2026/02/13 13:00
【Mega Shinnosuke ONEMAN LIVE TOUR 2026「天使様□」】(□=十字架の特殊文字)のツアーファイナルが、2月8日に東京・Zepp DiverCityにて行われた。
I Love ROCK。全部ラブソングなんだよこれ。それは単に恋情という意味ではなくて(もちろんそれもあると思うけど)、Mega Shinnosukeは恋を通して自身の波打つ内面を歌っている。生への衝動を、倦怠を、感動を、憂鬱を、興奮を、そして音楽への情熱を彼は叫んでいる。<ドラマチックに生きていこうネ><どんな時代も“愛”を謳うぜ>ーー「メロい夢」のリリックは、この日のライブにおいてとりわけ印象的だ。また、いつになくパーソナルで、メッセージ性のあるMCを話していたことも象徴的である。「(流れてくる情報や流行に囚われずに)瞬間瞬間の自分を信じてやっていく」と告げて歌った「今を踊ろう」は、本編の最後に相応しい1曲だ。「今を踊ろう」というのは、つまり「今を生きよう」ということ。さらに言うならば、お前はお前の人生を生きろということだ。ついでに言えば、その傍らロックンロールで踊ろうぜ、ということだろう。
目が覚めたら雪だった。外は真っ白。幸い夕方に近づくにつれて止み始めたため、交通機関に大きな影響はなし。震えるほどの寒さの中、台場へと向かった。会場につくとJoy Divisionの「Disorder」が流れている。それから坂本慎太郎の「あなたもロボットになれる」等々ーーMega Shinnosukeの好きな音楽、と言えばそれまでだが、どことなく内面の葛藤を映しているような楽曲や、ストレンジな気分を感じる楽曲が印象に残る。なんてことを考えていると、まさかのニーナ・シモン「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」をSEに、演者の5人がステージに登場。Mega Shinnosukeを中心に、Kohei Shimizu(Gt.)、Takayasu Nagai(Ba.)、古市健太(Dr.)、松本ジュン(Key.)という布陣である。
鋭いギターが響き、いきなりドラムソロで意表を突く。「禁断少女10」で始まった。ライブで聴くと、どことなくニルヴァーナを思い出すダウナーな気分のオルタナティブロックである。続く「一生このまま」でボルテージが上がる。凶暴なギターと叩きつけるような打鍵で弾かれるキーボード。最初に言っておくが、この日のライブは上音のふたりが暴れまくるのだ(そしてベースは安定感抜群!)。バンドのテンションと比例するように、Mega Shinnosukeのボーカルものっけからやけっぱちのような声である。
「東京キライ☆」で一層加熱。原曲よりもずっと速く感じるドラムがフロアを揺らし、スクリーンには火のついたマネキンが滑走するMVが映し出される。燃えているビデオ、燃えるような熱気のフロア、Mega Shinnosukeのライブは出し惜しみがない。冒頭から灰になるようなテンションで突き抜けていく。アルバム屈指のキラー「ナードと天使」がとにかく最高。頭のネジがハズれたような音色のキーボードと、全能感をまとってスパークするギター。後者は逆立てた髪とサングラスがいかがわしい雰囲気を醸し出している。Mega Shinnosukeのライブにおいてはお馴染み、ほとんど相棒のようなポジションだろう、Kohei Shimizuのプレイは画的にもサウンド的にもノイジーだ。
「明日もこの世は回るから」まで、あっという間に前半5曲が過ぎ去っていく。MCでオーディエンスにアンケート。Mega Shinnosukeのライブには、恐らく彼と同世代だろう、学生や若い社会人が多いのはもちろんのこと、無職もそれなりの人数が来場している。ということで、雪の降る「無職の多い街・東京」に向けて歌われたのが、晴れて本ツアーから解禁された「Cutie girl」である。6年前に発表されたシングルで、MVまで作られていながら何故かライブでは封印されていた楽曲だ。フリッパーズ・ギターを彷彿とさせる洒脱なポップソングは新鮮で、熱量で押し切るような前半からは一転、パッとライブの景色が変わったように思う。続く「Wonder」も含め、Mega Shinnosukeの音楽性の幅広さを実感するセクションである。
「元気に思われることが多いけど、全然そんなことない。最近は今まで見せてこれなかったネガティブとか、憂鬱な気持ちを曲に書くようになった」。そしてそれによって、そうした心情に共感するような感想が届くようになったという。だから暗い気持ちにも価値はあるんだと。それはまさにアルバム『天使様□』(□=十字架の特殊文字)に反映された感覚であり、同時にこのツアー全体のモードだろう。彼のステージがこれまでよりも少しだけ情感豊かになったと感じるのは、きっと偶然ではないのだ。そして「そういう曲を聴いても、ネガティブなところからポジティブにはならないかもしれないけど、メガティブにはなれるかもしれない」という謎の締めでMCを終え「トラウマ」へ。負の感情を撒き散らすような歌詞だが、穏やかなアコースティックギターで歌うポップナンバーというのが彼らしい。
「僕は恋をすると不安になって、現実から逃げ出したい気持ちになっちゃう」と告げて歌った「白い墓」が良い。シンプルながらどっしりとしていて、自信を感じるアンサンブルで聴かせるロックンロールである。激ポップな「青春ごっこ」でメロディメイカーとしてのMega Shinnosukeを堪能。フォーキーな作風になった前作『君にモテたいっ!!』以降、彼は良い歌を真っ直ぐに歌うことに自覚的になっているように思う。
「永遠の少年」がハイライトだろうか。「音楽が鳴った瞬間にグッと強くなったような気がする。マリオだったらスターを取ったような、どこまでも行けるような気持ちになる」と告げてサビの一小節だけを先に歌ったのは、ここに今の彼の主張があるからではないだろうか。<今夜僕らだけが正義さ><きっと僕らは幸せになれる>ーーポジティブなエネルギーを感じる疾走感のバンドサウンド、感情を爆発させるようなボーカル、スクリーンに象られる星々......まさにスターを取って虹色の身体で爆走するようなパンキッシュな演奏である。
開放感に包まれた会場に、容赦なくガソリンを投下するのがMega Shinnosukeだ。「東京調子どうだい? 楽しくなってきたな!」とアジテートして歌った「Thinking Boyz!!!」は、オーディエンスが歌う<We are the Thinking Boyz!!!>の声が気持ち良い。件の「メロい夢」ではシャボン玉が飛び出し、ファンシーな景色が浮かび上がる。こうしたギミックも大きな会場ならではだろう。爽やかなポップナンバー「君にノーベル賞」を皮切りに、「桃源郷とタクシー」「愛とU」とMega Shinnosuke屈指のヒット曲が続く。そしてTVアニメ『野原ひろし 昼メシの流儀』のオープニング主題歌に抜擢された「ごはん食べヨ」である。狙っているのか狙っていないのかわからないけど、不意にバズを起こしちゃうのがこのソングライターの特性であり、ダンサブルなポップソングは彼の魅力なんだと実感する。
最後は華やかでちょっぴりセンチメンタルな「今を踊ろう」である。人生を肯定するような楽曲が印象的なライブだった。まあ人生は短いし、誰だっていつかは死ぬんだから、好きなように生きようってことでしょう。アンコールでは<どうか幸せでいて>と歌う「さよなら天使様」を演奏。たまにはしんみりとした締めも良いかな、と思っていたが、やっぱりこれで終わることはなく「O.W.A.」に接続。愉快なオリエンタルファンクで、自身最大規模のワンマンツアーが幕を閉じた。
「僕ってちょっとおもしろいじゃないですか(笑)。コミカルというか、キャッチーというか」ーー以前インタビューした際に、彼が口にした自己評価である。そう、実際Mega Shinnosukeはちょっと面白くてコミカルでキャッチーなのだ。だから何をやっても少しはみ出すというか、とびきりポップな曲を書き続けているのに、ポップスターでもロックスターでもない別のナニカへと彼は突き進んでいるように思う。Mega Shinnosukeは奔放だ。
Text by Ryutaro Kuroda
Photo by Goku Noguchi
◎ツアー情報
【Mega Shinnosuke ONEMAN TOUR 2026】
2026年1月10日(土)福岡・BEAT STATION
2026年1月11日(日)広島・Live Space Reed
2026年1月17日(土)大阪・BIG CAT
2026年1月18日(日)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2026年1月24日(土)北海道・札幌 cube garden
2026年1月31日(土)宮城・仙台 MACANA
2026年2月8日(日)東京・Zepp Diver City(TOKYO)
<セットリスト>
1.禁断少女10
2.一生このまま
3.東京キライ☆
4.ナードと天使
5.明日もこの世は回るから
6.Cutie girl
7.Wonder
8.トラウマ
9.白い墓
10.青春ごっこ
11.永遠の少年
12.Thinking Boyz!!!
13.メロい夢
14.君にノーベル賞
15.桃源郷とタクシー
16.愛とU
17.ごはん食べヨ
18.今を踊ろう
En1.さよなら天使様
En2.O.W.A.
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