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<コラム>ジュリア・マイケルズの“願い”やキャストの“願いの力”が込められた、ディズニー映画『ウィッシュ』OST

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Text: 村上ひさし

 ディズニー100周年を記念するドラマティック・ミュージカル『ウィッシュ』のサウンドトラック・アルバム『ウィッシュ(オリジナル・サウンドトラック/US版)』のデジタル配信がスタートした。

 ディズニーの名作アニメーションといえば、『アナと雪の女王』、『アラジン』、『美女と野獣』、『リトル・マーメイド』など鑑賞後もずっと心に残る数々の名曲が生み出されてきたが、今回も同様に音楽が重要な役目を担っている。だが、違っているのが、アラン・メンケンといったベテラン巨匠ではなく、才能豊かな若手が起用されている点だ。ディズニーのレガシーを継承しつつ、新しい視点でディズニー音楽を創造する……そんな大役の白羽の矢が立ったのが、ジュリア・マイケルズ。ポップミュージック界で大活躍を繰り広げるヒットメイカーが選ばれた。


 今年30歳になったばかりのジュリア・マイケルズは、既に輝かしいキャリアを築いている。ソングライターとして、これまでに多数のヒット曲を大物アーティストたちに提供してきた。ジャスティン・ビーバーの「ソーリー」、「フレンズ」(with ブラッドポップ)、セレーナ・ゴメスの「ハンズ・トゥ・マイセルフ」、「ルーズ・ユー・トゥ・ラヴ・ミー」、ブリトニー・スピアーズの「スランバー・パーティー」、リンキン・パークの「ヘヴィー」(feat. キアーラ)などがその一例だが、ショーン・メンデスからザラ・ラーソン、グウェン・ステファニー、デュア・リパ、エド・シーラン、マルーン5まで、文字通り数えきれないアーティストたちが彼女の楽曲を取り上げてきた。ポップミュージック界を牽引する陰の実力者と言えるだろうか。またシンガーとしても、【グラミー賞】にノミネートされた「イシューズ」をはじめ、高い評価を受けてきた。そんな彼女が『ウィッシュ』の音楽を依頼されたとき、真っ先にコラボレーターとして思い浮かべ誘ったのが、ベンジャミン・ライスだったという。レディー・ガガからジョン・レジェンド、ニック・ジョナスはもちろん、彼女とも長い付き合いのある【グラミー賞】受賞プロデューサーが、共作・共同制作者として関わっている。


▲ジュリア・マイケルズ

 4歳からディズニー映画を観て育ち、ディズニー音楽に夢中だったというジュリア。仕事の上ではこれまでミュージカルとの接点はあまりなかったが、このアルバムのオープニングを飾る「ようこそ!ロサス王国へ」を耳にすれば、そんな心配無用なのが明白だ。陽気でカラフル、アップリフティングな歌とメロディが、生き生きとロサス王国を湧き上がらせ、息づかせる。一気に映画の世界へと引き込んでくれる。同曲をメインで歌うのは、ヒロインのアーシャの声優を務める、アリアナ・デボーズ。『ウエスト・サイド・ストーリー』で【第94回アカデミー賞】の<助演女優賞>を受賞したブロードウェイ出身の実力派シンガーのアリアナが、躍動感溢れる歌を披露する。時に凛とした強さを覗かせ、時に優しく労わるかのように、表情豊かな歌声を聴かせてくれる。


 表情豊かな歌声といえば、ロサス王国のマグニフィコ王役をあてるクリス・パインの歌も特筆ものだ。アリアナ・デボーズとのデュエット曲「輝く願い」で、包み込むかのように温かい歌声を聴かせたかと思えば、「無礼者たちへ」では怒ったり、イラついたり、失笑したり、おどけたり、次々とさまざまな感情を迸らせる。スティーヴン・ソンドハイムが音楽を担当したディズニー映画『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014)に出演した際に、ミュージカル歌唱はかなり鍛えられたという彼が、喜怒哀楽の情を瞬時に切り替えながら、見事に歌い演じきっている。


 その他、ドラムを多用した「真実を掲げ」が思わず拳を突き上げたくなる革命マーチのようだったり、次々と動植物が歌う「誰もがスター!」が、皆を勇気づけるフィールグッドなミュージカルナンバーだったり聴きどころも多く、多彩なメッセージが込められている。だが、やはり本作の最大のテーマである“願い”を込めて歌われる劇中歌「ウィッシュ〜この願い〜」のインパクトが圧倒的だ。主人公アーシャの信念、困惑、葛藤などの揺れ動く気持ちを描きつつ、だが最終的には“願い”を込めてアリアナ・デボーズが力強く歌い上げている。


 そして“願い”といえば、映画のエンドロールで流れる「かけがえのない願い」は、楽曲を作ったジュリア・マイケルズ自身が歌を担当。4歳の頃から密かに願っていた夢が遂に叶ったスペシャルな楽曲だ。この曲を歌ってほしいと言われたとき、彼女は涙が止まらなかったという。夜空に輝く星を眺めているかのように、ウットリ聴き惚れる美しいメロディと歌声。“願うこと”の大切さを改めて教えてくれるこの曲が、それこそディズニー100周年記念作品に相応しい”願いの力”を体現しているように思われる。


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