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<コラム>OddRe: 上半期“Heatseekers Songs”トップ10入りの「睡る君」が示す、新しいリスナーに“発見され続ける”楽曲の姿

Text:高橋梓
6月5日に公開されたBillboard JAPANの2026年上半期チャート“Heatseekers Songs”で、OddRe:の「睡る君」が9位にランクインした。“Heatseekers Songs”は、今後のブレイクが期待されるアーティストを映し出すチャート。そんな同チャートで上半期トップ10入りを果たしたことは、「睡る君」が単なる一過性の話題ではなく、多くのリスナーに発見され続けた楽曲だったことを示しているのではないだろうか。
まずは、「睡る君」のチャートアクションを整理してみたい。同曲は5月1日にリリースされると、5月20日公開の“Heatseekers Songs”で初登場にして首位を獲得。そこから3週連続首位という結果を残した。また、5月27日公開の“JAPAN Hot 100”では、現在同チャートにおける自身最高位である30位にチャートイン。さらに、その中のラジオ指標に注目すると、同曲が初登場した5月6日公開チャートで12位、5月13日公開チャートで3位、5月20日公開チャートで4位、5月27日公開および6月3日公開チャートで1位を獲得するなど、リリース直後から着実な上昇を見せている。
OddRe:は2024年6月結成、現時点でのリリース楽曲はまだ7曲。メディア露出、特にテレビへの出演はほぼなく、ドラマや映画、アニメといった大型タイアップも未経験の、まだまだ“ニューカマーといえるバンドだ。Spotifyの月間リスナー数は6月24日現在で20.6万人と、ニューカマー・アーティストのなかでも突出して高いわけではない。ここで浮かび上がるのが、「睡る君」のチャート成績は何によって支えられているのか、という疑問だ。一般的には、月間リスナー数が多いアーティストほどストリーミング再生数も伸びやすく、結果としてチャート上でも強さを発揮しやすい。しかし「睡る君」の動きを見ると、単純に既存ファンの規模だけではなく、既存ファン以外からの流入が起きているようにも見える。
そのヒントになりそうなのが、YouTubeにアップされたミュージックビデオのコメント欄だ。コメント欄には「ラジオで聴いて来ました」といった趣旨のコメントが数多く見受けられる。もちろん、コメント欄だけでリスナー全体の動向を断定することはできない。しかし、「睡る君」が全国47局のラジオ局で5月度パワープレイに選出されていたことを考えると、多くの人がラジオを通じて同曲に接触していた可能性は高い。さらに、接触した後の行動も重要だ。ラジオで流れた楽曲がすべて検索されるわけではない。パワープレイ曲は毎月数多く存在するが、その中でリスナーがわざわざ曲名やアーティスト名を調べ、MVにたどり着くケースばかりではないだろう。「睡る君」には、リスナーに何らかの引っ掛かりを与える要素があったと考えられる。
睡る君 / OddRe:
その要素とは何なのかを考えてみよう。同曲は、“電波に乗って会いに行く”というイメージを起点に、距離や接続の曖昧さを内包したまま進んでいく楽曲だそうで、MVを含め、夜の空気感とノスタルジアが漂っている。サウンド面では、シューゲイザーや80年代ニューウェーブ、青春ロックを思わせる質感が特徴的だ。その一方で、単なる懐古趣味には終わっていない。AirAのボーカル、ユウキ サダのベース、SOI ANFIVERのギターが現代的なアレンジの中で機能しており、過去の音楽へのオマージュと現在進行形のバンドサウンドが自然に共存している。だからこそ、同曲には「どこか懐かしいのに、古くは感じない」という不思議なバランスがある。「聴いたことがあるような気がする」という感覚を抱かせる一方で、サウンドそのものは現代のリスナーにも違和感なく受け入れられるため、世代を問わず聴きやすい理由になっているのだろう。
さらに印象的なのは、楽曲に余白があることだ。近年、情報量や展開の多さでリスナーを惹きつけるタイプの楽曲も少なくない。しかし同曲は音や感情を過剰に詰め込まず、聴き手が自分なりの景色を重ねる余地を残している。夜道や帰り道、車窓から見える景色など、リスナーそれぞれの記憶や体験と結びつきやすく、耳だけで楽曲と向き合うラジオというメディアとの相性の良さにもつながっているのではないだろうか。
上半期“Heatseekers Songs”で9位にランクインしたという結果は、「睡る君」が単純に多く再生された楽曲だったことだけを意味しているわけではない。ラジオで偶然耳にした人が興味を持ち、検索し、MVを視聴する。そして、その一部がさらに楽曲を共有していく。そこに、SNSでの工夫を凝らした映像の発信や、大型フェスやイベントへの出演などでフックを作ってもいる。その積み重ねが、チャート上の動きとして表れている可能性がある。MVコメント欄に並ぶ「ラジオから来ました」という言葉は、“たまたま見つかった”わけではなく、多くのリスナーとの接点を積み重ねてきた結果を示す証言なのかもしれない。そして、「睡る君」の一連のチャートアクションを振り返ると、そこから見えてくるのは、既存ファンだけではなく、新しいリスナーに発見され続けている楽曲の姿だ。本格的に見つかり始めたOddRe:。音楽フリークだけでなく、メンバーと同世代のリスナー、30代、40代、さらに上の世代まで。「睡る君」の広がりは、OddRe:の音楽が特定の世代やシーンにとどまらない可能性を持っていることを示していたのかもしれない。

























