Billboard JAPAN


Special

<わたしたちと音楽 vol.74>LANA 女たちの結束がシーンを塗り替える

インタビューバナー


 米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。

 6月9日に、【Billboard JAPAN Women In Music】と、Spotifyが2021年にグローバル規模でローンチした、女性アーティスト/クリエイターの表現の機会を広げ、活躍を継続的にサポートするためのプログラム【Spotify EQUAL】の2大ブランドを掛け合わせた、一夜限りのステージが東京・SGCホール有明で開催される。そんな公演の開催を記念して、イベントにも出演するLANAに、女性アーティストとして活動する中で感じることや自分たちが与えることができる影響など、話を聞いた。(Interview:渡辺志保)

みんなが抱える
「心への向き合い方が分からない」という問題

――LANAさんのライブに行くと、ファッションやメイク、ネイルや持ち物もLANAさんにインスパイアされた女の子たちがたくさんいて、同世代の女性たちからこんなにも支持を受けているのか!と圧倒されます。普段、LANAさんもファンのメッセージをキャッチしたり、友達と遊んだりする中で、みんなが共通で抱えている問題に気がつくことはありますか?

LANA:結局、根本に「何に対しても向き合い方が分からない」っていう問題があるのかなって思います。あと、マジでみんな寂しがり屋すぎる。だし、そんな寂しい気持ちや心への向き合い方を教えてくれる人がいないんですよね。だから、そういうことを学校で教えてくれたらいいのにって思います。あと、お金について学ぶこととか、セラピーに行くことの利点とかも。「自分のあり方」や「自分がどうありたいのか」ってことを教えてくれる環境も必要じゃないかなと思います。そういう場所がないからこそ、生まれてしまっているモンスターみたいな子もいるのかなって思うこともあるし…。だから、その子達に教えてあげたくて、私は曲を書いてるんです。シンプルに、そういうことかなって。


――LANAさんも、セラピーに行くことがある?

LANA:うん、通うこともあります。自分に合ったセラピーを探したり、あと、孤独や一人きりの状態に耐える練習をしたり。私、人生って一年の中でいい時の波と、悪い時の波が4回繰り返すという風に思って生きているんです。楽しい時はその幸せを忘れないようにするし、暗い気持ちの時は人の温もりを大切にする。いい時も悪い時も、その感情がずっと続くわけじゃない、って思うようにしているんです。そういう対応ができるようになったら、マジでみんな強くなるよって本当に心から思います。私も、「ずっと孤独や寂しさに向き合おうとしているからこそ、今日がある」みたいな感じで生きています。


――こうしたトピックについて、友達と話し合うこともありますか?

LANA:ありますね。みんなを見ていると、一歩踏み出すのにも、すごく勇気が必要なんだなって思いますね。


――実際に、「LANAちゃんのライブに行って、自分が変わることができました」っていう子もたくさんいるでしょうね。

LANA:偉そうにするわけじゃないけど、そう思えたなら、そのままでいてほしいなって思います。あと、自分が選ぶ立場にもあるんだっていうことを忘れないで生活してほしい。やっぱり、幸せと痛みはずっと隣り合わせだし、ステージの上でキラキラしているように見えても、その裏側には本当は辛いこともある。だから、傷付きながら光るダイヤモンドに勝手に共鳴しちゃうんです。


――普段、SNSはどれくらい見ますか?

LANA:全然、見ないんですよ。誰に何を言われているか。一ミリも分からない状態で。


――そうした対応も、ここ数年、アーティストとしてのキャリアを築いていく中で得たものですか?

LANA:そうですね。だいぶ変わったんじゃないかなと思っています。(SNSを見過ぎると)今まで言われてきたことが今も頭の中で響いている、みたいなことがあるんです。でも今は、いい人ぶろうとすることもやめたし。逆に、自分に足りないところはちゃんとしなきゃなと思うし、ちょうどいいバランスみたいなものが分かってきている感じがします。


「今日までの選択で間違えたことは一個もない」って
胸を張って言える

――去年は一年のうちに武道館やアリーナでの単独公演も成し遂げて、みるみるうちにアーティストとしてステップアップしている。同時に、自分のやるべきことが明確になってきたな、という感じがあるんですかね。

LANA:うん。なんか結局、自分の仕事って歌を届けることだし、今年はその原点に帰ってきている感じがします。どれだけ色んなことをやったり盛大に飾りつけたりしても、問われるのはLANAのスキルだし、魂というか。


――内側に、何を持っているのか。

LANA:はい。そういうことなんだなと思ってからは、めちゃめちゃ真面目にやるべきことをやってるって感じがあります。なんか、「今日までの選択で間違えたことは一個もない」って胸張って言えるぐらい、本当に正しく生きてんなって感じるし、正しく年を取ってる気もするし。やっぱピュアだなとは思います、自分のこと。


――Vlogも拝見しましたが、毎日、目まぐるしそうですよね。

LANA:とんこつなんですよ。


――とんこつ?

LANA:とんこつラーメン食べてるぐらい、いっつもお腹いっぱいなんです。常にフルカロリーで挑んでるから。記憶もあんまりないくらい。これで自分がちょっと冷静になっちゃったら、多分(LANAが)変わってきちゃいそうで、怖いですね。なので、自分でも無意識にありのままでいることが、結果的にお客さんに伝わっているのかなって思います。


――今年の5月に開催されたヒップホップ・フェス【POP YOURS】では、フィメール・ラッパーのElle Teresaさんとのステージも話題になりました。コラボ曲「こんな日は」をリリースして、ステージで初披露して。

LANA:エルちゃんは10代から聴いていた人なので、まず感謝っていうのと、やっぱり大きなコラボに挑むのは怖いっていう気持ちもあったんです。でも、(リスナーから)色んな憶測があっても二人で手を取り合うっていう選択をしたのは、すごく素敵なことだなと自分でも思いますし、ライブに来てくれた人とか、(一緒に曲をやることについて)ネガティブな反応をした人たちに対して「おい!」って示すことはできたかなと思っています。


――それぞれのファンやヒップホップ・リスナーたちがが皆一様に好意的な反応を示したわけではなく、ネガティブな意見もあったということですね。LANAさんはこれまでにAwichさんとの共演や、7さんやMaRIさん、そして若手の女性MCたちを集めた『花・魁』の企画もあって、常に同じ女性ラッパーたちと手を取り合ってきた印象です。【POP YOURS】でElle Teresaさんと着ていたハート型のような大きな羽の衣装もすごく可愛かったです。

LANA:まさにそういうランウェイみたいなライブをしたいと思ったし、ステージが終わってから「エルちゃんと曲をやること自体、私がみんなに送ることができる最大のメッセージだったのかも」と思いました。


――「LANAとエル、二人のギャルが手を取り合っている…!」って、見ているこちらもすごくパワーをもらいました。

LANA:なんか、よく考えたらヤバいですよね。私もめちゃめちゃ食らいました。なんだろうな、近いようでいて遠い端々にいる女子たちが手を繋ぎながらランウェイを歩くって、あんまり日本では見ない光景かなって。

エルちゃんとは何回か挨拶させてもらったことはありますけど、ちゃんと喋ったことなくて。今回、「一緒に曲をやりたいんです」って話をしてから「遊ぼう」みたいな流れになったんですよ。それで、何回かお買い物したりご飯食べたりみたいな感じで。実際にエルちゃんと接してみると、私とは違う種類のギャルなんだなって思いました。私の方がちょっと泥臭(どろくさ)系なんだけど、エルちゃんは自分らしくいることでこれまでに色んなことを積み上げてきたタイプのギャルなんだなって。


日常に蔓延るジェンダーバイアスへのアティチュード

――女性のアーティストとして、特にヒップホップのフィールドで活動するLANAさんが、「女のくせに〜〜だ」とか「女だからダメなんだ」みたいなことを言われたり、ジェンダーバイアスによって居心地の悪さを感じたりしたことはありますか?

LANA:そういうことは、もう日常生活の中に蔓延ってますよね。「女だから酒も飲めないだろ」とか。あと、「男は女を食うもんだ」とかそういう表現もあるし。でも、それに対してマイナスな感情を抱くというよりは、「じゃあ、倍飲んでやるよ」とか「じゃあ、お前から来いよ」って思っちゃう。ネガティブに捉えるというより、「倍やってやる」って感じなんです。


――そういうアティチュードだからこそ、男性ファンも惹きつけられることが多いのかもしれませんね。

LANA:最近、男性のリスナーが増えている気がします。


――私の話になってしまうんですけど、以前、同企画のインタビューを受けた際に「女性ラッパーが増えると、女性の国会議員も増えるんじゃないか」と話したんです。「女の言うことなんか聞けねえ」と思う男性もいまだにいると思うんですけど、LANAさんやAwichさんみたいな女性ラッパーの言葉にインスパイアされる男性が増えると、状況も変化していくのかなって。

LANA:分かります。上の立場から引っ張っていくのがうまい女性や、男性に対してめちゃくちゃ諭しつつ理解してもらうことが得意な女性も増えそう。


同じ自覚を持つ女性たちが重なった時に、
みんなに勇気を与えられると思う

――18歳の頃にはアーティストとしてデビューしていたと思うのですが、活動していく中で、音楽業界に女性が少ないなと感じることはありますか?

LANA:ありますね。実際に撮影現場に女性がいなくて、私がちょっと際どい衣装を着ている時に男性たちで「どこをどう映したらいいんだろう?」って 対応に困ってしまうこともあって。例えばそういう場所にも女性のクリエイターが増えると、作品の仕上がりがマジで変わるんだろうなって思います。あと、諦めてるわけじゃないんだけど、(女性が少ないということに)マジで気づいてない人は気づいてない。そんな状況の中で、共鳴し合える人を見つけることができたら「どうやって一緒に動こうかな?」って私も考えることができるし、それが効率的にもいいのかなって思います。Awichさんもそうだし、エルちゃんもそう。同じ自覚を持つ女性たちが重なった時に、みんなに勇気を与えられると思うから、そういう動きはこれからもやっていきたいな、と。


――今回は、女性のエンパワーメントをテーマにした【Women In Music – EQUAL STAGE】にてパフォーマンスを披露していただきます。どんなステージになりそうでしょうか?

LANA:そうですね。とにかく女の子たちの憧れになるような、素敵なステージを用意できたらなって思っています。でも、ありのままでいることで、それが伝わるとも思うので。初めて私のライブを観る方もいると思うし、LANAのエッセンスを詰めてお届けしようと思っています。半端ない感じで、バンギンな(笑)。終わった頃にはLANAの虜にさせるようなステージにしたいですね。


関連キーワード

TAG