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<コラム>世界へ放たれる熱狂――稀代のヒットメーカー、Vaundyがライブで証明する真価

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Text:小川智宏
Live Photo:日吉”JP”純平

いよいよ高まるグローバルな存在感

 Vaundyが初のアジアアリーナツアー【Vaundy ASIA ARENA TOUR 2026 “HORO”】を9月5日からスタートさせた。千葉・幕張メッセでの2デイズ公演を皮切りにソウル、香港、福岡、そして台北と、文字通り東アジアを股にかけて繰り広げられる、ビッグスケールのツアーだ。チケットは全公演即日完売。ツアータイトルの「HORO」は日本語で「放浪」の意味。昨年から今年にかけてVaundyは、男性ソロアーティストとしては史上最年少となる4大ドームツアー【Vaundy DOME TOUR 2026 “SILENCE”】を繰り広げ、福岡、東京、大阪、札幌の4都市7公演、合計35万人以上を動員。日本の音楽シーンにおけるトップアーティストとしての地位を確立した今、日本という枠から解き放たれて世界へと歩み出したVaundyがどんなパフォーマンスを見せるのか、今から期待が高まる。

 それは現地のファンも同様のようで、9月19日、20日の2日間行われるソウル・INSPIRE ARENA(キャパシティは約15,000人)でのライブチケットは発売と同時に完全ソールドアウト。余談だが、以前ソウルを訪れた際にVaundyそっくりの髪型と服装をしたファンに出会ったことがある。思わず話しかけたのだが、彼は思った通りVaundyの大ファンで、日本にライブを観に行ったこともあると話してくれた。前回のドームツアーでも、客席にはアジア各地からやってきたと思しきファンが数多くいた。彼らにとってはまさに待望のツアーなのである。ここではそんなエポックメイキングなツアーを前に、あらためてVaundyの現在地を確認してみたい。




 2019年に19歳で「東京フラッシュ」でシーンに登場して以降、Vaundyは数々のヒット曲でシーンを彩ってきたが、その楽曲のうちじつに19曲が、ストリーミング再生数で1億回を突破している。その中には「東京フラッシュ」はもちろん、映画『ドラえもん のび太の地球交響楽』の主題歌「タイムパラドックス」、アニメ『王様ランキング』オープニングテーマ「裸の勇者」、アニメ『チェンソーマン』第1話エンディングテーマ「CHAINSAW BLOOD」なども含まれている。これらの楽曲はアニメとのコラボレーションによって日本国外のリスナーにもリーチ。YouTubeにアップされたミュージックビデオのコメント欄やSNSのリプライ欄には、さまざまな言語のコメントが並び、楽曲それ自体の魅力によって、Vaundyがグローバルな存在感を高めてきたことが窺える。

 その中でもずば抜けた再生数を誇るのが、彼の代表曲のひとつである「怪獣の花唄」だ。2020年5月にリリースされたこの曲は、現在までで累計再生数11億回を超え、今なおその数字を伸ばし続けている。そもそもライブでのコール&レスポンスやシンガロングをイメージして作られたという「怪獣の花唄」は、そのイメージ通り彼のライブでも大熱狂を巻き起こすアンセムとなっているが、そうした人気ぶりも含めて、リリースから6年を経た今なお、多くのリスナーを魅了し続けているのだ。同様に高い再生数を誇っている「踊り子」など、Vaundyには一時的なバズにとどまらず、ロングヒットを続けている楽曲が多い。これは彼の生み出す音楽が、移り変わりの激しいシーンにおいて揺るぎない普遍性と強度をもっていることの証明だろう。ちなみに先ほどVaundyにはアニメソングも多いと書いたが、じつはアジア各地域でいちばん聴かれているのはこの「踊り子」である。アニメによるブーストとは違うところで楽曲そのものがしっかりと届いているという点で、これは他のアーティストの海外における受容のされ方とは違う、特筆すべきポイントだ。




Vaundy LIVE "怪獣の花唄"| Vaundy DOME TOUR 2026 "SILENCE" at TOKYO DOME



踊り子 / Vaundy:MUSIC VIDEO


 このようにさまざまな数字がVaundyの現在地を物語っているが、そのベースにあるのは、言うまでもなく彼というアーティストの持つ才能の豊かさと、ファンやリスナーを常に驚かせ続けるそのクリエイションの多彩さである。そのディスコグラフィには代表曲と呼べる楽曲がいくつもあるが、その一方で、Vaundyの音楽性をシンプルな言葉で表すことはとても難しい。楽曲ごとに本当にさまざまな要素が代わる代わる顔を出し、まったく違った側面を見せてくるからだ。アーティストは自分自身の通ってきたルーツをもとに自身の音楽を作り上げていくもので、それはVaundyの場合も例外ではないのだが、その「ルーツ」の幅広さとそれを自身の表現に昇華するセンスが、彼の場合は際立っている。彼の楽曲を聴いて連想する音楽をざっと挙げてみても、日本の歌謡曲やJ-POPからブリティッシュロック、クラブミュージック、ヒップホップまで、その要素は多岐にわたる。1970年代から現代まで、過去50年におよぶ歴史の中で生まれたさまざまな音楽からインスピレーションを受け、それを今の感覚でリデザインすることで、Vaundyのスタイルは作られているのだ。いや、ポップミュージックだけではない。2025年11月にリリースされた「軌跡」では初めてオーケストラ編成の楽曲に挑戦。アビィ・ロード・スタジオで録音されたこの曲は、Vaundyのソングライティングがまだまだ進化し続けていることを如実に示していた。

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マルチな創造力とライブの熱狂

 ソングライティングと同じくらい重要なのが、シンガーとしての魅力だ。彼の楽曲が多彩なのは今述べた通りだが、そのバラエティ豊かな曲たちを、彼はラップからロック的なシャウト、美しいファルセットボイスまで、さまざまな表現を駆使して表現している。かつてインターネット上で「歌い手」として活動していた時期もある彼は、楽曲に対してどんなボーカル表現をすべきなのかを熟知しているのだ。さらに、彼のクリエイティビティは楽曲のみにとどまらない。グッズやアートワークを手掛けるデザイナーとして、あるいはミュージックビデオのディレクターとして、Vaundyは自身のアウトプットのあらゆる側面でクリエイターとしての才覚を発揮している。中でも映像表現は彼の中でも重要なものとして位置付けられているようで、「僕にはどうしてわかるんだろう」から「The SILENCE」に至る一連の連作ミュージックビデオでは、SF的な要素を織り交ぜた大スケールの映像を作り上げている。彼はデビュー当初から自身を「マルチクリエイター」と称していたが、まさにマルチに、音楽にまつわるほぼすべての場面で力を発揮しているのがVaundyというアーティストなのだ。




 とはいえ、彼のクリエイションの中心が音楽であることは変わりない。スタジオワークもさることながら、さらにそのアーティストとしてのパワーを感じることができるのが、ライブの場である。2020年に初めてのワンマンライブを行って以来、Vaundyは積極的にライブパフォーマンスを展開してきた。2022年に日本武道館で2日間のライブを行った際には、合計26,000人のキャパシティに対して15万人以上の応募があったことが話題となったほか、2024年から2025年にかけてのアリーナツアー【Vaundy one man live ARENA tour “FUSION”】では、さいたまスーパーアリーナ(スタジアムモード)で2日間合計76,000人を動員。これは同会場における史上最多動員記録となっている。日本各地の音楽フェスでもヘッドライナーを務めるなど、彼のライブに対するニーズはますます高まり続けている。

 Vaundyのライブは、その規模感と比べればとてもシンプルだ。ステージ上の歌と演奏のパワーでオーディエンスを惹きつける、ある種のストイックさすら感じさせるスタンスで、彼はライブを続けてきた。そして実際に、敏腕ミュージシャンたちで構成されたバンドとともに繰り出されるVaundyの歌は、圧倒的な迫力でオーディエンスに襲いかかってくる。彼のライブでのボーカルを評して「音源のようだ」ということがよく言われるが、とんでもない。ライブでのVaundyの歌声は音源以上にパワフルでエモーショナルだ。そこにオーディエンスの歌声がさらなるブーストをかける。「怪獣の花唄」や「CHAINSAW BLOOD」をはじめ、ライブ中にはたびたびオーディエンス一体となったシンガロングが巻き起こり、会場を熱狂的なムードで包み込むのだ。




Vaundy LIVE "CHAINSAW BLOOD" (TVアニメ「チェンソーマン」第1話EDテーマ)| Vaundy DOME TOUR 2026 "SILENCE" at TOKYO DOME


 その熱狂ぶりは、アジアツアーに先立ってリリースされたライブアルバムでも感じることができるはずだ。このアルバムは、【Vaundy DOME TOUR 2026 “SILENCE”】の東京ドーム公演を収録したもの。このツアーのセットリストは「東京フラッシュ」に始まり、Vaundyを代表する曲を網羅したものとなっているので、ライブを疑似体験・追体験したい人にはもちろん、Vaundyの「入門編」としてもぴったりだろう。

 9月から始まった【Vaundy ASIA ARENA TOUR 2026 "HORO"】は、Vaundyにとって本格的な海外展開の重要な足がかりとなる。楽曲へのリアクションや過去に出演した海外フェスでの盛り上がりを見ても、彼のプレゼンスはすでに日本のシーンを大きくはみ出して広がっているが、海外のファンがライブを目の当たりにしたとき、その音楽に対する評価はさらに確かなものになるだろう。アジアツアーのあとの2027年にはすでに自身最大規模となる30公演をまわる日本国内でのアリーナツアーが開催されることも決定しているが、国内でも海外でも、Vaundyがここからどのようにスケールアップしていくのか、ますます注目したい。

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