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Kitri(キトリ)Mona&Hina『Secondo』姉妹インタビュー



Kitri『Secondo』インタビュー

 あらゆる音楽概念を覆しながら、新しいポップスの可能性を提示していくピアノ連弾ボーカルユニット、Kitri(キトリ)。耳の早いリスナー間ではすでに話題の姉妹だが、大橋トリオプロデュースの2nd EP『Secondo』発売に合わせてインタビューを敢行した。思い込みとか先入観とかそういうモノに捕われずご覧アレ。

Kitri結成「20本の指があって、同時に2つの声を出せるから成り立つ音楽」

--Kitriはどのような経緯で結成することになったのでしょう?

Kitri
Kitri "Mujunritsu" Music Video [official] With Subtitles/Lyrics- キトリ「矛盾律 」ミュージックビデオ(オフィシャル)

Mona:子供の頃に姉妹でピアノ教室に通っていて、私が中学生でHinaが小学生のときに先生から「連弾は勉強になるから1回やってみたら?」と提案されたんです。それで先生から曲をもらって2人で練習してみたらすごく楽しくて! ひとりで弾くのとはまた違って、息を合わせてひとつの音楽を作る喜びを味わって。そこからお互い成長していって、私が大学受験でピアノ専攻を目指していて、受験勉強中にクラシックのおんなじ曲を何回も何回も1日中弾く生活をしていたときに、「私がやりたい音楽ってこれなのかな?」と心とのズレが生まれてきたんですよね。そこで想いを吐き出すように、自分の中で新しい物語や世界を歌詞にして、それに曲を付けたらすごく楽しくて、それが息抜きというか、受験勉強中の心の支えになって。そのとき作っていた曲たちが……

Hina:パソコンのゴミ箱の中に入っていたんですよ!

--なんでゴミ箱に? 証拠隠滅ですか?

一同:(笑)

Mona:まさにそうなんですよ! 受験勉強中の身で曲を作って遊んでいたなんて許されないと思って(笑)。それでゴミ箱に捨てておいたんですけど……

Kitri(キトリ)Mona&Hina『Secondo』姉妹インタビュー

Hina:それを母が見つけてしまったんです。

--結局、バレたんですね(笑)。

Hina:でも母は「凄いね」って褒めていて。

Mona:怒られると思っていたのに予想外の反応があって。そこで嬉しくなって「自分はこれがやりたいのかも」と思ったんです。曲を作るのも好きだし、歌うことも好きなので。そんな気付きもありつつ大学に入学して、クラシックのピアノ専攻に入ったんですけど、将来的に音楽で生きていくことを考えたときに、ピアノも歌も専門的にやっていてお上手な方はたくさんいるので、その中で自分がやりたくて出来そうなことはなんだろうなと。そこで子供の頃に2人でやった連弾を思い出して! 連弾でふたりで歌うユニットはあまりいないんじゃないかなと思って、それでHinaに「やってみない?」と恐る恐る提案してみたら……

Hina:すぐ面白いなと思って「やりたい」と答えました。

Mona:で、その数年後に2人でKitriを始めました。

--Hinaさんはそこまでどんな音楽ストーリーを歩んでいたんですか?

Kitri(キトリ)Mona&Hina『Secondo』姉妹インタビュー
▲左から:Hina/Mona

Hina:姉がクラシックピアノを4才ぐらいからやっていたのを見て、それにすごく憧れていて、私も6才からピアノを習い始めたんです。それで連弾もときどきやったりしていたんですけど、中学生からは勉強の方に専念したくてピアノをいったん辞めたんです。でも部活動で6年間にわたって合唱をやっていたので、音楽にはずっと関わっていて。で、高校生のときに姉から「2人でユニットやってみない?」と誘われて、今、実際にKitriとして活動している。そういう流れですね。

--Kitriとしての活動をスタートするまではどんな準備をしていたんですか?

Mona:連弾ユニットをやると決めたからには曲を書かなきゃいけなくて、でもそれまで連弾の曲を書いたことは全くなかったので、ひたすらクラシックの連弾曲の楽譜を見て「どういう構成になっているのか」とか勉強しながら見よう見真似で書き始めて。で、歌詞もなんとなく自分で書きながら「いつか2人でのユニットで使えるように」と準備していましたね。

--他に誰もやったことがないスタイルで活動していく訳ですから、いわゆるJ-POPの曲やピアノの曲を作るのとでは勝手が全然違う訳ですよね?

Mona:そうなんですよ。もしかしたら1人で成立しちゃうかもしれないところをわざわざ2人で成立させる曲に仕上げていく、2人でやる必要性や意味を考えながら作っていくのがすごく難しくて。でも息を合わせる喜びを知ってしまったからには、10本の指では表現できないモノ。20本の指があって、同時に2つの声を出せる、だからこそ成り立つ曲を作ろうと思って書き続けました。

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大橋トリオとの出逢い「大橋さんの手に掛かると音の良さが明らかに違う」

--そんなKitri、どんな性格の2人によって成立しているのかも紐解いていきたいのですが、まず妹さんから見たお姉さんはどんな人?

Kitri 初ライブツアーKitri Debut Live Tour 2019「キトリの音楽会 #1」ティザー映像
Kitri 初ライブツアーKitri Debut Live Tour 2019「キトリの音楽会 #1」ティザー映像

Hina:姉はすごく繊細な感じで、何事にもマジメに真剣に取り組むタイプで、すごく努力家なので、私も見習わないといけないなと思うところがたくさんあります。

Mona:私は小心者なんですよ。だから私からするとHinaは妹なんですけど頼りになる。ハートが強くて、芯がブレないというか、私がクヨクヨしたり、未来について「大丈夫かな?」と不安になっていたりしても、「大丈夫でしょ!」と堂々と言い切ってくれる。で、演奏面でも、練習ではやっていなかったパフォーマンスをいきなりライブ本番中に繰り広げたりするんですよ!「え、そんな音、弾いてたっけ?」みたいな。思い切ったところがあるんですよね。普段は大人しいんですけど、内に秘めた情熱がある。

--対照的だから相性が良いところもあるんでしょうね。ただ、家族とユニットを組むとなると大変じゃないですか? 公私共にずっと一緒にいる訳で、普通の姉妹や兄弟ならケンカが絶えなかったりしそうなもんですけど、Kitriはどうなんでしょう?

Kitri(キトリ)Mona&Hina『Secondo』姉妹インタビュー
▲Mona

Mona:むしろ私にとってはいちばん自然体で居られる相手ですね。私は子供の頃からピアノに熱中していて「ピアノが友達」みたいな感じだったので(笑)、家に帰ったらすぐピアノを弾いていたし、学校以外の時間はほとんどピアノを弾いていて、誰かから遊びに誘われても「ごめんね、ピアノが……」と言っているような人間だったんです。

--何よりピアノが好きだったんですね。

Mona:好きだったし、ピアノの練習をすることがあたりまえだと思っていたんですよ。だから誰かとすごく仲良くなったり、積極的にコミュニケーションを取ったりするタイプではなかったので、唯一何でも自然体で言える相手がHinaだったんです。

--なるほど。そうなると、Hinaさん以外とユニットを組むことは考えられなかった訳ですね。ちなみに、Hinaさんもあまり友達と遊んだりしない少女時代を過ごしていたんですか?

Hina:姉と比べると友達と遊んでいたほうだと思うんですけど、でも姉に遊んでもらうことがいちばん多かったです(笑)。それぐらい、昔からなかよし。

--そんな姉妹だからこそ、これだけ多種多様な音楽を生み出していけているんでしょうね。理解を深め合う作業がいちばん時間かかりそうな音楽性ですけど、姉妹だから一瞬で分かり合えたりするんだろうなって。

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▲Hina

Mona:感性や感覚が近いので、説明しなくても感じ取って理解してくれたりしますね。例えば「私はこうしたい」と意見を述べるにしても、Hinaじゃなかったら気を遣って言い方とかもすごく考えると思うんです。でもお互いに自由に意見を言い合って、それをお互いに聞くというスタンスで活動できているので、そこも姉妹で良かったなと思いますね。

--家族だから本音をぶつけ合うことに躊躇いがない訳ですよね。

Mona:それはありますね!

--遠まわしに伝えなくていい(笑)。

Hina:そこは音楽を作っていく上で大きいと思います。

--そんなKitriが表舞台に出て行く上で大きな出逢いがありました。2nd EP『Secondo』でもプロデューサーとして迎えている大橋トリオさん。

kitri(キトリ)『LIFE(ライフ)』MUSIC VIDEO
kitri(キトリ)『LIFE(ライフ)』MUSIC VIDEO

Mona:予想だにしていなかった出逢いでしたね。大橋さんのファンクラブイベントの際、ウチの父が大橋さんの事務所の社長さんに私たちの自主制作盤を渡したことがきっかけで、社長さんが大橋さんにそのCDを渡してくださって、そしたら面白いと思ってくださったみたいで「何か一緒に作りませんか」という話になったんです。ただ、そうは言って頂けたものの、プロデュースをして頂く発想は全くなかったので、初めてレコーディングでご一緒したときは震えましたね(笑)。自分たちも大橋さんの音楽が好きで聴いていたので「信じられないな」と思いつつ、せっかくの有り難い機会を頂いたからには「良い音楽を作って、自分たちも世の中に知って頂けるように頑張ろう!」って意気込みました。

--Hinaさんはどんな気持ちになりました?

Hina:まず自主制作のCDをお渡しして、お返事があるとは思ってもいなかったので、まずビックリしました。それで「一緒に作りましょう」と言って頂いたときは「頑張ろう」と思いましたけど、最初は夢見心地でした(笑)。でも自分たちも地に足を付けて「自分たちの音楽をやっていきたい」という意識がより高まったような気がします。

Mona:大橋さんのプロデュースは、大橋さんのカラーを全面に出すというよりは、Kitriの個性をすごく大切にして下さっていて、私たちの「良い」と思ったところをありのまま伸ばそうとしてくれるんです。その上で「良い音で録りたい」と。なので、同じ曲でも大橋さんの手に掛かると音の良さが明らかに違うんです。それによって曲がより良く聴こえたり。あと、大橋さんは大事なところでワンポイントアドバイスをくれるんですよ。「この音を1オクターブ下で弾いたら?」とか「テンポもメトロノームを1落としたら?」とか細かい違いなんですけど、それで世界がガラっと変わったり、音楽が良くなったりするんです。そういう繊細なプロデュースをして頂けるので、すごく刺激を受けています。

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音楽概念を覆した新作「別に連弾じゃなくてもいいんじゃないか」

--そして、2019年1月に1st EP『Primo』でメジャーデビューを果たしました。リードトラック「羅針鳥」を聴いたとき「デビューした瞬間から孤高な戦いが始まっている」と思いました。要するにライバルも仲間もまだ存在していない音楽をやっているなと。

Kitri - キトリ-「羅針鳥」 Rashin dori Music Video [official]
Kitri - キトリ-「羅針鳥」 Rashin dori Music Video [official]

Mona:たしかに(笑)。全く同じスタイルの人たちはいないですし、自分たちでも「これはどのジャンルに当てはまるんだろう?」と思いながら活動しているぐらいなので、そういう意味では本当に孤高。なので、Kitriというジャンルを作っていきたいと思って活動していますね。ピアノ連弾ボーカルユニットというスタイルもそうなんですけど、誰もやっていないところを探したいというか、常にイマジネーションを働かせながら「新しい!」と思うモノを発信していきたいんです。聴いている人が飽きない。好きでも嫌いでもいいから「え、何、この音楽? 今まで聴いたことない」と驚いてもらえるような音楽を届けたい。

--ちなみに、Kitriというユニット名の由来って何なんですか?

Hina:クラシックバレエでもおなじみの『ドン・キホーテ』という物語がありまして、その主人公はすごく空想が好きで、その空想の中にキトリという少女が出てくるんですけど、私たちも空想が好きというか、歌詞を書くときも空想で作っていたりするので、そこに関連付けてKitriというユニット名にしました。

--今回の2nd EP『Secondo』も、たしかに空想上の世界を体感させてくれます。楽曲もアートワークも含めてすべてが非現実的ですよね。

Mona:前作『Primo』はメジャーデビュー第1弾ということで、私たちの「デビューします!」という決意を込めて作ったモノで、そこから少しずついろんな人に知って頂いているんですけど、今回は「もっともっと知って頂きたい」という想いも持ちつつ、自分たちのやりたいこと=挑戦を詰め込んでいるEPです。

--具体的には、どんな挑戦が出来たなと感じていますか?

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▲2nd EP『Secondo』ジャケット写真

Mona:思い込みとか先入観とかそういうモノに捕われず曲を作る。それが各楽曲における目標としてあって。例えば、多くの歌詞は物語で進んでいくイメージが自分の中にあったんですけど、まずその思い込みをやめて、「単語だけが並ぶ歌詞もあっていいんじゃないか」と思って書いたのが1曲目「矛盾律」で。曲の作り方も、いつもは歌メロから書くことが多いんですけど、この曲はピアノアレンジから作っていって、まずピアノだけでも成立するモノを書いて、Aメロ~Bメロ~サビという流れも「別になくていいんじゃないか」と自分に課して作っているので、構成がすごく独特なんです。

--自分の中の概念をひとつひとつ壊していっている。

Mona:そうなんです。2曲目「目醒」に関しては「別に拍子もどんどん変わっていいんじゃないか」と思って作っていますし、3曲目「Dear」は「別に連弾じゃなくてもいいんじゃないか」とすごく素直なバラードに仕上げていて……

--ピアノ連弾ボーカルユニットとして売り出しているのに、2nd EPで早くも連弾という概念も取っ払ってしまったんですね。これ、ヴィジュアル系バンドが2作目で化粧落とすのと一緒ですからね。

一同:(笑)

Mona:その曲に連弾が必要であれば連弾にしますけど、必要じゃない曲であればそれでいいかなと思っていて。で、4曲目「終わりのつづき」はエレピから始まるっていう。それが自分の中での挑戦で、エレピ自体弾いたことがなかったんですけど、そういった感じですべての曲にチャレンジしていきました。

--全体的に芸術色が濃い作品だと思うんですけど、このペースでこれだけの衝撃作をリリースしていたら、数年後には無音の曲とか出してそう。

John Cage's 4'33
John Cage's 4'33"

Hina:ジョン・ケージ(笑)。

--「4分33秒」を超える衝撃作を生み出してほしいです。

Mona:興味ありますね(笑)。自然とサウンドスケープも取り入れる必要性があればやってみたいですし。

--そうした感性も持ち合わせながら、日常の中に溶け込めるポップスも目指しているところがKitriの面白いところですよね。2nd EP『Secondo』、どんな風に楽しんでもらいたいなと思いますか?

Mona:1回聴いて「なんだこれ?」と思って、そこで終わらず「もう1回聴きたいな」と思って頂きたいですね。それぞれの曲にそれぞれの物語があって、何回もその物語の世界へ行きたくなるように作っているので、何回も何回も繰り返し楽しんでもらいたいです。

Interviewer:平賀哲雄|Photo:山田秀樹

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Kitri「Secondo」

Secondo

2019/07/24 RELEASE
COCB-54286 ¥ 1,980(税込)

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Disc01
  1. 01.矛盾律
  2. 02.目醒
  3. 03.Dear
  4. 04.終わりのつづき
  5. 05.矛盾律 -naked-

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