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<インタビュー>claquepot “3年分の進化を証明するEP”の裏で見つけた中堅ポジションの答え

Text & Interview: 高橋梓
Photos: 興梠真穂
6月17日、claquepotが約3年ぶりにEP『キャリア』をリリースした。収録されている新曲1曲と既存曲5曲から感じられるのは、claquepotらしいハングリー精神と、決して揺らぐことのない信念だ。心地よいグルーヴに身を任せながら、その言葉を追うほどに新たな発見がある同作は、3年という空白を埋めるのではなく「3年分の進化を証明する作品」と言えるだろう。そんな『キャリア』について、claquepot本人にじっくり語ってもらった。
──3年ぶりのEPのタイトルは『キャリア』。過去作からの積み重ねを感じるタイトルですが、どういった流れでこのタイトルになったのでしょうか。
claquepot:これまで「リビング」、「ランダバ」、「アグノス」、「オウライ」とカタカナ4文字縛りの楽曲をリリースしてきました。そのうちのどれかをタイトルにしてもいいかなと思ったのですが、「それらを総括できる言葉のほうがよさそう」、「EPのタイトルは別でつけよう」と考え始めまして。これまで『press kit』、『resume』、『the test』などの会社的なプローチでタイトルをつけてきた集大成という意味と、今や中堅っぽくなってきたという意味をかけて、「キャリア」がおもしろそうだと考えました。収録曲も僕が今までやってきたことの証明や、今やりたいことなど、自分の思いがこもっている曲なので、『キャリア』にしたらまとまりがいいなと。そんな流れで決まりました。
──なるほど。このタイミングで『キャリア』というタイトルの作品をリリースするということは、ご自身の中である程度キャリアに関する回答が出たということだったり?
claquepot:それで言うと出てはいないのですが、中堅っぽい立ち位置としての答えが出たというか。20代後半から30代前半くらいの時の「なにがなんでも結果を出してやるぜ!」というスタンスから、管理職みたいなメンタルになったんですね。以前は「キャリアがどうこう言えるフェーズじゃない」と思っていましたが、今ならしっくりくると感覚があります。
──ご年齢の影響もありそうですね。
claquepot:あります。実際に小さなライブハウスから始めて、去年に国立代々木競技場第一体育館でライブをして、今年はZeppツアーをするというように、キャリアアップしてきていて。『キャリア』というタイトルを背負っても、変なソワソワ感はありません。

──30代後半は、世間一般にも自分のキャリアについて考える年齢だったりしますよね。となると、一般的な仕事をしている人に寄り添って作るというアプローチもされたのかな、と。
claquepot:基本、すべての曲でそのマインドはあります。自分の言いたいことは一度全部出すのですが、「この言い方は音楽をやっていない方には伝わらないかも」と思ったら変えています。音楽や制作をやっていない職業の方が聴いても、自分のことを言っていると思ってもらえるような書き方は一貫しているかな。
──そんなclaquepotさんの実際のキャリアを考えた時、現在地をどんな言葉で表しますか?
claquepot:「折り返し」とかですかね。音楽的には折り返しを過ぎている気はしているんですけどね。世の浮き沈みやSNSがどうとか、そういったいろいろなことを考えながら音楽を作るのが、あと倍続くとは思っていなくて。そういう意味で、折り返しは過ぎていると思っています。ただ、自分の人生で考えると、ちょうど折り返しくらいな気がしますね。
──折り返し地点と思えるくらいには経験、キャリアを積み重ねてきている、と。キャリアを積めば積むほど自由になるタイプと、逆に縛られてしまうタイプがあると思うのですが、claquepotさんはどちらのタイプですか?
claquepot:前者でありたいですが、自由すぎるとそれはそれで何を作ったらいいのかわからなくなりそうな気がするので、ある程度の縛りは大事かな。時代的に音楽を作ってリリースをすることは、誰でもできるようになりましたよね。でも、自分が思っているクオリティでリリースするには、いろんな方の力を借りなくちゃいけない。もっと自由に作りたいと思いつつ、いろんな方の意見も聞きたい。そうなるとクローズドに向かっているとも言えなくないですね。

──claquepotというアーティストは、少し前よりもかなり広がりを見せていると思うんです。となると「claquepotの音楽はこうだ」と言われることも出てきますよね。そういう意味での縛りを感じることはあるのでしょうか。
claquepot:ないです。そこを考えないようにするのがclaquepotの意義なんですよね。聴いてくれる方をベースにして考えるのは、本当の意味での創作活動ではない気がしていて。作る過程で寄り添うためのエッセンスを入れることには意味があると思うのですが、0から1を作る段階でそれをやってしまうと「作品」ではなく「提供するもの」になってしまう。claquepotは「自分はこう思っているけど、どうですか?」と出したものに対して、「私もそう思います」と集まってくれたクルーで遊ぶのが一番いい形なんだと思います。要求に応え続けると、応えなくなった時に離れていってしまいますから。それは僕の考えるアーティストではないので、ブレずにやっていきたいと思っています。
──今作は「これからのキャリアアップと今まで重ねてきたキャリアの説明と証明している作品」とのことですが、主にどこに向けての説明と証明なのでしょうか。
claquepot:「自分だけの国を作りたい」というイメージではなく、知らない人にもちゃんと届けようというマインドがありますね。まだまだ規模を広げていきたい気持ちがありますし、広がれば広がるほど自分の頭の中にあるアイデアを具現化できる可能性が上がると思っていて。あと、最近は時間をかけたいんですよ。時間をかけたら曲がバズるかというと必ずしもそうではないし、時間をかけたかどうかは誰にも伝わらないんでしょうけど、いろいろと実験したいなと思っています。

──『キャリア』の中身についてもお伺いさせてください。今回全曲、きなみうみさんとの共作です。claquepotさんとしては「リビング」の編曲からのタッグですが、そもそもどんな出会いがあって全曲共作することになったのでしょうか。
claquepot:僕がきなみくんをずっと前から知っていて。ほかのアーティストさんのクレジットを追っていた時にお名前を見つけて、たどり着いたんですね。弟(Da-iCE工藤大輝)が仕事できなみくんとご一緒してみたら、ものすごくやりやすかったみたいで。そこから兄である僕に紹介してもらいました。
──「やりやすさ」というのは、どんな部分で感じるのですか?
claquepot:きなみくんは10歳近く年下で、提供している楽曲を聴くとAORニュアンスのものが多いんです。僕も大好きなジャンル感なので、相性はいいなと思っていたのですが、お話ししてみると最前線のJ-POPも作っていると。さらに、何を聴いてきたのかを質問したところ、親の影響で2000年代のJ-R&BやHIPHOPを聴いていたと言うんです。もう僕、ドンズバで。なので、「J-POPはこれくらい、FUNKはこれくらい、HIPHOPはこれくらい」という僕が思い描いているミクスチャー感をストレスなく、解像度高く受け止めてくれるんです。そこの信頼度がすごく高くて、やりやすさを感じました。

──きなみさんとの出会いは、めちゃくちゃいい出会いだったのですね。
claquepot:本当に。すごくうれしい出会いでした。ジャズやファンク、ヒップホップ、R&Bって僕らの世代が最後で、得意なアレンジャーとなるとベテランさんになってくるんですね。そうではなく、自分よりも若くて、かつ自分よりもそのジャンルに詳しくてJ-POPも書いているというのは、なかなかレアキャラです。すごくありがたかったので、最初から全曲組んでほしいと話をしていました。
──そこも気になっていて。そもそも、順番としてはEPを作ることを先に考えていたのですか? それとも、カタカナ4文字シリーズの楽曲ができ上がってEPにすることになったのですか?
claquepot:EPを出すことを先に決めていました。ただ、「EPを出す」ということだけしか決めていなくて、どんなタイトルで何曲入れるかはざっくりとしたまま。でも、その段階できなみくんにはすでに「全部一緒に作りたい」と話していたと思います。
──それと、リリース順と収録順が異なっていることも気になりました。何か理由があるのかな、と。
claquepot:リリース順はその時その時で作りたい曲を作って出していたからで、脈絡はないんですよね(笑)。たとえば「アグノス」は昨年の代々木第一体育館でやりたかったので、その手前で作っていて。一応心の順序があって作ってはいたのですが、EPにする上ではそれを取っ払って考えました。ライブのセトリを作るのに近い感覚ですね。BPMの兼ね合いも考えたかな。でも、「アグノス」が最後だとは決めていました。
──それはなぜ?
claquepot:代々木のライブもそうでしたが、〈好きだからやってる〉というフレーズで終わりたかったんです。このEPの全部に言えるフレーズだなと思っていたので、「アグノス」を最後にしましたね。

──となると、このEPの軸になる曲というのは「アグノス」ですか?
claquepot:軸があまり決まっていないのが、このEPかな。心の内や自分の意思を出しているのは確実に「アグノス」なのですが、軸にするかは決めていないです。攻撃力は一番高いですけどね。
──なるほど。最初「ラヴィン」も意外だったんです。「こんなにも多幸感あふれる曲をclaquepot名義で出すんだ……」と。
claquepot:歌詞もストレートなラブソングっぽいからね(笑)。でも、バラードの時はこういう方向に振っているんですよ。「hibi」もそうだし、s**t kingzと一緒にやった「Biotope」もそうだし。バラードはこういう質感で歌詞を書ける唯一のジャンルだと思っています。
──たしかに。でも、めちゃくちゃ深読みしてしまいました。EPの中では「リビング」とベクトル的には近い。「リビング」が内省的なものを感じる曲だったので、「ラヴィン」も愛を伝える対象がto youではなく、to meなのではないか、とか。
claquepot:おぉ、正解! 「どう受け取るかはその人次第」というのは僕の大前提としてのテーマなのですが、「ラヴィン」の歌詞は人にもモノにも当てはまるようにしています。実は「hibi」と同じアプローチをしていて、ラブソングにも見えるし、音楽や好きなものに対しての僕の思いも込めているという書き方をしました。
──lovin’=最高に気に入っている=現在のclaquepotさんのポジションのこと、なのかなとも思いました。
claquepot:それで言うと、今のポジションは気に入ってません(笑)。もうちょっとデカくなったら、lovin’って言います(笑)。でも、音楽という広い意味で言うと、lovin’なのは間違いないですね。
──そう考えると、このEPに収録されていることにすごく納得がいくというか。ただのストレートなラブソングが入っているという見え方になっていないんだな、と。
claquepot:僕の音楽を聴いてくれている方は違うとわかると思うのですが、初めて聴く方、グレーの方は「ストレートなラブソング」だと思いそうという、僕なりの仕掛けをしたというか。サビだけ聴いても、どうとでもハマるニュアンスにしようと、意図的に作りました。
──「好き」という感情を書いた曲ですが、claquepotさん自身は「好き」という感情はどれくらい信用しているのでしょうか。
claquepot:全然信用していません! それはSNSの影響もあるかもしれません。自分よりも好き度が高そうな映像が、そこら中にある状態なんですよね。それを見ても、やる気がなくならないことが本当に「好き」なんだと思います。最近では他人の好き度と、自分の好き度を比べないことを意識しています。自分よりも好き度が高い人、詳しい人はたくさんいますが、だからといって辞める理由にはならないんですよね。音楽もそう。自分よりも楽器が弾ける人、歌が上手い人、ダンスが上手い人はいるし、探したらキリがない。携帯を見れば1時間で何百人も見つかりますが、「じゃあ辞めるのか?」と言われたらそうではなくて。結局好きだからやっているというところに行き着きました。そういったテーマの曲が『キャリア』に収録されていますね。
──ちなみに、「好き」が「義務感」になってしまうことはないですか?
claquepot:締切に追われると義務感を感じることは多々ありますが、締切が過ぎて、レコーディングやミックスが終わって、完成した楽曲を運転しながら聴いている時にはその義務感はなくなっていますね。だから一過性の義務感みたいな感じなのかもしれないです。ずっと義務感を感じるようだったら、別の仕事に移行したほうがいいのかもしれないですが、今のところ音楽ではそれを感じていません。
──音楽では感じていないのは、なぜですか?
claquepot:表現の仕方が複数あるから。あれがダメならこれ、これがダメならこっちができる、みたいなこと考えられるからかもしれない。まだまだできることはあります。
たぶんclaquepotのライブは異質に見えるはず
──お話を聞いていると、claquepotさんは頭でクリエイティブをされるタイプに感じるのですが、感覚や勢いだけで制作をすることはあるのでしょうか。
claquepot:意外と感覚でやることも多いんですよ。それを表で話す時に言語化しているイメージで、音楽をやる“始まり”のような部分は完全にテンションでやっています。特にフラストレーションやストレスなんかは、すぐに歌詞に書いていますね。ただ、いつかはなくなるものだと思っているので、あとからロジカルにしているんだと思います。「ラヴィン」もいろんなものが入り混じっていて。「今後の展開のためにバラードはもっとあったほうがいい」、「仲間が結婚する時に歌える曲があったほうがいい」みたいな思いが複合的に組み合わさって熱が起こって作りました。で、寝て起きたらまた違う理由ができていたり。なので、原型は留めていないです。どういう気持ちで最初作り始めたか、明確に思い出せないくらいです。

──その流れにも“キャリア”を感じますね。そして今回のEPを通して改めて感じたのですが、歌唱力もめちゃくちゃ伸びていらっしゃいませんか? 何かされているのでしょうか。
claquepot:これは昔からの僕のテーマなのですが、スキルを上げるには現場が一番だと思っていて。ライブの数が増えたから伸びたんだと思います。ボイトレにも行っていませんから。ライブをする、自分で音源を聴く、という流れが一番なのかな、と。筋トレと一緒ですよね。あとはレコーディングの回数。レコーディング時のマイクアプローチも実践で学んでいる感じはかなりあります。たとえば、「ラヴィン」のサビもデモを作る上で、フィックスするまでに何十回も歌うわけです。そうすると勝手に慣れてくる。自分で楽曲を作っていると、自ずと練習になるんだと思います。
──その歌唱力も、まさに“キャリア”の積み重ねなのですね。そして、8月からはZeppツアーが始まります。このツアーは「キャリアの説明と証明」の「証明」を担うことになるのかと思うのですが、どう証明していくライブになる予定なのでしょうか。
claquepot:claquepotが好きな人は、僕がどういうライブをするかなんとなく想像がついているだろうし、ライブになったら曲尺、アレンジが変わって原型を留めていないことも多々あるので、そこを楽しみにしてくれているのかなと思います。弟やその先から入ってきてくれた“はじめまして”の方は、「ライブ=ショーケース」だと思っている方が多いはずで、たぶんclaquepotのライブは異質に見えるはず。アンコールなし、全部撮影OK、立たせっぱなし……といったカルチャーショックがあると思うので、その部分も含めておもしろさを提示したいです。その上で、どう楽しませるかについては正直、歴が長いのでちゃんと見せられるだろうと思っていて。それがキャリアの証明につながるのかなと思っています。

──なるほど。claquepotさんのライブは始まりから終わりまで無駄がなく、流れが美しい印象があります。
claquepot:せっかちなだけなんですけどね(笑)。ちょっと物足りないくらいで終わったほうがいい気がするので、僕の場合は短めにしています。「アンコールのために曲を用意する」という概念も好きではなくて。自分が観ていてしんどいと思うところを全部排除した結果、こうなりました。
──素晴らしいです。『キャリア』収録曲以外も披露すると思うのですが、その曲はその曲で当時の思いが入っていますよね。それを今歌うことで、アウトプットとして変化が出たりするのでしょうか。
claquepot:それで言うと、作り方が一貫しているんですね。皆さんがサブスクで聴ける曲は作り方が変わっていないので、「昔はこんなことを思っていたんだ」、「今歌うのはしんどいな」ということはないです。もしかすると昔の単語は出てくるかもしれないですけどね。今は「スマホ」で昔は「携帯」みたいな。でも、そんなレベルですね。
──ライブも楽しみです。最後に『キャリア』というタイトルにかけて1問。履歴書には書けない、今の自分を作った経験を挙げるとしたら?
claquepot:僕はいろんな芸能事務所を転々としてきて、それが今に活きているかな。一貫する人の強さも見てきたけど、自分がやりたいことをやれる場所にいくことは僕の人生においてはストレスがないんだなと感じています。Da-iCEやclaquepotが定まる前の段階、高校生くらいの時から経験してきたのはおもしろいな、やり方を間違えてなかったなと思っています。
リリース情報

EP『キャリア』
2026/6/17 RELEASE
<初回生産限定盤(ミニAL+Blu-ray Disc(スマプラ対応))>
AVCD-63884/B 9,900円(tax in.)
<通常盤CD(スマプラミュージック対応)>
AVCD-63885 3,000円(tax in.)
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ツアー情報

【claquepot zepp tour 2026 -キャリア-】
8月11日(火)愛知・Zepp Nagoya
8月21日(金)福岡・Zepp Fukuoka
8月23日(日)大阪・Zepp Osaka Bayside
8月25日(火)東京・Zepp DiverCity (TOKYO)
チケット:1Fスタンディング8,800円、2F指定席9,900円(すべて税込)
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