Billboard JAPAN


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2020/11/10

鞘師里保「私も幸せでいたいし、みんなにも幸せであってほしい!」モーニング娘。卒業以来5年ぶりのインタビューで熱弁

 かつてモーニング娘。再ブレイクの要として大活躍し、2015年に数多のアイドルファンに惜しまれながら17歳の若さで卒業。あれから5年の時を経て、22歳になった鞘師里保がソロアーティストとして日本のエンタメシーンにカムバックした。

 12歳のデビュー当時から取材しているBillboard JAPAN.comでは、そのソロデビュー記念として再会インタビューを敢行。グループ卒業後の日々、故郷=モーニング娘。への凱旋、インスタ開設の理由、ソロ本格始動後初の主演舞台【黒世界】~女優業、この先届けていきたい音楽、みんなに伝えたい熱い想い―――ぜひご覧頂きたい。

◎鞘師里保@ソロデビュー記念インタビュー

<2020年の鞘師里保から見た、モーニング娘。の鞘師里保>

--モーニング娘。卒業インタビュー(https://bit.ly/3oWMttS)以来5年ぶりということで、今回はその期間の話も振り返りつつ、これからの鞘師里保についてお話を伺わせて下さい。まず卒業後はどんな日々を送っていたのでしょう?

鞘師里保:想像以上に冒険できた日々だったんですけど、卒業直後は「何かやらなきゃいけない」そういう使命感があったんですよ。モーニング娘。という大きい場所で育ててもらって、そこから巣立っていくのだから、無理にでも頑張らなきゃいけないプレッシャーみたいなモノがあったんです。

--「生半可な気持ちだと申し訳ない」そんな感覚だったんですかね?

鞘師里保:そうです。動いていなきゃいけない、すぐ何かしなきゃいけない、そんな想いばかりに支配されていたんですけど、自分のペースで「純粋にこれがやりたい」と思うことをやらなきゃ卒業した意味がないなと途中で気付いて。だから、ダラダラしたい時期はひたすらダラダラしていたし(笑)、家族との時間もたくさん持つことができたし、その一方でいろんな方から声をかけて頂いて、自分では想像もしていなかったことを実現できたりもしたので、すごく面白かったです。本当に自分のペースで生きることができたので、それが何より嬉しかったし、充実した日々を送れた5年間だったなって。

--鞘師さんは、12歳でモーニング娘。のメンバーとしてデビューしていますから、子供の頃から「自分のペースで生きる」ことが難しかったわけじゃないですか。

鞘師里保:自分の時間なんて1日に1,2時間ぐらいしかない。そんなスケジュールだった時期もしょっちゅうありましたからね。なので、卒業してしばらくは戸惑ったんですよ。自分の時間が1,2時間から年単位に増えてしまったので(笑)、どう時間を扱っていいのか分からなかった。だけど、そういう状況にもだんだん適応していきました。あと、モーニング娘。の頃は、自分から何もしなくても1年間仕事があるような状態だったんです。それはとても有難いことで、だからひとつひとつの仕事に対して一生懸命だったと思うんですけど、それとは全く違う環境に身を置いたことで「自分は何がしたいのか、どう生きていきたいのか」能動的に考えられるようになった。

--そんな今の鞘師さんから見て、モーニング娘。の鞘師里保はどんな女の子だったなと思いますか?

鞘師里保:良くも悪くも使命感が凄かった。それは「モーニング娘。の一員として」はもちろん「鞘師里保として」。皆さんの期待に応えたい想いもあって、自分の中で勝手にそういう意識を持つようになって、それが良い方向に機能していたときもあったと思うんですけど、私自身を「鞘師里保として」という意識の中に閉じ込めてしまった部分もあったなって。自分で自分の型を作ってしまっていた。それが結果的には私のスタイルになったから良かったんですけど、次のステップへ進む為にはソレを壊さなきゃいけなかったんですよね。と、実際に壊してきた期間を経て振り返ると思います。

<モーニング娘。=故郷凱旋秘話~インスタ開設の理由>

--その期間を経てから、2019年のモーニング娘。デビュー20周年のタイミングで【ひなフェス】のステージに立つことになりました。

鞘師里保:私は普通にモーニング娘。の20周年を祝っている側だったので、同じステージに立つなんて想像だにしていなかったんですよ。そしたら、急にお声掛け頂いてものだから「えっ! どうしよう、どうしよう?」ってなりました(笑)。私は今、自分のペースで生きているけれど、そんな自分が同じステージに立つのは現役メンバーに失礼なんじゃないかとも思い、だからすごく迷ったんです。それでフクちゃん(譜久村聖/モーニング娘。リーダー/鞘師里保の同期)に相談したら「ぜひ一緒に歌ってほしい」って言ってくれたから「じゃあ、立とう!」と。

--かつての仲間たちと再びパフォーマンスしてみて、いかがでした?

鞘師里保:しっくりきましたね(笑)。メンバーそれぞれみんな進化していたし、私も負けないようにと思って臨んだんですけど、すごくしっくりして。緊張したけど、いざみんなと一緒にステージに立ってみたら安心感というか、ホーム感というか、あたたかい感じもあって、とにかく楽しかったですね。「お家!」って感じがしました。

--鞘師さんにとっての故郷みたいなものですもんね。

鞘師里保:そうですね! 景色は変わっているけれど、まさに故郷みたいな感じ。ファンの皆さんが「おかえりなさい」っていう感じで受け入れてくれから嬉しかったです。やっぱり気は遣うじゃないですか! 急に地元の母校にやってきて偉そうな顔する先輩みたいに見えていたらイヤだから(笑)。

--そして、2020年に入ってからInstagramのアカウントを開設。インスタライブで久しぶりにファンとコミュニケーションを取る機会もありました。あまりに緊張した鞘師さんがカメラからフレームアウトする場面もありましたね(笑)。

鞘師里保:20000人ぐらいの人たちが観に来ていたので、ビックリしちゃって。「えっ?」ってなりました。しかも自宅からの配信だったので「私、家の中から20000人に向かって喋ってる! ここ、横アリかな?」と思って(笑)。主演舞台の話が決まったあたりから、いつかはインスタをやろうかなと思っていたんです。そしたら、想定外のコロナ禍で人に会えなくなっちゃって、私自身が結構落ち込んじゃって。ひとりで過ごすのも好きなタイプなんですけど、なんだかんだで人に支えられて生きていたんだなと改めて思ったりもして。それで「私自身もパワーをもらいたいし、ファンの皆さんとお互いに支え合える場所ができたら喜んでいただけるんじゃないかな」「せめて私をフォローしてくれる方たちにだけでも力を与えられるんだったら、今やるべきなんじゃないか」と思って始めたんです。

--鞘師さんらしい発想とアプローチだと思いました。

鞘師里保:本当はもっと早いタイミングでやろうと思っていたんですけど、私が緊張しちゃって。それで、いざ始めてみたらまた緊張しちゃって、いまだに投稿するときは手震えてます(笑)。

<愛され続ける表現者・鞘師里保~ソロ本格始動後初の舞台【黒世界】>

--そのインスタの反響ひとつ見ても、ハロプロ時代の先輩、同期、後輩もこぞってコメントしていたり、モーニング娘。を卒業してから5年経った今も愛され続けている人なんだなと思いました。

鞘師里保:ありがたい気持ちと、不思議な気持ちと……「みんな、なんで忘れないでいてくれているんだろう?」みたいな感覚ではありました。5年も待って下さったりとか、少なくとも気にかけて下さっている方が大勢いらっしゃった……これは奇跡に近いことだなと思いますね。みんな、忘れていてもおかしくない歳月でしたし、本当に感謝です。

--自分自身では、鞘師里保をどんな表現者だと思っていますか?

鞘師里保:いろんな見られ方をしているとは思うんですけど、私は何に対しても楽しくてやっているだけなんですよ(笑)。もちろん、ひとつひとつの作品に対していろいろ考えながら臨んでいますし、ステージに立っているときって「本当に分かりやすくエネルギー出てるな」って感じているので、そういう意味では「天職だな」と自分自身は思っています。心底、楽しめているので。ただ、私の作品やパフォーマンスに触れてくれた人たちが褒めて下さっている状況に対しては、まだ不思議な感じがします。何かしらの魔法がかかっているんじゃないかなって(笑)。

--そんな鞘師さんにとって、ソロ本格始動後初の主演舞台【黒世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々(りょうりょう)たる考察について~】。2014年に【LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-】にて演じたリリー役との再会にはどんな感慨を持たれたりしましたか?

鞘師里保:光栄なことではもちろんあったんですけど、正直「大丈夫かな?」という気持ちもあって。不老不死の役だから、でも私はあれから6歳も歳を取っているんですよ。なので、当時のイメージでオファーして頂いたんだとしたら「思っていたのと違う」と思われちゃったらどうしようって。そういう不安はあったんですけど……思っていたより違わなかったみたいで(笑)。あと、リリーという役は【LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-】のときから「私へのあて書きに近い部分もあったんじゃないかな」と感じていましたし、脚本・演出の末満さんからも、役や技術がどうこう以前に「自分の今まで過ごしてきた時間を大事にしてほしい」と言って頂いていて、だから役よりも自分の経験を大事にして演じることが重要だったんです。リリーは不老不死の吸血種という役どころではあるんですけど、どこかしらで自分と重なっている部分を感じるんですよ。そこを意識して演じていましたね。

--それは観ている側もそうだったかもしれないです。リリーと鞘師里保をどこかしら同一人物として見ている感覚はあって。狂ってしまえばラクになれるのに、どんなに苦しくても私らしくあろうとするリリーのストーリーと、今日のインタビューでも語ってくれた自分らしくあろうとする鞘師里保の人生ってニアリーイコールじゃないですか。

鞘師里保:そう思ってもらえていたら嬉しいです。私の物語をリリーを通して見せている、表現しているようにも見えたりする。そういう意味では、作品自体はもちろん、末満さんが大事にしてくれているリリーに対しても「愛しいな」と思いますし、特に【黒世界】に関しては、私の新しい門出を祝ってくれているようにも感じ取れたので、このタイミングでリリーと再会させてもらえたことは本当に嬉しく思います。

--その【黒世界】を皮切りにお芝居のお仕事が次々と決定していますが、どんなモードで臨まれているんでしょうか?

鞘師里保:今、お芝居に関しては「勉強させて頂いています」という姿勢で臨ませて頂いています。ドラマに出るなんてほとんど初めてみたいなもので。なので、まわりの人に助けてもらいながら何とか慣れていっている段階。でも、私自身がやりたかったことでもあるんです。今の私はチャレンジ精神がすごくあるから、食わず嫌いはなるべくしないようにしようと思っていて、自分で「こういうの苦手なんじゃないかな」と思ったとしても挑戦します。その結果「すごく難しい、どうしよう?」ってなるんですけど、それでも頑張っていれば「セリフだけど、ちゃんと会話でキャッチボールしたな! なるほど、これがもっと出来るようになったら、演技って楽しくなるんだ!」みたいな気付きがあったりする。歌やダンスとは違って、リズム自体を自分たちで作っていかなきゃいけないので、でもソレが掴めてくると面白くなってくる。で、そういう経験って演技以外の表現にも生きていくと思うんです。

<それぞれの立場で、それぞれの人生で幸せになってほしい>

--どんな女優へと成長していくのかも楽しみなんですが、やはり「鞘師里保には、歌い踊っていてほしい」と思っているファンもたくさんいます。そこで伺いたいのですが、音楽を表現する者としてこれからどんなことをしてみたいと思いますか?

鞘師里保:もちろんコンサートもしたいし、思いっきりライブパフォーマンスもしたいですし、楽曲をリリースして、ライブをして、ファンの人と会って……という従来の活動もしていきたいんですけど、それにプラスアルファでやりたいことがあって。この5年間のあいだに憧れて勉強させてもらっていたアーティストさんがたくさんいるので、そういう方々の作品とかに参加できたら嬉しいなと思っていて。楽曲に参加させて頂いたり、ダンサーとして参加させて頂いたり、私の知らない世界であっても挑戦させて頂いたり、そういう想いは強くあります。

--今後、歌を歌っていくとして何か届けたい想いみたいなモノってあったりしますか?

鞘師里保:まだ誰かに対して何か偉そうに言える身ではないと思っているので、私自身の経験を通して届けられるモノ、自分に対して問いかけていくような歌を発信できたらなとは思っています。これはライブパフォーマンスに関しても言えることなんですけど、一方的に私が投げかけるというよりも「一緒に作っていきたい、私もみんなの輪に加わりたい」と思っているんですよね。なんて言いながら、まだ自分自身で歌詞を書いたことがないから、具体的にどんな歌を発信していくことになるのか分からないんですけど(笑)。でも、自分が発する言葉に自信がないという状態から脱却したい気持ちもあって……

--では、もう少しシチュエーションを絞りますね。ファンの皆さんとの再会ライブがあったとして、そこでどんな言葉を伝えたいですか?

鞘師里保:えーっと……「やっほー、元気ですかぁ?」

--初めてのインスタライブもそんな感じでしたよね(笑)。

鞘師里保:たしかに(笑)。伝えたいことかぁ、難しいなぁ。

--今「自分が発する言葉に自信がない」と仰っていましたが、鞘師さんの言葉には常に強くて優しい意志があるなと思っていて。それこそインスタライブで自身の誕生日をファンのみんなに祝ってもらっていたとき「SNSをプラスに使っていきたい。今、みんなに祝われてこんなにしあわせなんだから」と話していて。SNSでの誹謗中傷が問題視されていた時期だったと記憶しているんですけど、あの言葉にハッとさせられた人ってたくさんいたと思うんですよね。

鞘師里保:普段から事あるごとに「これってどうなんだろう?」と考えるタイプで、だからふとそういう話をしたと思うんですけど、せっかく自分の体に自分の魂があって生きているのに「しあわせに生きていないともったいない」とすごく思って。世界を見渡したときに「悪い人たち」に分類されるような自分を心に住まわせてしまうことって、本当にもったいないと思うんです。だって、あの誕生日にインスタを通して皆さんが私に伝えてくれた言葉の数々は、どれも優しくてしあわせな気持ちにさせてくれるモノだったし、であれば、人の心にはそういう気持ちが備わっているんだよってことを私は伝えたくて。それが分かっていたら、誰もがお互いを尊重できるようになるんじゃないかなって。

--本当にそうだと思います。

鞘師里保:それぞれがそれぞれの立場で、それぞれの人生で幸せになってほしいんです。私も幸せでいたいし、みんなにも幸せであってほしい! なので、自分が個であることをもっと意識して、それが意識できたら他人のことも考えられるようになると思うから、そうしてもったいないことをしないでほしいなと思います。

--鞘師さん。伝えたいこと、めっちゃあるじゃないですか。

鞘師里保:アハハハハ!

--では、最後に。5年ぶりのBillboard JAPAN.comとの再会インタビューになりますので、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

鞘師里保:Billboard JAPAN.comさんには、私がモーニング娘。でデビューした頃からお世話になっていて、かつて「単独インタビューしてほしい」と直談判したこともあるんですけど(笑)、それもちゃんと私が伝えたいことを伝えられるんじゃないかなと思っていたからなんです。それを毎回ファンの人たちもしっかり読んでくれていたし、だから今回も公開されるのがドキドキしちゃうんですけど、過去のインタビューとも比較したりしながら、私がどんな風に変わっていって今があるのか知ってもらえたらなと思います。

Interviewer:平賀哲雄

◎鞘師里保スタッフ【公式】ツイッターアカウント
https://twitter.com/sayashi_staff

◎鞘師里保オフィシャルサイト
https://rihosayashi.jp/

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