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<インタビュー>¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U ジャンルを横断する唯一無二の感性――世界を沸かせるDJの思考と現在地【MONTHLY FEATURE】

Interview & Text:岡村詩野
Photo:Jun Yokoyama
Billboard JAPANが注目するアーティスト・作品をマンスリーでピックアップするシリーズ“MONTHLY FEATURE”。今月は、東京を拠点にワールドワイドに活動するDJ、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uのインタビューをお届けする。
近年、海外フェスやクラブシーンにおいて、日本発のDJやプロデューサーが独自の文脈を携えながら評価を広げる動きが顕著になっている。そうした中で、ジャンルや時代を横断するプレイと唯一無二のミックス感覚によって国内外から支持を集める¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uは、その潮流を象徴する存在のひとりと言えるだろう。世界各地のクラブカルチャーを配信し続け、世界規模での影響力を持つライブストリーミング・プラットフォーム『Boiler Room』のYouTubeチャンネルに公開された彼のプレイ動画は、公開から約1年にしてすでに累計1,800万回を突破。グローバルなクラブシーンにおける評価の高さを裏付けている。また、現地時間4月10日より開催される【コーチェラ 2026】では、日本のアーティストとして藤井 風、Creepy Nutsと並んで出演が決まっており、その存在はクラブシーンのみならず、より広い文脈の中で可視化されつつある。
今回は、【ロラパルーザ】出演を含む南米ツアーの真っ最中であった彼に、滞在先のコロンビアからリモートでインタビューを実施。グローバルなシーンと接続されていく過程や、その背景にある思考に迫った。
世界を沸かせたDJセット
――今、コロンビアにいらっしゃるそうですが、南米ツアーは初めてだそうですね。
¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U:はい、ツアーとしては初めてです。実はアメリカも去年が初めてだったんですよ。今回は、アルゼンチン、チリ……両方とも【ロラパルーザ】(への出演)でやりました。高校生くらいの時に雑誌で読んでいたりしたフェスだったので、そこに自分が出られるのがとても嬉しかったですね。
――南米のオーディエンスの反応はいかがでしたか。
¥UK1MAT$U:フェスの規模も大きくなって、それでもお客さんがたくさん集まってくれているんで、すごく嬉しいですね。海外のお客さんが、(DJプレイを)やってる間にサッカーの応援歌みたいなのを歌ってくれたり、僕の名前を呼んでくれたりとか……チリではスクリレックスをかけた時にモッシュピットみたいになっていました。
――やはり【Boiler Room: Tokyo】へのご出演が世界規模でのブレイクの大きなきっかけになったのだと思います。今改めてYouTubeを見ると、再生数が1,800万回を超えています。
¥UK1MAT$U:ありがたいですね。いろんな人に見てもらいたいと思って、すごく考えてあのセットをやったので、多くの人に見てもらえているのは嬉しいです。ちゃんとうまくいったかなと。ここまでいくとは思っていなかったですけど。最近は選曲用のプレイリストを作っていて、どんなDJが前に来ても(流れに合わせて)ミックスできるように、あらゆるBPMの曲を用意しているんです。今はそこから選んで、結構インプロビゼーション(即興)でやっていることが多いですね。でも【Boiler Room: Tokyo】の時は(持ち時間が)1時間と事前にわかっていたので……「ここは勝負だな」っていうときは、やっぱりちゃんと作っていきますね。
¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U | Boiler Room: Tokyo
――私も折に触れて見返しますが、何度見ても異なる発見と気づきのある素晴らしいパフォーマンスでした。
¥UK1MAT$U:すごく嬉しいですね、そう思ってもらえると。僕は映画が好きなんですけど、映画も1回目を見た時と2回目とでは全然違うから、それに似ているのかな。似ていたらいいですね。
――以前お会いした時も、青山真治監督の『EUREKA/ユリイカ』などは何度もご覧になっていると話されていました。
¥UK1MAT$U:最近だと、三宅唱監督の『旅と日々』、あれを3回ぐらい観に行って。観るたびにやっぱり印象が変わるというか、ディテールに気づくというか、何にも起こってないようで、すごくいろんなことが起きているというか……すごくいい映画ですね。あとは『ワン・バトル・アフター・アナザー』、あれも2回見に行って。とてもパワフルな映画ですけど、やっぱり2回見ると全然違う。どう違うかを説明するのは短時間では難しいんですけど。
――ヘヴィだけどユーモアがある。
¥UK1MAT$U:そうですね。ある意味の軽やかさもちょっと残っているし、エンターテインメントとして出来上がっている感じもあって。
――¥UK1MAT$Uさんのプレイにも共通していますね。1時間のセットの中に様々な側面があり、非常に多面的です。
¥UK1MAT$U:自分ではあんまりユーモアは出せているとは思えていないんですけど、そう思ってもらえていたら嬉しいです。ユーモア、出したいとは思っているんですけど、そこまで入れる余裕がなくて。まだインパクトとエモーションが優先されていて……でも、そう感じてもらえているなら……確かにそうですね、ポール・トーマス・アンダーソン監督の作品も、ユーモアを出そうと思って出しているというより、なんだかその生き様が出ちゃっているみたいな、そういう感じですよね。演じているレオナルド・ディカプリオもそういう役者ですし。『レヴェナント: 蘇えりし者』のディカプリオもそうでした。
――そういえば¥UK1MAT$Uさんは坂本龍一さんに影響を受けたと公言されています。『レヴェナント』の音楽はその坂本さんとアルヴァ・ノトが手がけていました。
¥UK1MAT$U:坂本龍一さん、ずっと好きなんです。映像作品も大体観ていますね。ドキュメンタリー『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』も観ました。坂本さんのどこに影響を受けているかは……答えるのは難しいです。
――私は結構あると思っています。音のレイヤーかなと。
¥UK1MAT$U:ああ、なるほど。それはそうかもしれない。やっぱりミックスする時のイコライジングも、だんだん上手くなっていると思っているんですよ、自分では。そういうときに影響が出ているような気もしますね。やっぱり練習もしているし、場数も踏んでいるので、上手くなっていると思います。いろんなところでやっていると、状況も場所で変わるということがわかるし。そういう中でどんなトラブルがあって、何がやりにくいとかとか、そういうのも経験して対処法も覚えて、そういう経験がやっぱり役に立っていると思います。
――練習されているんですか。
¥UK1MAT$U:練習してますよ。2曲つなげてミックスするような。で、その中ですごく良いミックスを発見したりとかもします。むしろ、練習しないと全然ダメです。常に新しいことを試していて、同じことをしていないので。たまにあるんですよ、現場で「ミスった!」みたいなのが。なんとかごまかしてミックスしたりしますけど、曲によっては合う/合わないがすごくあって、すごくいい曲同士でもやっぱりメロディーがぶつかったりして、全然合わなかったりすることに気づくんです。事前に察知する能力みたいなのも上がっているとは思うんですけど、それでもやっぱり失敗するときはありますね。ミキサーって、3つとか4つに帯域が分かれていて、大体メロディーはミドルだから真ん中を下げたりとか、ボリュームをちょっとずつ下げたりして、メロディーを目立たなくして「ここからなら入れられるか」みたいなところで入れたりとか……そうやって、なんとかごまかしています(笑)。
場数を踏んで、瞬発力も鍛えられていると思います。DJ中って、頭の中がすごく目まぐるしくて忙しいんですよ。あとは、そのイベントによっても変わりますよね。今日はオーストラリアだからAC/DCをかけようとか、【ロラパルーザ】だったら(同フェスの創設者、ペリー・ファレルがボーカルを務める)ジェーンズ・アディクションをかけようとか。【Boiler Room: Tokyo】は世界平和がテーマだったので、ラストはそういう感じに持っていったし……他の出演者やDJのテイスト、レーベルとかの感じを考えて選曲しています。
10年で培われた身体感覚
――エンターテインメント精神、サービス精神があるということですね。今年2026年は、¥UK1MAT$Uさんが大阪で主催イベント【Zone Unknown】を始めてからちょうど10年の節目になります。この10年で、そうしたエンターテインメント精神がより養われていってらっしゃる実感はあるんでしょうか。
¥UK1MAT$U:そうだと思いますね。もともと僕は、DJはアーティストでありつつ、やっぱりエンターテイナーだと思っているんです。まあ個人的な意見ですけど、やっぱりお客さんに何か持って帰ってもらえるように、毎回全力で頑張っています。僕自身いろんな音楽が好きなので、そういうところも影響してるのかな。
――脳腫瘍で手術をなさって、生死をさまよったのも10年前のことでした。
¥UK1MAT$U:そうですね。地道に、できることを一生懸命にやってきた10年でしたね。【Boiler Room: Tokyo】がすごくバズって、たくさん見てもらえましたけど、やっていることはずっと一緒というか。ちょっとずつ、DJとしても人間としても成長したいなっていう感じで。
――復帰されてからは健康的な生活をされていると話してらっしゃいました。日中に起きて、できれば散歩したり、太陽を浴びたり。
¥UK1MAT$U:僕、ツアーにパソコンを持たず、USBに全部の音源を入れて出発するので、ツアー中は結構気楽なんですけど、日本にいる間はすごく忙しいんですよ。それでもなんとか睡眠時間はちゃんと確保するようにしています。お昼間に散歩とかも行ったりしていますね。できるだけノーストレスを心がけています。体が資本ですから。体を鍛えているのも、やっぱり体力がないとこれからますますやっていけないからなんです。
――音の質感、音の強度を大事にしているというのもこの10年変わらないですか。
¥UK1MAT$U:そうですね。やっぱり10年でいろいろ新しい音楽も知ったし、自分の音楽性も広がったと思うんですけど、でもやっぱりその強さ、インパクトは相変わらず好きですし、繊細な音楽ももうずっと好きですね。
――この10年で新たな刺激となった音楽……ハイパーポップなどもそのひとつでしょうか。
¥UK1MAT$U:そうですね。10年前はハイパーポップっていう言葉も知らなかったし、あったのかどうかも知らないですけど、その後、ソフィーがすごく大好きになりましたね。今もめちゃくちゃかけていて、むしろソフィー以降っていうのがあんまりいないなという感じはしています。あと、100 gecsもすごく好きで、よくかけています。10年くらい前はそんなにスクリレックスも好きじゃなかったんですけど、だんだん曲によってはかっこいいなと思うようになりました。スクリレックス自身、ハウスのグルーヴみたいなのを出してきている曲もあるし、今すごく面白いプロデューサーだなと思っていますね。やっぱり強度のある音って、お客さんが踊りやすいんじゃないですかね。僕自身は毎日いろんな音楽を聴いているんですけど、やっぱり、その中から強度のある音を選んでいる感じがします。

――ただ、¥UK1MAT$Uさんのプレイの中にはアンビエントもあればポストクラシカルの曲も聞こえてきますし、硬軟合わせつつ、音の耐久性を整えている印象です。そして、それが音のレイヤーの美しさにもなっている。
¥UK1MAT$U:なるほど。僕はオリジナルを2曲ミックスしているだけなんですけど、「これは何のリミックスですか?」とか言われることがあるんです。やっぱりイコライジングって、そのミキサーのハイ/ミッド/ローのバランスをとる作業。それで僕は自分の気持ちいいところを鳴らしているんですけど、そこで何かが変わっているのかもしれないですね。ただ、それも現場でいろいろトラブルがあったりして、難しいときがあります。DJブースのモニターから聞こえてくる音がヘッドホンで聴いているのとズレていたり。でも、ハイとミッドとローの位置とかはいちいち覚えていないので、その都度気持ちいいところを探してやるしかないんですよ。
“生きる力”を鳴らす
――加えて、¥UK1MAT$Uさんのプレイには、生きるための喜びとか、生きることへの強いカタルシスみたいなものがすごく反映されています。脳腫瘍の手術から復帰されたことも大きいと思いますが、近年の時代の変化、社会の変化がそうさせているようにも思えます。そのあたりの自覚はありますか。
¥UK1MAT$U:ありますね。(意識して)反映させようともしているし、勝手に反映されていることもあると思うんですけど。聴いてくれている人に、生きる力みたいな、励ましみたいなものを家に帰ってもらえたらいいなと、いつも思ってます。実際、本当にだんだんひどい世の中になっている。それはもう止まらないなと思いますし、世の中を見ると本当に悲惨なことだらけですよね。だったら僕のDJを聴いて元気になってもらえたらって。でも、僕のDJを物理的に聴きに来られない人もいっぱいいるし……うーん、難しいところですけどね。ただ、何かしらいい世の中になるようにやろうと思っています。まだできてないですけど。
ただ、僕自身は充実しているし、とても運が良くて。海外に出るにあたっても、すごく大きな会社がエージェントについてくれたので、ビザをとるのも入国するのもスムーズでした。20年やっていますから、まあまあ頑張ってきた甲斐があったかなって。ただ一方で、僕は相変わらず日本ではそんなに評価されてないなという実感もあって。僕はめちゃくちゃ日本人だし、海外に拠点を移すことも考えていないんです。食べ物も……鰻丼とか大好きだし(笑)、今のところ住みやすい国だと思うし。行きたいスーパーとか行きたいレコード屋とかも日本です。普通に、ディスクユニオンとかタワーレコードとかも行きますね。
――さて、いよいよ初の【コーチェラ】への出演が近づいています。
¥UK1MAT$U:オファーがあったときはめちゃくちゃ嬉しかったですね。まあ、どんなイベントでも全力でやるだけなんですけど、ピースフルなメッセージは意識したプレイをしたいと思っています。ジェイミー・エックス・エックスのソロ・アルバム『In Waves』……ほぼ全曲捨て曲なしの最高のアルバムだし、彼は本当に今いちばんすごいくらいのプロデューサーなんじゃないかと思っているんですけど、あのアルバムの中に「Treat Each Other Right」という曲が入っていて。曲自体も最高なんですけど、タイトルも最高だし、その曲の中で言っていることも最高なので、最近はできるだけそれをかけるようにしています。彼、今年の【コーチェラ】に出ますよね?(※The xxのメンバーとして)あの曲の持つ「みんなが思いやりを持って人に接してくれるように」みたいなメッセージが伝わればいいなと思います。それと、このタイミングでバンクーバー、シアトルにも行く予定なんです。シアトルでは、絶対にアリス・イン・チェインズ、パール・ジャム、サウンドガーデン、ニルヴァーナとかをかけようと思っています(笑)。グランジ世代なので。
――あとは、そろそろ¥UK1MAT$Uさん自身のアルバムにも期待しています。
¥UK1MAT$U:そうなんですよね。自分の曲も全然作れていないので、そっちの野心もすごくあります。でも、DJで【コーチェラ】に出られるっていうのはかっこいいかもしれない。そういう意味でも、僕は自分のことを“DJ”だと思っています。まだまだDJの可能性はあるし、それが尽きることはないと思うので。音楽は、過去を遡れば掘り返せないぐらいのものがあって、しかもこれからも新しい音楽がどんどん出てくると思う。ということは、DJの可能性も広がる一方なんだと思います。

























