2015/11/02 19:15
昨今のエレクトロ・ブーム。ちょっと飽和気味かなと思う反面、レトロ感覚の心地いサウンドを作り出すアーティストも充実してきた。ルーツはクラフトワークやYMOじゃなくて、ヴァンゲリスやジャン・ミッシェル・ジャールじゃないかなと感じるサウンドも多いが、そんなベストなタイミングでジャン・ミッシェル・ジャールの新作が発表される。フランス出身のジャンは、1970年代半ばから『Oxygene(幻想惑星)』や『Equinoxe(軌跡)』といったコンセプチュアルなアルバムを世界中で大ヒットさせ、数万から数十万人単位の大規模なコンサート・パフォーマンスで知られている。日本では小室哲哉と共演したことでも有名だ。
8年ぶりの新作となった『エレクトロニカ1: ザ・タイム・マシーン』は、なによりも豪華なゲスト・ミュージシャンに目を奪われるだろう。冒頭を飾る表題曲の「ザ・タイム・マシーン」ではエレクトロ・クラッシュのブームに乗って登場したドイツのボーイズ・ノイズがアッパーなビートを加え、メロウでメランコリックな「クローズ・ユア・アイズ」はフランスのエールが華を添える。一番ジャンらしいと思える「オートマティック」ではイレイジャーのヴィンス・クラークが参加していて思わず納得した。他にも、モービー、アーミン・ヴァン・ブーレン、マッシヴ・アタックの3Dなどが名前を連ねている。
しかし、かなり異色のゲストがいるのも事実。ザ・フーのピート・タウンゼントが歌っている「トラヴェレイター(パート2)」にはびっくりしたし、ホラー映画の巨匠監督でありミュージシャンとしても知られるジョン・カーペンターとの相性の良さにも思わず頷いた。そして、クラシック界ではトップを走る中国人ピアニストのラン・ランを招くというアイデアも秀逸。とにかくゲストの組み合わせの妙に溢れているばかりか、その出来栄え自体もジャン特有のスケール感を絶対に外さないのだ。これぞ彼の王道といってもいいくらい、その世界観はびくとも揺らがない。昔からのファンはもちろんだが、最近のエレポップやEDMでシンセ・サウンドに興味を持ったなら必聴。そして、タイトルに“1”と付いているので、第二弾も期待して待ちたいと思う。(Text: 栗本 斉)
◎リリース情報
『エレクトロニカ1: ザ・タイム・マシーン』
ジャン・ミシェル・ジャール
2015/12/02 RELEASE
2,808円(tax incl.)
関連記事
Album Review: ロス・ロボス 40年に渡り第一線で活躍し続けるラテン・ロック親父たちの守りを感じさせない攻撃的な意欲作
Album Review: ムーンベイビーズ 美メロの宝庫スウェーデン発!穏やかにたゆたうドリーミーなエレクトロ・ポップ
Album Review: フリオ・イグレシアス 9年ぶりのオリジナル・アルバムで“世界の恋人”のロマンティシズム溢れる魅力を再考
Album Review: ブーム・パム イスラエル屈指のサーフ・ロック・バンドの魅力がギュッと詰まったベスト集
Album Review: ハウシュカ 日本でのライヴ音源収録!ポスト・クラシカル界の旗手が奏でる最良のアンビエント・ミュージック最新News
関連商品
アクセスランキング
1
【ビルボード 2025年 年間Top Lyricists】大森元貴が史上初となる3年連続1位 前年に続き5指標を制する(コメントあり)
2
Billboard JAPAN 2025年年間チャート発表、Mrs. GREEN APPLE/Snow Manが首位
3
【ビルボード 2025年 年間Download Albums】Mrs. GREEN APPLE『10』大差で1位、Number_i/サザンが続く
4
【ビルボード 2025年 年間Top Albums Sales】Snow Manがミリオンを2作叩き出し、1位&2位を独占(コメントあり)
5
【ビルボード 2025年 年間Hot Shot Songs】米津玄師「IRIS OUT」が首位、HANA 5曲入り
インタビュー・タイムマシン







注目の画像