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台湾発、アジア音楽の交差点――「アジアの旬」が凝縮された4時間の祭典【第21回KKBOX MUSIC AWARDS】

Text: 市川美奈子
2026年6月13日、台北市内の台北アリーナ(台北小巨蛋)で【第21回KKBOX MUSIC AWARDS】が開催された。【KKBOX MUSIC AWARDS】は、台湾の音楽配信サービス「KKBOX」における年間聴取データをもとにしたランキング発表と、台湾・アジアの人気アーティストによるライブパフォーマンスを組み合わせた音楽の祭典だ。台湾、日本、韓国など、さまざまな国のアーティストが出演する同イベントを取材した。
KKBOXは2005年に台湾で誕生した音楽配信サービスだ。Spotifyがアジア市場で存在感を示す前から、台湾、香港、シンガポールなどでサービスを展開し、中華圏の音楽シーンを支え、世界に送り出してきた。毎年開催される【KKBOX MUSIC AWARDS】は、ユーザーの視聴行動を可視化するイベント。審査員の主観ではなく、ユーザーの再生実績が評価基準となる点に大きな特徴がある。
2023年、【KKBOX MUSIC AWARDS】は大きな改革を行った。2022年までは再生回数上位10組を「年度風雲歌手」(2015年までは十大風雲歌手)として発表していたが、2023年からは「百大風雲歌手」として100名を発表する方式へ改めたのだ。今年の「百大風雲歌手」には本アワードにも出演する台湾アーティストはもちろん、aespaやCORTIS、G-DRAGONといったK-POP勢、HUNTR/X、ジャスティン・ビーバー、テイト・マクレー、テイラー・スウィフトなど世界的なトップアーティスト、そして日本からはAdoや米津玄師、LiSA、ONE OK ROCK、TENBLANK、tuki.などが入っており、言語やジャンルを横断した、台湾リスナーが好んで聴く音楽の“多様性”は一目瞭然である。

会場の台北アリーナ
大胆な改革の背景には、本格的なストリーミング時代の到来があった。
世界各国の原盤音楽売上データを集計した年次レポート「Global MUSIC Report 2026」によると、2018年、音楽市場におけるストリーミングの売上高は50.6%となり、初めて5割を超えた。ストリーミングはその後急成長し、わずか4年後の2022年には売上高の67.4%を占めている。ストリーミングが世界の音楽シーンの主流となったいまは、限られたスターだけが市場を支配する時代ではない。台湾、K-POP、J-POP、欧米の音楽が同じプレイリストの中で共存し、時に融合する。ファンたちの多様なニーズを満たすには、【KKBOX MUSIC AWARDS】をよりグローバルなアワードとして定義し直す必要があった。

Michael Yeh氏
開催前に行われたKKBOX General Managerの葉展昀(Michael Yeh)氏へのインタビューでも、その方向性は明確だった。「音楽に国境はありません」とMichael氏はこう語る。
「海外アーティストが【KKBOX MUSIC AWARDS】に出演することで台湾における認知を広げ、その話題が母国へ持ち帰られる。台湾で生まれた熱狂が日本や韓国へと波及していく。【KKBOX MUSIC AWARDS】というオフラインのリアルイベントを開催しているのは、このような循環を生み出すためです。」
Michael氏は具体例として、今年の出演者であるAyumu Imazuを例に挙げた。「Ayumu Imazuは、SNSで人気に火が付いた日本の若手アーティストです。アワードへの出演発表後は、SNSで知られていた曲以外も再生数を伸ばし始め、再生回数トップ10に入りました。」

【KKBOX MUSIC AWARDS】は単なる音楽賞ではない。音楽で台湾と世界をつなぎ、世界と台湾をつなぐ「アジアにおける音楽の交差点」であろうとしている。
アワードの会場となった台北アリーナには、開演前から独特の熱気が漂っていた。午前中から多くのファンが会場付近に集まり、18時の開演を今か今かと待っている。午後、会場入り口にアーティストのボードが設置されると、推しのボードと一緒に写真を撮りたいファンが長蛇の列を作っていた。そこには、アジア各地から集まったアーティストのステージを待ちわびる音楽ファンの姿があった。
18時、ファンで埋め尽くされた会場に、幕開けを告げるライトがまばゆい光を放つ。トップバッターとして登場した盧廣仲(Crowd Lu)は、2008年のデビュー以来安定した人気を誇る、実力派のシンガーソングライターだ。代表曲「魚仔(He-R)」のサビでは伸びやかなハイトーンボイスを披露。澄んだ歌声が会場に響きわたり、ファンからは待ってましたとばかりに歓声が上がる。

盧廣仲(Crowd Lu)

SNSで支持を広げている新進気鋭のシンガーソングライター、陳華(Hua Chen)は、ストリーミング1億回再生突破の代表曲「想和你看五月的晚霞 Sunset In May」を歌い、新曲「如果我很平庸(Perfectly Ordinary)」を会場で初披露した。若者の日常や恋愛を丁寧に綴った歌詞とささやくような歌声が、会場にしっとりと響き渡った。

陳華(Hua Chen)

韓国のガールズバンドQWERは、人気シングル「T.B.H」と、最新アルバムの表題曲「CEREMONY」のほかに、台湾音楽界のレジェンドである五月天(Mayday)の名曲「後來的我們(あれから僕ら)」を中国語で歌った。台湾を代表するロックバンドへのリスペクトが伝わってくる。ステージ終了後、MCの黄偉晉(Wayne Huang)から心境を尋ねられ、メンバーのMagentaが「五月天は台湾でものすごく有名なバンドですし、この曲もとても有名な曲です。なので、自分たちの色が出せるかどうか、正直不安でした。でもファンのみなさんの応援が、私たちを勇気づけてくれました」と語った。客席からはひときわ大きな拍手が送られた。
QWER
日本から出演したAyumu Imazuもまた、会場を沸かせた一人。SNSで大人気となった「Obsessed」を含む3曲を披露した。圧巻のダンスパフォーマンスに、客席からは思わず「わぁ……」という感嘆の声が漏れる。その短い一言には驚きと賞賛が詰まっていた。Ayumu Imazuのパフォーマンスが、台湾の観客を虜にしている――その瞬間を目の当たりにした気がした。
台湾初公演にして1万人規模の大舞台に立つという、鮮烈な台湾デビューを飾ったAyumu Imazu。パフォーマンス後、MCの黄偉晉から「一緒に『Obsessed』を踊ってくれる?」と声を掛けられ、少年のようなはにかんだ笑顔を見せたのが印象的だった。黄偉晉とともにダンスを披露すると、会場には歓声と笑顔が広がった。数年後、「あのときのステージが、Ayumu Imazuの台湾での快進撃の始まりだった」と、今日のアワードを懐かしく、そして誇らしく振り返る日が来るのではないか――。そんな未来を期待したくなるステージだった。
Ayumu Imazu
イベント後半には、今後の台湾音楽界を語る上で欠かせない存在である告五人(Accusefive)が登場。告五人は2017年にデビューしたスリーピースバンドで、メンバー全員が1990年代の生まれだ。レジェンドたちが長いこと第一線で活躍している台湾音楽界において、告五人は「今、最も勢いがある若手バンド」といえる。告五人の大きな特徴はツインボーカルであること。男性ボーカルの雲安(ユン・アン)と女性ボーカルの犬青(チュアン・チン)の歌声が、互いに存在を主張しながらも時に溶け合い、耳に心地よく響く。代表曲として知られる「愛人錯過(Somewhere in time)」でサビのメロディが繰り返されるたびに、会場のボルテージは一段また一段と上がっていった。

告五人(Accusefive)

告五人に続いて登場したのは、世界累計ストリーミング再生回数が2か月で1億回を突破した韓国のボーイズグループ、LNGSHOT。韓国ヒップホップ界のトップランナーであるJay Parkが初めて本格プロデュースし、2026年1月にデビューした4人組のグループだ。ヒップホップとR&Bを核としており、平均年齢18.3歳という若さながら実力派として注目を集めている。アワード当日は、ステージを隅から隅まで使い、圧巻の歌唱力とダンスパフォーマンスで観客を魅了した。その姿は、デビューわずか半年とは思えないほど堂々としていた。今後の成長が非常に楽しみなグループだ。
LNGSHOT
【KKBOX MUSIC AWARDS】の真骨頂はコラボステージにある。その象徴とも言えるのが、マレーシア出身のシンガーソングライターのDIOR大穎(Dior Daying)と、郭家瑋(Trevor Kuo)の共演、そして台湾を代表するシンガーソングライター韋禮安(Weibird)と、国際風雲大使を務めた韓国のSUPER JUNIORのDONGHAEによる共演だった。
DIORは、マレーシアの地方都市に生まれ、中華圏全域でファンを拡大している若手実力派アーティスト。2019年にマレーシアの音楽系番組に出演したことで注目を集め、2020年のデビュー曲「愛自己更深(Love Myself More)」が「前向きな失恋ソング」として若い世代を中心に大きな話題となった。平凡な人々の恋と喪失を飾らない言葉で歌う新世代の歌姫は、郭家瑋とのコラボステージで人気曲「過了幾天(A Few Days)」を台湾での自身初ライブで初披露。この曲は2025年のKKBOX年間華語楽曲チャート10位についた大ヒット曲で、YouTube累計再生数2億回以上を記録している。そんな2025年を代表する楽曲の初パフォーマンスは、ファンにとって特別な記憶になったことだろう。

郭家瑋(左)とDIOR大穎(右)


韋禮安は、まずはソロでステージへ登場。1曲目は80年代を彷彿させる曲「Jennifer」で、会場はノスタルジックな空気に包まれる。3曲目に、香港音楽界の四天王と称される張学友(ジャッキー・チュン)の代表曲「吻別(Goodbye Kiss)」が歌われ、会場の一体感は最高潮に。その後、黒のジャケットに身を包んだDONGHAEがステージに登場すると、割れんばかりの大歓声が巻き起こった。
韋禮安とDONGHAEは昨年発表したコラボ曲「最好的朋友(Best Friend)」で共演し、ステージ上では笑顔で言葉を交わしていた。台湾を代表するシンガーソングライターと韓国の大人気アイドルがステージ上で響きあう姿(しかも2人は見た目がよく似ている)は、アワードが目指す未来そのものだった。

韋禮安

DONGHAE(右)と共演
DONGHAEは大トリとして再度ステージに登場。観客を釘付けにする激しいダンスパフォーマンスで、スーパースターのカリスマ性を見せつけた。ラストは中国語の曲「約定(Promise)」。単に台湾で公演するだけでなく、現地の言葉でファンとコミュニケーションを取ることで、中華圏のファンへの敬意と感謝を示したのだ。その姿勢に観客は惜しみない拍手を送っていた。

DONGHAE

今をときめくLNGSHOTや陳華の出演、Ayumu Imazuが台湾の観客を魅了する。マレーシア出身のDIOR大穎が郭家瑋とコラボし、DONGHAEが中国語でファンに語り掛け、韋禮安と共に歌う。4時間の中に「アジア音楽の旬」が凝縮された、まさに「祭典」だった。台湾に続いて、6月28日には香港でも【第8回KKBOX HONG KONG MUSIC AWARDS】が開催。現地アーティストに加え、日本人アーティストとして初出演したjo0jiは圧倒的な歌唱力で現地ファンを魅了した。
Michael氏はアワード開始前のインタビューで「アジア音楽の交流の場を作りたい」と語っていた。その思い通り、この日の台北アリーナでは、国籍も言語も超えた交流が育まれていた。【KKBOX MUSIC AWARDS】はもはや台湾だけのアワードではない。アジアの音楽が出会い、共演し、そして未来へ向かうための舞台なのである。この日同じ舞台に立ったアーティストたちの間に、今後、どのような化学反応が起こるのだろうか。その答えは、これからのアジア音楽シーンの中で形になっていくだろう。
【第21回KKBOX MUSIC AWARDS】ダイジェスト
Ayumu Imazu
LNGSHOT
DONGHAE
吳建豪 Van Ness
盧廣仲
告五人 Accusefive
郭家瑋 Trevor X DIOR大穎
宇宙人
QWER
ほかのアーティストのパフォーマンス映像はこちらへ
Billboard JAPAN現地インタビュー
アワード概要

【第21回 KKBOX MUSIC AWARDS】
2026年6月13日(土)台湾・台北アリーナ
テーマ:此刻,未來 Being the future.
主催:KKBOX
出演アーティスト:告五人 Accusefive、白安ANN、Ayumu Imazu、Bii畢書盡、宇宙人、盧廣仲、DIOR大穎、東海(DONGHAE)、陳華、艾薇 Ivy、LNGSHOT、Miss Ko 葛仲珊、周湯豪 NICKTHEREAL、Ozone、曾沛慈、QWER、李竺芯、郭家瑋、U:NUS、吳建豪 Van Ness、韋禮安(WeiBird)
司会:黃偉晉
第21回KKBOX MUSIC AWARDS 公式サイト
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