Billboard JAPAN


Special

オブ・モンスターズ・アンド・メン 来日インタビュー

OMAM インタビュー

 アイスランド・レイキャヴィックを拠点に活動する5人組バンド、オブ・モンスターズ・アンド・メン。2012年に「リトル・トークス」で注目を浴び、アコースティック・サウンドやブラスなどを取り入れたアンセミックな心躍るナンバーを多数収録したデビュー・アルバム『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』で米ビルボード・アルバム・チャート6位を記録。その観客を巻き込んだ高揚感溢れるハッピーなライブで、【FUJI ROCK FESTIVAL】をはじめとする世界中の主要音楽フェスに引っ張りだこに。そして2015年6月、母国アイスランドでデビュー作がリリースされた2011年から約4年の時を経て完成した2ndアルバム『ビニース・ザ・スキン』を発表、米ビルボード・アルバム・チャート3位を記録する快挙となった。最新作を引っさげ、【FUJI ROCK FESTIVAL '15】に出演するために再来日を果たした、OMAMのフロントマン、ラグナル“ラッギ”ソウルハッキソンとドラマーのアルナル・ロウゼンクランツ・ヒルマルソンにフジロック出演翌日にインタビューを決行、バンドのムードメーカー的存在な2人が和気あいあいと語ってくれた。

【FUJI ROCK FESTIVAL '15】のライブ・レポートはこちらから>>
http://www.billboard-japan.com/special/detail/1325

曲を通して一つの音調が絶えずビルドアップしていく
曲があったら面白いんじゃないか

Empire
▲ 「Empire」 MV

――2度目の【FUJI ROCK FESTIVAL】出演となりましたが、楽しめましたか?

2人:うん!前回よりは色々見て回れたし。

ラグナル“ラッギ”ソウルハッキソン:今回一緒に来日しているセッション・ベーシストがスキー・リフト(ドラゴンドラ)で山頂まで昇ったって言ってて、僕らも行きたかったんだけど着いた時にはもう閉まってて残念だった…。

――確か16時頃に閉まっちゃうんですよね。そう言えば、(ベーシストの)キディの容体は?

ラッギ:大分回復したと思うよ。今アイスランドで療養中なんだ。重度のサルモネラ感染症にかかちゃって、医者に長いフライトは避けた方がいいって言われたから、オーストラリアと日本には来れなかった。でも、この次のカナダのショーからは復帰する予定だよ。

――昨夜の<レッド・マーキー>でのステージは、テントから人が溢れるほど大入りで、観客全員シングアロングしていて、OMAMのライブの魅力が最大限に堪能できました。

ラッギ:うんうん。演奏してる方もすごく楽しかった!

アルナル・ロウゼンクランツ・ヒルマルソン:アコースティック・セッションには、これまでで一番沢山人が集まったって聞いたよ。すごくクールだ。

――デビュー作がリリースされたのは2011年なので、メンバー的にもやっと新曲がプレイできて嬉しんじゃないですか?

ラッギ:そうなんだよね、1stアルバムの曲をしばら~く演奏し続けてたから(笑)。昨日は、1stの曲と2ndの曲を半々ぐらいプレイしたね。

――これまでライブで培ってきた経験は、最新作『ビニース・ザ・スキン』のソングライティングにどのような影響を及ぼしましたか?

ラッギ:2年以上ツアーしたから、どんなことをしたら盛り上がるとか、ライブ映えするか、っていうのは十分に学べた。でもソングライティング自体には、さほど影響は与えてないかな。むしろ曲をアレンジをする時に考えるって感じ―「こういう風にアレンジしたら、どんなフィーリングを呼び起こすだろう?」とか。

アルナル:レコーディングが終わって、どのようにライブで演奏するか考え出した時に、ネックになる部分が多くあることに気づいた。多分、アルバムの要素をライブですべて再現するには、あと5人ぐらいオン・ステージ・メンバーが必要なんじゃないかな(笑)?

ラッギ:その通りだね。

アルナル:でも、これ以上オン・ステージ・メンバーが増えたら、金銭面で大変(笑)!

Hunger
▲ 「Hunger」 (Live)

――(笑)。ニュー・アルバムからの楽曲で特にライブ映えするな、と2人が感じる曲は?

アルナル:「Hunger」じゃない?

ラッギ:いいチョイスだね。

アルナル:「Wolves Without Teeth」も。

ラッギ:うん。多分この2曲が一番ライブで映えるんじゃないかな。

――個人的には、ライブの1曲目に演奏した「Thousand Eyes」のムーディーかつドラマチックな展開に引き込まれました。

ラッギ:確かに、ライブのイントロダクションにピッタリだよね。これまでの僕らの楽曲のイメージとは少し違うしね。あの曲はナンナのアイディアだったんだ。で、アルナルのアイディアが加わって…。

アルナル:あのドゥドゥドゥ、っていうパターンがあるじゃん?

――パーカッションの?

アルナル:そう、曲を通して一つの音調が絶えずビルドアップしていく曲があったら面白いんじゃないかって。そして、まるで何かに飲み込まれたかのように…クロスフェードして終わるんだ。

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それらについて書きたいと思えるようになった

Organs
▲ 「Organs」 (Official Lyric Video)

――「Thousand Eyes」は、全編アコースティックの「Organs」とは、まるで正反対のフィーリング持つ楽曲ですが、「Organs」は、さっきアルナルがちょこっと話してた、アコースティック・セッションで演奏していましたね。

アルナル:あの時、初めて生で演奏したんだ!

――お~、そうだったんですね。

アルナル:しばらくアコースティック・セッションはやってなかったから、ステージに上がる前に「3曲目は何にしよう?」ってみんなで考えてて、「Organs」が候補にあがったんだけど、結局決まらないまま時間になっちゃって、その場でナンナが思い切ってプレイしたんだ(笑)。

――OMAMの楽曲は、趣向を凝らしたアレンジだったり、アンセミックなものが大半なので、ああいったシンプルな曲は新鮮でした。

ラッギ:うん。曲がそれを求めてたんだと思う。大がかりなアレンジは必要ない、今のままが一番いい状態だって。

アルナル:あの曲は、プロデューサーのリッチ・コスティの影響が大きいね。俺たちって、どんな曲でもスケール感をプラスして、アンセミックにする傾向があるから、それに歯止めをかけてくれた。

――アイスランドでのレコーディングはシガー・ロスが所有するスタジオで行われたそうですね。

ラッギ:最高だった。いい雰囲気なんだ。かなり広いスペースだから、音の広がり方がとても独特で。だから、ドラム・パートは、ほとんどあのスタジオでレコーディングしたものを使ってる。テクノロジーの面においてもっと優れたスタジオは他にたくさんあっただけど、やっぱりいいスペースには、どんなテクノロジーも敵わないんだ。

――昔、スイミングプールだったところを改装したスペースだ、って聞きました。

ラッギ:そう、1950年代はプールだったみたいだよ。

アルナル:壁が厚いコンクリートで作られていて、天井も高いから、面白い音の響き方がする。特に、ドラムの音がすごく映えるんだ。

I Of The Storm
▲ 「I Of The Storm」 (Live)

――日本盤ボーナス・トラックの「I Of The Storm」のリミックスを手掛けているアレックス・ソマーズとはこのレコーディングをきっかけに出会ったのですか?

ラッギ:いや、これまで何度か会ったことがあって顔見知りではあったんだ。一番最初に会ったのは誰かが開いた卓球パーティーの時かな。アレックス自身、レイキャヴィック市内にスタジオを所有していて、彼のスタジオで作業した時に仲良くなったよ。彼は想像できないような、ヘンテコな楽器をたくさん持ってるんだ!そこで様々な音の断片をオヴァーダブしたんだ。

――中でも一番変っていた楽器は?

アルナル:それは内緒、トップ・シークレットだよ(笑)!いや、でも箱一杯の子供の玩具があって…電話とか、あえて楽器じゃないものの音をヴィンテージのピアノサンプラーとかテープにレコーディングした。それらを繋ぎ合わせると無限の可能性が広がってくるんだ。楽器で作った音ではないものを、いかに楽器のように聞こえさせるか実験してみたんだ。

――サウンド面において、他にどのような実験を行いましたか?

ラッギ:色々なシンセ・サウンドで実験したね。

アルナル:後は、マレットパーカッションとか。前のアルバムでも少し使ったけど、今作ではより際立ってる。

ラッギ:ループやサンプルもたくさん使った。それとピアノ。今作はピアノがキーになってるね。

アルナル:そう、それからグロッケンシュピールとか…マリンバとか。

――詞に関しても伺いたいのですが、前作のフィクショナルなストーリー性のあるものに比べ、今作は内省的で、パーソナルな内容に仕上がっています。

ラッギ:メンバー同士、よりオープンにならなきゃいけないっていうのは、大きな挑戦だった。表立ってパーソナルにならなくてはならなかったんだ。これまであまり腹を割って話せなかったことを、気兼ねなく話せるようになること。すべてをさらけ出す必要はないと思うけど、詞とより深いレベルで繋がり、自分にとっての意味を成すものにするために重要なステップだった。今年でバンドが結成されて4年目で、これまで様々な新しい経験をしてきた。経験値が増えたからこそ、それらについて書きたいと思えるようになったんだ。

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その中に一つでもいいアイディアがあればいい

Silhouettes
▲ 「Silhouettes」 (Live for World Cafe)

――前作のツアーを行っている時から、徐々に曲のアイディアは貯めていっていたのですか?

ラッギ:うん、iPadもスマホもアイディアで満杯だった。自分で記録したにも関わらず、中には忘れていたものもあったよ。使えるものもあれば、そうじゃないものもあったし。

アルナル:その内、ほとんどはクソだった(笑)。

ラッギ:ほとんどクソだろうと、その中に一つでもいいアイディアがあればいいんだ。

アルナル:確立でいうと、1/30ってとこだね。

ラッギ:その30のクソなアイディアを貫なかければ、すべてOKさ(笑)。

――ツアー中は、サウンドチェックが終わった後に、ジャムしながら新曲作りを行うこともあったそうですが、この方法で出来上がった曲はあるのですか?

ラッギ:その手法は試してみているけど、結果は半々ってとこだね。映画『ハンガー・ゲーム』の為に書いた曲(「Silhouettes」)は、その方法で作った曲だよ。でも、サウンドチェックの時って、周りに人がたくさんいるから、ちょっと妙な感じで、この手法が有効か、どうかっていうのはまだ模索中だな。

――2人がアルバムの中で、特に出来に満足している曲はありますか?

ラッギ:やっぱり「Organs」かな。

アルナル:俺は「Wolves Without Teeth」。あの曲の為に、俺とラッギは他のメンバーと口論になったからね。俺たちは、いい曲になり得る可能性があると思ってたから、曲をボツにしたくなかった。だから、レコーディングする直前に完成させたんだ。それと、今回のレコーディングでは、バンドとして初めて大喧嘩した。

ラッギ:しかも、最後の最後で。あれは悪夢だったね。LAでレコーディングしていた時で、アイスランドに戻る前の晩で、何が何でもアルバムを完成させなければならなかった。でも、アルバムの最後の曲のエンディングがまだ決まってなくて…。

アルナル:その上、その週は毎日20時間近くスタジオにいたから、いい加減終わらせて家に帰りたい、って感じで、メンバー間もピリピリした空気になってた。

ラッギ:エンディングと言っても、最後の4拍だよ!

アルナル:候補は3つあって…。とりあえず、一番最初の候補をはめ込んでみたら、しっくりきたから、そのままそのアイディアを採用したんだ(笑)。

Crystals
▲ 「Crystals」 MV

――ニュー・アルバムのアートワークや収録曲のリリック・ビデオに使われている三角形やダイアモンド型のシンボルはどのように生まれたのですか?

ラッギ:あれはLeif Podhajskyというアーティストに頼んだんだけど、シンプルかつインパクトがあるものにしたかった。彼が「Crystals」のアートワークのために作った黒バックに白いシンボルのアイディアが気に入ったから、アルバム収録曲すべてにシンボルを作ってもらおうと考えついたんだ。僕らが気に入ったものに辿り着くまで、結構時間がかかったんだよ。でも、1曲、1曲、違う“顔”も持っているというアイディアはクールでしょ。

アルナル:そう、彼なりの曲の解釈をシンボルに落し込んでいったんだ。

ラッギ:ランダムではなくて、詞を見ると、きちんとその内容に沿ったものになっている。

アルナル:ただの思い込みかもしれないけど(笑)。

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Human
▲ 「Human」 (Official Lyric Video)

――一応お聞きしますが…今作が米ビルボード・アルバム・チャートで3位になったと聞いた時、どのように受け止めましたか?

ラッギ:う~ん。僕にとっては、ただの数字で、特に大きな意味合いはないかな。3位だ、って言われても、なんだか実感が湧かないんだよね。

アルナル:そう、ツアー中にマネージャーのアシスタントに「3位だったよ。」って言われた時、「そりゃ、良かったね。」って感じでさ(笑)。あまりそういうことを考えて、活動してないから。

ラッギ:僕ら的には、そういうものより、例えばフジロックのステージを観に来てくれた観客が、曲を一緒に歌ってくれているのを目の当たりにすることで、あぁ、ちゃんとアルバムを聴いてくれてるんだ、っていうのを実感する。YouTubeの再生回数にしろ、3千万回視聴されたなんて言っても、1人の人間が何回も繰り返して観ているだけかもしれないしさ(笑)。

――分かりました(笑)。ここ数年間ツアー中に様々な国を訪れたと思うのですが、アイスランドを離れてみたことで、自国やその人々について改めて気づかされたことはありますか?

ラッギ:改めてアイスランドは孤立していると思ったよ。

アルナル:俺は、離れてみて、アイスランドの良さがやっとわかった気がする。目の前からなくなって、その価値に初めて気づかさせられる、っていうことわざみたいに。

ラッギ:3日以上連休があると、アルナルは必ず田舎の方に行ってるね。ジープに乗って、飼い犬たちと彼女とキャンプしたり、釣りしたり。ヤツは、時間があると、それしかしないんだ。

アルナル:(笑)。俺はアイスランドが大好きだ~!

ラッギ:僕も好きだけど、彼女がデンマークに住んでるから、時間がある時は、大体デンマークで過ごしているよ。でも、やっぱり家が一番さ。

――今後アイスランドへ行ってみようと思っている人にオススメスポットがあれば教えてください。先日、オーラヴル・アルナルズがレイキャヴィックにフライドポテト屋をオープンさせたと聞いてビックリしました。

ラッギ:ベルギー風のフライドポテトだよね。その店、既にいいオススメスポットじゃん(笑)。

アルナル:今度戻った時に行ってみよう~。

ラッギ:フレドリック・ドール(Fridrik Dor)っていうアイスランドの有名なポップ・シンガーと共同経営してるみたい。

アルナル:フレドリックが店の顔なんだと思うよ。

ラッギ:確かオーラヴルはヴェジタリアンで、ジャンク・フードが食べたい時、フライドポテトを食べるんだ。

アルナル:俺的には、レイキャヴィック以外だったら、どこに行っても面白いと思う。俺、レイキャヴィックに住んでるけど、住人の俺が言うんだから間違いない(笑)。

――では最後に、ラッギは左利きギタリストですが、好きな左利きギタリストは誰ですか?

ラッギ:え~、誰がいたっけ?自分のことあまりギタリストだとは思ってないからな。ステージで手持無沙汰になっちゃう、ってだけで。僕、ダンサーでもないし、パフォーマンス的なものには自信ないし…。

アルナル:ギターは歌声を支えてるって感じじゃない?

ラッギ:そうだね。リズムをキープするための道具。

――じゃあラッギはポップ・シンガーに不向きですね(笑)。

ラッギ:(ハンドマイクで歌う真似をしながら)いや~、無理だね。

アルナル:(大笑)。

ラッギ:ポップ・シンガーだったとして、僕のことを観にきてくれる人なんていないんじゃない?いるかな(笑)?

オブ・モンスターズ・アンド・メン「ビニース・ザ・スキン」

ビニース・ザ・スキン

2015/06/10 RELEASE
UICU-1265 ¥ 2,695(税込)

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Disc01
  1. 01.クリスタルズ
  2. 02.ヒューマン
  3. 03.ハンガー
  4. 04.ウルヴズ・ウィズアウト・ティース
  5. 05.エンパイア
  6. 06.スロー・ライフ
  7. 07.オルガンズ
  8. 08.ブラック・ウォーター
  9. 09.サウザンド・アイズ
  10. 10.アイ・オブ・ザ・ストーム
  11. 11.ウィ・シンク
  12. 12.バックヤード (海外デラックス盤ボーナス・トラック)
  13. 13.ウィンター・サウンド (海外デラックス盤ボーナス・トラック)
  14. 14.ブラック・ウォーター (クリス・テイラー・オブ・グリズリー・ベア・リミックス) (海外デラックス盤ボーナス・トラック)
  15. 15.アイ・オブ・ザ・ストーム (アレックス・サマーズ・リミックス) (海外デラックス盤ボーナス・トラック)

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