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<インタビュー>MoMo 1stアルバム『BLUE DREAM』に込めた“諦めないことを応援する”10曲

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Interview: 永堀アツオ
Text: Mariko Ikitake
Photos: Yuma Totsuka

 音楽センスに流暢な英語が光るシンガーソングライター、MoMoの記念すべき1stアルバム『BLUE DREAM』が完成した。ロサンゼルス、東京、そしてイギリスで制作された10曲は、自身や過去の恋愛にフォーカスして練り上げられたものだ。彼女がさらけ出す音楽は、間接的にリスナーに勇気を与える側面も持っている。名門バークリー音楽大学卒業生のMoMoがシンガーとして今、届けたいメッセージを語ってくれた。

──まず1stアルバム『BLUE DREAM』が完成した感想から聞かせてください。

MoMo:ひと言で言うなら、自分の音楽はこうあるべきっていう自分の中にあったリミッターを外せたなと思っています。今の自分を全部、出し切った一枚ですね。

──ご自身の中にあったリミッターというのは?

MoMo:バークリー音楽大学で学んだ理論は、あくまでも自分の“好き”を形にするツールだなって思ったんです。頭で考えるんじゃなくて、自分の感覚に素直に向き合って表現した一枚になったと思います。一つの概念に縛られないで、どう自由に表現していくか。私はずっと、他人にどう思われるかを気にしすぎていて、型にはまろうとしがちだったんですよね。そのせいで自分のクリエイティビティが狭まれていたると感じたので、今回、このアルバムを通じて、自分のクリエイティビティが解き放たれたし、自分が学んできたことからも抜け出せたと思っています。

──理論や思考で固まってしまったリミッターを外すきっかけはあったんですか?

MoMo:今回、アルバムのほとんどの曲をLAで書いたんですけど、現地のプロデューサーやソングライターの方々はみんな伸び伸びしてて、すごく自由だったんですよね。アルバムのタイトルになってる『BLUE DREAM』の“BLUE”という言葉は、大きい海と大きい空に囲まれたLAの環境から来ていて。“DREAM”は非現実的な毎日だったから。例えば、普通にご飯を食べてたら、アーノルド・シュワルツェネッガーさんがお店に入ってきたりとか。

──あははは。それは非現実的ですね。

MoMo:見たことある人が急に視界に入ってきてびっくりしましたね。「普通に歩いてる!」みたいな(笑)。そんな非現実的な場所ですごく自由さを感じながら、とても伸び伸びと制作できたと思います。

──どうしてLAで制作することになったんですか?

MoMo:ロサンゼルスでライブのブッキングがあったんです。アルバムの制作をしようっていう話になって。私のマネージャーはAIさんの制作の担当をしていて、ロサンゼルスのプロデューサーともつながってるので、いろいろセッションを組んでもらいました。アルバム制作でLAに行きたいってずっと言っていて、今回、ライブのオファーがきっかけで実現して。もう急に“dream come true”って感じで(笑)、嬉しかったですね。

──特に印象に残っていることはありましたか。

MoMo:制作に関しては、やっぱりレベルが高いです。決定的な違いを感じたのは、制作する速度ですかね。1回も止まらないんですよ。人にもよりますが、日本では8時間とか12時間くらいスタジオにこもることもあったんですけど、(LAでは)3〜4時間で仕上げるんです。

例えば、LAで最初に書いた曲は「Midnight Glow」だったんですね。私はダンサブルな曲を書きたかったので、プロデューサーに『ちょっとフレッド・アゲインを意識したプロダクションをやってみたい』ってお願いして。本当に2〜3時間くらいで曲ができちゃって、「次があるから、もう行かなきゃ」って、さっと帰る。1曲目から急ピッチで作り上げる環境で、そこでレベルの差も見せつけらました。

──オンとオフの切り替えがはっきりしてるのかもしれないですね。

MoMo:そう思います。私も毎日セッションしてたんですけど、合間にドジャースのゲームを見に行きました。私が行った日がちょうど大谷翔平がMVPを取った試合なんですよ。去年の10月末、バッターとしてホームランを3本打って、ピッチャーとしてストライクアウトを11個取った日でした。会場がすっごく沸いたし、そのエネルギーに自分も乗っかって楽曲を制作できたので、すごく印象に残ってますね。

──すごい試合を目撃してるんですね。アルバムの制作前はご自身としてはどんな作品にしたいと考えていましたか?

MoMo:R&Bだけとか、一つのジャンルに縛られるんじゃなくて、心地いいものを作れたらいいなって思ってました。プロデューサーによっても、得意な曲もあれば、不得意な曲もある。そういったところで自分の新しい色を見いだせられたらいいなと。

──特にジャンルの枠を超えて挑戦した曲を上げるとすると?

MoMo:全く新しいチャレンジになったのは「COME OVER HERE」ですね。まず、プロデューサーのMyGuyMarsがすごい方で。スタジオに入るなり、プラチナレコードが何十個と飾ってあって。カニエ・ウェストやケラーニをプロデュースする方で、すっごく緊張したんです。だから、リードをお任せしようと思っていたら、「アマピアノにチャレンジしよう」っていうことになって。そこから一緒に作り始めました。歌詞は意味や内容よりもフローがメインでした。ダンシングな曲なので、あまりワードにこだわらず、いかにフローがよくなる歌詞を乗せれるかが勝負で、自分としてはパズルをはめていくように書き進めた曲でした。

──世界的なプロデューサーとの作業はどうでしたか?

MoMo:自分がやったことないジャンルに苦手意識があったんですけど、プロデューサーさんにもハッピーになってもらえたし、バイブスも合って楽しかったです。私の歌にノってもらえたので、もっと新しいことにチャレンジしたくなりました。あと、この曲に続く「FEELIN’ GOOD」もサウンド感がちょっと似ています。私はいつもどうしても悲しい方向に走っちゃうので、自信に溢れる、ハッピーな自分を見せたいなと思って、まさにタイトル通りの“Feeling Good”な歌詞を書きました。アルバムの前半は特に自信とポジティブさで溢れていると思います。全体的に見ると、様々な要素が入ってるので、いろんな感情に寄り添えたらいいなと思いますね。

──LAで制作したアルバムですが、「JUICE」には〈Tokyo view〉、「EVERY LITTLE PIECE」には沖縄ビーチや原宿ストリートが出てきますね。

MoMo:私は生まれと育ちが東京なので、東京の景色がずっと自分のコアにあります。アルバムの1曲目には自分の生まれ育った固有名詞を一つは入れようって最初から決めてて。日本人っていうバックグラウンドも大事にしたくて、それで東京を選びました。「I got the Juice(私には魅了するものがある)」っていう自分の自信を表した曲になってますね。

──〈恋の毒がにじむ〉という日本語のフレーズもありますが、ラブソングではない?

MoMo:ラブソング兼自分自身の自信について語ってる曲かな。私は追いかけない、追いかけさせるっていう言葉遊びをしてますね。

──「歌っているのはガールズグループ?」と思うくらい、違う声色やトーンの歌声が入ってますね。

MoMo:いろんなMoMoを表現したかったんですよ。おっしゃる通り、4人のMoMoが歌ってるイメージですね。一曲でいろんな自分を出す、みたいな曲をずっとやりたくて。いろんなMoMoを出すための曲です。

──一方の「EVERY LITTLE PIECE」は?

MoMo:箸休め曲って言うとおかしいですけど、ガンガン音が鳴る曲が多いので、アコースティックっぽい曲を1曲入れようと思って、こういうサウンドにしました。ここで沖縄を選んだ理由は、国内旅行で一番好きだった海が沖縄だったから。沖縄にいる友達も、ローカルの人たちもみんな温かい方たちで、それがすごく印象に残っているので、沖縄を入れたいと思って入れました。

──原宿ストリートは?

MoMo:原宿ストリートは、学生時代に学校が早く終わって遊びに行った場所で、当時、通っていた歌のスクールも原宿のストリート沿いにありました。歌を始めたきっかけでもあったので、ルーツを意識して入れてみました。これも自分の幼少期っていうか、自分のコアに戻るような要素もあって。ほかの曲とも共通するけど、二人の恋愛観も歌ってるし、自分の幼少期のことも歌ってる。“EVERY LITTLE PIECE”は「小さな思い出たち」みたいな意味で、小さな思い出が重なって今の自分が成り立ってるっていう曲ですね。

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──そして、タイトル曲「BLUE DREAM feat. reina」では女性シンガーのreinaさんを迎えてますね。

MoMo:もともと自分一人だけで完成させようと思ってた曲なんですけど、どうしても女性を入れたくて。

──それはどうしてですか? ご自身も女性ボーカルでありながら。

MoMo:女性のエンパワーメントにすごく惹かれたんです。去年、Appleが国際女性デーにやったイベントに日本代表として選んでいただいて、ドージャ・キャットの「ウーマン」をカバーしたんですけど、それをきっかけに女性のエンパワーメントにすごく気持ちが寄るようになって。今回のアルバムでも、どうせやるんだったらおもしろいことをしたいなと思って、reinaさんを客演として入れることに決めました。

──reinaさんにしたのはどうしてですか?

MoMo:reinaさんは、5曲目の「MY FATE feat.笠原瑠斗」のプロデュースをしてくれたKota Matsukawaさんのレーベルに属しているアーティストさんです。「MY FATE」を作った時にKotaさんに相談したら、素晴らしいアーティストがいるって紹介してもらって。実際にご一緒して、すごく才能がある方だなって思いました。彼女は普段、英語で歌詞を書いていて、すごくポエティックで繊細なんです。歌い方もすごく柔らかいし、自分と対照的なのもいいなと思いました。

──この曲で女性二人のボーカルで表現したかったことはなんですか。

MoMo:ちょうどこの曲を書き進めてる当時、付き合ってた人と別れて、結構気持ちが沈んでたんですね。本当に毎日、眠れない夜が続いて。レストランに入って、2人が好きだった曲が流れてきたりすると、ずっと記憶がループしてました。これを歌詞にできないかなと思って書き始めたんです。


──今回、別れの曲が多くないですか?

MoMo:多いですね(笑)。でも、新しいチャプターに立つためには必要かなと思って。自分の書きたいものをありのままに書かせてもらいました。別れの曲ですけど、そこに未練はないんですよ。

──あははは。言い切った。

MoMo:もう吹っ切れました。いや、吹っ切れるために書いた曲とも言えますかね。書き始めはまだ迷ってるっていうか、戻りたい気持ちもあったんですけど、曲を書き終えたら、自分の中で気持ちが浄化されたんです。だから、吹っ切れましたね。

──コーラスワークも素敵な曲でした。先ほども出た「MY FATE」には男性ヴォーカリストの笠原さんをフィーチャリングで迎えてます。

MoMo:恋愛の曲を一人で歌ってもおもしろくないので、掛け合いをしたいと思ったんですよね。男性と女性の会話を届けることで、よりこの曲のリアルさを伝えたかったんです。笠原さんの「WALKING MAN」っていう曲を聞いて、その声にハマっちゃって。声に惚れました。ずっとコラボしたいと思ってたので、このアルバムの機会にお願いしました。

──「私の運命」というタイトルですよね。

MoMo:笠原さんは普段、札幌に住んでるんですね。札幌からレコーディングで東京に来る日が、ほぼ全便欠航するくらいの大雪だったんですよ。でも、彼が乗る便だけ唯一出て、東京に来れて。「これって運命だよね!」って、“運命”というタイトルにしました。

──すごいエピソードですね! ただ楽曲の中の二人は……。

MoMo:分かり合えない日々が続いてる恋人たちです。それでも好きっていう気持ちはなくならないし、その気持ちが届きそうで届かない。なんて言うんだろう……互いに直してほしいところを言い合うんですけど、その声が届きそうで届かないっていう。関係も消えそうで消えない、みたいな。会話してる感じにしたくて、笠原さんには、私の歌詞を読んで吸い上げたものを書いてほしいと思ったので、こちらからは何も指示をしなかったんですね。オーガニックにどういう会話が生まれるかが楽しみだったし、聞いてて、すごく心地いいなって思いました。お互いの視点が見えるので、男性からしたら笠原くんが歌ってる部分にも共感できるんじゃないかと思います。


最終的には自分の夢を諦めないでほしいというメッセージが伝わるといいな

──もう1曲、「LATE CALLS」はZINさんとのデュエットです。

MoMo:ZINさんは前にもコラボしたことがあったので、今回もお願いしました。ただ、この曲はかなり前に書いた曲なので、当時のことはちょっと記憶喪失です(笑)。「BLUE DREAM」で恋人と別れた話をしましたけど、これはもっと前の恋愛で。夜遅くにしか電話してこない人がいたんですよ。私は遊ばれてるんじゃないかって感じたことがあって、「私は全部の愛をあなたに捧げてるのに、どうしてわかってくれないの?」みたいな曲です。

──この二人はどうなるんでしょうか。

MoMo:「私たち、若すぎたね」みたいなテンションで、最後は別れてます。でも、もしも運命であれば、将来また交わるかもしれない、みたいな曲なんです。ZINさんにもあまりこちらからリクエストはせずに、好きにやってもらったんですよ。一緒にスタジオに入って、アカペラで即興みたいな感じで作っていきました。何小節かずっとループさせて、お互い即興で何小節か歌を書き合う、みたいな。それを全部いいとこ取りして、コンプして仕上げました。

──LAや東京で制作した楽曲に加えて、イギリスのライティングセッションで制作した「SUCKER FOR YOU」も収録されてますね。

MoMo:5〜6年前の曲なんですよね。初めてイギリスにライティングセッションしに行った時に書いた曲で、ライティングスキルもまだまだだったので、Gaby Feldmanっていうもう一人のライターの子にリードしてもらいました。あなたは私をダメにしちゃう、みたいな曲。あなたに魅了されて、自分をコントロールできなくなっちゃうっていう恋愛ソングで、サウンドもLAや東京とはまた違うし、すごく勉強になりました。

──国内外の多彩なクリエイターと制作された、まさにグローバルな感性が集結した1枚になってますが、日本のリスナーにはどう届くといいなと思いますか?

MoMo:今回、いろんな自分の色を表現してるんですけど、最終的には自分の夢を諦めないでほしいというメッセージが伝わるといいなと思ってます。私は、自分の歌を聴いて元気が出たって言ってもらえることがすごく嬉しいので、いろんなタイミングやシチュエーションで聴いてほしいですね。

──最後の今後の目標を聞かせてください。

MoMo:もっともっと日本人に届くように歌詞を大事にしていきたいなって思っています。もっといろんなリスナーさんに届くように頑張りたい。国境を超えて活躍できるアーティストになりたいので、私の歌を聞いてくださったみなさんに、応援してもらえると嬉しいです。そして、これからはもっとライブを増やしたいと思ってます。ビルボードライブ東京でライブをすることが今の目標ですね。ビルボードライブでぜひライブをやりたいです!

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