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サウンズ・オブ・ブラックネス来日記念特集~ゴスペル界の革命児の軌跡と魅力に迫る&「ベスト・ゴスペル・ソング」プレイリスト公開

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 重厚かつ荘厳な混声コーラスと、コンテンポラリーでダンサブルなグルーヴ。ゴスペルというと、教会で聴く少し敷居の高い音楽という印象を持つ方は多いかもしれない。しかし、サウンズ・オブ・ブラックネスを知るか知らないかで、そのイメージは随分変わるだろう。90年代初頭にメジャー・デビューを果たし、ジャム&ルイスの最新サウンドと合体させたことで、ゴスペルというジャンルの壁を大きく取り払った彼らは、まさにゴスペル界の革命児。間も無く来日公演を行う彼らの軌跡と魅力に迫ってみたい。

※SOBのリーダー、ゲイリー・ハインズが選ぶ「ベスト・ゴスペル・ソング」&ビデオ・メッセージが到着!

 サウンズ・オブ・ブラックネスの歴史は非常に長い。およそ50年前の1969年に、ミネソタ州セントポールにあるマカレスター大学の学生よって結成された。中心人物はラッセル・ナイトンで、当初はマカレスター・カレッジ・ブラック・ヴォイセスと名乗っていたようだ。1971年からはキーボード奏者のゲイリー・ハインズがミュージカル・ディレクターとして参加することになり、この時より正式にサウンズ・オブ・ブラックネスと名乗るようになった。

 大所帯のコーラス・サウンドを武器にエンターテインメント性の高いパフォーマンスを行ってきたサウンズ・オブ・ブラックネスは、徐々に人気を集めレコード・デビューの話も何度か浮上したが、諸事情があってなかなか実現しなかった。レコード・オファーの中には、まだ当時はネガティブなイメージを持たれていた「ブラックネス」という言葉を、グループ名から外してほしいというリクエストもあったようだが、彼らは頑なに拒否したという。80年代末にはアン・ネズビーが加入するなど中心メンバーが確立し、まさに脂の乗ったハーモニーを聴かせていたという。

CD
▲『エヴォリューション・
オブ・ゴスペル』

 彼らがようやくメジャーでのレコーディング・アーティストとして日の目を見たのは、結成から約20年経った1991年のことだった。80年代後半に出会った当時の売れっ子プロデューサー・チーム、ジミー・ジャム&テリー・ルイスが立ち上げたパースペクティヴ・レコーズから、アルバム『The Evolution of Gospel』を発表。ニュー・ジャック・スウィングやヒップホップといった当時のトレンドを取り入れたダンサブルなゴスペル・サウンドが非常に新鮮で、米ビルボードのゴスペル・チャートでは12位止まりだったが、R&Bチャートでは4位にまで上昇した。また、シングル・カットされた「Optimistic」や「The Pressure Pt. 1」も、ゴスペル・チャートではなく、ダンス・チャートやR&Bチャートで続々と上位にランクインという好成績を残した。そして、グラミー賞のゴスペル・コーラス部門を見事に受賞し、一躍ゴスペルを含むブラック・ミュージック・シーンでの存在感を見せつけた。



▲ 「Optimistic」MV


 翌1992年には、ヒット映画『モー・マネー』のサウンドトラックに、「Joy」という楽曲を提供。また、彼らのエンターテインメント性がたっぷり詰まったホリデイ・アルバム『The Night Before Christmas - A Musical Fantasy』をリリースし、クリスマス・シーズンを楽しませてくれた。そして、1994年にアルバム『Africa To America - The Journey Of The Drum』を発表する。こちらも引き続きジャム&ルイスがプロデュースを担当。オハイオ・プレイヤーズの名曲「Pain」をサンプリングしたシングル・カット曲「I Believe」が、米ビルボードのダンス・チャートで1位を記録するというヒットとなった。アルバム自体もアフリカ・ルーツをコンセプトとし、オーソドックスなゴスペル・コーラスとモダンなR&Bサウンドが交差するスケール感のある内容が高く評価され、彼らの初期最高傑作との呼び声も高い。



▲ 「I Believe」MV


CD
▲『キングス&
クイーンズ』

 その後は、『Time For Healing』(1997年)、『Reconciliation』(1999年)、『Soul Symphony』(2002年)、『Unity』(2005年)、『Kings & Queens: Message Music From The Movement(2007年)、『The Sounds Of Blackness』(2011年)と、力作アルバムを発表し続けている。いずれも時代によってサウンドの変化はあるが、圧倒的なコーラスの迫力や、ゴスペルをいかに新鮮に聞かせるかというテーマは不変。どのアルバムを聴いても、信仰や宗教を超えて、ポップスとしてもしっかりと成立しているのだ。

 彼らのゴスペルへの探究心は、これまでに関わったコラボレート作品にもつながっている。プリンスのサウンドトラック作品『Batman』(1989年)、久保田利伸『The Baddest』(1989年)、スティーヴィー・ワンダー『Conversation Peace』(1995年)、ジョン・セカダ『Secada』(1997年)、ノーマン・ブラウン『Sending My Love』(2010年)など、ジャンルを超えた傑作に彩りを与え、ゴスペル・コーラスの存在感を打ち出してきた。また近年でも、ドナルド・トランプの大統領就任に対して、代表曲である「Optimistic」で踊る動画が巷で盛り上がり、コモンとロバート・グラスパーらが結成したスーパー・グループ、オーガスト・グリーンが同曲をカヴァーするなど再評価の兆しも高くなっている。そして、この動きと比例するようにゴスペルというジャンル自体が、R&Bやヒップホップから非常に注目されているのだ。



▲ 「Hold On (Change Is Comin')」MV


 こういったタイミングで、この4月にはビルボードライブでの来日公演が決定している。ゴスペル再評価のムーヴメントはもちろんだが、何よりも彼らのエモーショナルなエンターテインメントを楽しむなら、やはり間近で体感するステージがおすすめだ。この機会にダンサブルで迫力あるゴスペル・サウンドに触れてみてはいかがだろうか。

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    &ビデオメッセージが到着!
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ゲイリー・ハインズが選ぶ「ベスト・ゴスペル・ソング」

01. Optimistic - Sounds of Blackness

信仰と勝利は優劣に関わらない。


02. I Believe - Sounds of Blackness

信じていれば不可能なことは何もない。


03. The Lord Will Make A Way - Sounds of Blackness

何があろうとも、神がいつもそこにいて道を作ってくれる。


04. Testify - Sounds of Blackness featuring Carrie Harrington

感謝し、認め、称賛する。神は全てのために。


05. Fly Again - Sounds of Blackness

失敗と苦難の先に勝利がある。


06. Hallelujah, Lord - Sounds of Blackness

神への称賛、栄光、名誉、そして感謝を。


07. Total Praise - Richard Smallwood

神への賛美のために両手をあげよう。


08. Mary, Don’t You Weep - Aretha Franklin

神はあなたが直面するすべての苦難のために闘ってくれる。


09. Take My Hand, Precious Lord - Mahalia Jackson

ゴスペルの父、トーマス・A・ ドーシー。神はいつもあなたのことを見てくれている。


10. Oh Happy Day - Edwin Hawkins

コンテンポラリー・ゴスペルの父、エドウィン・ホーキンズ。救世へのお祝いだ!


11. Royalty feat. HSRA - Sounds of Blackness


12. Black Lives Matter: No Justice No Peace - Sounds of Blackness

「Royalty feat. HSRA」と「Black Lives Matter: No Justice No Peace」はどちらも、アフリカン・アメリカンの人々、文化、歴史、遺産の美と価値と豊かさを表している。



Billboard JAPANのApple Musicプレイリストはこちらから>>>

SOBのゲイリー・ハインズからビデオ・メッセージが到着!


▲Gary Hines from Sounds of Blackness Video Message for Billboard Live Tour 2018

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