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<来日インタビュー>サム・スミス 傷つき、悩み、辿り着いた永遠の愛について

Photos:Daisuke Takeda
6月に開催された【MUSIC AWARDS JAPAN 2026】で「マイ・ガイ」を世界初パフォーマンスしたサム・スミスが日本を訪れるのは今回で5回目。滞在中に撮影した、お気に入りのレストランを紹介するインスタグラムアカウント(@samserved)のコンテンツは、サムの食通としての一面を見せ、新しいファンを獲得している。
そんなサムは、先日、ファッション・デザイナーのクリスチャン・コーワンとの婚約を発表。パートナーから刺激や影響を存分に受けて完成した新作『ヘイゼル・アイズ』が歌うのは、永続的な愛。喜びから失恋、癒やしまで、さまざまな感情に向き合い、素直に綴ったサムの愛が込められている。来日中に行われたインタビューをお届けする。
──特に印象に残っている日本での体験は?
サム・スミス:初めて日本に来たのは22歳の時でした。4冠を達成して一夜にして人生が変わってしまった【第57回グラミー賞授賞式】の3日後に到着したんです。あの時はすごく不安な状態にあって、すごく疲れていて、少々辛くもありました。東京の町をじっくり体験できなかったし、とにかく仕事ばかりで出かけられず、食事をしたりいろんなことを試したりできなかった。その数年後にツアーで日本に帰ってきた時には、ナイトライフを楽しみ、美味しい食事に舌鼓を打ったりして、それ以来、世界で一番好きな場所のひとつになりました。母だったり、ほかの家族だったり、いろんな人にそう話しています。特に数年前の京都への旅は思い出深いですね。今回の旅も劣らずで、最高の5日間を過ごしました。これまでに東京で食べた中で一番美味しい食事を頂いて、思い切り楽しみましたし、感謝の気持ちでいっぱいです。
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──これまでの体験を通じて、アーティストとして活動していく上で乗り越えるべき一番大きなチャレンジは何だと感じましたか?
サム:それは、名声だと思います。人によって状況は異なりますが、幸運にも私が体験した名声は、音楽作りをストップさせるには至っていません。それは素晴らしいことで、今はむしろこれまでになくインスピレーションが湧いています。でも、若い頃は疎外感を抱くことがあったと思います。年齢を重ねることで対処できるようになりましたが、21歳で有名人になった当初は、まだ人生経験も足りませんでした。
ただ、名声って退屈な回答ですよね。それ以外で言うなら、音楽活動に伴う最大のチャレンジは、とにかく続けることだと思います。日々の移動やツアーは体に負担をかけますし、声にも悪影響を与える。こんなにもツアーをしていなかったら、今頃、私の声はまったく違っていたと思います。あまりにも毎日酷使してきたので。本当に移動にしろ、歌にしろ、すべてが体に負担をかける。だから活動を続行することが一番難しいです。「私に関して最もスキャンダラスなことはここに居座ったこと」とマドンナがいつも言っていますよね。「アンホーリー feat. キム・ペトラス」へのリアクションや、そのほかの批判に直面した時には、そんな彼女の発言の意味が初めてストンの胸に落ちました。本当にそうだなと。だから私が持っているありったけの勇気を、ここに居座るために注いでいます(笑)。
──アルバムごとに様々なサウンドを取り入れて自分の様々な面を見せ、変化し続けてきましたが、逆にずっと変わっていないと感じるのはどんなところでしょう?
サム:私にとって揺るがない核心は、ラヴ(愛)だと思っています。私は非常にロマンティックな人間ですし、常にラヴにまつわる曲を綴ってきました。だから第一に、ラヴ。
もうひとつは誠実さですね。自分自身に対して誠実でオーセンティックであること。この業界にはいろんなタイプの音楽がありますが、私が学んだのは、その中のひとつのセクションが、別のセクションの品定めをするということです。例えばオルタナティヴなアーティストも品定めをされているように感じるでしょうし、ポップ・アーティストであってもほかのセクションの人たちに品定めされているように感じているでしょう。特に過去3~4年ほどの間、私は自分が聞いて育った音楽や自分を夢中にさせた音楽が何だったのか思い出して、それを恥じる必要はないと自分に言い聞かせなければならないことがありました。私はポップ・ミュージックを愛していて、ポップ・ミュージックのソングライティングのシンプリシティを愛しています。それはほかのジャンルにも関わってくるわけですが、自分が心から愛しているものであり、ポップ・ミュージックにこだわり続けてきたことをうれしく思っています。と同時に、アーティストとして自分を深め、より多くを学んでいきたいですね。
──『ヘイゼル・アイズ』に着手した時にはどんな心境にあったんでしょう?
サム:本作で私はアーティストとして途方もなく大きな変化を経ています。これまでのアルバムでは毎回大勢の共作者と曲を綴ってきました。様々なソングライターやプロデューサーと組んで、様々な場所で作って、アルバムに収めてきました。でも今回は、『イン・ザ・ロンリー・アワー』で共作した素晴らしい友人であるサイモン・アルドレッドとふたりだけで曲作りを始めたんです。徐々にほかのコラボレーターを巻き込んでいきましたが、多くても5~6人。すごく親密な体験をして、私は初めて曲の世界に終始、留まることができました。本当に素晴らしい時間を過ごして、美しい思い出が生まれましたし、これらの曲を聞いているとピースフルな場所に逃避できるんです。遠く離れた田舎にある川みたいなものになりました。私は川岸に座っていて。ヘッドホンで聞いているとそういう世界に連れて行ってくれるんです。
私はかねてから整合性のあるアルバムを作りたいと思っていました。田舎町の小さな村で育ち、自然の中で音楽を聞くことが多かったので、こんな風にナチュラルに感じられるアルバムを作りたかったんです。私のお気に入り映画の1本は『プラクティカル・マジック』(1998)なんですが、サントラが素晴らしいのでぜひ聞いてほしいです。ニコール・キッドマンが出演していて、すごくロマンティックな映画なんです。魔女絡みのロマンティック・コメディで、『ヘイゼル・アイズ』にはそのサントラと同じような起伏があると思います。
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──本作はパートナーとの関係を、順を追って描いています。1曲目の「エヴァーラスティング・ラヴ」に出てくる“sad night walker”は、パートナーと出会う前のあなたですか?
サム:そうです。これは本当に素晴らしい曲で、アルバムのために最初に書き始めた曲でもあります。前半はパートナーと出会う前に書いたんですが、インストゥルメンタルのパートに続く後半は、パートナーとの出会いから3年が経過してから書きました。だから私の声も、後半では時間を経ていることがわかるはず。誰かとの出会いの前夜を描いていて、出会いを経て美しい音楽が湧き起こって、ホーンの音がハッピーな未来へと連れていってくれる。一夜限りの関係が永遠の愛へと変化を遂げているんです。
▲婚約者のクリスチャンとサム
──長年、失恋の苦しみを歌ってきた末に、こうしたラヴソングの数々を歌うのはどんな気分ですか?
サム:このアルバムを作り、これらのラヴソングを書く過程で、私は人生で最も多くの涙を流した気がします。リアルだという証明ですよね。20代前半の時にラヴソングを書こうと試みたことがありますが、私には書けませんでした。イノセントすぎたんです。でも今の私がパートナーに抱く愛は信じがたいほどリアルですし、ハッピーな愛であってもそこにはメランコリーが含まれていると思うんですよね。愛を手に入れるまでに辛いことを克服しなければならなかったかもしれないし、その愛が脆くて、いつの日か失われてしまうのではないかと恐れているのかもしれない。「マイ・ガイ」のような「彼は自分のもの」と歌うハッピーな曲であっても、聞いていると悲しい気持ちになるんです。このあまりにも美しいものが、もしかしたらなくなってしまうかもしれないと思うと怖くて仕方なくて。だからこそ、今までこのアルバムを作るのを待ってよかったと思っています。今なら愛について深みのある曲が書けますから。
──繰り返し登場する“川” について教えてください。
サム:最初に完成したのが「トゥ・ビー・フリー」で、次に「エヴァーラスティング・ラヴ」を書き上げたんですが、これら2曲での私は、ミュージシャンとしての自分が知っていたすべてのものを手放して逃げ出したかのような気分でした。そして心の中で、友人であるサイモンと一緒にとある川に辿り着いたんです。2曲に共通するフィーリングを維持するために、スタジオに行く度に私は同じ場所に戻りました。それがプロダクションにおける道標になったんです。

今回は私自身がプロデューサーを務めたんですが、プロデューサーとしての私のメソッドは、まずイメージとサウンドを集めて、終始その世界に留まることでした。関わっている人たちやアルバムを構成する要素が、この川のほとりから離れないように気を配ったんです。それと同時に、私は川の流れを追いかけて、最終的には海岸に辿り着きました。「ムーンダンス feat. ファイスト」や「ホールド・オン」はあとになって生まれたのですが、そこにはまさに、愛する人とどこかに辿り着く情景が描かれていて、これら2曲に取り入れたエレクトロニックなサウンドにも青い大海原のイメージを反映させているんです。これは私が次のアルバムで掘り下げたい方向性を示唆しています。陳腐に聞こえるかもしれませんが、ここまで長い道のりでしたね(笑)。
──ヘイゼル・アイズというタイトルにした理由は?
サム:当初は川にまつわるタイトルにしたかったんです。もしくは、自分の頭の中に広がっていた、茶色いセピアがかった世界に関連付けたかった。でもレコーディングを終えてミックスする段階になって……ミックスは私にとって困難な作業でした。こういうアルバムのミキシングは、サウンドを大きく左右するので、長い時間を要したんですよね。おかげで、一歩引いてアルバムを捉える余裕が生まれました。それができて本当によかったと思っていて、次もそうしたいと考えてるんですが、私はテーマに没入しすぎていて、アルバムに相応しいタイトルを考えられませんでした。少し距離を置くことによって見えてきたのは、世界一ロマンティックなアルバムだということでした。とにかく、彼のこと、私のこと、そして愛が私にもたらしたことに終始していて。そんなわけでヘイゼル・アイズを選んだんです。なぜって彼の瞳の色はヘイゼル(黄みがかった薄茶色)で……本当はブラウンなのに私はヘイゼルだと思い込んでいたんですよね。ヘイゼルは違う色だと最近になって知りました(笑)。でも構わない。私にとってヘイゼルはヘーゼルナッツの色であって、彼の瞳の色はヘーゼルナッツの色だから、そこは譲りません。それに「ヘイゼル・アイズ」という曲は私のお気に入りでもあるので、このアルバムのタイトルにしたんです。タイムレスで、ラヴレターっぽい感じがするので、正しい判断だと思いました。
──あなたのパートナーはどう反応していましたか?
サム:すごく気に入ってくれていますし、アルバムの制作過程を通じて大きな支えになってくれました。彼はヘヴィメタル・ハイパーポップが好きなんです。
──本作から聞き手にどんなことを感じてほしいですか?
サム:私自身が逃避していた世界に、聞き手のみなさんも逃避してもらえたらと願っています。そしてそれを実感してもらいたい。ここに収められた音楽を通じて、シンプリシティに身を任せてほしいですね。このアルバムは永久不変だと私は心の底から信じていて、タイムレスでもあります。大切に取り扱ってもらえたらうれしいですし、アルバムのスピードに馴染んでもらえたらと思います。スローで、落ち着いていて、洗練されている。私が思うに、今の世界で鳴っている音楽とは異なるスピードで流れています。あとは、私がこれらの曲を書きながら抱いた気持ちをほんのわずかでも感じてもらえたら、それ以上に望むことはありません。幸運にもそのすべてを感じることができた私の経験から言えば、最高の気分だったので!
──あなたはアルバムを「May your heart be open, let no one change your mind」(心を閉ざさないで。誰にもあなたを変えさせないで。)という言葉で締め括っていますね。(※「トゥ・ビー・フリー」より)
サム:『グロリア』はセルフラヴと自分を受け入れることに関する作品だったと思うんですが、他者を愛することを通じて、そのセルフラヴをようやく完全に受容できたように感じているんです。かつてないほどに。(最後から2番目の曲)「ホールド・オン」は若い頃の私のクィアの自己に向かって歌っています。自分は恋をすることはないだろうと思っていた、と。なぜなら若い頃の私は、自分みたいな人間が恋をしているところを見たことがなかったので。19歳くらいになるまでゲイの人は誰も知りませんでした。愛や恋愛関係とは縁がないのかもしれないと感じて、当時は落ち込んでいました。「ホールド・オン」はそんな少年に宛てた曲なんです。「トゥ・ビー・フリー」は自分以外の人たちに宛てた声明です。愛と誠実さをもって生きて、自分を率直に表現し、自分が恐れているものと向き合えば、いい人生が送れるのだ、という。
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──最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
サム:まずは「ありがとう」と言いたいです。私のファンであることにはアップとダウンが伴うと思うんです(笑)。途中で脱落してしまった人もいるでしょう。あるいは、途中で加わった人もいるはず。それでも構わないと、私はみんなに伝えたいんです。それが誰だろうと聞いてくれる人のために歌い、音楽を作っていますから。最初から聞いてくれている人たちには感謝しています。こんなにもうれしいことはほかにありませんし、みなさんを愛しています。そして離れていってしまった人たちも、準備が整ったら、ぜひパーティーに戻ってきてください。これまでと同じように楽しくやっていますから。
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