マイクもアンプも一切使用しないプラグレスライブがTOKYO NODE HALLにて開催された。

【TOKYO NODE × maximum10 presents Nakamura Hak - Plugless Live】

▲Nakamura Hak(ライブ写真:小杉歩)

 高層ビルの地上200メートル付近から、ほぼ無照明というストイックかつセンセーショナルな演出のもと、東京中心部の夜景を背にアコギを抱え、たったひとりで登場したNakamura Hakは、1st E.P.『白は夢』のはじまりを飾った楽曲でもある「十七」を弾き語り始めた。フードを深くかぶって表情が読み取れない姿のままで、けれども「泣いてばっかのあのころの僕も 忘れ去って突っ走るだけの僕も 認めてあげたいよ 許してあげたいよ それもなにもかも全部 嫌ってしまうならば」と歌う声だけは剥き出しのままで。この剥き出し感は音源でも十分に感じ取れていたが、生で聴くとよりその痛みが突き刺さり、微動だにできなくなってしまう。

 「はじめまして、Nakamura Hakです。よろしくお願いします。」とだけ挨拶したあとも、(トルツメ)自らが奏でる音楽と遠くの灯りだけが存在する空間の中で、絶望や暗闇とひたすら対峙しては震えながら「ごめん、ちょっと歌いたかっただけだ 白くある上を向いた歌を」(「白は夢」)と微かな希望を見出そうと声を絞り出していく。そして、3曲目に『とんがり帽子のアトリエ』のエンディングテーマ「ただ美しい呪い」を歌い出すのだが、この曲を生で体感して確信したことがある。劇中の物語や登場人物の心情とのシンクロ率の高いフレーズの数々から、アニメ作品ありきの歌と感じていた視聴者も多いと思うのだが(もちろん、そこも意識して制作されたと思うのだが)これは彼女自身の物語や心情から生まれた曲でもあるのではないか。この美しい呪いは、Nakamura Hakがその人生で心に宿した呪いでもある……そうでないと説明がつかない。生の絶望、生の渇望、それを人生に持つ者ゆえの感情、震え、祈りが、Nakamura Hakの生の歌と音に、とんでもなく高い純度で内包されていた。

【TOKYO NODE × maximum10 presents Nakamura Hak - Plugless Live】

▲Nakamura Hak(ライブ写真:小杉歩)

 その後も「砂のお城」「善と悪」「夜に浮かぶ」と、無邪気ゆえの過ち。純粋ゆえの痛み。正しく優しくあろうとするからこそ憎んでしまう裏切り。それらを前にした葛藤と、その先に見出そうとする光が生々しく弾き語られていった。このレポートは著者の主観で書かれたものだが、聴く者それぞれの人生と共鳴する瞬間が次々と現れるライブになっていたことは間違いないので、まだご覧になられていない人はぜひアーカイヴ映像でこのNakamura Hakにしか生み出せない音楽を体感してみてほしい。また、6月13日(土)24:00~2nd Online-Live【境界】が配信されるので、そちらもお見逃しなく。


▲2nd Online-Live【境界】(2026年6月13日(土)24:00 配信スタート)

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世界中のリスナーに届く可能性──Nakamura Hakの今後

 今春、FACTやNikoんを輩出したレーベル・maximum10からデビューしたばかりのNakamura Hakだが、この短期間に起きたトピックだけでも特筆すべき点があまりにも多く、気付けばなかなかの長文になってしまった。しかし、彼女のストーリーは始まったばかり。テレ東系ドラマ『るなしい』オープニングテーマである「善と悪」も注目を集めているし、1st E.P.『白は夢』のCD購入者が無料入場できる全国ツアー【Plugless(Out-store)Live Tour「異端」】を9月から来年の1月まで展開することも決まっている。


▲「善と悪」Music Video(Drama ver.)

 さらには『とんがり帽子のアトリエ』が海外でも多くの名誉ある賞を受賞していることもあり、このアニメを通してNakamura Hakの存在と音楽が世界中のリスナーに届く可能性も高い。

 感受性の強い彼女のことだ。これらの経験や体験によってまた新しい音楽を生み出していくことだろうし、今はまだ私たちが知らない面も見せてくれるはずだ。誰のようでもないスタイルで活動しながら、誰にでも突き刺さるであろう可能性に満ちた歌を届け続けるNakamura Hak。自らの姿をガラス化したアーティスト写真のように、様々な角度から剥き出しの音楽を生み出し、我々の人生に反射させていく彼女の今後の動向にもぜひ注目してほしい。

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▲Nakamura Hak(ライブ写真:小杉歩)

取材&テキスト:平賀哲雄|ライブ写真:小杉歩

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