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<コラム>ぼっちぼろまる×日向坂46×『逃げ上手の若君』でおくる新曲「ロマンティックがほしいなら」――令和と平成をブレンドする、ぼろまる印の"ネオなつかしい"手法とは

Text:沖さやこ
シーンも時代も越境する、懐かしくて新しいポップソング――ぼっちぼろまるの最新シングル表題曲「ロマンティックがほしいなら feat. 小坂菜緒, 正源司陽子, 藤嶌果歩 (日向坂46)」は、そんな彼の得意技を大胆に活かした楽曲だ。
同曲はTVアニメ『逃げ上手の若君』第二期エンディング・テーマへの書き下ろし楽曲で、ぼろまるは第一期エンディング・テーマ「鎌倉STYLE」に続き、同アニメとは2度目のタッグとなる。「鎌倉STYLE」は“宴”を彷彿とさせる和風ミクスチャー・ダンスロック×J-POPサウンドと、キャッチーでコミカルな言い回しに、日本の歴史や争いの絶えぬ時代でどう生きるかという考え方や、未来への希望をスマートに交えた歌詞が支持を集めた。その結果、【令和6年アニソン大賞】にて編曲賞を受賞、さらには世界最大規模のアニメの祭典【クランチロール・アニメアワード2025】にて最優秀エンディング賞へのノミネートを果たし、ぼろまるの歴史を語るうえで欠かせない代表曲のひとつとなった。
鎌倉STYLE / ぼっちぼろまる
そんな楽曲を生み出したアニメとの再タッグでぼろまるが選択したのは、彼の十八番とも言える、令和の質感と平成カルチャーのハイブリッドによる“ネオなつかしい”楽曲である。
2021年頃よりカルチャー界では“Y2K”ブームが巻き起こり、この数年で様々な手法での平成リバイバルが行われてきた。Billboard JAPANチャートを見ても、J-POPシーンではORANGE RANGE、ポルノグラフィティ、YUIなど数多くの平成の名曲が再注目されると同時に、最近では「mosi mosi?」の楽音など、Y2Kミュージックを自身のセンスでアップデートするZ世代アーティストも多く登場している。この通り、Y2Kという概念は2020年代の日本文化において非常に一般的なものとなった。つまり裏を返せば、“令和×平成”の解答はだいぶ出尽くしているのが現状だ。
だがその隙間を縫い、孤高のスタンスを貫くのがぼっちぼろまるである。「ロマンティックがほしいなら」は、音楽をはじめ様々なカルチャーの歴史もクロスオーバーさせている。
まず同曲のテーマは、ちょっと鈍感な相手へのやきもきした恋心だ。アニメのヒロインである雫、亜也子、魅摩も、他人から向けられる好意に極度に鈍感な主人公、時行にもどかしさを抱えているため、彼女たちの思いにも通ずるものがあるだろう。そんな恋する乙女のやきもち、強がり、不安、わがまま、一途さ、素直さ、さらには情念などを、超絶ポップかつラブリーに昇華した楽曲をさらにリアルに表現するために、ぼろまるは協力者を求めた。それが日向坂46の小坂菜緒、正源司陽子、藤嶌果歩の3人、そして音楽プロデューサーの小西貴雄である。
やはり、鎌倉時代を舞台とした人気アニメ、時代が変われども変わらないうら若き乙女恋心を描いたエンディング・テーマに相応しいボーカリストは、今の時代をときめく、ラブソングが身近で可憐な3人娘だろう。ぼろまるが、同曲の制作中のタイミングで足を運んだ日向坂46のライブにて、彼の目にひと際鮮やかに飛び込んできたのが、小坂菜緒、正源司陽子、藤嶌果歩の姿だった。3人ともグループを代表する人気メンバーであり、2025年10月より放映されているソニー損保のCM「ソニー損保な三姉妹」シリーズでも知られている。
TVアニメ『逃げ上手の若君』第二期ノンクレジットエンディングムービー
そして小西貴雄と言えば、平成のポップスを語るうえで欠かせない立役者のひとりである。広瀬香美の「ロマンスの神様」やブラックビスケッツの「タイミング ~Timing~」などをはじめ、00年代前半の女性アイドル楽曲、ソロアーティストの編曲などを数多く手掛けてきた。なかでも高揚感を生み出すドラマチックな展開、老若男女を選ばずに馴染むブライトなサウンドなどは印象深い。その手腕は「ロマンティックがほしいなら」でも存分に活かされている。
つまり、平成のJ-ROCKとインターネットカルチャーをブレンドさせてきたぼっちぼろまるは、この2組の力を借りたことで、時代を超えたJ-POPの要素を組み込むことに成功したということだ。
きらめきを纏ったシンセの音色に弾力感を彷彿とさせる打ち込みの低音が重なり、前のめりなビートが楽曲を果敢にドライブさせる。リズムはアッパーでありながらも音色はソフトなため、年頃の女子たちの片思い相手に対するやきもきした感情との親和性も高い。間奏からギターソロが入り、さらにそれがツインギターになるという展開もまさに平成J-POPだ。普段のぼろまるならばバンドサウンドで仕上げるであろう音色もシンセや打ち込みに置き換わり、さらに様々なギミックが加わることで、新鮮な質感となっている。加えてラップの節回しや軽やかな四つ打ちなど、彼が元来持ち合わせている“ぼろまる節”も随所で効果的だ。
そして小坂菜緒、正源司陽子、藤嶌果歩も、ボーカルにおいてやきもちガールを好演している。ボーカルディレクションはぼろまるが行い、3人に「ぶりっこな感じで」や「ちょっと小悪魔風に」など様々な“かわいい”をリクエストしたという。日向坂46は清廉な透明感と爽やかさが印象的なボーカルワークが多いため、3人の新たな表情を感じさせる歌声に、心が揺さぶられる人も多いのではないだろうか。〈ずっとドキドキさせたげる〉のような話し言葉や、甘い声で〈地獄〉というワードが飛び出てくるというぼろまる流の小気味良い毒っ気も、彼女たちのボーカルとの相乗効果でさらに光ったと言っていいだろう。
“もう知らない”ではなく〈もう知らないわ〉などの終助詞“わ”の語尾や、“ロマンチック”ではなく〈ロマンティック〉といった言い回しをチョイスするところも、平成の歌謡曲を彷彿とさせる。また、平成アイドルカルチャーにおける〈ロマンティック〉なヒット曲、アニソンカルチャーにおける〈ロマンティック〉な名曲など、「ロマンティックがほしいなら」へと繋がる音楽的文脈へのリスペクトも感じざるを得ない。
そういう観点からも、様々な時代とアーティストをクロスオーバーさせたサウンドと、時代が変われども変わらない若人の恋心をテーマにした歌詞で構成された「ロマンティックがほしいなら」は、視聴者を物語からそれぞれの生活に還したり、物語の別軸の世界を味わわせたりできるという、立体性を伴ったターミナル的な存在と言えるかもしれない。また、「ロマンティックがほしいなら」と素直になれずに相手を試すような仕草を取っていた楽曲の主人公が、最後の最後で「ロマンティックをあげるから」と素直な願いを言葉にするというラストは、トレンディドラマのように鮮やかだ。活動初期より、感情の機微を織り交ぜた物語性のある歌詞を書き続けてきたぼろまるのスキルが活かされている。
ロマンティックがほしいなら / ぼっちぼろまる
ここまで「ロマンティックがほしいなら」について書いてきたが、さすがにぼっちぼろまる名義なのにぼろまるが裏方すぎないか?と思う人もいるかもしれない。だが彼の特徴的な抜けのいい声は〈L・O・V・E〉というガヤ的なコールでさり気ない存在感を醸し出しているし、小室哲哉しかり、つんく♂しかり、アーティスト兼ソングライターが女性アーティスト/グループのプロデューサーを務めつつも、その声を活かしてコーラスなどで参加するのは、平成のポップスにおいては定番でもあった。それに“ぼっち”を掲げて音楽活動を続ける彼が、これだけ多くの人と、シーンも時代もカルチャーもブレンドさせた一曲を作り上げたことは〈ロマンティック〉な出来事と言えるだろう。
「ロマンティックがほしいなら」は、ぼっちぼろまるにとってチャレンジ作であり、彼のアイデアを最大限活かした楽曲になったことは間違いない。そして、日向坂46のメンバーにとって初のアニメタイアップかつ、坂道グループ以外のアーティスト作品に客演参加するのも初の試みであれば、小西貴雄がアニソンを手掛けることも非常にレアケースだ。様々な“初めて”が交差した、非常にクリエイティブな制作である。歌詞にある〈愛し愛されてくれるなら/ずっとドキドキさせたげる〉は、彼のエンターテイナー精神にも通ずるのではないだろうか。彼の目指す“音楽で地球侵略”の可能性を大きく広げる楽曲が誕生した。
リリース情報
シングル『ロマンティックがほしいなら feat. 小坂菜緒, 正源司陽子, 藤嶌果歩 (日向坂46)』
- 2026/7/18 DIGITAL RELEASE
2026/8/19 RELEASE
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