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<座談会>来日記念、THE ROOTS(ルーツ)が築いた伝説とヒップホップ×ジャズの30年

Text: 池城美菜子
Photo: 福政良治
「伝説的なルーツ・クルー!(The Legendary Roots Crew!)」はフィラデルフィア出身のヒップホップ・バンド、THE ROOTS(ルーツ)のライブでの呼び文句としてもおなじみだ。じつはこのフレーズ、90年代から使っている。若いのに「レジェンド」なんだ、と筆者は毎回思っていた。それから、30年強。意識の高いコンシャス・ラップの旗手として、フィラデルフィア・シーンのまとめ役として、人気トークショーの箱バンとして。ドラマーのクエストラヴに限れば、ソウルクエリアンズの中心メンバーとして、黒人音楽を記録し続ける作家、ポッドキャスター、映画監督として。たしかに伝説を紡ぎ続けている。
親日家でもある彼らが日本に帰ってくる。それを祝し、国内外で活躍するレジェンド・ドラマー、沼澤尚と本公演の企画責任者であるビルボードライブの長﨑良太、音楽ライターの池城美菜子の鼎談をお届けしよう。
※本記事は、2026年7月発行のフリーペーパー『bbl MAGAZINE vol.220 8月号』内の特集を転載しております。
ヒップホップとジャズが交差した90年代
長﨑:ルーツの出会いから伺いましょう。
沼澤:『Organix』から注目していたけど、ロンドンのレーベルから出たからUKものかと思っていました。『Do You Want More?!!!??!』のときはもう大人気で、僕が住んでいたLAのハウス・オブ・ブルースのチケットは全然取れなかった。ライブを観るまでメンバー構成がよくわからなくて、もちろん情報も少なかったから初めてライブを観た時に(ヒューマン・ビートボックスの)ラーゼルがステージでソロをやるまで普通にDJがいるとしか思えなかった。フィラデルフィアのバンドというのも後から知りましたし。
池城:私は2作目からです。1995年にニューヨークへ引っ越したとき、すごい話題になっていました。フィラデルフィアとニューヨークは片道2時間だから、ライブはよく観ていましたね。アルバムを聴くと、いろいろな声が入っていますよね。ラーゼルもラップするしマリク・Bもいたし、ダイス・ロウという准メンバーのMCも参加して、大所帯のライブが魅力でした。ブラック・ソートは理屈っぽく、歴史を織り込むMCとしての評価も高い。ケンドリック・ラマーが「squabble up」のビデオでルーツの真似をしたのは、系統的にはこっちですよ、という意思表明だととりました。
長﨑:ホーン隊が増えたり、メンバーの訃報があったりとメンバーは流動的ですが、精神的な支柱はブラック・ソートであり、クエストラヴですよね。
沼澤:実質、そのふたりのグループですよね。
長﨑:年表を作ったところ、ディアンジェロは1995年、グールーの『Jazzmatazz』 やスパイク・リー関連の曲がそれ以前で驚きました。ヒップホップとジャズのコラボは、90年代前半には頻繁に行われていたんですね。
池城:90年代に入ってすぐに、ア・トライブ・コールド・クエストや昨年来日したディゲブル・プラネッツも流行りました。
沼澤:トライブとグールーは早かったですよね。
長﨑:日本でもヒップホップ好きがジャズのレコードをチェックしたり、ロン・カーターや、ロイ・エアーズ、ハービー・ハンコックを観に行くようになったりとボーダーレスに交わった初めの頃かも。
池城:90年代後半から00年代前半までのルーツは、ライブ活動が活発でした。インタビューで、年間300日近くステージに立っているって言っていたくらい。(元)モス・デフやタリブ・クウェリがいたインディー・レーベルの〈Rawkus〉周辺や、イベントのリリシスト・ラウンジとも関わって、コンシャス系ヒップホップのシーンの盛り上げ役でもあった。コモンもそこで仲が深まった印象でした。
沼澤:21世紀になってからルーツ、とくにクエストラヴの活動がすごく目立ってるなぁ、と感じてました。「こんなに次から次へといろいろプロデュースしてるんだ!」って。ルーツが絡まなかったエリカ・バドゥ『Baduizm』とディアンジェロの『Brown Sugar』は自力で作っていた印象が強くて、実は「デビュー時の方が好みだったかも」とは密かに思ってました。ビラルも。ソウルクエリアンズは「すごい……ネイティブ・タンズの次はこれだ」と思ってもちろん全部大好きでしたけど、ルーツを含めて(制作)メンバーもスタジオも同じだったせいか、作品の雰囲気が似てるようには感じてました。「やはりルーツと組むとこうなるんだ」と思ったし、自分の周りも「今の流行りはこれ」という感じになってました。
長﨑:初来日はいつでしたっけ?
沼澤:僕はON AIR EAST(現在のSpotify O-EAST)に観に行きました。97年くらい?
池城:その頃から00年前半までのアルバムは評価が高く、売れ行きもよかった。ヒップホップ全体が売れていたので、彼らみたいな政治的な主張が強いタイプもメジャーでやっていけたんです。
長﨑:00年代にはヒップホップマーケットがさらに大きくなったんですね。
沼澤:すごかった。ここがいま一番金になるぞ、ってみんなヒップホップの人たちと絡みたがっていたような感じで。ジェイ・Zみたいなスーパースターもいるけど、ルーツはとにかくかっこいい音で売れてるなぁ、と。
池城:ジェイ・Zとルーツの関係はおもしろいんです。ジェイ・ZのMTVのライブ収録『MTV Unplugged 2001』でバックを務めたルーツだったのが、社長のジェイ・Zと所属アーティストという立場に変わったり。ずっといい関係を維持して今年、(ルーツ主催のフェス)【THE ROOTS PICNIC】にジェイ・Zが出演して、ドレイクに売られた喧嘩を買って話題になっています。
- ドラマー・沼澤尚が見るクエストラヴ
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ドラマー・沼澤尚が見るクエストラヴ
長﨑:ところで『Mama’s Gun』と『Voodoo』、『Like Water for Chocolate』は三部作と理解していいでしょうか?
池城:そう思います。2002年に出たロイ・ハーグローヴの『Hard Groove』もほぼ同じ人たちが参加していて、同じ時期に制作されていますが。
沼澤:そのあたりは一気に出ましたよね。全部がかっこよくてびっくりしました。
池城:『Mama’s Gun』の取材でエリカに会ったとき、『Voodoo』はあえて聴かなかったと言っていました。
沼澤:ハハハハ。
長﨑:エリカはロイ・ハーグローヴと特に近しかったみたいですね。
沼澤:自分はRHファクターが初めて聴いたロイ・ハーグローヴでした。そしてジョン・メイヤーの『Heavier Things』が出たときに一曲目の「Clarity」でロイが入っていて、ドラムがクエストラヴで、とか。
池城:ソウルクエリアンズのサウンドは当時から話題だったけれど、J・ディラのビートのすごさが解明されるに従って、また評価されています。『Voodoo』もJ・ディラのビートを使っているけど、クエストラヴが耳コピをして叩いたから、クレジットには入っていないんです。
沼澤:レッドブル・ミュージック・アカデミーで、クエストラヴがディアンジェロとJ・ディラの話をしていたのは本当におもしろかった。『Voodoo』でディアンジェロからいかに細かく指示されたか。ピノ(・パラディーノ)やメンバー全員に、クリックを出すけどわざと合わせないで演奏しろ、と。「子供の時からいかに正確に叩くか頑張ってきたのに、すごく恥ずかしかった」と言っていました。ディアンジェロに「そのまま続けていればグルーヴしてきて絶対かっこよくなるから」と言われてあのサウンドができたという。
長﨑:タカさんは同じドラマーとして、クエストラブをどう評価していますか?
沼澤:それはもういきなりものすごい人が現れたって思ってました(笑)。本人はスティーヴ・フェローンをめちゃコピーしたと公言してますけど、クエストラヴのフィルターを通るとそれが全くフェローンっぽくなくなってるのもまたすごくて。(ギターセンター主催、2014年の)「ドラム・オフ」でフェローンが殿堂入りしたとき、クエストラヴとツインドラムで「Pick Up the Pieces」を演奏していたのも印象に残ってます。
長﨑:彼は 2010年以降、プロデュース仕事がさらに多岐に渡っていきますよね。メインストリームに来たぞ、と感じましたか?
池城:一番大きかったのは、2009年からテレビにレギュラー出演したことです。夜のトーク・ショーのひとつ、ジミー・ファロンのレイト・ショーの箱バンになって知名度がぐっと上がりました。私はコンシャス・ヒップホップのルーツが好きだったので、最初は抵抗があって。
沼澤:え、そうなんですか? 僕は80年代に渡米したときから(レイト・ショーの)デイヴィッド・レターマンが好きで観ていて、こんなバンド(スティーヴ・ジョーダン、ウィル・リー、ハイラム・ブロック、ポール・シェイファー)を毎晩テレビで見られるのがすごいし、その他のトークショーのバンドも皆かっこよかったので、ジミー・ファロンの番組がルーツで始まったときにやったーっ、と思ってました。
池城:結果として、ブラック・ミュージックを支える活動の実績と、テレビでの全米的な認知度が相まって、いまのルーツの影響力はすごいですよね。
沼澤:特にクエストラヴはアカデミー賞授賞映画監督にもなったし、エンターテインメント業界でありとあらゆるものをプロデュースしまくってる、もはや文化人として世界的なスターですからね。
来日記念プレイリスト公開
本座談会の締めくくりとして、沼澤尚、池城美菜子、長﨑良太の3名が、本編で語られたアーティストや作品に加え、その背景にある音楽までを見渡して選曲したSpotifyプレイリストを公開。THE ROOTSを起点に広がるヒップホップ、ジャズ、ネオソウルの系譜を、ぜひ耳でも体感してほしい。
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