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<インタビュー>HYが歩んできた25年――人生観が反映された「366日」のアンサーソング「恋をして」

インタビューバナー

Interview & Text:上野三樹

Photo:筒浦奨太

 1月10日より全国公開された映画『366日』の主題歌として新曲「恋をして」を書き下ろしたHY。この曲は、16年前にリリースされ、昨年ドラマ化もされた「366日」のアンサーソング。ラブバラードを超えて、命や人生といった壮大なテーマを持った楽曲に仕上がった。柔らかで美しいメロディラインでありながら、映画に寄り添うだけでなく、多くの人の人生に寄り添う、そんな覚悟を感じさせる1曲だ。

 昨年末にはNHK【第75回紅白歌合戦】に出場し「366日」を披露したことでも話題を集めた彼ら。今年は25周年を迎えて全国ツアーや主催フェスも控えており、より精力的な活動になりそうだ。新曲「恋をして」も収録されている16枚目のアルバム『TIME』は、彼らが1stリリース当時から放つピュアさや人間味やポップさは変わらずに、人としての更なる深みを感じさせるような作品に仕上がった。今回は新里英之と仲宗根泉に「恋をして」をはじめとする制作と、25年を振り返っての想いを語ってもらった。

「聴いた人が自分の人生を振り返ってもらえるような曲にしたいなと」

――昨年末は紅白歌合戦に出場され「366日」を披露されました。「366日」が多くの人に愛され、ドラマになり、映画になり、色んな広がり方をしていますが、どのように感じていますか。

新里:16年前に生まれた「366日」は、当時ドラマ『赤い糸』の主題歌として使っていただいて。普通だったらそれで終わりだと思うんですけど、昨年にドラマ化され、今年は映画にもなって。すごくびっくりしたし、この歌のパワーってすごいんだなと思いました。「366日」を聴いてくださる方たちが、この曲をずっと愛してくださったから今の状況に繋がったんだなと思います。

仲宗根:お話をいただいたときは、一度ドラマに使っていただいたこの曲を、またドラマにしていただけるなんて本当に驚きでしたね。制作サイドの方から、閏年である2024年にぜひドラマ化したいということで、「私たちもぜひお願いします」という流れでした。リリースから16年、その間に色んなアーティストの方たちがカバーしてくれた曲でもあります。以前、この曲をカバーしてくれた清水翔太くんのライブに呼んでいただいて「366日」を一緒に歌ったとき、「これってHYの歌なんだ」と知った方がいたみたいで。私が書いた歌が、こんな風にどんどん広がっていってるんだなと感じました。だからこそ16年経った今、私が色んな方とコラボして「366日」を一緒に歌う企画をやったりすることも、大事なことなのかなと思ってやってみました。普段はあまりバラードを聴かない人たちも、自分の好きなアーティストが歌っていることをきっかけに、またこの曲が広がっていっているんだなとSNSなどで見て感じていました。



「366日」(Official Duet ver.)ライブ・ミュージック・ビデオ


――ちなみに「366日」がリリースされた当初はHYにとって、どんな1曲だったんですか。

仲宗根:アルバムの中の1曲として、私の中ではいつものようにバラードを作ったという感じでした。

新里:自分たちではどの曲も「絶対これは売れるだろう」なんて思いながら作ってないんですよ。でも「366日」は周りのスタッフが「これ絶対いい曲だよ」って力んでる雰囲気を醸し出していました(笑)(笑)。ただ、いーずは当時、友達に聴かせたときに反応が薄かったって気にしてたよね?

仲宗根:そう、友達8人に「366日」を聴いてもらったのに、そのあとで誰も感想も言ってくれなくて「でさ~」みたいな感じでほかの話題になって。それまで「NAO」や「Song for…」を聴いてもらったときは「めっちゃいい曲だね!」って言ってくれていたのに。でも、あとあと聞くと、その友人たちは全員「良い曲過ぎて誰も何も言えなかった」って。だったらそう言って!と思いましたけど(笑)(笑)。昨年末に紅白で「366日」を歌うことが決まったときも、友人たちが「おめでとう!」って言ってくれて嬉しかったですね。何かで賞をいただいたりするより、身内に褒められるのが一番嬉しいですから。

新里:うるま市役所の方たちが僕たちの【紅白】出場のお祝いに横断幕を掲げてくれたことも嬉しかったですね。


――新曲の「恋をして」は映画『366日』の主題歌であり、「366日」のアンサーソングになっているということですが、どんな制作でしたか。

仲宗根泉:「366日」を映画にしたいというお話をいただいて、「366日」は映画のタイトルであり劇中でも流れるんだけど、主題歌を別に作ってほしいということで、制作サイドの方と何度も打ち合わせをさせていただきました。16年前に「366日」を書いたときは、恋愛ソングとして、ただあなたが好きで忘れられないという感情だったんですけど、東日本大震災を機に被災地でこの曲を歌わせてもらったときに「もう二度と会えない人のことを想って聴いてください」って言ったんです。それがきっかけで私自身も「366日」を恋愛だけじゃない感情で歌うようになりました。なので今回の映画の制作スタッフにも命や人生といった観点を入れて欲しいとお伝えしたんです。「恋をして」という曲もまさにそういう曲で、「366日」のアンサーソングとして書いてはいますが、映画の公開が終わった後でも、この曲を聴くと聴いた人が自分の人生を振り返ってもらえるような曲にしたいなと思っていました。ただ、16年経ってもいまだに愛してもらえる曲の映画の主題歌を別に作るわけですから、プレッシャーはすごかったですね。



「恋をして」ミュージック・ビデオ


――そうした想いがあるなかで「恋をして」はどんな曲にしようと思って仕上げていきましたか。

仲宗根:「366日」が私たちの予想に反していきなり売れたことで、HYって仲宗根泉がひとりで歌ってるバンドだと思われる方も多かったんですね。私の中で、それがちょっと悔しいというか、私はあまり目立たずに陰に隠れてハーモニーをするタイプでいいと思っていたので。HYはヒデさんがメインボーカルで、男女のコーラスで良い響きになると思っているので今回の「恋をして」は私が作った世界観のバラードにヒデを入れるという初めての冒険をしました。なのでこの曲では、2人でとんでもないくらい難しいコーラスをハモリ合っています(笑)。

新里英之:歌いだしも僕からなんですけど、プレッシャーとかよりも単に嬉しかったですね。いつもだったらいーずのなかでバラードはイメージが最初から出来上がっていて、作っていくんですけど、今回は僕のアイデアも取り入れてくれつつ曲作りが進んでいきました。歌詞に関しても、ひとつひとつの言葉に重みがあるので練習していると涙が流れてきました。なので練習ではいっぱい泣いて本番では覚悟を持って挑みました。




新里英之



仲宗根泉

――「366日」のアンサーソングとして作られた「恋をして」を聴くと、主人公が人生経験を重ねて成長を遂げたんだなと伝わってきました。

仲宗根:そうですね。16年を経て、1人の人と別れて泣いている女の子ではなくなって。私自身、この16年の間に、結婚して出産して、死産も経験して、離婚もしました。もう、苦しみと悲しみのほうが多かったかもしれません。そんななかでこの映画の脚本を読ませていただいて、交わる感情もたくさんありました。なので「恋をして」は自分の人生として書いている部分がたくさんあります。もちろん映画の主題歌として作品に寄り添っているし、恋愛ソングとしても聴こえるように書いているんですが。ここは娘に対して、ここは亡くなってしまった息子に、ここは元旦那に言いたかったことというように、本当にいろんな想いを込めて歌詞を書いています。なので私自身、自分の人生を振り返りながら、この曲を歌っています。今は全国ツアー中で、初めてライブで「恋をして」を歌うってなったときにMCでヒデが「この曲はまるで自分たちメンバーのことを歌っているようにも聴こえる」って話をしてくれたんです。それで「そうか、メンバーに対しても当てはまる歌詞なんだ」って気づいて、もう2人で大号泣しましたね。曲が出来上がって間もない今でもいろんな感情を乗せている歌なので、これから自分の人生がさらに重なっていくことで、またいろんな想いで歌っていける、聴いてもらえる曲になったんじゃないかなと思っています。

新里:僕たちメンバーそれぞれにとっても大事な曲ですし、これまでの25年があったからこそ作れた曲だなと思っています。だから自信を持ってみんなに届けたい1曲なんですよ!


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  1. 「すごくカラフルでHYらしい作品」
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「すごくカラフルでHYらしい作品」


――2000年にバンドを結成され、今年で25周年を迎えられました。振り返ってみて、いかがですか。

新里:この25年、大好きな沖縄を拠点に変わらずに活動を続けてこられたことが、とっても嬉しいです。何度も何度も全国ツアーをまわらせてもらって、こうして16枚目の新しいアルバム『TIME』も作ることができて、音楽と一緒にずっと歩んでこられたことに感謝しています。25周年を迎えて、みんなに「おめでとう」って言ってもらうことが多くて、あらためて活動を振り返ることも多いんですけど。長かったとも短かったとも思わなくて、ちょうどいい。今まで1歩1歩、踏み出してきたからこそ、今の僕たちがいるんだなっていう確かな歩みを感じています。

仲宗根:私としては、もちろんみんなが応援してくれたから25周年を迎えられて、すごく感謝をしています。でも自分自身に対して「25年もこの仕事をやれてすごいな」なんて気持ちはまるでないですね。だってこれしかできないですし、すごく普通のことのように感じるから。私はHYを結成するずっと前の、小5のときから歌手として生きていくんだという覚悟を持っていたわけで。今年で42歳になりますが、65歳くらいまで歌おうと思っていますから、まだまだですね(笑)。


――HYはずっと沖縄を拠点に活動されることを大切にしてこられましたよね。全国ツアーや東京での制作でホームシックになったというお話もお伺いしたことがあります。

新里:そんなこともありましたね。3枚目のアルバム『TRUNK』を作っているときはきつかったですね。2枚目のアルバム『Street Story』がミリオンセラーになって、トップチャートに入って、それまでストリートでライブをしていた僕たちが全国ツアーをまわっていて「噓でしょ⁉」っていう信じられない状況でしたし。沖縄に帰りたくても、なかなか帰れなかったんですよね。

仲宗根:そうなってくると、曲が書けなくなってしまって。その頃、沖縄から上京していた友達を夜な夜な家に呼んで、明け方まで自分たちが作ったデモテープを聴いてもらって、感想を聞いていました。沖縄に帰れないストレスでメンバーとも喧嘩をしたりして、沖縄という環境が自分たちにとってどれほど大切なものなのかを思い知りました。だってその頃は、テレビでBEGINが歌っているのを見ただけで大号泣していましたから。自分たちでも三線を弾いているのに、テレビから流れるBEGIN の三線の音に沖縄が恋しくなってしまったりして。

新里:でもプレッシャーやホームシックを乗り越えたからこそアルバム『TRUNK』が作れましたし、ライブに来てくれるファンのみんなにもパワーをもらいながら乗り越えることができたんです。そういう意味ではすごく良い経験をしたなと思っています。大変なことを乗り越えた先に見える素敵なものがあるということを知れたので、こうして25周年を迎えられたんだと思います。



――ニューアルバム『TIME』はご自身たちにとって、どんな作品になりましたか。

新里:25周年、いろんな時間を経験したなかで、すごくリラックスして自分たちの遊び心もすべて出し切れた作品になっています。このアルバムを形にできたからこそ、また次の作品を作ることが楽しみになりました。みんなに一番聴いてもらいたい「恋をして」を1曲目に、2曲目以降は曲をレコーディングした順番に9曲収録しています。そんな時間軸も楽しんでもらえたらという意味でも『TIME』というタイトルになっています。これまでファンのみんなと一緒に作り上げてきた思い出と、メンバーの絆。今、25周年のツアーでみんなに「おめでとう」って祝ってもらいながら、この先は3月に【HY SKY Fes 2025 &前夜祭】で憧れのアーティストの皆さんに出演していただくという大きな夢に向かって歩んでいくよっていう想いも込めて1曲1曲を作っていきました。すごくカラフルでHYらしい作品に仕上がっています。


――2025年は25周年記念の全国ツアーに、3月にはフェスもあり、かなり精力的な活動になるのかなと思いますが、どんな1年にしたいですか?

新里:この大きな波に乗っかって、自分たちがやりたい音楽を抱えて全国を走り抜けたいです。そうすることで必ず次に繋がる、大事な1年を過ごしていきます。みんなに「おめでとう」と言ってもらえてリラックスしてライブを楽しむことができているので、このパワーをまた溜め込んで次に向かいたいです。

仲宗根:私は今めっちゃ忙しいので25周年終わったらちょっとはゆっくりしたいと思ってますけどね(笑)(笑)。でもこんなに精力的に活動を続けさせてもらっていることも本当にありがたいことだなと思いますし、今年1年はみんなのために歌って「ありがとう」を届ける時間にしたいです。25周年だからとかではなくて、これからも常に「ありがとう」を持ち続けられるバンドでありたいです。


HY「TIME」

TIME

2025/01/29 RELEASE
UPCH-2273

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.恋をして
  2. 02.きのこいぬ
  3. 03.明日種~アシタネ~
  4. 04.SKY
  5. 05.まっすぐに
  6. 06.大大大好き
  7. 07.モモタマナ
  8. 08.渚の恋は虹色模様
  9. 09.Beautiful
  10. 10.恋をして (Orchestra ver.) -Bonus Track-

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