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対談 桜井浩子(女優) × 飯島敏宏(『ウルトラマン』監督)

対談 桜井浩子×飯島敏宏監督

円谷プロダクション創立50周年記念/シルヴィ・バルタン来日記念
対談 桜井浩子(女優/コーディネーター)× 飯島敏宏(『ウルトラマン』監督)

 『アイドルを探せ』などの大ヒット曲とともに、日本でフレンチ・ポップスのブームを巻き起こしたシルヴィ・バルタンの初来日は1965年。その1年後に、当時の子供たちが夢中になった円谷プロダクション作品『ウルトラQ』『ウルトラマン』の放送が開始された。一見、無関係に思えるこの二つの出来事は、今なお人気No. 1キャラクターの座を譲ることのないバルタン星人によってリンクする。その秘密を両作品で演出・脚本を手掛けた飯島敏宏監督と、『ウルトラQ』で江戸川由利子役、『ウルトラマン』でフジ・アキコ隊員役を演じた女優の桜井浩子さんが明らかにし、創立50周年を迎えた円谷プロ作品が、その後も幅広い年齢層に愛され続ける理由も語ってくれた。

混乱の現場、溢れる若いエネルギー

総天然色ウルトラQ 特報
▲ 総天然色ウルトラQ 特報

--お二人が『ウルトラQ』(1966年1月?)や『ウルトラマン』(66年7月?)を撮影されている頃、歴史に残る作品になるという実感はありましたか。

飯島敏宏:全くありませんでした。最初に『ウルトラQ』を撮り始めた時は、「この作品、本当に完成するのかな?」と思っていましたから(笑)。TBSの映画部から、円谷英二さん(円谷プロダクション創立者)が監修する特撮の世界に飛び込んで、自分で脚本を書いたり、監督したりしながら、最終的にどんな作品に仕上がるのか、想像もできなかったんです。当時のテレビの世界は、大らかなところがありまして、どんな作品ができるか分からないまま、現場は制作を続け、営業はスポンサーに作品を売っていたわけです。それが許されたということは、逆にいえば、テレビ業界に勢いがあったということでしょうね。

桜井浩子:私もオーディションを受けた時は、「円谷さんのところに行っておいで」といわれただけで、どんな作品に自分が出るのか全く理解していませんでした。受け取った台本には『アンバランス』というタイトルが書かれていて……それが後の『ウルトラQ』だったんです。撮影に入ったら入ったで、私が所属していた東宝の映画の現場に比べて、全然スムーズには進みませんでしたね。ロケ地に行っても、結局撮影できずに帰って来ちゃったり、特撮と普通のお芝居の部分がうまくつながらずに、同じシーンを7回も繰り返して演じたり。それはそれは、ドタバタでした。

飯島敏宏:(『ウルトラQ』の主人公、万城目淳役の)佐原健二さんなんか、すでに東宝で大スターだったのに、自分で劇用車を運転していたとか。桜井さんも、当時人気の美少女スターだったにもかかわらず、現場で大変な思いをして。

桜井浩子:いやいや、お恥ずかしいです。でも、監督、ドタバタな現場でしたけれど、現場は新しい何かが生まれるエネルギーには溢れていましたよね。

飯島敏宏:確かに『ウルトラQ』を撮ったのは、監督に昇進したばかりの人たちが多かったからね。ドタバタな状況でも、とにかく自分のやり方を押し通して、撮り切ってしまうパワーはあった(笑)。

桜井浩子:『ウルトラQ』から『ウルトラマン』まで、とにかく毎日が撮影で忙しかったですね。デートする時間もありませんでした(笑)。でも、私たちは知りませんでしたけれど、『ウルトラQ』はずいぶん視聴率が良かったようで、(円谷)英二監督はゴキゲンでしたね。あまり、うれしさを表情に出す方ではなかったので、それはよく憶えています。

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バルタン星人命名の真実

インタビュー写真

飯島敏宏:『ウルトラマン』を準備した時は、まだ『ウルトラQ』も撮り終えていなかった。とにかくウルトラに関わっていたスタッフはみんな忙しかった。『ウルトラマン』も当初は、円谷一監督(英二氏の長男)が撮るはずだったと思うんですが、急に私にお鉢が回ってきた。まあ、便利屋みたいなものですよ(笑)。さあ、どうしようとなって、一つの話は本来の四つんばいスタイルの怪獣、ネロンガにした(第3話)。次はちょっと変わった植物怪獣にして、ミロガンダ(グリーンモンス/第5話)。もう一つは少し悩みましたが、『ウルトラQ』に登場したケムール人が面白かったという脚本家の金城哲夫さんの注文で、星人を主人公して、千束北男の名で脚本を書き監督もしたんです。それがバルタン星人(第2話)でした。バルタン星人という命名の由来を決めたのは、ウルトラ連絡協議会だったかな……。

桜井浩子:略してウ連協という集まりがありましたね。

飯島敏宏:そう、ウ連協と称して、プロデューサーから監督から、宣伝マンから、セクションを越えて番組宣伝用の会議をしていたんです。まあ、会議といっても、実体はお酒を飲んでばかりいたらしいけれども(笑)。とにかく私はバルタン星人のアイディアを説明して、当時、紛争地帯だったバルカン半島のように、大変な状況で故郷がなくなりつつあるバルタン星から来た星人だといった。そうしたら、説明が難しい、分かりにくいという返事なんです。例えばケムール人は煙のごとく消えてしまう星人だから、ケムール人。簡単でしょう。確かにバルタン星人は、ちょっと由来が難しい。それで誰の発言かは忘れましたが、今、人気のシルヴィ・バルタンから取ったことにしようという話になった。私も「アイドルを探せ」とか、ヒット曲は知っていましたから、宣伝になるのだったら、それでいいじゃないかと言ったんです。

桜井浩子:そういった経緯は当時、出演者である私たちは全然知りませんでしたね。

飯島敏宏:それともともとね、私はフランス語のような響きがいいと思って、最初は「バルタン」を「ヴァルタン」と書いていたんです。バルカン半島は「B」で始まるにもかかわらず、綴りも「B」じゃなくて、「V」で始まるようにして。今はいつの間にか、バルタン星人の英語の綴りは「BALTAN」になっていますが。そういった意味では、当時の私の気分としても、バルカン半島より、(バルタンの綴りが「V」で始まる)シルヴィ・バルタンに近かったのかも知れません。

フランス文化の洗礼とシルヴィ登場

インタビュー写真

--当時の日本は、シルヴィ・バルタンなどのフレンチ・ポップスだけではなく、映画やファッションでもフランス文化の影響が大きかった時代です。

桜井浩子:私が海外の文化に目覚めたのは、アメリカのジャズが最初でした。近所のおねえさんに教えられたナット・キング・コールやジュリー・ロンドンを聴いて。『ウルトラQ』を撮り始めた頃は、東宝に入って3年目で、ちょうど日本ではゴダールやトリュフォーなどのフランス映画が流行っている頃でした。初めてのデートで『去年マリエンバートで』を見てから、一気にヌーベルバーグに興味が出てきましたね。女優ではフランソワーズ・アルヌール。小説家でいえばサガンに憧れていました。そこにシルヴィ・バルタンが登場して、ああカッコいいなあと思いましたね。後にジェーン・バーキンなどフレンチ・ポップスのスターが登場しましたが、最初に知ったのは彼女でしたね。

飯島敏宏:まあ、私は桜井さんとは世代が違いますが、とにかく当時は欧米の文化が怒濤のように日本に入ってきた時代ですからね。私などは子供の頃、軍歌しか知りませんでしたから、リカルド・サントスの楽団を初めて聴いた時は驚きましたよ。日本の曲をあんな風(ラテン調)にアレンジして、演奏してね。

桜井浩子:『私はお嬢さん、お手やわらかに!』というフランス映画で、アラン・ドロンと共演したジャクリーヌ・ササールという女優がいて、彼女に似た人を東宝が募集していたんです。私はそれに応募して、この世界に入りましたから、もともとフランスの文化とは縁が深かったことになります。アラン・ドロンが来日した時は、東宝からいわれて花束を渡したこともありました。

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新時代の女性像とファッション

--ファッションについても影響を受けましたか。

桜井浩子:高級ブランドのカルダンやニナ・リッチを着ていても、裸足で歩くような女性に憧れていました。いいもの着ていても、さりげなく、自然体でいると、よりカッコよく思えて。セルジュ・ゲンスブールやジェーン・バーキンが載っていた、フランスの雑誌『Lui』を参考にしたりもしていました。女優で例を挙げるとブリジッド・バルドーの感じ。ジャンヌ・モローも好きでしたね。当時の自分は、裕福ではなかったし、そんなにお洒落はできませんでしたが、男もののシャツにジーンズを組み合わせで、私服のまま『ウルトラQ』に出ていました。それは円谷一監督の指示でもありました。

飯島敏宏:一さんは、そういうセンスがあったね。円谷プロは発足当時、東宝撮影所の中にありましたが、衣装部屋にある服を着て出ると、ちょっと流行遅れになっちゃう。桜井さんの私服のほうが、当時の流行らしくて、良かったんじゃないかな。

桜井浩子:東宝は綺麗な方々が揃っていることが会社のカラーでしたから、目立っただけだと思います。私はジーンズを着て撮影所に行くと、よく「そんな格好は、東宝の女優らしくない!」と怒られていました(笑)。

飯島敏宏:『ウルトラQ』での桜井さんは、女性カメラマン役でしょう。当時は職業婦人と呼ばれて、働く女性は憧れの的だったわけです。だから、キビキビとして、近代的なお嬢さんとして描くことが、作品のねらいだったと思いますね。

桜井浩子:私は恋愛映画の主人公に憧れて女優になったので、最初は特撮ものに興味はなかったのですが、演じているうちに楽しくなっていきましたね。特に『ウルトラQ』の江戸川由利子役は、女性らしさに欠けている(笑)自分そのままのキャラクターで演じられて、あまり肩ひじを張らず自然に役に入れましたね。

実現した円谷親子の予言

--円谷プロ作品は、創立50周年を迎える現在まで愛され続けています。その理由はどこにあるのでしょうか。

飯島敏宏:円谷プロという会社は、そこに集まっていた監督もスタッフも若かったから、みんな夢中で、手探りしながら作品を作っていたわけです。子供向けの番組でも妥協をせず、工夫をしながら全力で撮った。それに尽きるんじゃないでしょうか。

桜井浩子:番組をご覧になっていた方は、毎週、出演者に会うような気持ちで、チャンネルを合わせてくださっていたようです。当時はそのことに気づいていませんでしたが、今、イベントでファンの方にお会いすると「あの頃はアキコ隊員に会いたくて、『ウルトラマン』を観ていました」といわれて、そうだったのかと。確かに自分も最近ハマっているアメリカのドラマを観る時、そんな気持ちになっていますから。それと円谷プロの作品は、特撮だけではなく、ドラマがベースにありましたよね。怪獣や星人たちも、なぜ地球を侵略するのか、その背景がきちんと描かれていた。時間が経っても鑑賞に堪え得る理由は、そこにあると思います。

飯島敏宏:当時のテレビドラマは、例えば劇伴(劇中に流れる音楽)にしても、毎週フル編成で生録音するのが普通でしたから。ちゃんと贅沢に予算かけてつくることも、やはり大事でしょうね。今のドラマの現場だと、なかなかそれは難しいでしょうけど。

桜井浩子:『ウルトラマン』の撮影が長引いている時に、私がもう帰りたいという表情をしたら、円谷一監督から、英二監督も一緒にいるところで、こんなことをいわれたことがあります。「ロコ(桜井さんの愛称)、そんな顔するなよ。30年経ったら、この作品に出ている俳優も怪獣も、みんなスターになっているんだから」と。私はその時、一監督がおっしゃっていることが全く理解できず、真剣にそんなことを考えていることが信じられませんでしたが、確かに円谷プロができて50年が経とうとしている今も、私はこうして取材に呼んでいただいているし、ウルトラマンもバルタン星人も未だに人気があるわけです。振り返ると、その先見の明に、改めて驚きますね。

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シルヴィ・バルタン「シャンソン・イエイエの女王」

シャンソン・イエイエの女王

2013/02/06 RELEASE
VSCD-9088 ¥ 2,750(税込)

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Disc01
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  2. 02.Elle Est Partie
  3. 03.Nuit De Neige
  4. 04.Quel Effet Ca M’a Fait
  5. 05.L’Enfant Aux Papillons
  6. 06.Le Jour Qui Vient (Sound Of Laughter)
  7. 07.Le Testament
  8. 08.L’Oiseau
  9. 09.Sur Un Fil
  10. 10.Un Soir Par Hasard
  11. 11.Katamango
  12. 12.Le Kid
  13. 13.Moi (Je Ne Suis Plus Rien) (Uno Dei Tanti) ~Bonus Songs~
  14. 14.Baby Capone ~Bonus Songs~
  15. 15.Pas En Ete ~Bonus Songs~
  16. 16.Je Suis Comme Ca ~Bonus Songs~
  17. 17.Baby Capone (Version Allemande) ~Bonus Songs~
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シルヴィ・ヴァルタン「夢のアイドル」

1999/05/21

[CD]

¥1,923(税込)

シルヴィ・バルタン・ドゥジューム
シルヴィ・ヴァルタン「シルヴィ・バルタン・ドゥジューム」

1999/05/21

[CD]

¥1,923(税込)

シルヴィ・バルタン・プルミエ
シルヴィ・ヴァルタン「シルヴィ・バルタン・プルミエ」

1999/05/21

[CD]

¥1,923(税込)

パリの妖精
シルヴィ・ヴァルタン「パリの妖精」

1994/08/24

[CD]

¥2,097(税込)

夢のアイドル
シルヴィ・ヴァルタン「夢のアイドル」

1994/08/24

[CD]

¥2,097(税込)

シルヴィ・バルタン・ドゥジューム
シルヴィ・ヴァルタン「シルヴィ・バルタン・ドゥジューム」

1994/08/24

[CD]

¥2,097(税込)