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INO hidefumi SPECIAL“COVER”NIGHT インタビュー

INO hidefumi

 前回のビルボードライブ公演では「鈴木 茂 × INO hidefumi」として、世代とジャンルを超えたスペシャル・ユニットで、会場を大いに盛り上げたINO hidefumi。フェンダー・ローズに愛された男として、これまでも清廉なエレクトリック・ピアノのサウンドを響かせてきた。2013年はアルバム『NEW MORNING』をリリース、11月には初の「SPECIAL "COVER" NIGHT」と銘打ったビルボードライブ公演も控えている。最新作、そして待ち受けるライブについて、過去のスペシャルステージの話も交えつつ話を訊いた。

まさに夢の共演。夢というものは強く思えば叶うものなんでしょうね

??昨年の鈴木茂さんを迎えてのライブ、とても盛り上がりましたよね。あの寡黙な印象の鈴木茂さんがステージ上で跳びはねていたのが印象的でした(笑)

INO hidefumi:キーボーディストからすればギターリストは敵なんです(笑)。曲中のかっこいいソロは大抵ギターが持って行くし、ティーンエイジャーの頃は特にキーボードよりギターをギンギンに弾く姿の男子に熱い視線が注がれていましたからね。でも二十歳を過ぎた頃、はじめて"はっぴぃえんど"のレコードを聴いた時、鈴木茂さんのギターに打ちのめされたんです。ギターリストは敵のはずなのに、いつか鈴木茂さんと共演できる日が訪れたらいいなと夢見て茂さんの楽曲をコピーしたり研究したりしていました。夢というものは強く思えば叶うものなんでしょうね。あのビルボードライブでのライブでまさに夢の共演が実現しました。初対面だし大先輩ですし実際どういう方なのかお会いするまで緊張したけど、最初のリハーサルで一緒に音を出した時からツアーを終えるまで、ホントに楽しく充実したものになりました。ビルボードライブではお互いの楽曲を半分ずつという構成で行いましたが、おかげさまで世代を超えた刺激的な公演になったと思っています。茂さんも僕もパブリックイメージは寡黙そうな職人キャラで通っていると思うけど、実はかなり話し好きで楽屋はいつも冗談ばかりで面白かったなぁ。本番直前まで色んな話に花が咲いて、昔話や機材のこととか、とても貴重な話も聞けて勉強になりましたね。

INO hidefumi:茂さんが弾くフェンダーのストラトキャスターは恐ろしく格好いい。でも僕は、茂さんの人柄にも魅力を感じているんですよ。大御所とは思えないほどチャーミングなお人柄(笑)。茂さんの忘れられないエピソードがあって…。本番では必ずステージ衣装に着替えて登場されていましたが、楽屋からいよいよ本番のステージに向かうエレベーターに一緒に乗り込んだ時、進みだしたエレベーターの中で何か変だな、、と、茂さんのステージ衣装に違和感を感じたことがありました。ふと足下を見ると、ステージ用の靴に履き替えていないことに気づいてエレベーター内が騒然。楽屋まで戻る時間もなかったので、結局そのままオーディエンスの待つステージへ。何事もなかったようにスポットライトを浴びる茂さん。茂さんの楽曲に酔いしれるお客さんと、笑いをこらえるのに必死な僕。靴さえ見なければいいんだ。と自分に言い聞かせ、何があっても茂さんの足下だけは視界に入れないように乗り切っていました。8曲目が終わろうとしたその瞬間、まさか茂さんがギターを抱えてステージで飛び上がってしまうとは・・・。ジャンプとともに茂さんの全身が僕の視界に入りこみ、僕は笑いをこらえることができなかった。幸い僕の笑い声は茂さんの白熱プレイで沸く会場の歓声とともに揉み消され、ことなきを得ましたが。本番直前の楽屋で、あれほど最近忘れ物が多くなったという話で大盛り上がりしていただけに、何とも言えない表情の茂さん。たいへん失礼ながらも、あの日のことを思い出す度に吹き出してしまいます。イメージと違って一緒にいるだけで色んな発見がある方なのです。
今後機会があれば映画音楽とかバートバカラックとか、何か二人でテーマを決めて公演出来たらいいねっていう話になっているので、またいつか実現できればと思っています。

NEWアルバムの録りはあっという間に終わって
世間話のほうが長かった(笑)

??5月にはアルバム『NEW MORNING』をリリースされました。こちらギターの鈴木茂さんのほか、藤原ヒロシさんもアコースティック・ギターで参加されていますよね。

INO hidefumi:茂さんには僕の歌モノを2曲エレクトリックギターで参加していただきましたが、かなり職人的で国宝級的な鈴木茂サウンドに仕上がっています。ヒロシさんの弾くアコースティック・ギターの音色は上質でメロウ。ギターフレーズはミニマムでとても的確なんですよね。なので今回のヒロシさんの録りもあっという間に終わって世間話のほうが長かった(笑)。とても知的で、いつもユーモアとアイデアに溢れている人でした。

??アルバムにはトッド・ラングレン、シュギー・オーティスなどのカバーが入っていますよね。

INO hidefumi:まずどちらとも僕が大好きな曲で今までの公演でも何度かやって来た曲です。トッド・ラングレンのこの楽曲が収録されているアルバム「サムシング・エニシング」も、シュギー・オーティスのアイランド・レターが入っている「インスピレイション・インフォメイション」というアルバムも、どちらも基本的に一人で自宅で制作されたものなんですよね。音楽を制作する過程であったり、音楽に対する姿勢やアプローチみたいなものが、何となく自分と被っているような気がして選曲しました。あとは何だろう、、、アルバムの方向性にふさわしい楽曲だったってことが大きな理由かな。

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INO hidefumi

COVER NIGHTのことを考えている時が何より幸せ

??今回のライブは「SPECIAL "COVER" NIGHT」というタイトルが付いていますが。

INO hidefumi:同じことやってもしょうがないしね。最新作の単独公演は一夜限りのプレミアム公演として先日終演したし、今回は全く違う内容で行おうと思ったことが一番の理由かな。まずは演っている自分たちが楽しくないと、伝わるものも伝わらない。毎回来てくれるコアな人たちに対しても、つまらないものは見せられないしね。前回とは違う内容で、少しでも元気になって、明日に向かって前向きに歩き出したくなるような、とっておきの音楽を届けられることが出来れば成功かな。会場の皆さんと一体となって音楽を楽しめるライブにしたいです。COVER NIGHTという打ち出しは今回初めての試みでいろいろと仕込みが大変だけど、今はこの公演のことを大風呂敷広げて考えている時が何より幸せな時間です。先人たちの素晴らしい楽曲を、自分らしく磨きをかけて響かせます。

きゃりーぱみゅぱみゅの「インベーダー・インベーダー」は凄くいい曲

??具体的にはどんなライブに、そしてどのあたりの楽曲を演奏される予定ですか。

INO hidefumi:シンプルにやります。いつも以上にフェンダーローズという楽器の清廉な音の魔力みたいなのを存分に響かせたい。初期のアルバム楽曲からもいくつか。そして歌ですね。歌の持つ言葉の力を発揮したいと思います。あとは、これまでのアルバムもライブも色んな楽器を使って来たので、もっとシンプルになりたいという思いが強くなっています。例えば日本庭園のように、要らないものを排除して、必要なものを配置していくような世界に関心が向いています。音の配置やアレンジメントで、原曲の持つエネルギーバランスをミニマムに変換してライブで再現してみようかなと思う。選曲は今ちょうど考えている最中ですね。昨日はトニー・ジョー・ホワイトの「ホームメイド・アイスクリーム」、レディオ・ヘッドの「クリープ」、ポール・マッカートニーの「ラム・オン」をやってみたけど、本番でやるかどうかはまだ分からない段階。フランシス・レイの「恋はみずいろ」はこないだとてもいい感じで完成した。それと、きゃりーぱみゅぱみゅの「インベーダー・インベーダー」は凄くいい曲なんだよね。いずれにせよ自分らしくやります。

??バンドはどんな編成ですか。

INO hidefumi:スリーピース。3人編成で行う予定です。ベーシストの岡戸君はオリジナルメンバーとして、今まで色んなステージを共に過ごして来た信頼できるプレイヤー。ベースに限らず電子楽器も持ち込んで演奏してもらう予定です。ドラマーは今年の夏フェスから加入した新人ドラマーの中野君。うちのバンドの初代ドラマーがジェイムス・ギャドソンだとすれば彼はスチュワート・コープランド。先走る既存のスタイルからはみ出しているドラマーといったところかな。彼にもドラム以外の色んなパートを担当してもらう予定。3人で色んなことをやるので見ているだけでも楽しめると思います。

??ライブを楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

INO hidefumi:動画サイトでもライブを見られるような時代だから、ホントに便利な世の中ですよね。でも音楽に限らず映画や美術とか、僕は出来るだけ色んな場所に足を運んで五感を通じ、脳を活性化させています。人生楽しまないとね。宮崎駿監督の「風立ちぬ」も、そのうちテレビで放映されることは分かっていたけど、劇場まで観に行ってよかった。劇場の匂い、隣で泣いていた子連れのきれいな女性、全てが僕の記憶の集積になった。パソコンやスマートフォンで音楽を楽しむこともいいけど、ビルボードライブの音響設備はホントに素晴らしいので、全身で音楽を感じて下さい。ゆったり座って観られて雰囲気もいいコンサート会場は、日常からトリップできる空間。もし秋の夜長に僕のライブまで足を運べそうでしたら、人生を振り返った時の幸せな記憶として、素晴らしいライブになることを約束します。

INO hidefumi「NEW MORNING - 新しい夜明け -」

NEW MORNING - 新しい夜明け -

2013/05/30 RELEASE
IRCD-5 ¥ 3,080(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.闇からひかりへ
  2. 02.グリーンティ
  3. 03.ハローイッツミー
  4. 04.クライミーアリヴァー
  5. 05.目醒めの木
  6. 06.思えば世界はあまりにも美しい
  7. 07.空飛ぶ絨毯
  8. 08.ありあまる自由のなかで
  9. 09.月に吠える
  10. 10.アイランドレター
  11. 11.愛することの幸福

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