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<コラム>YOASOBI、結成5周年――前例のない道を歩みつづけてきたその足跡を振り返る



コラム

Text:柴那典

 2024年10月1日、YOASOBIが結成5周年を迎えた。

 コンポーザーのAyaseとボーカルのikuraからなる"小説を音楽にするユニット"として、2019年に活動をスタートさせてから5年。数々のヒット曲を世に放ち、世代や国境を超えた人気を獲得してきた彼らは、いまやJ-POPを代表するアーティストとしてワールドワイドに活躍の場を広げている。YOASOBIはどのようにして唯一無二の存在となったのか? その歩みを改めて振り返りたい。

 そもそもYOASOBIは、ソニー・ミュージックが運営する小説&イラスト投稿サイト「monogatary.com」を母体に生まれたユニットだ。デビュー曲「夜に駆ける」は、同サイトが主宰するコンテスト【モノコン2019】でグランプリを受賞した小説『タナトスの誘惑』を原作にした楽曲。制作にあたっては、ボカロPとして活動していたAyaseと、シンガー・ソングライター“幾田りら”としても活動していたikuraがメンバーに選ばれ、2019年11月に同曲のミュージックビデオをYouTubeに公開したことで活動がスタートした。


夜に駆ける / YOASOBI


 とはいえ、当初のYOASOBIはあくまでプロジェクトありきの存在。今のような成功はまったく見据えていなかった。ユニットとして長期的に活動を続けていくかどうかも、最初は決まっていなかったという。しかし楽曲の魅力は自然発生的に広がっていた。「夜に駆ける」のMVは、公開から1か月で再生回数100万回を突破。無名の新人としては異例の数字だ。

 そして2020年に入ると現象が本格化する。ネット上で急速に広まった反響は、4月頃からテレビなどマスメディアでも取り上げられ、話題性はオーバーグラウンドへと拡大。「夜に駆ける」はBillboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100” 2020年4月29日公開チャートで初のトップ10入りを果たす。その後も年間を通じて上位をキープし、2020年の年間総合ソング・チャート“HOT 100 of the Year 2020”でも首位を獲得。年末には初の『NHK紅白歌合戦』出場も実現した。

 人気拡大の背景には、コロナ禍のため自宅で過ごす人が多く、オンラインのエンターテインメントを愛好する人が増えた当時の社会のムードもあっただろう。アニメーションのMVも注目を集めた。ただ、ブレイクの最も大きな要因となったのは、やはり音楽そのものが持つ力だ。2020年にYOASOBIは「たぶん」や「群青」など、計5曲を続けざまにリリース。さまざまなタイプの曲調ながら、どの曲にもAyaseのキャッチーなメロディセンス、ikuraの歌声の鮮やかな表現力が発揮され、独自のポップセンスを打ち立てていった。

 だからこそYOASOBIの快進撃は止まらなかった。2021年はひとつの曲の話題性にとどまらず、彼らのアーティストとしての魅力を打ち出していく時期になった。TVアニメ『BEASTARS』第二期オープニング・テーマのダークなエレクトロ・ナンバー「怪物」などタイアップにも精力的に取り組み、さらに音楽性の幅を広げた楽曲の数々をリリース。7月には「夜に駆ける」の英語版「Into The Night」を発表し、ところどころ日本語の響きに聞こえる英語詞も話題を呼んだ。


怪物 / YOASOBI


 当初はネット上の活動が主体だったYOASOBIにとっては、ライブの実現も大きなターニングポイントになった。2021年2月には、東京・新宿に建設中のビル(現在の東急歌舞伎町タワー)を舞台にした初のワンマンライブ【KEEP OUT THEATER】を、無観客オンライン配信にて開催。2021年12月に開催された東京・日本武道館でのライブ【NICE TO MEET YOU】が、初めて観客を前にしたステージとなった。

 2022年は、YOASOBIにとってリアルな場での活動をさらに広げた一年となった。2022年8月には初めての夏フェス【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022】にヘッドライナーとして出演。2022年12月には、インドネシアとフィリピンで開催された88rising主催フェス【Head In The Clouds】に出演し、初の海外ライブが実現した。また、この年には4人の直木賞作家とのコラボレーション・プロジェクト「はじめての」を展開。2022年10月にリリースした、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第一クールオープニング・テーマの「祝福」もスマッシュヒットとなった。


祝福 / YOASOBI


 そしてYOASOBIにとって現時点最大のヒットとなったのが、2023年4月にリリースされた「アイドル」だ。TVアニメ『【推しの子】』オープニング主題歌であるこの曲は発表直後から大きなセンセーションを巻き起こし、“JAPAN Hot 100”では21週連続首位(2023年4月19日~9月6日公開チャート)、通算では22回の首位という、歴代最多記録を達成。もちろん、2023年度の年間総合ソング・チャートでも首位に輝いた。さらにムーブメントは世界各国に広がり、2023年6月10日付の米ビルボード・グローバル・チャート“Global Excl. U.S.”で首位を獲得。同チャートで初の日本語楽曲による首位獲得となった。


アイドル / YOASOBI


 2023年9月にリリースしたTVアニメ『葬送のフリーレン』のオープニング・テーマ「勇者」も支持を広げ、デビュー曲「夜に駆ける」は日本初のストリーミング累計10億回再生=ビリオンヒットを達成(2024年5月29日には累計11億回を達成)するなど、勢いは最高潮となったこの年。度重なるステージでの力強いパフォーマンスを通して、アーティストとしての実力もめざましく成長していった。2023年5月には初の単独アリーナツアーを行い、8月には【Head In The Clouds Los Angeles】にて、アメリカでの初ライブが実現。2023年12月から2024年1月にかけては初のアジアツアーを開催した。各地の観客の熱狂は、彼らにとっても大きな自信になったはずだ。

 2024年もYOASOBIは新たな挑戦の数々を繰り広げている。2024年4月には【Coachella Valley Music and Arts Festival 2024】に出演し、初のアメリカでのワンマンライブも実現。8月には【Lollapalooza 2024】出演も果たし、北米での支持を着実に広げてきた。7月にリリースした、アニメ『〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン』主題歌の「UNDEAD」ではこれまで以上にアグレッシブでカオティックな曲調を打ち出すなど、音楽的にもさらなる新機軸を展開。2024年10月~11月は初の東阪単独ドーム公演、2024年12月から2025年2月にかけては2度目のアジアツアーも予定されている。


UNDEAD / YOASOBI


 前人未到の道を歩んできたYOASOBIの5年間。その成功はJ-POPのカルチャーに新たな時代をもたらしたと言えるだろう。"小説を音楽にする“というコンセプトを守り続けている彼らの楽曲には、タイアップ曲も含め、すべて原作小説が存在する。ひとつひとつの楽曲に物語があり、アニメや映画など他の作品とも有機的に結びつきつつ、さまざまな角度から多様な楽しみ方ができるのがユニットの強みだ。

 この先も彼らはさらに新たな境地を見せてくれるだろう。期待したい。

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