Special
<インタビュー>SugLawd Familiar 「震える足で進む、それでもみんな一緒だ」――1stアルバム『FURAAMAN ANTHEM』に凝縮された軌跡と感情

Interview & Text: 森朋之
Photo: SHUN ITABA
沖縄発の5人組ヒップホップ・クルー、SugLawd Familiarから1stアルバム『FURAAMAN ANTHEM』が届けられた。
「HOPE」「DAMN」「シュビドゥバ」「SADISTIC FURAAMAN」「ENDLESS SUMMER」などのシングル曲に加え、「MAKENAI feat. OZworld」「% feat. CHICO CARLITO ,Disry」「ノスタルジックな Destination feat. 前川真悟 (かりゆし 58)」「Blue Jeans feat. MINMI」など全18曲を収録。
「自分たちの感情を全部入れ込んだアルバムです」(Vanity.K)というコメント通り、結成から8年の軌跡とメンバーそれぞれの意思と個性が強く刻まれた本作について、メンバー5人に語ってもらった。
「やり切り過ぎた」――結成8年で辿り着いた、カラフルな18曲
――メジャーデビューから8か月が経ちましたが、活動や制作のなかで変化を感じることはありますか?
OHZKEY:変化ですか……。まず、今まで何となくやってた部分が明確になった感じはありますね。きちんと計画を立てるのが苦手なんですけど(笑)、先が見える形で進めていくのは新鮮だし、自分たちの成長にもつながってるのかなと。あと、楽しいです(笑)。
Oichi:楽しくしかやってないですね(笑)。
Caster Mild:そうですね(笑)、制作スタイルもだいぶ変わったし、プロモーションやイベントを含めて、音楽の楽しみ方も増えて。もちろん、もっとアップデートしたいですけどね。
XF MENEW:メジャーデビューしてから、音楽に対する解像度がさらに上がったというか。より真摯に向き合えるようになりました。
Vanity.K:生みの苦しみとか、「これでいいのか」という自問自答もありましたね。みんなラップが上手いし、そこにどうやって入っていけばいいんだろう? という。そのおかげでいい曲が作れているのかなと。

――1stアルバム『FURAAMAN ANTHEM』からも、今のSugLawd Familiarの充実ぶりが伝わってきました。
OHZKEY:ありがとうございます。作ってる段階では不安もあったんですけど、マスタリングを終えたときに「すごくいいな」と。楽しそうだし、実際楽しかった(笑)。音楽が好きだなって改めて思いましたね。
Vanity.K:自分たちの感情を全部入れ込んだアルバムですね。曲順通りに聴いてこそ意味があるし、喜怒哀楽を感じてもらえたらなと。
Oichi:やり切りました。アルバムが完成した後も制作を続けてるんですけど、最初は何も浮かんでこなくて(笑)。それくらいアルバムに注いだし、熱量の込め方みたいなものがわかったというか。
XF MENEW:やり切り過ぎましたね(笑)。SugLawd Familiarのキャリアは8年になるんですけど、この8年間をカラフルにまとめられたのかなと。正直、まだ満足はしてないんですけど、聴いてて楽しいアルバムになったと思います。
Caster Mild:最高のアルバムですね。DJとしても、グルーヴのなかに曲をハメていくのが楽しみです。

- "FURAAMAN"に込めたアルバムの「芯」とは
- Next>
リリース情報
関連リンク
"FURAAMAN"に込めたアルバムの「芯」とは
――ここからはアルバムの収録曲について聞かせてください。1曲目の「Carnival」は、享楽主義をテーマにした楽曲。カリビアンなノリが楽しいパーティチューンです。
Oichi:俺らが初めて作った曲(「IT'S A PARTY」)へのオマージュみたいな曲だなと思っていて。それをアルバムの顔として1曲目にできたのはよかったのかなと。
Vanity.K:「IT'S A PARTY」はタイプビートで作ったんですけど、「Carnival」は「どういうビートにしたいか?」というところから始めて。めちゃくちゃ思い入れがありますね。
SugLawd Familiar - "DAMN" (Official Music Video)
――2曲目の「DAMN」はダンスホールを取り入れたラガ系ヒップホップチューン。
OHZKEY:「クラブチューンにしよう」というヴァイブスで作った感じですね。“DAMN”はスラングみたいなもので、靴が濡れたときとかに「デムい」って言ったりするんですよ。けっこう何にでも使ってて、クラブで飲み物をこぼされたり、友達が先に帰っちゃったり、飲み過ぎたときも「デムい」(笑)。
Vanity.K:俺らのなかだけで流行ってます(笑)。
――日本中に流行らせましょう(笑)。3曲目の「MAKENAI feat. OZworld」のテーマは反骨心、自己暗示だとか。
Vanity.K:曲はだいぶ前からあって、「絶対、OZworldさんがハマる」と思ってて。願いしたらOKしてくれて、マジでうれしいです。サウンド的には沖縄のエイサー文化がめちゃくちゃ入ってるんですよ。
XF MENEW:OZworldさんとはAwichさんのツアーなんかでご一緒したことがあって。スターだし、遠い存在なんですけど、曲に参加してもらえて光栄でしたね。
SugLawd Familiar - "MAKENAI feat.OZworld" (Official Music Video)
――続く「% feat. CHICO CARLITO ,Disry」は注意喚起をモチーフにしたヒップホップ・チューンです。
OHZKEY:これはXF MENEWですね。
XF MENEW:客演を含めて、やりたいことをやらせてもらいました。ヒップホップの表面的な輝きだけではなくて、文学的な美しさを表現したかったんですよね。音楽なんて好きなときに好きなものを聴けばいいんだけど、BGM扱いされることが増えてる気がして。そこに憤りを感じていたし、「その音楽がどうして存在してるのか」だったり、音楽の深みをもっと味わってほしいという気持ちで作ったのがこの曲ですね。
Oichi:この曲、ビートもMENEWが作ったんですよ。そこにサウンドプロデューサーのArt'Teckyxがギターを入れたり、いい感じでセッションして。XF MENEWのやりたいことがいちばんやれた曲だし、いい味が出てますね。

――「SADISTIC FURAAMAN」はレゲエ×ヒップホップなトラックのなかで、理想と現実の狭間で生き抜いていく決意を示した楽曲。アルバムタイトルとも連動してますね。
OHZKEY:説明するのが難しいんですけど、「熱量あるほうがカッコいいよ」という感じの曲ですね。物事が上手くいかないときはどうしても熱量が下がるし、そういうときって、がんばって挑戦してる人をバカにしたくなったり。そういう人の気持ちもわかるし、この曲は誰かを非難してるわけじゃなくて、「みんな仲間だ」っていう感じなんですよ。
Oichi:うん。
OHZKEY:“FURAAMAN”って“バカなヤツ”という意味なんですよ。〈震える足で進むのさ俺達〉というリリックもあるんですけど、みんな何かに怯えながら生きてるし、同じようにバカで。それも含めて「みんな一緒だ」って言いたかったというか。
Oichi:アルバムの芯みたいな曲ですね。
SugLawd Familiar - "SADISTIC FURAAMAN" (Official Music Video)
――6曲目はメジャー1stシングル「HOPE」。SugLawd Familiarにとっても大きなターニングポイントになった曲ですよね。
Vanity.K:それまでやったことがなかった、みんなで歌えるような応援歌を作ろうというところから始まって。スタジアムやドームでいい響き方をする曲にしたかったし、リスナーのことを考えて作った一歩目って感じだったんですよ。自分のヴァースから始まるんですけど、ロックのフロウも取り入れて……みんなもそうだったと思うけど、何回も書き直したし、かなり大変でした。
Oichi:めっちゃ悩みましたね。
Vanity.K:フックだけで50回以上は書き直したんじゃないかな。そこまでキャッチ―さに重きを置いたのも初めてだったし、タイトル通り、希望を持って制作してました。ライブでどう聴かせるかはまだ掴めてないんですけど。
Caster Mild:模索中ですね。
SugLawd Familiar - "HOPE" (Official Music Video)
――そして「Zero」はVanity.KさんとXF MENEWさんで制作した楽曲。
Vanity.K:はい。ビートを聴いて「こんな感じにしたい」と考えながら鼻歌で歌ったフロウがきれいにハマって。そのときの母音と子音を活かしながら日本語に当てはめたんですけど、タイトルもリリックの意味も後付けなんですよ、正直。死んじゃったらゼロになるし、何も持っていけないなんだから、捉われないで生きてほしいという。そこからXF MENEWに渡して、解釈しながらリリックを書いてもらって。
XF MENEW:Vanity.Kから「内省的なことを書いてほしい」と言われて。あとはもう感覚的に作りました。
OHZKEY:この曲、トラックもめちゃくちゃよくて。UKガラージとかドリルサウンドを取り入れてるんですけど、ベースの動きはまたちょっと違っていて。疾走感や前向きな感じがあるし、ダークな雰囲気もあって、実験が上手くハマったなって。
――8曲目の「シュビドゥバ」は80‘sファンク系のビートを取り入れた“ウェッサイ”な楽曲。理屈抜きで楽しい曲ですね。
Oichi:楽しいっすね(笑)。俺がフックを歌ってるんですけど、RECもめちゃくちゃ気持ちよくて。作ってるときはドライブソングにしようって言ってたんですけど、俺たちのパーティーの最中に起きた出来事も歌ってるし、結局“シュビドゥバ”って感じです。
OHZKEY:さっき話した“デムい”とちょっと似てるんですけどね、ノリとしては。“DAMN”はその瞬間に起きたことで、“シュビドゥバ”は一連の流れやストーリーのことだって、Caster Mildがまとめてくれました。
Caster Mild:まあ、それも一つの解釈ということですね。
OHZKEY:難しくしないでよ(笑)! もう少し制作について話すと、プロデューサーと昔の曲を掘ってて、Zappの「Computer Love」という曲がめっちゃいいなと思って。その曲のサビが“シュビィドゥバ”で、それがみんなにフィールしちゃったんですよ。
SugLawd Familiar - "シュビドゥバ" (Official Music Video)
――9曲目の「Skit」はインタールード的なトラック。Caster Mildさんの声がフィーチャーされてますね。
Caster Mild:「シュビドゥバ」のMVでタクシーの運転手役をやってるんですけど、みんなを乗せて異空間に連れていくシーンがあって。アルバムの流れも10曲目(「Say My Name」)、11曲目(「アビスベル Super Nova」)と異世界チックになっていくので、「Skit」に入れる声を自分がやることになったんです。リリックも書きました。
Vanity.K:ホントはラップしてほしかったんですよ。すごくいい声なので、またやってほしいです。
リリース情報
関連リンク
個性全開の楽曲たち、ワンマンライブへ滾る想い

――この後はブルースを感じさせる「Say My Name」、ふざけた雰囲気の「アビスベル Super Nova」へと続きます。
Oichi:「Say My Name」みたいな曲、前からやってみたかったんですよ。OHZKEYと飲みながらいろんな曲を聴いてるときに、「こういう感じでやってみよう」って思いついて。
OHZKEY:Netherfriendsとかを聴いてて、スモーキーで妖しい感じの曲をやりたくなったんですよね。Art’Teckyxもその場にいたから、3人で作り始めて。
Oichi:制作の後に曲を作りました(笑)。
OHZKEY:「アビスベル Super Nova」は〈てかめっちゃ Higher〉というリリックではじまるんですけど、ぶっ飛んだ感じの曲ですね。“アビスベル”が何かっていうと、プロデューサーの息子さんが「デュエル・マスターズ」にハマってて、いちばん強いカードが“アビスベル=ジャシン帝”らしいんですけど、その名前にツボっちゃって(笑)。
1000年後の落語家の名前みたいだし、発音すると口が気持ちいいので、曲名に入れちゃいました。
Vanity.K:最初はもうちょっとセクシーな感じでやろうとしてたんですけど、OHZKEYに却下されたんですよ。「ふざけてください」って(笑)。
SugLawd Familiar - "ENDLESS SUMMER" (Official Music Video)
――「ENDLESS SUMMER」は90年代のオールドスクールの雰囲気がありますね。年上のヒップホップ・ファンも反応しそう。
Oichi:これは“ザ・夏”ですね。
Vanity.K:メッセージも何もなくて、ただ夏を楽しんでるだけの曲(笑)。プロデューサーに90'sのネタを教えてもらって、それをいろいろ入れ込んで。もともとは俺のソロ曲だったんですけど、SugLawd Familiarのアルバムに入れられてうれしいです。沖縄の人は海に入らないんですけどね(笑)。
Oichi:そうだね。夕陽を見たり、チルな接し方をすることが多いかも。
XF MENEW:Caster MildのDJスクラッチもいいんですよ。
Caster Mild:繋ぎでスクラッチを入れることはあるんですけど、ここまで擦りまくることはあまりないですね。
――13曲目の「ノスタルジックな Destination feat. 前川真悟(かりゆし 58)」には、かりゆし58の前川真悟さんが参加してますよね。
OHZKEY:前川さんとはライブでご一緒させてもらったり、飲みに行ったり、仲良くさせてもらってて。音楽で遊ぶ感覚を教えてくれた先輩で、アーティストとしても人としてもめっちゃ尊敬してるんです。アルバムにもぜひ参加してほしくて、僕から声をかけさせてもらいました。ドライブソングなんですけど、運転席、助手席、友達、彼女とか、いろんな視点から「あの時間はもう戻らない」という気持ちを落とし込めたのかなと。
Oichi:映画見たり、本を読んでると、登場人物の人生を疑似体験したり、ノスタルジックな気持ちになれるじゃないですか。それと同じような感じがあるんですよね、この曲。
XF MENEW:情景が浮かぶよね。

――レゲエのテイストを取り入れた「君がいる砂浜はダンスフロアー」もすごくメロウですね。これはOichiさん、Vanity.K さんの楽曲だとか。
Vanity.K:俺とOichiは恋愛系の曲だったり、メロディがしっかりある曲も得意で。この曲はそれが上手くハマったし、自分でもずっと聴いちゃってます。
Oichi:いいよね。Vanityと2人で作った「Crazy Love」という曲があるんですけど、あの感じでもう1回やりたいなとずっと思ってて。それが実現できてよかったです。

――「荒野のガンマン」はブーンバップ系のヒップホップ。OHZKEYさん、XF MENEWさんの掛け合いがカッコいいですね。
XF MENEW:「君がいる~」と対照的ですね(笑)。俺とOHZKEYが初めて曲を作ったのは高1のときで、それがSugLawd Familiarを結成したきっかけなんですけど、それ以来、2人で作った曲がなくて。Art'Teckyxさんがめっちゃいいビートを持ってきてくれて、すぐにOHZKEYが「やるぞ」って。
OHZKEY:これはXF MENEWとやりたかったですね。この曲のリリックを書いてたとき、めちゃくちゃ入り込んでて。好きなことを仕事にすると、だんだんそれが嫌になったり、「こんなはずじゃなかった」みたいな気持ちになることもあると思うんですよ。俺らの周りにも離れていった仲間がいるし、いなくなってしまったヤツもいるんですけど、自分ができることは帰ってこれる居場所を作ってあげることだけだな……みたいな気持ちを書きました。
XF MENEW:めっちゃ悩んで書いてたよね。
Oichi:この曲、アルバム制作の最後に出来たんですよ。
OHZKEY:雨のなか、トラックを聴きながら何時間も散歩していろんなことを考えて。好きな曲になってよかったです。

――続く「Blue Jeans feat. MINMI」からは、大人になってしまったことへの葛藤、ピュアな感性を持ち続けたいという思いが伝わってきました。
XF MENEW:これも僕のわがままというか、やりたいことをやらせてもらいました。
OHZKEY:MINMIさんとは沖縄のフェスで1回共演させてもらったことがあって。
XF MENEW:この曲はぜひMINMIさんと一緒にやりたかったんですよ。MINMIさんはロサンゼルス在住なので、リモートだったりデータのやり取りだったんですけど、僕らが思い描いていた漠然としたテーマをしっかり受け止めてくれて、きれいにまとめてくださって。
――メンバーそれぞれのやりたいことが実現できる場でもあるんですね、SugLawd Familiarは。
OHZKEY:普段から「この曲、いいよ」みたいな話をしてるし、メンバーがやりたいことに対して「それはイヤだな」と思うこともないので。誰かが「こういうことをやりたい」と言えば、ちゃんと寄り添えるんですよね。

――「Be Alright」はどんな成り立ちだったんですか?
Oichi:これはOHZKEYですね。
OHZKEY:「大丈夫」って根拠なく言いたかったんですよ。全然大丈夫じゃないヤツが俺らの周りにいるんですけど、そいつ、すごく明るくて楽観的で。そういう奴に「大丈夫だよ」って言われると勇気がもらえるし、そういう気分になれる曲を作りたくて。なんくるないさ精神ですね。
――アルバムの最後に収められた「Dear Mama」は、大人になってわかった親の愛がテーマ。これはOichiさん主導の曲だとか。
Oichi:特定の人に向けて歌詞を書いたことがなかったんですけど、このトラックを聴きながら書いてたら、自然とこういう内容になってたんです。母親の誕生日にこの曲を贈ったら、「めっちゃいい」って言ってくれました。
Vanity.K:うれしかっただろうな。
――メンバーの個性をしっかり活かしつつ、SugLawd Familiarとしての魅力がダイレクトに伝わるアルバムですよね。そして2027年1月9日には、Zepp DiverCity(TOKYO)で初のワンマンライブが行われます。
Vanity.K:これはもう挑戦ですね。初めてのワンマンだし、不安もあるんですけど、やるしかない! っていう。アルバムが出来て「やれる気がする」という気持ちになってきました。
Caster Mild:まだ実感はないですけどね。がんばります。
Oichi:既にヒリヒリしてます(笑)。これをチャンスだと捉えて、がむしゃらにやりたいですね。
XF MENEW:楽しみですね。「まずはここにかかってる」という感じもあるし、滾ってます(笑)。
OHZKEY:頭のなかで「ドラゴンボール」のオープニング曲が流れてます(笑)。
Oichi:みなさんに楽しんでもらえるのが一番なんですけどね、もちろん。
OHZKEY:うん。今日もいろいろ話をさせてもらいましたけど、俺らの音楽はみんなの日常に寄り添えると思っていて。俺らも楽しくやってるので、みなさんにも楽しんでほしいですね。


























