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<インタビュー>HYDE、ニューアルバム『JEKYLL』が描く"静"の世界――24年越しに『ROENTGEN』と繋がるとき

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Interview & Text:Tatsuya Tanami
Photo: 森好弘


 HYDEのニューアルバム『JEKYLL』が、3月11日に配信リリース、5月13日にCDリリースされた。

 本作は、HYDEの裏面=静の世界を突き詰めた一枚となっている。前作『HYDE [INSIDE]』で見せた獰猛な音楽アプローチとは真逆の作品だ。今回のインタビューでは、本作でHYDEが伝えたかったこと、24年前のアルバム『ROENTGEN』と通ずるところ、そしてアルバムを引っ提げて開催された【HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL】の思い出を語ってもらった。

オーケストラツアーを通して掴んだ感覚

――オーケストラツアー【HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL】の国内公演は、5月17日の和歌山公演以外が終わりました。今の心境はいかがでしょうか。

HYDE:オーケストラツアーをやったおかげで、いろいろ掴めた部分があるのかなと思います。その感覚を持って、今後も公演をやれるのを楽しみにしています。あと、その感覚を忘れずにいないといけないなと。


――掴めたというのは、具体的にどんなことでしょう。

HYDE:楽しむ方法を掴んだ感じですね。


――今回、イヤモニをしていなかったり、有線マイクを使ったりなど、普段とは違う環境が公演にどう影響したと考えていますか。

HYDE:最初はやりづらいなと思っていましたが、ダイレクトにオーケストラの演奏やお客さんの反応を聞くことができるので、良い環境だったかなと思います。


――そんな中、お客さんの反応や、演奏する中で印象に残ったシーンはありますか。

HYDE:お客さんの反応はよかったですね。あと、若い子もたくさんいらっしゃいましたね。印象に残ったのは、最前列に1席だけ空いていて。「この子、かわいそう。最前列の席なのに来られなかったんだね」と思ったことが一番印象に残っています(笑)。


――冗談ですか?(笑)

HYDE:半分冗談、半分本気です(笑)。


――あと、各公演のMCでご当地グルメを食べるという、いわゆるもぐもぐタイムがありましたが、どういうきっかけでやろうとなったのでしょうか。

HYDE:元々、自分からの差し入れは各公演で用意する予定だったんですけど、それを面白がって初日にステージに持って行って食べ始めたら、なぜか恒例になってしまいました。

――そうなのですね。ぴあアリーナMM公演のMCでは、「歯の裏についたぜ~」と歌っていたのが印象的でした。

HYDE:お客さんをなめてますよね(笑)。


――いえいえ(笑)。逆にそんなHYDEさんの様子が、ファンにとっては嬉しいのではないのかなと。

HYDE:結果的にはそうなんでしょうけど。前半のMCは固めだったし、客席の皆さんも着席した状態で集中して聴く雰囲気だったので、お客さんも緊張していたと思うんですよね。拍手をやりにくそうだなとか、そういう空気も全部分かるんですよ。だから、そういったMCで空気を一旦崩す。ずっと緊張しっぱなしだと、逆に集中できなかったりするじゃないですか。ある程度、その雰囲気は必要なわけですけど、最後まで続くと大変だから、途中でちょっと緩めていくという感じです。


ウィーン公演に向けてのオーケストラアレンジ

――今回、「DEFEAT」や「GLAMOROUS SKY」など、普段激しい曲をオーケストラアレンジされています。

HYDE:基本的には、最後のウィーン公演に向けてコンサートを作っていました。ウィーン公演ではなるべくヒット曲をやりたいなという気持ちがあって。やっぱり僕のことを知ってくれていて来るコアなファン以外は、ヒット曲を聴きたいと思います。例えば僕が誰かのコンサートに行って、その人がヒット曲をやらなかったら非常にがっかりするんですよね。その辺はエンターテインメントな考えなので、なるべく知っている曲をやってあげたい。じゃあ、このツアーでヒット曲をやるにはどうするかとなると、このツアーに合うようにアレンジしたらいいんじゃない? という中で、試行錯誤しました。


――そんなウィーン公演では、現地のオーケストラと共演されますね。

HYDE:どういう化学反応が起こるかは、ちょっと分からないですけど。バンドの心臓部分は日本から持っていくので、あとは現地のオーケストラの皆さんとの融合がどこまでうまく表現できるのかは未知数ですね。


――また、国内公演の本編最後は「LAST SONG」でした。このオーケストラバージョンを制作しようとした経緯を教えていただきたいです。

HYDE:元々の「LAST SONG」はロックでヘビーなギターを入れないと、アルバム『HYDE [INSIDE]』に合わなかったので、そういう音が入ってるんですが、そんな曲をヘビーなままオーケストラアレンジすると、とある方向に行ってしまうんですよ。好き嫌いが分かれるやつ。絶妙なセンスが必要なんです。

「LAST SONG」はかなりそれに寄っちゃうのが心配だったので、ヘビーなアプローチを控えめにして、オーケストラバージョンを作りました。オーケストラだけだと思い通りに作れるし、途中で僕の声が1本だけになる間からテンポがめっちゃ落ちる展開も、ヘビーなバージョンだと共同作曲者のhicoに駄目と言われていました(笑)。


――なるほど。最後の転調していく感じも、オーケストラバージョンのほうがより感動的であるような。

HYDE:そこもヘビーなギターが入っていないから、アプローチ的に問題ないという。


――この曲は「白鳥の湖」をイメージにされたということですが、「白鳥の湖」はオーケストラによって、ハッピーエンドと悲劇で、終わり方が2種類あります。HYDEさん的には今回のオーケストラバージョンの結末はどうなっていると思いますか。

HYDE:死んでますよね(笑)。


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  1. アルバム『JEKYLL』について
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「美しいけど毒がありそう」

――ここからアルバム『JEKYLL』について聞いていきたいのですが、改めてHYDEさんにとって、「HYDE」と「JEKYLL」をどう定義していますか。

HYDE:普通にヘビーなギターがいるかいないか、という感じです。


――深く考えずシンプルな感じでしょうか。

HYDE:バンドサウンドかそれ以外かって感じですかね? 僕自身も1つの性格じゃないし、人それぞれ、裏の顔はあると思います。そこにたまたま、僕の名前があるだけかなと。


――なるほど。アルバムのジャケットもかっこいいですよね。こちらは、昔からお付き合いのある、モート・シナベルさんのデザインでしょうか?

HYDE:はい。大好きなデザイナーです。シングルシリーズ「NOSTALGIC」「FINAL PIECE」「THE ABYSS」のジャケットのデザインも全部そうです。


――恐縮ですが、これは何を表しているのでしょう。

HYDE:何も表してないです。そもそも真っ黒な花って、あんまりないですよね。美しいけど毒がありそう。そういうところに『JEKYLL』の雰囲気が表れているなと思いました。これまでのように何か遊びを入れて加工しようかと思ったのだけど、その物の美しさが崩れちゃう気がしてやめました。


――今回のアルバムの曲順はどうやって考えましたか。

HYDE:最終的にこれしかないなと。最初、1曲目の「DIE HAPPILY」は決まっていて、それ以外の曲順を考えていきました。


――なぜ、これが1曲目に。

HYDE:ジャジーでクールで、今、自分の中で一番やりたい音楽に近いというか。


――「永遠の愛」がテーマになっていると思いますが、「永遠の愛」に疑問を持たれたきっかけはあるのでしょうか。

HYDE:自分の曲に「永遠」(L'Arc-en-Ciel『SMILE』収録)があるぐらいですが、どんなものでも、永遠なんてないじゃないですか。今の状況があってこその永遠は分かるけど、絶対変わりますよね。恋にしてもずっと続く可能性なんてないし、形あるものも絶対、崩れる。だから永遠なんて存在しない。でも、変化する前に死んでしまえば、永遠のままになる。だから、永遠を得るには死ぬしかないですよ、ということです。


――だから、幸せのまま死のうと。

HYDE:はい。永遠は甘い幻という話です。永遠は、そのときに「永遠であってほしい」と思う情熱のことだと思います。その情熱はものすごく強いから、素晴らしいんだけど、それが永遠に続くかというと、また別の話ですけどね。


――そんな曲の中で、特にこだわった箇所などありますか。

HYDE:基本的には演奏がクールだと思っているので。でも、作家として言うんだったら、やっぱり最後の<Sweet illusion to die happily>という、<幸せに死ねばいいよね>みたいなところは、いいフックになっていますよね。



HYDE-DIE HAPPILY

――そして「SO DREAMY」は公演の曲紹介で可愛らしい曲と言っていましたが、改めて魅力を教えてください。

HYDE:北海道の富良野で毎年、ディナーショーをしているのですが、そこに招待するようなイメージの曲です。これはもう、富良野でのイベントがなければ作らなかったかもしれないです。僕が料理人となってお客さまをおもてなしするというイメージです。


――歌詞に出てくる主人公と来客の関係性ってどこまで考えていますか。

HYDE:恋までいかないんですけど、大切なお客さまという感じです。


――そもそもHYDEさんが曲を書きたくなるのは、こういった刺激的なシチュエーションがきっかけになることが多いのでしょうか。

HYDE:今回の歌詞はそうだけど、曲はまた別でしたね。ラウンジっぽい曲が欲しいなと思って作って、じゃあどういう歌詞がいいんだろうと思ったときに、富良野のことを思い出しました。



HYDE-SO DREAMY

――続いて「TATTOO」は過去の後悔と向き合うような曲ですが、どんな思いが込められていますか。

HYDE:これは遺書のような気持ちで曲を作りましたが、制作途中で口笛が採用になったので、遺書の雰囲気には合わないなと思っていました。でも最後「この町で生きていく」と思うと、町を歩いているイメージで口笛に繋がりやすいんですよね。


――口笛はHYDEさんの案ですか。

HYDE:最初はメロディーを入れただけの状態のデモで、キーボードがなかったので、試しに口笛で吹いたんですね。そうしたら、それが妙に良くて、結局そのまま採用されました。


――口笛が入っているHYDEさんの曲ってないですよね。ここにきて新たな表現の仕方ですね。

HYDE:うん、案外ね。あと、僕ら子どもの頃はみんな口笛を吹いていたけど、今、できる人って案外少ないと気がつきました。


――こちらのミュージック・ビデオの公開予定が発表されましたが、どんな仕上がりになっていますか。

HYDE:結構、僕も気に入ってるんですが、ワンカメでずっと焚火と僕の顔が映っているだけです。ワンカメは過去に1回しかやったことなくて、それが、1stシングルの「evergreen」のミュージック・ビデオなんです。それと繋がってるじゃんと思って。撮影途中で、監督が何回かカメラを切り替えようとしたんだけど、ワンカメでいきましょうとお願いしました。


――おお!

HYDE:いい感じですよ。


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「ノスタルジックな雰囲気だったりとか、過去の自分の経験だったりとか」

――ミュージック・ビデオと言えば「SMILING」では、ももいろクローバーZの百田夏菜子さんが出演しています。まさに白い情景を思い浮かべながら書いた曲なんですか。

HYDE:元々Aliが作ってきた曲で、彼の声が素晴らしくて、とても雰囲気が良かったんですよね。そこから、雪のイメージで作っていって。何となく女性目線で曲を書いたので、ミュージック・ビデオを作るときに、僕が出るのはなんか嫌だったというか、全く想像できなくて。もちろん歌うことはできるんだけど、美しくないなと思って、可愛らしい女の子が出てほしいなという流れで、色々考えた結果百田さんにお願いすることになりました。


――いつも歌詞の主人公はHYDEさん自身とは限らない。

HYDE:そうですね。「SMILING」の歌詞に出てくるイメージの女の子は多いだろうなと思って。<愛してくれていると思っていたの>という歌詞が一番好きなんですけど、そういうすれ違いってあるじゃないですか。関係を終わらせたという内容ですが、これを自分が歌ったら変だなと思って。



HYDE-SMILING

――そうですかね……。

HYDE:女性目線の歌詞は難しいね。「SSS」も女性目線ですが、TOMORROW X TOGETHERのために書きましたから。アイドルとファンの関係性を歌っているんで、僕の曲なら書かない歌詞かなと。


――近年、HYDEさんは楽曲提供を沢山やっていますが、良い化学反応が生まれていますよね。

HYDE:僕が歌わなくてもプロモーションしてくれるのでね(笑)。


――アルバム最後の曲は「FADING OUT」です。これもまた切なさを帯びながら消えていくという感じで、アルバムを締めています。

HYDE:まず、楽曲的に雰囲気がアルバム『ROENTGEN』に近いなと思っていて。これを最後に置くことによって、また輪廻じゃないですけど、『ROENTGEN』に回るようなイメージで最後に持ってきました。後付けですけど、曲順は悩みました。


――なるほど、また『ROENTGEN』の1曲目に戻るという。歌詞では<Hello despair>という言葉遊びも面白く、絶望を明るく迎えているような気がしました。

HYDE:実は<Hello despair>というフレーズが最初にあったんですよね。そこから、どういう展開になるか考えて。何となく地球最後の1人という設定にしました。


――フレーズが最初にあったのですね。最終的には、どういう曲になりましたか。

HYDE:僕の中では新しい感じの曲になりましたね。普通はハンドパン(体鳴楽器)とか使わないし、歌うのも難しいし。



HYDE-FADING OUT

――アルバム全体を通して、曲のコンセプトが愛や永遠、心情など、人間の普遍的なところを捉えているような気がしました。衝動をむき出しにした『HYDE [INSIDE]』と『JEKYLL』、気持ちの棲み分けはどんな感じでしていったのでしょうか。

HYDE:『HYDE [INSIDE]』はやっぱりメタル寄りなので、思想や怒りの衝動の曲は多いですね。怒りを寄せ集めるというか。でも、このアルバムはそういう曲調じゃないので、ノスタルジックな雰囲気だったりとか、過去の自分の経験だったりとか、そういうものが多くなりました。


――静のHYDEさんでは、『JEKYLL』が『ROENTGEN』に続く2作目ですが、今後もこういった表現をやっていきたいですか。

HYDE:そうですね、また25年後くらいに(笑)。


――(笑)。もしも、『ROENTGEN』を制作した約24年前の自分が『JEKYLL』を聞いたらどう思うと思いますか。

HYDE:どうでしょうね、びっくりするんじゃない? 昔の自分が今の自分に対して「こうしたらいいんじゃない?」とか言いそう。


――昔はアレンジ含めて、全て1人でやられていたんですよね。改めて共作の良さは何だと思いますか。

HYDE:特に共作をしているhicoは音楽知識がしっかりしているので、曲にすごく深みが出ますね。例えば「MAISIE」のアレンジは、彼の才能が分かりやすいんじゃないかな。Cö shu Nieさんの原曲を崩さないようにして、このオーケストラアレンジをしてるわけじゃない? もちろん、他にもいろんなところでhicoは才能を発揮してるんですけど。


オーストリア・ザルツブルクでの撮影について

――オーストリア・ザルツブルクでの撮りおろし写真集『Jekyll and HYDE in Salzburg』も5月13日に発売されます。撮影場所はザルツブルクですが、初めて訪れた場所ですか。

HYDE:はい。かなり山のほうで、夏は避暑地になるような場所なんじゃないかなと思います。前回の写真集『Jekyll and HYDE in Wien』は夏に撮影だったので、今回は冬に撮影という形での第2弾です。だから前回が「HYDE」で、今回は「JEKYLL」というイメージです。


――細かいところですが、タイトルが『Jekyll and HYDE』になっていて、なぜ「Jekyll」を最初に置いたのかと気になりました。

HYDE:これは単に小説『ジキル博士とハイド氏』(原題:Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde)に沿ったタイトルにしました。あと、表紙のタイトルの赤い部分が、前回は「HYDE」が赤かったので、今回は「Jekyll」を赤くしました。


――気付く人は気付く箇所ですね! ウィーンとザルツブルクでそれぞれ撮影してみて、ご自身の表情はどう変わりましたか。

HYDE:前回のウィーンは都会なので、美術館だったり図書館だったり普段は撮影ができないようなところでの撮影がメインでした。だけど今回は町だから、いろんなところに入れたのがスペシャルでしたね。田舎町なので、住んでいる人のリアリティーが伝わるかもしれないです。前は美術館が多かったから、温かみがちょっとなかったけど、今回は寒いけど、そういう意味では温かい感じがあるのかなと。


――現地の人との交流はありましたか。

HYDE:ほぼないですね。クリスマスマーケットに行ったくらいですかね。


――もちろんワインは飲まれて。

HYDE:ホットワインをたくさん飲みましたね。各お店でマグカップが違うので、色々なマグカップを集めるのが楽しかったです。


――いいですね。食べ物は何が有名なのでしょう。

HYDE:ザッハトルテというチョコレートケーキがめちゃくちゃ美味しいんですよ。あとはシュニッツェルっていう薄いカツレツとか、白ワインがとても美味しい。


――ということは、ウィーン公演では、ザッハトルテをライヴ中に食べる可能性が……。

HYDE:かもしれないね(笑)。


――また、HYDEさんはウィーンの観光大使を約2年半務めてきました。振り返ってみていかがですか。

HYDE:本当、いい経験をさせていただきました。なかなか大統領に会うことなんてないのに、2度も会えたし。それに音楽・芸術の都なので、とても良い経験になりましたね。


――ありがとうございます。最後の質問となりますが、今年はツアーが5月に終わり、それ以降はL'Arc-en-Cielの活動があると思います。ソロとしては「HYDE」と「JEKYLL」と、表と裏の表現をやりきったところで、次はどんな面を表現していきたいと考えていますか。

HYDE:次はまた激しくなるんじゃないかなと思います。ラルクはまた別で表現があるし、今後も基本的には「HYDE」と「JEKYLL」の2つで大丈夫かな。


――その最終的なゴールは、もう見えている感じでしょうか。

HYDE:それこそビルボードライブみたいなところで、お酒を飲みながら演奏してみたいですね。


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