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<インタビュー>絵空事を、あり得る現実に――esoragoto、1stフルアルバム『Apollo』を語る

Interview & Text:小町碧音
esoragotoは、コンポーザー・shinoとボーカル・萌による音楽ユニットだ。別の女性ボーカルを迎えた前体制で「ライラ」をスマッシュヒットさせた彼らは、2024年11月30日、新たな声=萌を迎え、再出発した。
4月29日にリリースされた1stフルアルバム『Apollo』に収録されているのは、再出発を知らせる「独りで生きる苦しみなんて」をはじめとする新体制での楽曲群。合いの手がハイライトの「SHAKE IT!」や、青さを帯びたギターロック「アポロ」といった新曲が、esoragotoに新鮮ないろどりを添えている。
shinoと萌の出会いから、1stフルアルバム『Apollo』の完成までを辿ったところで、今の彼らはまさにスケール感あふれるエレクトロニカ「銀河風」だと感じた。そういう無限の可能性がesoragotoを包み込んでいる。
「esoragoto」というユニットについて
――shinoさんは2017年からボカロPとして活動されていますが、今のユニットを組もうと思ったきっかけは?
shino:本当の始まりは、一緒に曲を出した2人ではない、とあるボーカルの方から「ユニットを組もう」と声をかけていただいたことなんです。ただ、最初の曲をリリースする直前で、その方が辞めることになってしまって。結果的に、その計画は空中分解してしまいました。
それでも、誰かと一緒に音楽を作りたいという思いはずっと自分の中にあって。その気持ちを手放せないまま、esoragotoのボーカルをXで公募して。実はそこに萌さんも応募してくださっていたんです。
――ちなみに、「esoragoto」というユニット名はどこから生まれてきたんですか? 普通は現実味のない話に対して「それは絵空事だ」と言ったりしますよね。
shino:そうですね。誰かと一緒に音楽を作りたい気持ちがあっても、自分にとってそれを実現することはめちゃくちゃ難しいことだったんですよ。まさにユニットを組むこと自体が絵空事というか。なので、esoragotoが動き始めたときでさえも「これも絵空事だな」と思っていたんです。でも、そのままでいるのはやめようと。これからは、絵空事だと思っていたことを“あり得る現実”に変えていこう、という気持ちでこの名前をつけました。
絵空事という単語を知ったのは、Mr.Childrenの「エソラ」という曲が父の好きな曲だったからで。「響きが綺麗だな」と小さい頃から思っていました。
――萌さんは当時、どのような経緯で応募されたんですか?
萌:自分でオリジナル曲を作っていた時期があったんですけど、なかなか自分の曲が好きになれなくて。誰かに作ってもらいたいなと思っていました。そこで、ちょうどshinoさんがXでユニットの募集をかけているのを見て。アカウントを調べてみたら「EATER」というボカロ曲を見つけたんです。いいなと思って応募しました。
shino:200人ほどの応募があった中で、最終的に5人くらいまで絞ったんですけど、その中に萌さんも入っていたんです。
萌さんは、声に透明感があって。そこまで高いキーで歌っているわけではないのに、すごく透き通って聴こえるところが印象的で。自分の曲にも合うんじゃないかと感じました。ただ、当時自分が作っていた曲との相性を考えて、最初は別の方と始めることにしました。
esoragoto『独りで生きる苦しみなんて』Music Video
――2024年11月30日に公開された「独りで生きる苦しみなんて」から、ボーカルが萌さんに変わりました。萌さんは、この変化をどのように受け止めていましたか?
萌:公募に落ちた後も、esoragotoの活動はずっと見ていたんです。そんな中で、ある日突然shinoさんから声をかけていただいて。すごく驚きました。最初は、フィーチャリングや複数ボーカルの形になるのかなと思いながら歌っていて。でも、最初に歌った「独りで生きる苦しみなんて」と、その次にリリースした「ツキカゲ」をたくさんの方に聴いていただけたことで、少しずつ実感が変わっていったんです。
「これはフィーチャリングじゃなくて、ユニットなんだ」と思えるようになったというか。想像していた以上に「声がいい」と言っていただけたり、「『ツキカゲ』が一番好き」と言ってくださる方もいて。自分の声が世界にちゃんと届き始めているんだ、という手応えも感じるようになりました。
――実際にesoragotoには韓国のリスナーさんも多く、昨年には韓国の同人イベントで200人近い来場者を記録したと伺いました。
shino:リスナーの絶対数で言えば日本の方が多いんです。でも韓国のリスナーさんは日本の方に負けないくらいコメントをたくさん残してくださったり、熱量高く応援してくださる方が多い印象があります。
昨年10月に韓国の即売会に参加したときは、日本だと考えられないくらいの行列ができたんです。「1、2時間かけて来ました」「夜行バスで来ました」と言ってくれる方がたくさんいて。本当に応援してくださっているんだなと、肌身で感じましたね。
――新体制になってから、よかったと感じていることはありますか?
萌:最初は、バラードを歌うのがすごく苦手だったんです。今まで聴いてきた音楽がK-POPやボカロ、歌い手さんで言うとAdoさんなど、ビートの効いたかっこいい曲が中心で。フィーリング重視の、テンポが速い曲を歌うことが多かったんですよね。なので、esoragotoの曲はすごく新鮮で。雰囲気で寄せていくというよりも、自分でしっかり考えて「こういう声で歌ってみよう」と思わせてくれる曲だと思っています。新しい声を届けられたことは、自分の中でも成長につながりましたし、新しいジャンルへの挑戦にもなりました。
shino:アコースティックなサウンドと萌さんの声の相性は、すごく良い気がしていて、萌さんが入ってからは、ピアノやアコースティックギターを積極的に取り入れるようになりました。
- 1stフルアルバム『Apollo』について
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リリース情報

- 2026/4/29 RELEASE
3,300円(tax in.)
CDご購入はこちら 各配信サイトはこちら
アルバム『Apollo』
公演情報
- 2026年7月11日(土)東京・GT LIVE TOKYO
出演:Yobahi/ゲスト出演:esoragoto
詳細はこちら
【Yobahi presents 回想 幻想】
関連リンク
1stフルアルバム『Apollo』について
――ここからは1stフルアルバム『Apollo』のお話を。このタイミングでリリースしようと思った理由を教えてください。
shino:まず、ライブをやろうという話が先に出て。当時はまだesoragotoの曲を8曲ぐらいしか持っていなかったんです。昨年のオンラインライブも持ち曲7曲に1曲ボカロ曲を入れて8曲でやったんですけど、ワンマンをやるには曲数が足りない。「じゃあアルバムを作ろう」と。ライブで使う曲数を確保するところから、アルバム制作が始まりました。
新曲の4曲ともわかりやすくライブでの役割がある曲になっていて。このタイミングでこの曲が来るんじゃないかなと、リスナーさんもなんとなくわかるんじゃないかなと思います。

――「SHAKE IT!」はすごくわかりやすくて、ライブを盛り上げるのに必須のトラックですよね。
shino:そうですね。「SHAKE IT!」はお客さんと一緒に盛り上がりたいという一心で、曲中に合いの手のパートをガッツリ入れたんです。esoragotoの過去曲ではそこまで合いの手を取り入れていなかったので、初めての挑戦でした。
「銀河風」はそこからガラッとサウンドを変えて、アルバムの中でもライブの中でも、風景を変えるような曲。これもまたesoragotoにとって初めてのサウンドかなと思います。
――新曲4曲は、esoragotoの既発曲にはなかった新しいアプローチに踏み込んでいる印象がありました。
shino:esoragotoのカラーは自分も萌さんも模索している段階ではあるので、今回はとにかくいろんな曲調の曲を入れてみました。お客さんの反応も気になりますし、自分たちとしてもしっくりくるものを探す、少し実験的な要素も入ったアルバムになっていると思います。
――アルバムタイトルの『Apollo』が指しているのは宇宙ですか?
shino:そうです、自分たちの曲には月をコンセプトにしたものが多くて。昨年のオンラインライブも【月の裏側で会いましょう】というタイトルで開催したこともあって、月をモチーフにできないかなと悩んでいました。
そんなときに「Apollo」という名前を出してくれたのはスタッフの方で、そのタイトルがあまりにも良かったので即決まりました。
――普段、esoragotoの楽曲制作はどのような流れで進めているんでしょうか。
shino:制作過程としては、最初に僕がメロディを考えて、そこに編曲・楽器をつけて、最後に歌詞をつけることが多いです。歌詞のコンセプトは普段からメモにいっぱい書き溜めていて。「メグループ」なら「退屈で辛い毎日が続いて抜け出せないときに、まるでループしている歯車の上に乗っかっているみたいだな」と思った瞬間があったので、それをメモしておいた感じで。この曲調にはこの歌詞が合いそうだからと。そうやって、曲と歌詞のコンセプトをくっつけて曲を完成させていきます。
――その後、萌さんへの歌のディレクションはどう伝えているんですか?
shino:歌詞のテーマを共有したうえで、歌い方については割と細かく注文していますね。歌詞もちゃんと説明しないといけないなって毎回思うんです。でも恥ずかしくてちゃんと言えてないところもある(笑)。
萌:「ここは裏声で歌いたいな」や「少しエッジをかけたいな」、「語尾に感情をつけたいな」など考えながら歌ってみるんです。でも完成した音源を送るとshinoさんから「違うパターンももらえますか?」と言われることも多くて(笑)。esoragotoの世界観をしっかり詰めていきたいshinoさんならではのこだわりだなと思いつつ、それをちゃんと実現できるように、と意識しながら歌っています。
――萌さんのなかで特に印象に残っている曲をあげると?
萌:「銀河風」です。私自身、丸サ進行というコード進行が使われている曲を好きでよく聴いていて。「銀河風」を聴いていたときに、丸サ進行に近いものを感じたんです。立体感があって、ライブでこの曲を歌ったらお客さんにもっとesoragotoの世界観が伝わる曲だなって思いました。
銀河風
――アルバム制作を経て、esoragotoとしてこれから試していきたい音作りや方向性は見えてきましたか?
shino:今の音源はボカロ曲を作る過程で作っているので、宅録っぽさというか、ハンドメイド感があるんです。もう少しリッチな音にしていったら萌さんの声がより映えるんじゃないかなと思っているので、少しずつ音作りも変えていけたらいいなと。
萌:私はアニメの主題歌をずっと挑戦してみたいと思っています。すごくアニメが好きでよく観ているので、オープニングやエンディングの曲を誰が歌っているのか気になることが多いんですね。そこに私たちの曲が流れたら嬉しいです。
――今のお話を伺っていて、ふと気になったのですが。お二人の間で共通している“好き”って何かありますか?
shino:あんまりない気がしていて……(笑)。
萌:音楽ですかね。それ以外、何をしているのかお互いあまり知らないかもしれないです(笑)。
shino:実は、この話は僕もしたいと思っていて。今回のアルバムを制作する中で、ようやくお互いのことを話すようになった感覚があるんです。それまでは本当に、僕が萌さんに依頼して、曲を歌ってもらうという関係性で。でも、アルバムの準備でやり取りの回数が増えていく中で、少しずつチームとしての実感が生まれてきたというか。そこでようやく、打ち解けてきたのかなと思っています。
――なるほど。作品を通して関係性も深まり始めたんですね。これからのesoragotoの活動が、ますます楽しみになりました。
リリース情報

- 2026/4/29 RELEASE
3,300円(tax in.)
CDご購入はこちら 各配信サイトはこちら
アルバム『Apollo』
公演情報
- 2026年7月11日(土)東京・GT LIVE TOKYO
出演:Yobahi/ゲスト出演:esoragoto
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