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<インタビュー>泉大智(DISH//) 本が感性を磨く――視野を広げる読書と、やがて自身の表現へつながるインスピレーション【WITH BOOKS】

インタビューバナー

Interview & Text:高橋梓


 書籍や文筆と縁深いアーティスト、また音楽と縁深い作家へ、自身の書籍や音楽とのかかわりについて訊くインタビュー企画【WITH BOOKS】。今回は、DISH//のドラマー泉大智が登場。泉はDISH//の活動に加え、2024年からは自身の音楽意欲を昇華させるソロプロジェクトも始動させており、楽曲制作はもちろん、映像やアートワークのプロデュースも手掛けるクリエイティブな人物である。そんな彼は、創作のインスピレーションを本から受けることも少なくないという。どんな本を好み、日々どのようにして本と向き合っているのだろうか。本人に話を聞いた。

マンガって“クリエイティブ”

――泉さんは普段、どんなジャンルの本を読まれますか?

泉大智:小説はしばらく読んでいないのですが、マンガはちょくちょく読んでいます。特に古谷実さんの作品が好きで、ああいうテイストの青年マンガを読みますね。中学生の頃から、少年マンガよりも青年マンガが好きでした。


――以前、北村匠海さんからおすすめされた本を読んでいるというインタビューも拝見したことがあります。

:あー、ありましたね。『アミ 小さな宇宙人』だったかな? コロナ禍の自粛中、本当にやることがなくて(笑)。今までは集中ができなくて、活字の本が読めなかったんですよ。でも匠海におすすめしてもらって読んでみたら、めっちゃ面白かったんです。そこから小説も少しずつ読むようになりましたが、今は止まっちゃっていますね。あとは岡本太郎さんの本も読むんですが、ちょっとジャンルが偏っているかもしれないです。


――どんな時に本を読みたくなることが多いですか?

:いろんなパターンがありますが、暇つぶしで読むことも多いですね。それと、マンガってクリエイティブじゃないですか。なので、刺激やインスピレーションが欲しくて読んだり。場所という意味で言うと、家がほとんどです。移動中も電子書籍を読むことはありますが、圧倒的に家で紙の本を読むことが多いですね。


――紙派なんですね。

:そうですね。質感を感じるというか、ちゃんと「本を読んでいる」感じがするのがいいんですよね。もちろん電子書籍も便利ですが、寝る前に紙の本を読むほうが集中できる気がしています。


――泉さんの中で、電子で買う本と紙で買う本はどういう違いがあるのでしょうか。

:サブカルチャー系の本は紙で持っておきたいかもしれません。たとえば、ボアダムスの山塚アイさんと、現代美術家の大竹伸朗さんの共著作『ドンケデリコ』。おふたりはすごく仲が良くて、一時期絵の交換日記のようなものをファックスでやっていたらしいんですよ。それをまとめた本なのですが、これがめっちゃ面白い。こういった類の本は手元に置いておきたくなります。


――電子では出版されていなさそうなジャンルですね。

:そうそう。一種のアートにもなる本は紙で買いたいんですよ。収集癖があるのかもしれません。


――たしかに集めたくなりますね。こういう気に入った本を周りにシェアすることもありますか?

:仲の良い友だちにはしていますね。「これ面白かったから読んでみて」と貸したりして。今思えば、貸したっきり返ってきていない本がある気がします(笑)。


――なぜか本って貸すと返ってこないですよね(笑)。

:あれ、何なんでしょうね(笑)。絶対返ってこない! しかも「返して」と言うタイミングも難しいんですよね。


――私も何冊か返ってきていない気がしてきました……。ちなみに、DISH//のメンバーに面白かった本をシェアすることもありますか?

:メンバーにはないかも。僕が好きなジャンルの本の話はメンバーとしないんですよ。メンバーとは別に趣味が似ている友だちがいるので、そっちで話すことが多いです。メンバーとは、『ONE PIECE』など王道マンガの話をしています。4人とも好みがバラバラなので、共通の本の話題となると少年誌くらいなんです。


――バラバラだからこそ、他のメンバーが好きなジャンルに興味を持つこともありそうです。

:ありますね。4人とも好きなジャンルが遠くて。おすすめしてくれるので、読んでみることも多いです。この間も(橘)柊生に『都市伝説が殺ってくる』というマンガをおすすめしてもらいました。まだ1巻しか読めていないのですが、せっかくおすすめしてくれたので読み進めようと思っています。


「陰」が見えるからこそ「生」を感じる

――となると、泉さんが本を探す時は人からおすすめされることが多いのですか?

:人からおすすめされるパターンもありますが、自分で掘るパターンのほうが多いかも。それこそ、三島由紀夫さんの小説を読んでみたいのですが、難しそうなイメージがあって。「今の自分に理解できるかな」と。そういう時は詳しい人におすすめを教えてもらいます。逆に古谷実さんのマンガとかは、自分で掘って見つけた気がします。どうやってたどり着いたか詳しくは覚えていないのですが、たしかネットで好きなものを調べていたときに自然とたどり着いたはず。そこからディグって、似たジャンルの本やマンガを発見しています。


――古谷実さんの作品が好きだと思ったのは、なぜだったのかも気になります。

:僕はダークな描写がある作品が好きなので、古谷実さんの作品もそのセンサーに引っかかったんだと思います。山本英夫さんの『ホムンクルス』というマンガもすごく好きなのですが、やっぱり古谷実さんの作品との共通項を感じるんですよ。作者が影響を受けた人、という軸で探してみるなど、気がついたら近しい作品を掘っていって、読むことが増えていきました。


――古谷実作品しかり、『ホムンクルス』しかり、泉さんが好きな作品は映像化されることも多いですよね。映像化作品に手を伸ばすこともありますか?

:『ヒメアノ~ル』は映画も観ました。もちろん面白かったですが、僕はやっぱりマンガ派ですね。原作って、作者が表現したい描写がいちばんストレートに表されているじゃないですか。特に古谷実さんは絵のテイストも相まって気味悪さが際立っていて、そこも面白さのひとつだと思っています。


――泉さんのセンサーに引っかかる作品に共通しているのは、やはり「ダークさ」になるのでしょうか。

:そうですね。本だけに限らず、音楽でも「陰」があるものに惹かれます。絵画でいうと、僕はゴッホがすごく好きで。ゴッホもエネルギー的には「陰」。音楽にしてもゴッホにしても、「陰」のエネルギーを作品に落とし込んでいるところに魅力を感じます。「陰」が見えるからこそ「生」を感じるというか、共感してしまうというか。


――逆に「陽」に満ちあふれている作品は苦手だったり?

:そんなこともないんですよね(笑)。それこそ『ONE PIECE』のような熱くなれる作品もめっちゃ好き。 そう考えると、苦手なものはないのかもしれません。触れていないだけで、単なる食わず嫌いなんだと思います。


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価値観が変わって、
音楽にも影響を与えた一冊

――ありがとうございます。ではもう少し細かな質問もさせてください。最近読んだ本の中でお気に入りになった一冊はありますか?

:僕は昔読んだことがある本を読み直すことが多いのですが、『ドラゴンヘッド』(作:望月峯太郎)はやっぱり好きだなと思いますね。『ドラゴンヘッド』も「陰」のエネルギーを感じられる作品。自分の好みが一貫しているなと思いました。


――特に記憶に残っているシーンはありますか?

:「哲学的だな」と思ったのは、10巻にある廃墟と化したデパートでのシーン。ストーブに火をつけるために火種になりそうな物を探しているなかで、札束を燃やしてストーブに火をつけるんです。このお話の舞台が富士山の噴火によって文明が失われてしまった日本なので、もはやお金にも価値がなくなっていて。まだ文明が失われる前の商品が残っている廃墟デパートを見ながら言った、「……だがこうなっちゃ……金も宝石も金持ちも貧乏人も なーーんにも関係ねえな……」というセリフに食らいました。思わず写真を撮って、たまに見返すほどです。


――あぁ、なるほど。普通に生活をしていたら考えつかない言葉が出てくるのも、マンガの魅力ですよね。このセリフのように、泉さん自身の価値観が変わった一冊があれば教えてください。

:匠海におすすめしてもらった『アミ 小さな宇宙人』は価値観が変わりました。さくらももこさんが挿絵を描いていて(※徳間書店から刊行の新装改訂版/文庫版)、内容もわかりやすくポップになっていますが、愛や今を生きることの素晴らしさなどが書かれているんですよね。これを読んだ時に、「こういう考え方もあるんだな」「こういう見方もあるんだ」と視野が広がった感覚がありました。もっと優しくなれた気がします。


――音楽活動においても、本が影響することがありそうです。

:ありますね。でも、直接的というよりもマインドだと思うんです。僕は本を「視野を広げたい」という目的で読むことが多いのですが、その意識を持ちながら本を読むと自分の中に今までなかった感情が芽生えます。音楽って、自分が何を思っているかによってできあがるものがめっちゃ変わるんですよね。なので、本を読んで「こういう考え方もある」「こういうことが起こるとこんな感情になることもある」という引き出しを増やしておくことで、結果として音楽の幅も広がると思っています。


――なるほど。

:そういう意味では、「読んだ本に影響されてこの曲を作りました」ということは想像以上に少ないです。本で得た知識が自分の中に蓄えられていくと、自ずと考え方が変わって、音楽としてアウトプットされることが変わる。後から思えば、「あの本の影響があってこの曲ができたんだな」と思う、というイメージですね。


――「感性が磨かれる」という状況ですね。

:まさに!


――実際に「あの本の影響があってこの曲ができたんだな」と思う音楽作品はありますか?

:DISH//の「宇宙船」とか。この曲は『アミ 小さな宇宙人』を読んでいた時期に書きました。作詞は匠海なのですが、「宇宙船」というタイトルも『アミ 小さな宇宙人』から来ているワードです。匠海からおすすめされて僕も読んで、インスピレーションを受けてデモを作ってみて。それを匠海に聴いてもらったら歌詞が上がってきて。ふたりで「そういうことだよね!?」と答え合わせをしたらドンピシャだった、という感じで作りました。



――おふたりが『アミ 小さな宇宙人』を読んでいたからこそ生まれた曲なのですね。いろいろなものからインスピレーションを受けてアウトプットし、曲が生まれると思うのですが、インスピレーションを受ける物の中で、本はどれくらいの割合を占めているのでしょうか。

:結構大きいですよ。30%くらいかな。あとは絵が30%、映画が30%、その他10%というイメージです。


――となると、表現活動に活かそうという考えで本を読んだり、映画を観たりも?

:良いのか悪いのかわからないですが、そういう目線で観てしまうことも多いです。職業病ですよね(笑)。たとえば、映画を観ていても後ろで流れている音楽ばっかり聴いちゃう、とか。作り手の目線で観てしまうんですよ。極力そうならないようにはしているのですが、「純粋に観られていないな」と思いながらも考えてしまいます。


――まさに職業病ですね(笑)。

:そうなんですよ。で、そうやって取り込んだものが勝手に変換されてアウトプットされる瞬間を待っている……みたいな。絵もそうですよね。「こういう絵になるということは、こういう考え方や思考があったんだな」と考えて見ることが多くて。僕は20歳くらいからクリエイティブ活動をしてきているので、(作品を)完全にまっさらな状態で見ていた時期が少ないんです。純粋に作品として見たい気持ちがあるのですが、どうしても作り手側の目線になってしまいます。


――インタビューの冒頭で「マンガはクリエイティブ」と仰っていましたが、それも泉さんが作り手側だからこその視点ですよね。

:たしかに。僕、マンガもアートだと思っているんです。しかも絵のタッチが近しい作品同士は、作風も似ている気がして。先ほど苦手な作品はないと言いましたが、絵に関しては好みとそうでないものがあるかもしれないですね。本をディグる時も、絵のタッチに左右されている部分もありそうです。


マンガとドラム、
“リズム”に関係は?

――あぁ、なるほど。ちなみに、事前に泉さんは青年マンガ好きとお聞きしていたのですが、マンガは小説に比べてテンポがあって、リズムが生まれている本だと思うんです。ドラマーとして活躍されているからこそ、リズムを感じられるマンガがお好きなのかなとも想像していました。

:そういう側面もあると思います。マンガのテンポも遅い/速いの両方がありますよね。僕がナチュラルに持っているリズムって、どちらかというとチル寄り。なので、テンポがゆったりしている日常系のマンガが好きなのかもしれません。古谷実さんのマンガはダークな要素はありますが、身近なシチュエーションが根底にあったり、たった2~3年の話を細かく描いていたりして。そういうところも惹かれる要因なのかもしれません。


――すごく納得しました。音楽以外でも本から影響を受けているものがありそうです。

:ファッションは影響があるのかもしれません。僕、服ってマインドで着るんですよ。


――名言ですね!

:あはは(笑)。でも、本当にそうなんです。僕は本だけでなく岡本太郎さん自身も好きなのですが、岡本太郎さんって「何を考えてどう生きるかは、その人の表現や言動にそのまま表れる」という哲学の人じゃないですか。それにめちゃくちゃ共感したので、その時のマインドで服を選んでいるんです。


――ちなみに今日のファッションはどんなマインドですか?

:今日は、いつもよりかましているかもしれないです(笑)。もっとラフな時が多いんですよ。でも、今日みたいに人と会う仕事の時は気合いを入れる意味でも服に頼っています。それが自分のモチベーションになりますから。


――ありがたいです!(笑) では最後に「Billboard JAPAN Book Charts」についての感想も聞かせてください。

:マンガがたくさんチャートインしていて、『ONE PIECE』はやっぱり上位なんですね。(チャートを見ながら)知らない作品が多いですが、日本の文化を感じます。これだけマンガがチャートインするって、マンガが身近にある日本ならではなのかな、と。しかも『ONE PIECE』や『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズとかはもう100巻以上出ているじゃないですか。最新巻とか、そのなかの1巻がランクインしているって、みんなずっと読んでいるということですもんね。それって良いことだよなって。音楽で言うとシングルだけ聴くのではなく、アルバムもちゃんと全曲聴いているという状態ですよね。今の時代、よっぽど好きじゃないとアルバム全曲は聴かないですから。マンガも最近では1巻で完結する作品も多いじゃないですか。紙から電子に変わるという時代の変遷はあったかもしれませんが、それでも長編マンガがランクインするというのは根強い文化なんだなと感じました。


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