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<インタビュー>ポルノグラフィティが満を持して届ける『果実』 ライブ後に完成させるアプローチで実らせたものは

Text & Interview:岡本貴之
ポルノグラフィティが4年ぶり13枚目のフルアルバム『果実』をリリースした。今作は、2月にリリースしたEP『種』および未発表の新曲を携えて行われた全国ツアー【20thライヴサーキット“水”】を経て、「種に水を与え果実として実らせる」という、一連の流れをコンセプトとして完成した13曲を収録。宇宙への旅を想像させるスリリングな「スペース・ヴァンガード」に始まり、そっとほろ苦い余韻を残す「残響」まで、充実したソングライティングで瑞々しく今のポルノグラフィティを伝えてくれる。フルアルバムだからこその遊び心も感じられる今作について、岡野昭仁(Vo.)、新藤晴一(Gt.)に話を訊いた。
──今年に入りEP『種』を先にリリースして、「水」というツアーをまわり、そしてアルバム『果実』リリースとなりました。この一連の流れ、コンセプトはどのように生まれたものなのでしょうか?
新藤晴一:フルアルバムを作ってからツアーに出る、というのが本来の我々のやり方なんですけど、2025年からアルバム制作を行っていて、丁寧に作っていたら最後のほうにちょっと急がないといけないかなっていうスケジュール感になってきたんです。でも、まあそんな急いで作ることもないだろうと。だからEPをまず“種”として出して、このツアーで新曲を披露して、お客さんの前での演奏を経た上でレコーディングしたアルバムを出したらどうなるかと考えたんです。ツアーで曲に“水”をあげてもらい、そこで実ったものを“果実”とするイメージで、このコンセプトが出来上がりました。スケジュールとコンセプトが同時に立ち上がって、「これなら面白いことができそうだな」ということで、こういう流れになりました。

岡野昭仁:そこに至る前に、後にEP『種』としてリリースした楽曲たちがすごく力強いものでもあり、「自分たちにとって最高傑作になるんじゃないんか」みたいな予感もしつつ制作していたんです。いい種がたくさんあることが前提にあって、その先も見えそうだし、それをもっと充実させるためにライブで一回水をかけてもらって、もっと熱いものにするっていうアイデアは、すごくいいなと思いましたね。ライブをやってからレコーディングすると、より精度も上がるし、いい作品になる気がしました。
──全国ツアー【20thライヴサーキット“水”】を通して“種”に“水”を与えてきた期間、ライブで演奏してから変わったりしたこともあったのではないでしょうか。新曲たちにはどのような変化・成長がありましたか?
新藤:例えば、アルバムの最後に収録されている「残響」は、アレンジも歌詞もできている状態で練習してツアーの最後のほうでやったんです。やっぱりステージ上でやってみると、もう一押し、もうひとつ熱の上がり方が欲しいなと思って、ライブでやったときにはなかったブレイクを追加しました。歌詞もライブを想定して書いていたから、ちょっとわかりやすさを優先したようなところもあったけど、アルバムでは聴き込んでもらう強度、読み込んでもらえる強度を増やすために、歌詞を少し変えたので、これはライブを経てじゃないとできなかったことですね。
岡野:いつもライブを想定して曲は作るんですけど、ライブ会場のホールの響きだと元々の BPM が少しだけ速い気がすることがあって。例えば「Plastic viper」は、実際にお客さんの前でやってみたら速く感じたので、BPMを下げました。やっぱり客前でやらないとわからないことがたくさんあるんですよね。そういう意味で、ライブ後の変化はアレンジでも生まれました。「アウトロはこういうアレンジで、2ビートのほうがいいんじゃない」っていうようなアイデアをミュージシャンが出してくれて。先にライブでやることで、そうした変化はありましたね。


──完全新曲を披露したときのお客さんの反応はどうでしたか?
岡野:みんなね、どんな曲でも静かに聴いてるの。新曲なので(笑)。一つ一つの音、一つの文字でも逃さんとこうみたいな、なんか不思議な感じで静態して聴いてくれましたね。そういう様子もありながら、そこで伝わる度合いみたいなものがわかるので、レコーディングでは「ここはもう少し熱を帯びた表現をしよう」っていう会話ができたし、ライブの光景を思いだしてレコーディングもしました。

──アルバムで初収録される曲を中心にいくつかお伺いします。まず1曲目の「スペース・ヴァンガード」。これはもう、地球を飛び出して宇宙に行っちゃってる曲ですね。どんな成り立ちの曲なんでしょう?
新藤:成り立ちとして語るほどのものかわからないけど(笑)。最初のノイズみたいなところから、ディレイの効いたピアノの感じも含めて、宇宙の旅的な雰囲気を感じたので、そこから歌詞を書いていきました。宇宙空間であれば何でもよかったんですけど、だんだん話が大げさになっていって、こんなことになりました。
──まるで映像作品のようなテーマがあって書かれたのかと思うぐらいの歌詞ですけど、最初にメロディとアレンジがあって歌詞を書いたわけですね。
新藤:そうですね、僕らはほとんどそのパターンで書いてます。冒頭の部分を書いてしまうと、ここまで広げざるを得ないので、アレンジや構成も広げてもらって、こういう感じになりました。書いてて楽しいですね、こういうのって。もう本当に無責任に書けるから。これがどういう意味なのか一つもよくわからないけど、背景とか整合性とか、音楽はそれが要らないのが強みですよね。これが演劇とかだったら、その人の生い立ちから年齢まで、裏設定も用意しないといけないけど、歌はそれが要らないから。ラブソングも「どう別れたか」とか、「何歳のとき」とか関係なく、別れた状態から始まるし、(この曲のように)「宇宙に行った」から始めることができるから、音楽の長所として、すごく楽しんで書けますよね。
──特にメッセージがあるわけではなく、楽しんで書いたらこうなったと。
新藤:うん、まさにそうですね。メッセージなんてないよね、まったく。ポップソングでメッセージを出すものって本来ないですしね。よく読むと説教臭く見えるけど、ただのフィクション。こういうのもあっていいんじゃないかなと思う。
──そのフィクションのストーリーを喚起させた岡野さんの曲作りは、それこそどんな種から生まれたんでしょう?
岡野:もともとダンスナンバーを作ろうと思っていたんです。すごく完成度の高いアレンジを作ってもらったんですけど、ロックナンバーに昇華したほうがいいと思って、ガラッと変えました。で、(アレンジャーの)tasuku君に何も言わず丸投げしたんです。結構苦労してましたけど(笑)。そしたらヒントも何もなく、この素晴らしいアレンジが上がってきて。もともとがダンスナンバーだったので、サビのメロディーがすごく豊かなわけではないのに、しっかりとしたロックナンバーに変えてくれました。
──暗い音像だけど、ドラムの音の軽いニュアンスが無重力感を出しているように思えます。
岡野:これは生ドラムじゃないんです。その辺もtasuku君がすごく考えてくれて。丸投げしておきつつ、僕がサビのコード感を「こうじゃない、もっとポップにしてくれ」ってリクエストすると、「いや違います、それはベタすぎます」って、tasuku君が頑なに変えなかった(笑)。出来上がったものを聴くと、本当に信頼を置けますね、tasuku君には。
──そこにこういう歌詞が乗るとは思いませんでしたか?
岡野:「宇宙で来たか」とは思いましたけど(笑)、「ああ、なるほどな」とも思いました。宇宙っぽいメロディーがどんなメロディーかはわかりませんけど(笑)、2番の〈「君は誰だい?」〉で、それをちょっと想起させるようなメロディーを書いたら、晴一から無線のシーンのような展開の歌詞が返ってきて。そこがすごく面白かったですね。
──「マスク・ド・カメロ」は、NHK『みんなのうた』で4月~5月に放送されましたが、スペシャルアンコール放送として8月~9月にもオンエアされているということで、既に人気曲になってますね。
岡野:『みんなのうた』のお話もあったし、自分たちがやってきたことをたくさんの人に聴いてもらうような、世代も超えて、間口の広い楽曲を作る役目もあると思ったので、こういうメロディーを書きました。初めはこんなラテン系にするつもりはなかったんですけど、これも長年一緒にやってる田中(ユウスケ)君がいろんなバージョンを作ってくれて。僕らにはやっぱりラテンのイメージがあって、どこかやらなくちゃいけない気もするし、避けたくなるというか、「またラテン?」って自分でも思っちゃうところがある。でも、アレンジャーがそっちの方向に向いてくれたなら、もうとことん濃い、匂い立つようなものを作ろうと思って。AIで音楽もアレンジも作れるこの時代に、ある意味、整理整頓されていないような、ホーンセクションにフルートを足して、「やかましいわ!」って思うくらいの濃いものを作ろう、と。それを田中君が整理してくれるので、思い切って作った曲です。
──曲の主人公がメキシコのプロレスラー、ルチャ・リブレという、人間味が溢れまくったテーマです。
新藤:メロを聴いたときに、ちょっと『月光仮面』的なものを思い浮かべたんです。ヒーローというか、マントの影が見える雰囲気。それをどう歌にしようかと考えたときに、覆面プロレスラーを思いついたんです。
──テーマが見つかればスムーズに書けることが多いですか?
新藤:自分で言うのもアレなんですけど、設定さえあれば。猫のヒゲじゃないけど、頭さえ入ってしまえば、あとは通り抜けられるんで(笑)。ただ、できるだけ「俺しか通り過ぎられないぞ」みたいな隙間を探して書くことが自分の個性だと思ってるし、そこを書くべきだとも思うんです。要するに自分の中で一番ハードルが高い面白いものが見つかったら、もうそれで大丈夫。それは今までも全部そうで、遡れば「ミュージック・アワー」だって、ラジオDJの設定が自分の頭の中をよぎった。そうすれば最後まで何でも書けるし、逆に言うと、その設定が見つからないとすごい難しい。そういう意味では、「マスク・ド・カメロ」は自分の個性がすごく出せたとは思います。
──岡野さんは主人公の覆面レスラーになりきって歌うみたいな気持ちはあるんですか?
岡野:いやいや、どうでしょうね(笑)。〈ポポカテペトル〉ってなかなか歌わない配列の、メロディーには乗らない言葉なので、そこを歌うのに必死です。主人公がどうこうじゃなくて、もう歌うのに必死でした。昔からわりと無理難題を言われることが多くて。「Century Lovers」の〈次の千年〉は結構音域が高いので、「これは歌えない」って言ったんですけど、ディレクターとプロデューサー3人ぐらいに「頑張って歌え!」って言われ、無理やり歌ったら歌えたみたいな歴史があるので、上がってきたものに対して僕はしっかり全うしています。自分で曲を書いておきながらですが(笑)。
──続けて岡野さんにお聞きしたいのですが、「Plastic viper」というタイトルは造語なんでしょうか?
岡野:そうです。これも自分が作ったものがありつつ、江口亮君のアレンジの中に新鮮なフレーズがあったので、混沌としたカオスを全体で描けれたらいいなと思ったんです。サビの頭にはボーカリストが歌って気持ちいい響きの言葉を乗せたいと思ったので、その条件を満たす言葉を考えていたときに「Plastic viper」っていう言葉が浮かびました。意味を調べてみたら、「ハリボテの毒蛇」って出てきて。毒々しいのにハリボテってなんか面白いなと思って。これこそ混沌としていて、何を言ってるかわかんないところがありますよね。あとは、自分自身の過去のカオスのようなものも考えました。デビューして自分の周りがいろいろと変わっていく中で、そこに付いていくために自分もギラついてないといけないと思って、夜な夜なお酒を飲んで酔っ払いながらゲームをしたり、アホなことを言ったりしている、あの混沌としていた時期を、グチャグチャグチャと書いた感じです。
──この曲に対して、新藤さんはどんなアプローチでギターを弾いたのでしょうか?
新藤:僕はレコーディングのときに、アレンジャーの意図を粛々と汲んで弾くほうなので、特に言わないんですけど、江口君のアレンジは最初ちょっとクレイジーすぎたなぁ。江口君も含めて、アレンジャーとはみんな付き合いが長いから、いろんなことができるんです。我々が江口君を評価している点は、破壊的で整合性がついていないアレンジを求めても、江口君は汲んでくれるところ。それが大体おもしろいし、「なんだこれ!?」って僕らも楽しめる。でも、この曲のアレンジには最初、ライブで弾くには困難で、Aメロにも本当にどうテンポと拍を取っていいのかわからないようなフレーズがあって。「これ、ちょっと弾けんから、江口君、やめていい?」って言って、勘弁してもらいました(笑)。その会話が面白くて、自分の中でも特に印象深いです。
──トオミヨウさんが参加している「内緒のしょ」も、おもしろいアレンジですよね。
新藤:これはわりと珍しく、アレンジについてリクエストしました。最初からこういうギターのフレーズが僕のデモにも入っていて、打ち込みがメインだったので、生ピアノも欲しくて、歌の処理も含めて色々相談したと思います。パッチワークみたいにサウンドのパーツを切り貼りして楽しんだ曲。
──ウッドベースっぽい音色も入っていますが、ジャジーな雰囲気というのも頭にあったんですか。
新藤:これも打ち込みなんですけどね。トオミ君にお願いするとそんな雰囲気になります。それを期待してるところもあるし、おもしろい出来になったと思います。
より一層アルバムであることに意味を持たせないと
──アルバムを締めるのは、先ほど話にも出た「残響」ですが、さまざまなタイプの曲がある中で、何とも言えない余韻が残る終わり方です。
新藤:自分たちはずっとフルアルバムを出してきたので、「フルアルバムはこうあるべきだ」みたいなパターンが自然にあるんです。1曲目にシングル曲を持ってくるとアルバムとして舐められるぞ、みたいな。昔はタワレコの試聴機で3曲目ぐらいまで聴かれることを前提に作ってたから、ちょっとロックっぽいものを1曲かまして、3~4曲目にヒット曲を入れとこう、とかね。だからアルバムの1曲目のあり方として、「スペース・ヴァンガード」がしっくりくるわけです。それで、誰かが決めたわけでも、それが正解かどうかもわかんないけど、最後はやっぱりバラードの雰囲気があって、実際それがしっくりきた曲順になっていると思います。
──冒頭と終わりはアルバムの王道っていうことですね。
新藤:僕だけじゃなく、たぶん我々の世代はそう思う人も多いんじゃないかな。
──サブスク時代になって音楽の聴かれ方も変わってきていますが、フルアルバムという括りをどう捉えていますか?
新藤:この時代にフルアルバムを出す意味をやっぱり考えないといけないですよね。サブスクで聴けるのに、フィジカルで聴いてくれる人がいるわけだから、真摯に向き合わないといけないんじゃないかなって。昔はこれしかなかったから、こだわるのは当たり前だけど、より一層アルバムであることに意味を持たせないといけないとは思ってます。
──そういう意味では、種から水をあげて果実になるっていう今回のコンセプトは、フルアルバムだからこそ掲げられたというか、それがあることがフルアルバムを作る理由にもなっていますよね。
新藤:そうですね。さっきの曲順の話じゃないけど、我々ももう配信に慣れてるんだけど、「アルバムが大切だ」っていう気持ちは抜けないんじゃないかなと思います。
岡野:うん、そうですね。
──アルバムには昨年春に配信リリースされた「言伝 -ことづて-」も収録されています。最近も大きな災害があり世界ではいまだに戦争が続いているので、この曲で歌われている祈りに心を重ねる人も多いと思います。おふたりはミュージシャンとして、今この世の中に対してどんな思いを持って表現されているでしょうか?
岡野:「言伝 -ことづて-」はやってみて難しいテーマだなと思いました。僕は歌詞を書いてないので、彼(新藤)のほうが大変だったと思うんですけど、自分の立ち位置でどう立ち向かおうか考えました。政治的なことに責任を負うほど何か言えるわけでもないから、当たり前のことを言うしかないというか。平和のほうが絶対いいし、大切な人を守りたいっていう気持ちは絶対に間違いない。そこに自信を持つことで、国と国のなんとかとか、そんなことを音楽で言うつもりはないっていうことが逆にはっきりしたというか。人として当たり前に思うことを自身を持って届けるべきだと、この曲を通じて改めて胸を張って言えるようになったと思います。
新藤:この曲を作るときによく考えたのは、「ポップソングには扱えるものと扱えないものがある」ことですね。改めてポップソングは、ポケットに入れて持ち運べるぐらいのもの、気が向いたときに口ずさめて自分に寄り添ってくれるものだと思ったんです。NHK広島のテーマソングを自分たちが広島出身というご縁で作ったんですけど、どういうポップソングにするかをすごく考えたんです。原爆がどんなものかはそれなりに知っているけど、それを書いたらポップソングにならないじゃないですか? でも軽く扱うのもダメだし、矮小化というか綺麗に書きすぎるのも違うし、ポケットに入れられないぐらい残酷に書くのも違う。だからその塩梅をすごく考えたし、「ポップソングとは何だ?」を自分なりに考えた曲でした。やっぱりポップソングにはポップソングなりの使命があると思うんですよね。それを考えた時期だった覚えがあります。
──2024年の25周年ライブ横浜スタジアム最終日に、岡野さんが「また5年後も10年後も、山の頂上でこんないい景色を見続けられたらと思います」と仰っていたのが印象的でした。そこから2年経ちますが、今のポルノグラフィティが見たい景色とはどんなものでしょうか。
岡野:また、でっかいところでライブができたらいいなと思っています。僕らにとってライブが自分たちの活動を集約するところなので、たくさんの人に囲まれて節目を迎えたいという気持ちは変わらないですね。いろんな人たちに届くアルバムができたと思うし、また山の頂上に登るための作品ができたと思うから、またそういう大きなところでできるように頑張りたいと思います。
新藤:『果実』はポルノがこれまでやってきたことの延長線上の上位互換的なものにはなっていると思うので、僕らの音楽を好きな人は絶対楽しく聞いてもらえると思います。うっすらしか知らない人でも「どう聞いてもポルノの曲」っていうのがあると思います。ポルノグラフィティに対して、僕も期待しているところがあるんです。高校生の時とかデビューする前、デビューした頃の自分の期待をポルノグラフィティに乗せてるし、ファンの方々の期待もポルノグラフィティに乗ってると思うんです。今見えてる30周年まで、その期待通りに突き詰めていきたいと思っています。
リリース情報

『果実』
<通常盤(CDのみ)>
SECL-3357 3,500円(tax in.)
<完全生産限定盤Blu-ray付>
SECL-3350〜3352 17,000円(tax in.)
<完全生産限定盤DVD付>
SECL-3353〜3356 17,000円(tax in.)
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