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<インタビュー>KREVA 初のフルオーケストラ公演開催――武部聡志、岩城直也とのクロストーク公開



インタビューバナー

 KREVA初のフルオーケストラコンサート【billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志】が、12月18日に兵庫県立芸術文化センター、12月24日に東京文化会館にて開催される。ラップとオーケストラという異色のコラボレーションが実現するこの公演は、薬師丸ひろ子、川崎鷹也に続く武部聡志プロデュースシリーズの第3弾。 指揮と編曲は気鋭の音楽家・岩城直也がつとめる。

 ライブの構成を決める打ち合わせに筆者も同席したのだが、武部とKREVAのやり取りは当意即妙で、岩城も意欲的なアイデアの数々を提案していた。メロウな響きの「音色」、壮麗なストリングスが広がる「アグレッシ部」、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」をサンプリングした「国民的行事」など、実はKREVAの代表曲にはオーケストラと相性の良い楽曲も多い。 武部のプロデュースと才気あふれる岩城のアレンジで、これらも含めたKREVAの名曲の新たな魅力を引き出し再構築した“黄金のセットリスト”を堪能できる一夜になりそうだ。KREVAと武部と岩城の3名にどんなコンサートになるのかを聞かせてもらった。
(Interview & Text:柴那典 | Photo:石阪大輔(KREVA) | Hair & Makeup:Ryo(KREVA) | Styling:藤本大輔(KREVA) | Dress:ETHOSENS、ADIEU、SHINGOKUZUNO(KREVA))


武部聡志プロデュースシリーズ第3弾はKREVA オファー理由とは

── 武部さんがプロデュースシリーズの第3弾としてKREVAさんと共演しようと思ったアイデアの由来はどういうところにありましたか?

武部:理由は2つあって、1つはオーケストラと一番水と油なのはどういうジャンルのアーティストだろう?って最初に考えたんです。 ビルボードクラシックスでフルオーケストラのライブをやるにあたって一番距離が遠いのは誰だろう、と。それでKREVAが思い浮かんだ。 2つ目は昔からKREVAのファンだったんです。テレビやフェスでの共演はあったけれど、コンサートでご一緒したいと前々から思っていた。 だからビルボードクラシックスの力を借りて実現させようじゃないかと。

── KREVAさんが話を受けての印象は?

KREVA:すぐにやりますって感じでした。武部さんと一緒にやれるのも魅力的だと思ったし、オーケストラと一緒にラップするのも魅力的。今までそういう経験はなかったので、やってみたいなと思いました。

── 武部さんから見たKREVAさんの魅力は?

武部: まずKREVAは日本の音楽シーンにラップやヒップホップを定着させたパイオニアですよね。 かつ我々がやってきたJ-POPと言われるジャンルに対してのリスペクト、先人たちに対する思いもちゃんと持ち合わせている。 単純に自分の好きなことだけをやってるのではなく、幅広い音楽性を持っている印象があったんです。だからきっとどこかで交わることができるだろうと思ってましたし、今回もそういう思いでオファーしました。

── KREVAさんからの武部さんに対しての印象は?

KREVA:2月にラジオに呼んでもらってお話ししたら、実はがっつり武部チルドレンだということがわかったんですよ。 例えば久保田利伸さんとか、武部さんが関わっていた作品を聴いて育ってきていた。それもあって、誘ってもらえてありがたいという気持ちです。 武部さんが「J-POPへのリスペクトを感じる」って言ってくれたのも、まさにその通りで。 アメリカのヒップホップが70年代のソウルをサンプリングしてきたように、俺は日本のポップスで育ってきているし、その影響を取り入れるのが俺なりのヒップホップだと思って打ち出してきたから。それを感じ取ってもらえてたのは本当に嬉しかったです。

── お二人は以前に日比谷野外大音楽堂のステージで共演していますよね。その時はどんな感じでしたか?

武部:【日比谷野音100周年記念事業】のオープニングセレモニーのイベントで、中高生の合唱で「ハナミズキ」を歌ったんです。 この曲は、僕のプロデュース作品の中でも代表作で、KREVAに新たにオリジナルの歌詞を書いてもらい、ぜひラップで参加してほしいと思った。

KREVA:最初は「いらないでしょ、ラップ」って言ってたんです。すでに確立されている歌だからラップを新たに加えるのは大変でした。でも、いざやってみたらやらせてもらえてよかったなって感じでしたね。

武部:KREVAのラップによって、「ハナミズキ」の持ってるメッセージがまた新しい伝わり方がしたんじゃないかなと思いますね。 曲の持ってるメッセージをすごく理解した上で望んでくれたから本当に嬉しかった。

KREVA


ヒップホップとオーケストラの融合 それゆえの面白さ

── ヒップホップとオーケストラは距離が遠いイメージがありますが、それゆえに融合の面白さもあると思います。そのあたりについてはどうでしょうか?

岩城:アレンジでも、いい意味での感性のぶつかり合いにチャレンジできたらなと思っていてます。 単なるクラシック音楽とヒップホップの掛け合わせではなく、こういう混ざり方は面白いとプレイヤー含めてみんなが楽しんでやれるようにしたい。今回はオーケストラの奏者にも何人かKREVAさん好きがいて、キラキラしてますね。

武部:KREVAのラップによって、「ハナミズキ」の持ってるメッセージがまた新しい伝わり方がしたんじゃないかなと思いますね。 曲の持ってるメッセージをすごく理解した上で望んでくれたから本当に嬉しかった。

── KREVAさんはオーケストラとのラップにどんな感触がありますか?

KREVA:やっぱりこうやってチャレンジングなことをしてくれるのは嬉しいですね。俺としては、どんなジャンルでもラップできる自信はあります。 武部さんが言う「水と油」というのは世間のイメージで実は親和性が高いっていうのはもちろんそうだと思うんだけど、それに加えて、こういうことをちゃんとできるラッパーは何人いるのかな?っていう感じはありますね。 トーンや発声のコントロールだったり、オケにどう合わせるかというのもある。曲を作ってる人間だからセットリストの流れも一緒に考えられる。そういう意味では選んでもらえてよかったと思います。

武部:だからこそKREVAだったわけです。KREVAだったらオーケストラとも交われる。幅広い音楽性を持っているから、両方が気持ちよくパフォーマンスできる。そういう確信がありました。

KREVA:お互いにリスペクトがあることがすごく大事だと思う。リスペクトしてくれるし、俺もリスペクトしてるから、そこがあれば歩み寄れると思います。



「KREVAは日本で一番アフターに歌を歌える人」

── KREVAさんはバンドを従えてのライブの経験は長いですよね。そのパフォーマンスの蓄積が土台になってるんじゃないかと思いますが、そのあたりはどうでしょうか。

KREVA:バンドとやってたことによって、ミュージシャンたちと臆せず話せるようになったというのはありますね。 以前は、頭で鳴ってる音があってもコードの名前がわからないから言えないようなこともあったんです。けれど、今はそれを鳴らしたり、ちゃんと言葉で伝えられるようになりました。 伝えていくってことが大事だと思うし、そこにビビらなくなったのは、バンドと長くやってきたから得た自信だと思います。

── 武部さんとKREVAさんの音楽的な言語が共通しているということなんですね。

武部:こないだテレビで一緒に演奏した時に、日本で一番アフターに歌を歌える人だなって思いました。

KREVA:そうそう、アフターというのはリズムの後ろに乗っていくっていうことなんだけど、 その話になりましたよね。

── KREVAさんは以前「リズムの後ろに乗る」という感覚を久保田利伸さんに教わったという話をしていましたよね。

武部:いまやKREVAは久保田よりアフターに歌える人だと思いますよ。そういう人はなかなかいないし、ミュージシャンから見るとすごく格好いいんです。

KREVA:そう言ってもらえたのは本当に嬉しかったです。

武部:僕ら楽器の演奏者もそうなんです。 アマチュアの頃は、自分だけリズムの前に行っていて、ドラムの人に後髪をつかまれてるような感じで演奏していた。 でも時間をかけて、ようやくリズムをたっぷり、ゆったりと感じられるようになっていった。ヒップホップでもそういうことがあるんだと思います。今のKREVAは誰よりもアフターに乗れる。そういうキャリアを積んだんだと思う。


KREVA


今回ならではの特別な演出も

── セットリストやライブの方向性は、どんなところを重視して、どんなアイデアから決めていきましたか?

KREVA:みんなでひとつのショーを作ろうという感じですね。「これもあるよね、あれもあるよね」って話しながら決めていけたのは良かったなと思います。

── このライブならではの演出やアレンジは?

武部:ひとつだけ言うと、KREVAが歌ったことのないカバーをやるかもしれない。

KREVA:日付が関係あるかもしれない。

武部:それは楽しみにしてほしいですね。

── お客さんやファンに向けて、どんなライブにしたいか、もしくはどんなところを楽しみに来てもらいたいというのはありますか?

KREVA:ひとつ思ってることがあって。ファンの皆さんがライブのグッズで「一目瞭然Tシャツ」っていう蛍光色のTシャツを出してるんですよ。 フェスにそれを着てきてくれるとすぐわかるんですけど、今回はそれを着てくるなよ、と。 ドレスコードはないし、着物とかも素敵だと思うけど、蛍光色の「一目瞭然Tシャツ」だけはやめてほしいと思ってる。この日はそういうことじゃないぞ、と。(笑)

── 武部さん、岩城さんはどうでしょう? どんなコンサートにしたいと思っていますか?

武部:大事にしたいのは、KREVAがストレスなくパフォーマンスできること。あとはKREVAのファン以外のお客さんにも楽しんでもらいたい。ショーとして絶対面白いものになるんじゃないかと思います。

岩城:ビルボードクラシックスなので「クラシック」と書かれることが多いんですけど、あくまでオーケストラの形で演奏するだけで、今の時代はジャンルとテクスチャーの融合だと思っているんです。 僕自身もクラシックの出身というわけではなく、エレクトーンから音楽を始めて、ジャズやロックやラテンやいろんな音楽を経て、その後にクラシックを勉強したので。だからフィーリングが合うしやりやすいと思います。

武部: そもそもビルボードクラシックスでこのシリーズをやろうと思ったのは、音楽のジャンルに優劣はないっていう考え方があるからなんです。 演歌でも、アイドルでも、ロックでも、ジャズでも、クラシックでも、ヒップホップでも、どのジャンルでも僕は交われる。そういうスタンスで今までやってきたんですね。 だからこのビルボードクラシックスの僕のプロデュースのシリーズは、次はもしかしたらバリバリのアイドルかもしれない。その次は凄腕のジャズプレイヤーかもしれない。 どんなジャンルの人も楽しく交われる場にしたいんです。だからこそ今回KREVAのようなヒップホップ・アーティストが参加してくれるのは本当に嬉しい。何より自分が一番楽しみたいなと思います。

KREVA:なるほど。負けませんよ(笑)。



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