2026/04/07 12:00
マカロニえんぴつの最新アルバム『physical mind』のリリースツアーである全国ホールツアー【マカロックツアーvol.21 ~心を覗いてシラけるより、ことばのシワだけ増やしてゆけ篇~】の東京公演1日目。3月11日、東京ガーデンシアター公演。
お馴染みの入場SEであるThe Beatlesの「Hey Bulldog」が軽快に流れる中、はっとり(Vo/Gt)、高野賢也(Ba)、田辺由明(Gt)、長谷川大喜(Key)、そしてサポートの高浦''suzzy''充孝(Dr)の5人がステージに現れて、1曲目「いつか何もない世界で」のサイケデリックなイントロが色鮮やかな照明と共に奏でられ始めたとき、心にこびりつく無力さや空しさを照らしながら包み込むような明度の高い爆音に、全身が釘付けになるような体感があった。「払いのけることのできない空しさなら、抱きかかえてやっていけ」。音からそんな思いが伝わってくるような気がした。もう何度もマカロニえんぴつのライブは観ているが、ここまで勢いやエモーションだけでは語ることのできない凄みを感じたライブは初めてかもしれない。アルバムタイトルのように、まさに「体」と「心」を感じるライブだった。バンドが「生きている」ということが、聴き手一人ひとりが「生きている」ということを映し出す、そんなライブ。
4曲目に「poole」が演奏されたあと、はっとりはMCで「マカロニえんぴつのライブは参加してほしいんです。浴びるんじゃなくて」と言っていたが、そんなコミュニケーションがバンドと観客の間には生まれ続けていた。「なにも考えず眺めていろ」と受け手を舐めてかかるエンタメも多いが、マカロニえんぴつは相変わらず僕らを傍観者にさせない。
比較的序盤に演奏されて驚いた「恋人ごっこ」では観客たちの大合唱がバンドの演奏を支えた。こちらも前半に披露された「なんでもないよ、」でも観客の盛大な歌声が響いた。「なんでもないよ、」のイントロの長谷川のピアノは、これまで観たライブでは沈黙を運んでくるような繊細な響きに魅了されたが、この日のライブでは沈黙の奥にあるざわめきすら捉えるような、そんな生々しい響きを感じた。「なんでもないよ、」だけじゃない。この日の「レモンパイ」も「ヤングアダルト」もそうだったが、その名の通り「肉体的」なアルバムとなった『physical mind』のモードに引っ張られるようにして、過去の楽曲たちもその響きを変化させているのだ。
そして「ハナ」「クレイジーブルース」「きみは天使で」「NEVERMIND」――そんな『physical mind』に収録された楽曲たちがライブの中盤に立て続けに披露されたときには、このアルバムに刻まれた「心」を確かに感じた。壊れかけの、でもまだ生きている心。「クレイジーブルース」ははっとりの弾き語りでアルバムの最後に収録されていたが、ライブではバンドアレンジになって披露された。バンドのアンサンブルは、複雑なものを複雑なまま、繊細なものを繊細なまま保ちながら、でも、ひと塊の温かさになって会場を満たした。
ポップでカラフルなサウンドが華やかに響いた「カーペット夜想曲」も大きな盛り上がりを見せた。〈ライフ・イズ・ショート?大事にしようっと〉という最高な歌詞をみんなで繰り返し歌う。そして、「然らば」「パープルスカイ」「ハートロッカー」といったエネルギッシュなバンドサウンドが疾走する楽曲が連続投下された終盤は、バンドの熱狂的なテンションに観客たちも熱狂的なテンションで呼応する。この日、はっとりは「マカロニえんぴつのライブは、大きな声で歌ったって、ちょっと隣の人とぶつかったりしてしまったってかまわない」というようなことを言っていたが、その言葉の奥にある彼の気持ちは観客たちに確かに伝わっているのだと、そう感じさせる熱狂に会場は包まれる。ライブはあなたが感情を解放する場所である。ライブはあなたがあなたでいる場所である。ライブはあなたが優しさを知る場所である。マカロニえんぴつはずっと、そういうことを伝え続けている。
ライブを締め括ったのは「静かな海」だった。この曲の始まりのビートは心のさざ波のようだと思う。この「静かな海」を演奏する前に、はっとりは「あなたがいる限り、マカロニえんぴつは胸をはって寂しくいられます」と言った。自分の寂しさに胸をはる。そんなふうにステージに立っているバンドに、僕はどうしようもなく感動する。体も、心も、生きている限り、この先何度でも痛むだろう。生きているから、痛むだろう。でも、その都度、僕らはもう1度歩き出す。ボロボロになりながら、擦り切れながら、分かち合いながら。アルバム『physical mind』に宿ったそんなメッセージが確かに伝わってきた。そんなライブだった。
Text by 天野史彬
Photo by 浜野カズシ
◎公演情報
【マカロックツアーvol.22 ~いま、きみがすき!篇~】
2026年10月03日(土)大阪・大阪城ホール
2026年10月04日(日)大阪・大阪城ホール
2026年10月24日(土)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年10月25日(日)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年10月31日(土)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2026年11月03日(火・祝)東京・国立代々木競技場 第一体育館
2026年11月21日(土)宮城・仙台セキスイハイムスーパーアリーナ
2026年11月29日(日)兵庫・GLION ARENA KOBE
2026年12月05日(土)東京・有明アリーナ
2026年12月06日(日)東京・有明アリーナ
2026年12月26日(土)愛知・日本ガイシホール
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