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<ビルボード>日本の音楽は、もっと世界に届く~CHORUSが切り拓く新たなグローバルステージ

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 日本のトップアーティストの海外展開を支援することを専門とする、イギリスの音楽会社 CHORUS。同社は、日本と海外双方の音楽業界に深い知見を持つ白須賀裕樹氏とは萩野タイガーリード氏によって 設立された。今回、日本の音楽が持つグローバルな可能性と、国際展開を成功へ導くための重要な戦略についてインタビュー。立ち上げの経緯や、課題について幅広く話を聞いた。(Interview:Tomoko Moore/Photo:Louise Haywood-Schiefe )


CHORUSが感じる、日本と海外の違い

――まず、お2人がCHORUSを立ち上げるに至った経緯を教えてください。

白須賀浩樹(Hiroki):私は2008年にイギリスで「Giant Artist Management」という会社を設立し、主にイギリスとアメリカのアーティストやプロデューサーと仕事をしてきました。グラミー賞を受賞したり、BRITアワードやマーキュリー・プライズにノミネートされたりした素晴らしいアーティストやプロデューサーたちと仕事ができたことは、本当に幸運だったと思います。他には、ブライアン・イーノとともに音楽と環境をテーマにしたチャリティ「EarthPercent」を創設したり、Tigerとともにイギリスにおける東アジア・東南アジア系アーティスト・エグゼクティブのコミュニティグループ「ESEA Music」を共同創設したり、blackxの日本事業責任者も担当しています。また、CEIPAのクリエイティブ・パートナーとして、ヨーロッパ地域における活動も統括しています。

日本での仕事はコロナ禍がきっかけです。私は母を訪ねて日本に数か月、滞在していたのですが、当時のクライアントの一人である、A. G. Cook がプロデュースしている宇多田ヒカル「One Last Kiss」、「君に夢中」が日本でヒットしていて、滞在中に日本の音楽業界の方と深く関わることができました。それが縁となり、藤井 風や、常田大希、Tohjiと仕事をすることができ、CHORUSの設立へと至りました。

萩野タイガーリード(Tiger):私のキャリアはレーベルからスタートしました。Beggarsグループに在籍し、20代の頃は東京のホステス・エンタテインメントで働いていました。その後ロンドンに戻り、インターナショナル部門を経て、XL Recordingsで10年以上、日本とイギリスの両市場で、アデルやザ・エックス・エックス 、ヴァンパイア・ウィークエンドと仕事をしました。特にアデル『25』に携われたのは、私のキャリアの中でも特に輝かしい瞬間です。 そして、コロナ禍に、Rina Sawayamaと仕事を始めました。セカンドアルバムの日本展開を強化するため、Dirty Hitから声をかけてもらって。それがきっかけで日本に頻繁に戻るようになり、Rinaとともに日本と再び繋がりを深めていきました。

――CHORUSの立ち上げは、コロナ禍がきっかけだったのですね。

Hiroki:あの独特な時期に日本に身を置き、素晴らしいアーティスト、チーム、マネジメント、レーベルがすでに非凡な仕事をしているのを目にして、この素晴らしいアーティストたちと音楽を世界に伝えなければという気持ちが芽生えました。その情熱はやがて人生の使命となっていきました。 CHORUSを正式にローンチしたのは、2023年9月の【東京国際ミュージック・マーケット(TIMM)】です。YouTubeの佐々木 舞さんが主催したイベント【YouTube Music Insider】にスピーカーとして招かれ、そこで発表しました。佐々木さんは日本音楽の国際発信を牽引した革新者であり、多くのクライアントともつないでくださった方です。この場を借りて改めて感謝と敬意を伝えたいと思います。(佐々木さんは2025年5月に急逝されました。謹んでご冥福をお祈りします。)

――日本と海外の音楽業界を比較して、どのような違いを感じますか。

Tiger:いくつか大きな違いがあります。まず、欧米のアーティストはキャリアの早い段階からグローバルを視野に入れてスタートします。1枚目のアルバムからヨーロッパをツアーし、アメリカを目指す。「まず国内で成功してから」という順番が絶対ではありません。次に、チームの組み方も異なります。欧米ではアーティストとマネージャーが中心となり、弁護士、ライブエージェント、PRをそれぞれ独立した立場で選んで組み立てていく。日本の事務所モデルとは構造が全く違います。どちらにも良し悪しはありますが、アーティストとマネージャーがビジョンを主導しながらチームを組み立て、方向性に応じてより良いエージェントや広報担当に変えていける柔軟性があります。意思決定においてアーティスト自身が中心にいるというのは、日本とはやや異なる感覚かもしれません。また、日本ではタイアップがキャンペーン全体の設計に大きく影響しますが、欧米では音楽とクリエイティブを先に作り、その後でタイアップを探すのが基本的な流れです。

さらに、ここ5~10年で欧米ではメジャーレーベルとインディペンデントレーベルの距離が格段に縮まりました。インディーズからメジャーへ移籍したり、その逆もありますし、音楽業界のエグゼクティブも両方を経験している人が多いです。日本ではメジャーとインディーズが今も別の世界として存在していると感じますが、クリエイティブ面でも、ビジネス面でも、双方から学べることは多いのではないでしょうか。ライブについても、欧米ではプロモーターではなくライブエージェントが長期的なキャリア戦略の視点でツアーを設計します。こうした構造の違いを理解することが、グローバル展開を考える上でとても重要だと思います。

Hiroki:日本の音楽の消費者行動について言えば、ここ数年で非常に明るい兆しが見えていて、Ado、YOASOBI、BABYMETAL、高中正義、ONE OK ROCK、藤井風、新しい学校のリーダーズ、XGなど、日本のアーティストが世界各地で非常に成功したツアーを行っています。一例を挙げると、Adoは2024年にロンドンのTroxy(3,000人収容)で公演し、その1年後の2025年にはO2アリーナ(20,000人収容)をソールドアウトさせました。これほど爆発的な成長は、通常はほぼ見られません。


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多様性と豊かさを世界に伝えることが私たちの役割


――歌詞が日本語であることは、日本国外でのキャリア拡大の障壁になると思いますか。

Tiger:世界は確実に変わっています。ロザリアやバッド·バニーが証明しているように、スペイン語で歌っていても世界中のオーディエンスが熱狂する時代です。先日ロンドンのO2でロザリアのライブを観ましたが、観客は言語よりも彼女のエネルギーと表現に反応していました。言語を超えた何かを音楽とエネルギーで伝えることができる。英語の曲が多い方が有利な面はありますが、それが全てではありません。日本のアーティストやマネジメントに伝えたいのは、「完璧な英語でなければ世界に出られない」という思い込みを手放してほしいということです。

――これまで、どのようなアーティストとお仕事してきましたか。

Tiger:私たちは、それぞれ個人として、またCHORUSの内外で共に多くの日本のアーティストたちと仕事をしてきました。お名前を挙げさせていただくとすれば、宇多田ヒカル、藤井 風、YOASOBI、Rina Sawayama、青葉市子、細野晴臣、常田大希、Tohji、羊文学、岡嶋かな多といった皆さんです。 こうした仕事はアーティストを取り巻く素晴らしいチームなしには成り立たないということについても、改めて御礼を伝えたいと思います。

私たちはアーティストを「日本のアーティスト」ではなく「グローバルアーティスト」として捉えています。宇多田ヒカルを例に挙げると、彼女のことを「史上最高のJ-Popアーティスト」という切り口では紹介しません。彼女はただ、史上最高で、世界レベルのアーティストです。それがCHORUSの根本的な哲学です。

宇多田ヒカルさんとご一緒した仕事も、本当に特別なものでした。彼女は唯一無二のアイコン的存在です。そして、ヒカルさんに対して素晴らしいビジョンを持つ沖田 英宣さん、梶 望さん、岡地 美奈さんとご一緒できることは大変光栄でした。アルバム『Bad Mode』は、Skrillex、A. G. Cook、Floating Pointsといったアーティストとのコラボレーションを通じて、日本国内にとどまらず、海外の音楽シーンにおいても文化的・芸術的な存在感を持つ作品となりました。

デビュー25周年記念プロジェクトでは、Floating Pointsがプロデュースした楽曲「Electricity」に関連してさまざまなコラボレーションを企画しました。その一環として、私たちはヒカルさんとArcaをつなぎ、Arcaが同曲に参加するコラボレーションを実現しました。また、二人を特集した『i-D』誌での大型フィーチャーと撮影も行い、さらにヒカルさんはArcaのコーチェラ公演にスペシャルゲストとして出演しました。それはArcaにとってもヒカルさんにとっても非常に大きな出来事であり、そのようなクリエイティブなつながりが生まれる瞬間を目の当たりにできたことは素晴らしい経験でした。私たちは、楽曲制作の段階からグローバルなキャンペーン設計、そして実際のプロモーション展開までを一貫してサポートすることを大切にしています。それこそが、CHORUSが提供する価値の重要な部分だと考えています。

Hiroki:藤井 風さんとの仕事は、私にとって特に印象深い経験です。2022年春、ロサンゼルスへの初渡航に同行し、最初にセッティングしたグラミー賞受賞ソングライターのTobias Jesso Jr.とプロデューサーのSir Nolanとの共同制作セッションで生まれた最初の曲が「Hachikō」で、そのまま3rdアルバム『Prema』のリードシングルになりました。その後、2023年から2024年にかけて、ロサンゼルスで何度も共に時間を過ごしながら、 風さんは『Prema』に収録される楽曲を書き上げていきました。そして最終的に、韓国·済州島にてプロデューサーの250を迎え、アルバムを完成させました。させ、Republic Records、Polydor Recordsとの契約、William Morrisとのライブ契約など、チームの尽力によってさまざまな重要な展開が実現していったことも印象に残っています。藤井 風さん、そしてアルバム『Prema』において、“インターナショナルプロデューサー & A&R”を務めることができたことは、私にとって大変光栄なことです。私たちは、彼を単にJ-Popの文脈におけるアーティストとしてではなく、すでに世界で最も偉大なアーティストの一人として捉えています。日本国内においても、『Prema』が【MUSIC AWARDS JAPAN】で「最優秀アルバム賞」を受賞したことを、大変嬉しく、誇りに思っています。

――日本のアーティストが「J-Pop」というジャンルで括られることへの課題についてはどうお考えですか。

Tiger:ジャンルによるカテゴリー分けは、どんな場合でも限界を生みますよね。K-Popの成功モデルを踏まえて「Japan」をブランドとして押し出す戦略も一つの手ですが、私たちはそれが全てだとは思っていません。Hirokiと私のバイカルチャーな視点から言えば、私たちが一緒に仕事をするアーティストの多くはすでにそのカテゴリーを超えています。日本のポップミュージックはJ-Popだけではない。ロックもヒップホップもフォークもある。その多様性と豊かさを世界に伝えることが私たちの役割だと思っています。

――ではグローバルアーティストとは、どういった存在だと思いますか。

Tiger: 定義するのはなかなか難しいですが、私たちにとって真のグローバルアーティストとは、文化的にも音楽的にも国籍のカテゴリーを超えて共鳴する存在です。バッド・バニー、ロザリア、ビョークのような人たちは、出身地は重要ですが、それに定義はされない。サブリナ・カーペンターやエド・シーランと同じ括りで語られます。繰り返しになりますが、日本のアーティストをJ-Popに限定するのではなく、グローバルアーティストとして捉えることが大切です。彼らは世界最高のアーティストたちと肩を並べる資格があります。日本の音楽業界にとって、意識の転換が必要です。

――【MUSIC AWARDS JAPAN】に対する期待をお聞かせください。

Hiroki:CEIPAが業界全体をまとめ、日本音楽のグローバル発信に向けて動いていることは、本当に素晴らしいことです。【MUSIC AWARDS JAPAN】がグラミー賞やブリット・アワードのような存在へと成長することで、世界のより多くの人々が日本の素晴らしいアーティストを発見できるようになる。その可能性にとても期待しています。日本の音楽業界がグローバル展開に向けて一体となって動いているこの流れは、確実に未来の成功につながると思います。

――今後の展望を教えていただけますか。

Hiroki:まずお伝えしたいのは、日本の音楽業界、そしてアーティストやそのチームは本当に素晴らしいということです。 CHORUSはこれまでも一貫して、アーティストやチームの皆さんと密接に連携しながら、長期的な国際戦略パートナーとしてグローバル展開を支援し、その勢いをさらに加速させるサポート役でありたいと考えてきました。 私たちは、楽曲制作やアーティスト育成といった根幹の部分から関わり、海外展開の実行段階まで一貫して携わることを重視しています。そうすることで、グローバルなビジョンをより自然かつ戦略的に構築できると考えているからです。 世界の音楽業界、そして日本国内の音楽シーンは常に変化を続けています。それに伴い、日本のアーティストやチームが求めるものも変化しています。

だからこそCHORUSも、その変化に合わせて自らのエコシステムを進化させ続け、アーティストやパートナーの皆さんを最適な形で支援できる体制づくりに取り組んでいます。 私たちは、グローバルでの成功とは、一度のバイラルヒットや単発のフェス出演によって決まるものではないと考えています。長期的なビジョンと文化的なポジショニング、強固なクリエイティブ基盤とアーティスト育成、地域ごとに最適化された継続的なファンコミュニティの形成、そして何より信頼関係の積み重ねこそが、持続的な国際的インパクトを生み出すのです。


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