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<インタビュー>清春 なぜ今名盤を録り直すのか――黒夢が2026年のサウンドで蘇らせた『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』リリース

インタビューバナー

Interview & Text:西廣智一

 2025年2月、約10年ぶりに復活を果たした伝説のバンド黒夢。ツアーやフェス出演など精力的だった昨年を経て、2026年も7~9月に開催されるアリーナ公演【THE PERFECT DAYS TO DIE】のほか、複数のフェス出演が予定されている。そんな黒夢が新たなアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』を、7月15日に同時リリース。これらは90年代後半に黒夢が発表した名作『Drug TReatment』『CORKSCREW』を、オリジナルの空気を大切にしながらも20数年分のスキルで再構築したリメイクアルバムとなっている。

 今もなおスリリングさを漂わせながら、唯一無二の活動を続ける黒夢。なぜ彼らは今この2作品をリメイクしようと思ったのか。現在の音楽シーンにおける自身の立ち位置など含め、メンバーの清春(Vo)に話を聞いた。

すべてはこの20数年の積み重ねのおかげだなと思う

――黒夢は、昨年2月9日の東京ガーデンシアター公演【CORKSCREW A GO GO! Saint Mx Fxxxxxxx】で、約10年ぶりに復活しました。そもそもこの公演は、清春さんのメジャーデビュー30周年を記念した全国ツアー【清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 『NEVER END EXTRA』】の一環で行われたものでしたが、その後ぴあアリーナMMでの追加公演やZeppツアー、フェス出演などライブ活動が次第に増えていきました。こうした活動の流れは、どこまで想定していたものなんでしょう。

清春:これはコンサートの制作会社が、ツアーもフェスもバンバン入れていった結果であって、僕自身はぴあアリーナでの追加公演さえも反対してました。ガーデンシアター1発でいいんじゃないかと。だから、Zeppツアーも最初はそんなにやる気なかった。ただ、人時さんのやる気を会うたびに日々感じるんですけど、ここまで続いているのはそれが大きいですね。

 それこそ今回のTOYOTA ARENA TOKYOでの3日間も、僕は反対してた。9月の東京ガーデンシアターだけでいいんじゃないかと。黒夢過去最大規模、最大日数でアリーナ公演をするのも、去年だったらわかるんですけどね。なので、本人たちから「これをやろう」と言ったものがほぼなくて。ただ、今回に関しては過去のアルバムを録り直したCDを出したかったので、だったらやりましょうかということになり。このCDも本来はもっと早く出るはずで、なんなら去年のZeppツアーのタイミングには出せたらなと思っていたんですけど、僕も人時さんもお互いに忙しくて、スケジュールを調整し続けていたら1年後になってしまったという感じですね。


――『Drug TReatment』と『CORKSCREW』の2枚はいつか録り直したいと、以前から思っていたんですか?

清春:そうですね。以前の黒夢の再始動には、何かがやりたいが為にとか、人のためにとか明確な理由があったんですけど、今回はそういうものがなくて、「30周年なのでやりましょうか」みたいな流れで今に至ります。10数年前の再始動のとき、新しいオリジナルアルバムを2枚(2011年の『Headache and Dub Reel Inch』、2014年の『黒と影』)作って、僕的にはここに来て我々2人で新しい作品を作れたことがすごく嬉しかったんです。で、新しいオリジナルアルバムを携えてコンサートをしてみると、ディープなファン層にはしっかり届いていたものの、それ以外の人たちが盛り上がるのは結局古い曲なわけです。わかってはいたことなんですけど。特に最近はアルバムを全部聴くという時代でもなくなってしまい、過去の思い入れを大切にしてライブに来ている人がほとんどなので、だったらその“思い出層”を歌わせないとダメだということで、もし次にやるんだったら『Drug TReatment』と『CORKSCREW』の録り直しだなと。実際、去年の再始動以降はほぼこの2枚からの楽曲でライブをしていますね。

 それともうひとつ。『CORKSCREW』前後の我々は本当に不仲で、2人で一緒にアルバムを作っていないんです。会話もゼロだったし、レコーディングも2人バラバラだったし、MV撮影でロスに行ったときもお互いの滞在日をズラしていたくらいでした。それもあって、今回は一緒に作ろう……とまでは言わなかったですけど、結果的に2人顔を合わせて作ることができたという。


――なるほど。

清春:なので、良く言えば、ガンズ(・アンド・ローゼズ)とかモトリー(・クルー)の再結成みたいなイメージですね。新しいオリジナルアルバムを出しても、ライブでは新曲をやらずに大半が聴きたい過去の曲をやるみたいな。


――結局「Welcome To The Jungle」で一番盛り上がるみたいな。

清春:そうそう。「Shout At The Devil」とか。僕らはまだまだそういう存在ではないだろうなと思っているんですけどね。新しいチャレンジをするにおいても、以前とは違った種類のものが求められているような気がして、それが2人揃って新録をするということだったと。これも、我々2人が揃っていないとできないことだし、どちらかが引退したり病気したりしたらもうできないことなので、これで一旦やりたいことは終わるなという。で、改めて再録するなら、もうライブでやらない曲は外そうということになり、こういう構成になったわけです。


――各アルバムとも3曲ほどカットされていたり、『Drug TReatment』に関しては当時のシングルのカップリング曲が追加されていたりするのは、そういう理由だったんですね。

清春:そうです。聞いたところによると、外された曲がたまたま人時さんの曲だったことで、ネット上にはいろんな憶測があるみたいですけど、そういうことじゃなくて(笑)。ライブに来ている人はわかるんですけどね。まだそのラグは結構あるなという感じはします。


――僕も昨年、何度かフェスで黒夢のライブを拝見しましたが……。

清春:僕ら、苦戦してたでしょ?(笑) どこにいらっしゃいました?


――最初に観たのが6月の【DEAD POP FESTiVAL】でした。

清春:ああ、それはヤバいですね。一番覇気のなかったやつだ(笑)。


――いろんな意味で爪痕を残した、伝説のライブだったと思いますよ。

清春:(BRAHMANの)TOSHI-LOWくんに「暑いのわかってるのに『暑くて帰りたい』って、どういうこと?」って言われましたね(笑)。そもそも、僕ら世代的にもフェスとか知らない世界でしたし、フジロックが始まった1997年頃は僕らもホールとかアリーナでやってたし、解散に向かうタイミングでもあったので、(フェスに出演することに)意味がなかったんです。どちらかというと、フェス文化に対してアンチの立ち位置だったかもしれない。もちろん、これまで「出てみませんか?」と声をかけられることもゼロではなかったけど、そういう声が一気に集まったのが、黒夢が再始動した去年だったなと。

 最初が【ARABAKI ROCK FEST.】だったのかな。で、次が【DEAD POP FESTiVAL】でしたけど、暑いわ客層は若いわで……1曲終わったら帰ろうと思ってました(笑)。でも、フェスの世界だとそれが通用しないのもようやくわかった。テレビじゃないんだから、もっと自由でいいのかと思ってたし、僕らの世代だとぐちゃぐちゃにして帰ろうみたいなところもあるけど、今は1分1秒押しちゃダメだしあまり巻きすぎても困ると(笑)。ステージの転換も各アーティストのスタッフ同士、時間内でかっちりやれるかやれないか見てるらしいし、こんなにきっちりやる必要があるんだろうと疑問はまだあるんですけどね(笑)。人時さんに関しては、僕よりもさらにフェスに興味がないですし、僕の8倍ぐらいわかってないですから(笑)。そういう彼の態度を僕はリスペクトしています(笑)。


――(笑)。昨年、何回か観た今の黒夢は『Drug TReatment』と『CORKSCREW』の楽曲中心で、90年代後期に生まれたあの2作が現在に至るまでの黒夢のベースになっているんだなと、改めて実感しました。その上で聴いた今回のリテイクアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』ですが、音の質感は完全に今のもので、懐かしさより新鮮さのほうが強かったです。

清春:ありがとうございます。2026年の機材やシステムで録ってますしね。物理的にわかりやすく違うのは当時……特に『Drug TReatment』の頃はまだアナログ(レコーディング)でしたし、『CORKSCREW』ぐらいからPro Toolsとかデジタル機材を使うようになったのかな。全然アナログ中心の時代だったので、そこは大きく違います。もっと言えば僕と人時さん以外のメンバーも違いますからね。

 今回の再録において、アレンジをほぼしないこととテンポもほぼ変えないことは一応念頭にあったんですけど、それ以外は特に決めごとはなくて。1997〜98年の音源はさすがに恥ずかしくて聴けないので、今の自分たちが聴けるもの……あの当時の曲を今のサウンドで聴いて恥ずかしくないものを作ろうというのは、お互い認識としてあったと思います。


――今回一番驚いたのが、多くの曲でキーが上がってたことなんです。

清春:全体の7割ぐらい、キーは上げましたかね。もちろん、そこで競っているわけではないですけど。半音、下手したら1音半とか上がっているんじゃないかな。そう考えると、当時は声がよく抜ける音域をよくわかっていなかったのもあるし、この10年20年でわかってきたこと、鍛えられてきたことも大いに反映されているんだと思います。そこも含めて、人時さんの了解を得て上げさせてもらいました。


――キーが変わると、特に弦楽器は指板のポジションが変わったりして大変ですものね。

清春:音のムードも変わりますから。まぁ、人時さんがベーシストだったからよかったのかもしれませんね。ギタリストだったらもっと嫌がったかもしれない(笑)。


――実際、キーが上がったことでヒリヒリ感がより増しましたよね。

清春:そうですね。90年代後半、当時のアレンジャーと一緒にいろんなアルバムを作る中で、これだとボーカル録りが早く終わるっていうキーがあって。音を当てやすいっていう。でも、そこから歌い続けていく中で徐々に自分のキーも上がっていったので、全体的に1音くらい上げるとちょうど抜けのいい感じになるわけです。


――通常は加齢とともに声域は狭まりますし、高いキーも出にくくなりますよね。

清春:ハスキーになったり枯れやすくなったりするんですけど、これはマラソンにすごく近い気がします。毎日走ってないと、だんだん息が上がるようになるじゃないですか。それと一緒で、僕は毎週のようにライブをやってきたことで、声域をキープできただけじゃなく上もより出るようになりまして。ライブが2か月空いた記憶がないですもんね。よく「なんでそんなに長時間歌っていられるんですか?」とも聞かれますけど、急にできるようになったわけではなくて、長年の積み重ねがあっての変化ですね。長期間休まれていて復活するとダメになってしまう方もいる。あれが自分は怖いんですよ。2026年に黒夢として活動をして、アルバムを出すという未来があるのも、すべてはこの20数年の積み重ねのおかげだなと思うし、黒夢以外の活動も熱心に追いかけてくれる人たちの支えがあったから今があるんだと思います。


――あと、ヘヴィメタルやラウド系だとチューニングを下げるとカッコよさが増しますが、黒夢のようなパンキッシュなロックンロールの場合は逆にキーが高いほうがカッコいいんだなという気づきもありました。

清春:確かに、こういったロックンロールはダウンチューニングすると抜けが悪くなって、痛快さがなくなりますものね。ダウンチューニングもサッズのときに一度試してみたんですけど、その音圧に勝つことが大事なのかなという気づきがありましたけど、無理に我々がやる必要もないのかなと。要は何が根底にあるかですよね。僕はメタルが根底にないですし、時代的にも子どもの頃にミクスチャーを通っていない。ギターはロックンロールのカッティングがカッコいいと思う世代なので、こういう選択になるのも必然なのかも。


――意外だったのが、『Headache and Dub Reel Inch』から「13 new ache」、『黒と影』から「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」が新たなミックスを施されて、『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』にそれぞれボーナストラックとして収録されていること。アルバム本編との親和性の高さに驚きました。

清春:当時はシーケンスを結構入れていて、それが90年代のシンプルなバンドサウンドが好きだった人には合わなかったんだろうけど、いや、装飾を取ったら同じなんだよっていうことも教えたかったですし、10数年前に新譜を作ったことを我々も忘れていないってことも伝えたくて。特にこの2曲に関しては新たなレコーディングはしていないし、声も今より若かったりするけど、エンジニアの方も「これ、全然合うね!」と。そういう意味でも、いろいろ再発見が多かったです。


――先ほどもお伝えしましたが、今回の2枚は懐かしさよりも新鮮さが強かったですし、もっと言えば純粋な新譜という感覚で楽しめました。

清春:そう言ってもらえるとありがたいですね。やっぱり、プレッシャーもあるじゃないですか。昔よりもうまく、カッコよく歌いたい、表現したいという思いも強いし。でも、これがやれたことでこの先あんまりやることないなと思いました(笑)。それくらい満足度のある仕上がりです。


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まだまだ若手よりも諸先輩から受ける刺激のほうが強いかもしれない

――本作に関しては、撮り下ろしのアーティスト写真やアルバムのアートワークも非常に印象的な仕上がりです。

清春:富士山のアーティスト写真はRKさん、アートワークは河村康輔くんが担当してくれて。2人とも面識のある人たちなんですけど、もともとは『SAINT Mxxxxxx』や『READYMADE』というファッションブランドのデザイナー細川雄太くんが僕らのことをずっと好きでいてくれて、その縁から彼が動いてくれて、彼の仲間たちでビジュアル面を固めていったんです。特に、黒夢のファンだった人たちの多くは現在40代なので、その40代の方たちを通して僕らのことを下の世代に伝えられる可能性が高くなる。



――アートワークに関して、事前に伝えたイメージってありましたか?

清春:河村くんはもともと、シュレッダーでみじん切りにしてそれをつなぎ合わせる、コラージュが得意なアーティスト。パンクにすごく愛着があって、僕らの『CORKSCREW』とかも聴いていたそうなので、再録盤が完成する前にオリジナル盤を聴いたイメージで自由に作ってもらいました。実際、直してほしいところもなかったですね。


――そうやって自分たちよりも若い世代とコラボレーションすることで、従来のイメージに新たなテイストが加わった黒夢を今のリスナーたちに届けていると。

清春:そういう意味では、新しいバンドロゴもそうですよね。これは細川くんに作ってもらったんですけど、すごくしっくりきています。


――では、音楽面ではどうでしょう。自分たちが若い世代に与えた影響を感じる瞬間ってありますか?

清春:全然感じないですね。たまに「実は好きだったんですよ」っていう声を耳にして、嬉しいなってぐらいです。


――清春さんが若かった頃と今とを比べて、ミュージシャンの在り方に違いを感じることはありますか?

清春:僕らの頃と比べてサウンドが新しいとか、みんな技術的にうまいとか、いい子が多いとか海外を視野に入れている子が多いとか、そういう違いはあるかもしれないけど、昔と変わらないのはどの界隈にも優れている人は全体の10%程度しかいないということ。フェスに出たとき、たまに音を聴いていて「これ、すごいな。誰だろう?」と思って名前を調べるバンドもいるけど、せいぜい10組のうち1組くらい。逆に「この子たち、カッコいいのになんで売れないんだろう」という子たちもいるわけで。そのへんも僕らの頃と一緒で、ジャンル問わずいつの時代も同じことの繰り返しなのかなって気はしました。

 だからといって、黒夢は当時めちゃくちゃ優れていたのかと言われると、必ずしもそうとは言えなくて(笑)。僕らの場合は当時の狙いがよかっただけであって、そこからの20数年でお互いにしっかり実力を付けていった。そういうキャリアによってスキルが作られていくタイプもいると思うし、なので若い人達に与えた影響はあまり感じないですね。


――なるほど。

清春:と同時に、昔は音楽チャートで戦っていたのが今はフェスで戦うようになったり、CDがサブスクに取って変わったという変化はあるんですけど、例えば今も長く活動を続けている大御所と言われる先輩たちの凄みは新しい時代になればなるほど、ボディブローのように効いてくる。まだまだ若手よりもそうした諸先輩から受ける刺激のほうが強いかもしれない。REBECCAの再結成も観に行ったし、玉置浩二さんや小田和正さん、中島みゆきさん……みんなすごいので。日本には日本にしかない伝統の音楽があるわけで、音楽業界の人達って本当はそういう人たちにもっと目を向けなくちゃいけないと思うし、そうすることで逆にもっと早く世界レベルに追いつけるんじゃないかなと思っています。

 今の子たちが作る曲はめちゃくちゃ凝っていて、1曲の中にいろんな要素が詰め込まれている。それに対して、今回僕らが再録したアルバムの曲って、ただリズムが速くてめちゃくちゃシンプルなアレンジで、たまにリフとかキメとかが入ってくる、高校生でも弾けるようなフレーズが中心で、変拍子なんてほぼない。TikTokとかでバズるものが求められるものが今の主流なのだとしたら、黒夢がやってたことは異質かもしれませんよね。僕らはもともと、ヴィジュアル系という枠の中から出てきて、そこから4年後に解散するときにはこの形になっていて、それを20数年後にリメイクしたらこうなるっていうのが、ストーリーとしてもかなり異質ですし。そういうところまで含めたら、今回の2枚のアルバムの魅力をより深く理解してもらえるんじゃないかと思います。



黒夢「少年 2026」Music Video/Album『CORKSCREW 2026』


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清春「MEDLEY」

2009/01/28

[CD]

¥3,981(税込)