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<インタビュー>日本独自のコンテンツを、日本独自のやり方で——ソニーミュージック岩上敦宏社長

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 1997年の入社以来、一貫してアニメ・ゲームの製作に携わり、アニプレックスの社長を経て、ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役社長に就任した岩上敦宏氏。『鬼滅の刃』『ソードアート・オンライン』など数々のタイトルで、アーティストとの作品づくりを重ねてきた。音楽、アニメ、実写、ライブ、パッケージ――国内エンタテインメントを全般的に手がけるグループの代表という立場から、日本のコンテンツが海外でヒットを生むために何が必要かを聞いた。(Interview & Text: 高嶋直子 l Photo: 筒浦奨太)

アニメと音楽を連携させる――
これまでの歩みとグループ経営者としての視点

――4月にアニプレックスの社長から、ソニー・ミュージックエンタテインメントの社長に就任されました。アニメと音楽の相乗効果を、より期待された人事かと思います。まずは、その連携の歴史からお聞かせください。

岩上敦宏:アニプレックスの前身であるSPE・ビジュアルワークスがアニメ事業に参入したのは1997年です。私が入社したのは、まさにその年でした。当時から、ソニーミュージックグループとしてアニメの中でも音楽にこだわり、そしてアニメと音楽を連携させることは目的のひとつでした。その後、2003年にアニプレックスへ商号を変更し、今に至ります。

初代の白川隆三社長が仕掛けたテレビアニメ『るろうに剣心』と、主題歌のJUDY AND MARY「そばかす」は、まさにその象徴的な成果です。そこから始まり、様々なヒット作を生み出してきたアニプレックスとソニーミュージックグループの歴史を、入社以来ずっと見てきました。

私自身も、『鬼滅の刃』や『化物語』『ソードアート・オンライン』など、様々なタイトルでアーティストと作品づくり、楽曲制作を行ってきました。そこには経験値や、音楽とアニメが連動した歴史がありますので、変わらずにやっていきたいと思っています。

2016年にアニプレックスの社長に就任し、2019年からはソニー・ミュージックエンタテインメント執行役員として、ソニー・ミュージックレーベルズの辻󠄀野社長や、ソニー・ミュージックソリューションズの大谷社長など、多くの役員と情報交換をしています。それぞれ、ここ数年で急激な成長を遂げていて頼もしいなと感じているので、改めてグループに対する信頼感が高まっています。


――ソニー・ミュージックエンタテインメントは、レコード会社としての事業のみならず、マネジメントやマーチャンダイズ、ライブ事業など幅広く展開されています。グループ全体のビジョンをお聞かせください。

岩上:音楽事業の中にも様々な会社があり、様々な機能があります。ビジュアル&キャラクターの領域にはアニプレックスがあり、実写事業も手がけていますし、PEANUTSのライセンスビジネスを展開するソニー・クリエイティブプロダクツもあります。ソニー・ミュージックソリューションズではパッケージの製造や流通はもちろん、ライブやファンクラブ、Zeppの運営も担っています。国内のエンタテインメントに関する事業を全般的に手がけているグループなので、その全体を統括してつないでいくというのが、私の役割だと思っています。

こうした結びつきは、ソニーグループ内にも広がっています。同じソニーミュージックとして、アメリカのソニー・ミュージックエンタテインメントとの連携は日常的にありますし、The Orchard(US)の日本展開は、ソニー・ミュージックエンタテインメントの社内ベンチャーとしてThe Orchard(US)と協力して立ち上げました。

『鬼滅の刃』を世界に届けるにあたっては、アニプレックスと連携して、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントとクランチロールが世界配給を手がけることを決めました。グループ内での情報共有を超えて、作品単位で具体的な事業連携が進んでいる状況です。これからも個々のIPやコンテンツに対して、最適な施策を考えていきたいと思っています。

一方で、ユーザーやファンに作品や楽曲を届ける形そのものも、本当に多様化しています。ディストリビューションの形も変わり、旧来どおりのレコード会社というわけにはいかない部分もあると思うので、我々のビジネスもますます多様化していくということになるでしょう。

そんな中、CBS・ソニーレコードからずっとやってきたという歴史と経験の蓄積、信頼感というものが、当社にはあります。同時に、現代における多様性への対応力、柔軟性も併せ持っているところが、我々の強みなのではないかと思います。


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戦略を超えたヒットもある――
日本発コンテンツ、世界への道筋

――経済産業省が2033年までにコンテンツの海外市場規模を20兆円にするという目標を掲げていて、その中で音楽がどれだけインパクトを残せるかという議論が業界団体でもされています。業界全体で、ここを解決すべきだという課題はどこだと思われますか。

岩上:役割を大きく分けると、良いコンテンツを作ることと、そのコンテンツを世界にどう広げていくかという、二つの側面があると思います。そのうちの良いコンテンツを作るのは、我々が頑張らなければいけないところです。一方でライブやSNS、インターネット上でのマーケティングも含めて、世界にどう広げていくかというところは、官民協働だったり業界内の連携によって、効率的に実現できる部分はあると思います。

そのうえで当社としては、海外展開は着実に進展していると思いますが、もっと大きなヒットが作れると思っています。きっかけは必ずしもアニメだけではないでしょうし、日本の歴史と文化に裏打ちされたコンテンツを、日本独自のやり方で世界に広げていくための方法は、グループ全体で模索していきたいですね。


――海外においても、国内においても、楽曲がストリーミングでヒットした後、強固なファンベースに繋げるための課題はなんでしょうか。

岩上:ファンになって作品群として好きになってもらうということが、難しい時代にかもしれません。アニメで言えば、この作品が面白いと思ったら、昔ならその監督の作品を全てさかのぼるという見方があった。音楽で言えば、一つの曲がバズってその曲を好きになったら、そのアーティストを追いかけ始める。それが、ここ最近は点で終わるケースが増えているように思います。だから昔以上に、マーケティングで補完していくことが重要な時代になってきているのではないでしょうか。

背景にあるのは、時間と情報量の変化だと思います。我々が学生の頃は、本当に時間がありましたからね。一つの本を好きになったらその作家を追う、一つの曲を好きになったら延々と聴く、同じ映画を何度も見るとか。今日では供給されるエンタメの数がものすごく多いし、スマホを通じて入ってくる情報量もすごい。継続しづらいというのは、アニメや音楽に関わらず、全てにおいてそうだと思います。


――「世界へ」というときに、昔は多くの人が北米をイメージしたと思いますが、今はアジアから火がつく作品も、南米やヨーロッパでヒットする作品もあります。地域戦略についてはどうお考えですか。

岩上:どこが最重要ということはありません。東アジアに関しては相当近い感性を持っていると思うので、同じ文化的な価値で広がるところがある。それとは逆に、我々を違う文化から見て面白いと感じるような欧米とは、また少し違うとは思います。いずれにしても、どちらを重要視しているというわけではなく、アーティストと楽曲によって、作品によって適性があるというところかなと思います。

戦略もありますし、それこそ欧米でシティポップに火がついているような、戦略を超えたヒットもある。実際にユーザー側がどう受け取っているかも含めて、多様なヒットが生まれてくるといいなと思います。


――日本の音楽を世界へ届けるために【MUSIC AWARDS JAPAN】が立ち上がり、今年で2年目を迎えました。今後、どのようなことを期待されますか。

岩上:今年も素晴らしい授賞式でしたし、今後継続していくことでより意味が増していくことと思います。去年も今年もオープニングムービーが、垣根を越えるということを本当によく象徴していました。アニメや映像を製作する立場から見ても、学ぶべきところが多くありましたね。

第98回米アカデミー賞に『国宝』がメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされたので授賞式に出席したのですが、アカデミー賞のオープニングムービーもそういう感じなんですよね。いろいろな映画が垣根を越えてパロディとしてつながっているような。ああいうのを見ると、それぞれ業界の強さを感じます。


――一方、日本は国内の売上が大きな割合を占めており、音楽産業においては世界第2位の市場規模を維持しています。海外展開に対する姿勢について、スタッフに濃淡は感じますか。

岩上:これは我々の社内というよりは、一般論として日本にはそういう部分があるかもしれないですね。人口1億2000万人強という規模が絶妙で、自国のためにコンテンツを作って、自国内でヒットするということがビジネスにもなるし、アーティストの目標にもなる。これまで、そういう歴史だったと思います。だから海外に出ていくというより、国内で成功したいというモチベーションで始める人も多いでしょう。

島国であり、日本語というファイアウォールに守られた中で、日本人が日本人に向けてコンテンツを作る。そこから個性が生まれてきて、それを海外も楽しんでいる。漫画もアニメも、そういう文脈で広がってきたと思うので、一概に否定はしません。

同時に、人口も減っていく中で、海外を目指すという意識を持った人も増えてきています。 YOASOBI、King Gnuのような成功例もありますし、まさに先日、高中正義さんのライブをロンドンで見てきましたけれど、ロンドンの若い男の子や女の子たちが集まって、みんなでインストの曲を歌って踊っている様子には驚きました。そういうのを見ると、やはり憧れるものはあるのではないでしょうか。そういった成功例を積み重ねていくことで、皆の意識が変わってくるのではないかと思います。いきなり「海外を目指さなきゃダメだよ」と言っても、これまで文化として何十年も蓄積されてきているものだと思うので。変わっていくにも瞬時には変わらない。積み重ねて変わっていくのかなと思います。



高中正義ロンドン公演

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