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<インタビュー>「キマグレンを長生きさせたい」――再結成後初ツアーを控えるキマグレンISEKI&KUREIが語る現在地

インタビューバナー

Interview & Text:森朋之
Photo:小野正博


 2024年に再結成を果たしたキマグレンがビルボードライブ・ツアー【キマグレン/KIMAGUREN Billboard Live TOUR 2025】を開催する。

 逗子育ちの幼なじみISEKIとKUREIによって、2005年に海の家ライブハウス(現・音霊 OTODAMA SEA STUDIO)を立ち上げる中で結成されたキマグレン。“LOVE+LIFE+LOCAL”という3つの“L”をテーマに活動をスタートさせ、2008年にメジャーデビュー。同年にリリースされた2ndシングル「LIFE」が大ヒットを記録し、一気にブレイクを果たした。

 結成10周年を迎えた2015年のライブを最後にユニットは解散。9年の時を経て、待望の再結成が実現した。9月1日には材木座海水浴場(鎌倉市材木座)でワンマンライブ【-再会と再開-】を行い、大きな話題に。さらに『THE FIRST TAKE』で「LIFE」を披露、11月にはビルボードライブ横浜に初登場を果たすなど、順調な活動を続けている。

 【キマグレン/KIMAGUREN Billboard Live TOUR 2025】は横浜、大阪、東京のビルボードライブで開催。メンバーのISEKI、KUREIに再結成以降の活動、ビルボードライブ・ツアーへの意気込みなどについて語ってもらった。

再結成からの半年間


――キマグレンの再結成が発表されたのが、2024年の夏。9月1日に地元の材木座海水浴場でワンマンライブ、11月にはビルボードライブ横浜でそのアンコール公演を行いましたが、この半年間はお二人にとってどんな期間でしたか?

ISEKI:まだ半年なんですね。もっと時間が経ってる気がしてた(笑)。

KUREI:そうだね(笑)。9年ぶりなんですけど、活動していた期間と同じくらい解散していたので、かなりフレッシュです。この半年は、お互いに慣れる期間だった気がしますね。9年も経つとお互いの習慣や考え方もだいぶ変わっているので、まずはそこをすり合わせて。

ISEKI:何を大事にして生きているか、というと大きな話になっちゃうんだけど(笑)、二人とも成長してますからね。あとは心がちょっと広くなった気がします、お互いに。

KUREI:切羽詰まるような場面は特にないんですけど、二人とも40代半ばだし、あまり気にならないんですよ。

ISEKI:お互いの嫌なところが気になることもあったからね、以前は(笑)。今はお互いにしっかり自立しているし、細かいことをあまり気にせず接することができるというか。

KUREI:そうだね。あとは僕ら二人だけで完結するというのがすごく大事で。以前のキマグレンはたくさんの人たちに支えてもらっていて、僕らが知らないところでいろんなことが進むこともあったんです。僕らはそこに乗っかる形で動いていたんだけど、本来は一つ一つ大事にしなきゃいけないんですよね。今は二人で話して二人で決めて、二人でやっていて。

ISEKI:逆に言うと二人だけで勝負しなくちゃいけないんですよ。自分たちの素でやるしかないし、それが潔くてとてもいいなと。ちょうどミドルライフ・クライシスに差し掛かる年齢ですけど、新たにキマグレンをやることで予防にもなるのかなと思ったり(笑)。



――確かに! 去年のライブの手ごたえはどうでしたか?

KUREI:まずはお互いが出来ること、積み上げてきたものを確認するところからだったんですよ。なので最初はリハーサルというより練習というか(笑)。

ISEKI:練習だね(笑)。

KUREI:あとはたくさん話をして。自然体というか、お互いに馴染むことが大事だったのかなと。9月1日のライブについては、ちょっと下駄を履かせてもらってたと思うんですよ。(再結成、最初のライブという)意味合いがあったし、そこに熱量が伴って。奇跡的に台風が逸れたこともそうだし、自分たち以外の要素が加わって、すごくエモいライブになったのかなと。11月のビルボードライブ横浜の公演に関しては、そこからさらに進んで、精度も高まったと思いますね。

ISEKI:自分はKUREIほど上手くまとまってないですね(笑)。KUREIはすごくアイデアマンで、ライブの準備をしているときから、「こういうのはどう?」ってボンボン出てくるんですよ。9月のライブのときも、当日のリハのときに「ステージにベンチを置いて、二人で座って歌うのはどう?」って言い出して(笑)。「それはどうなの?」って思ったんだけど、やってみたら「絵面がいいね」ということになって。

KUREI:よかったでしょ?

ISEKI:そうやってどんどん言ってくるから、それに追いつくのに精いっぱいなんですよ、正直。あとはもう、自分ができるプレイをひたすら注ぎ込むだけというか。


――以前からそういうバランスだったんですか? KUREIさんがアイデアを出し、そこから進んでいくっていう。

ISEKI:初期はそうだよね?

KUREI:その後はプロデューサーがいて。彼が先のビジョンを持っていたし、アレンジの方向性を含めて全部をやり切る力があったので、そこに乗っかって進んでいこうと決めてました。“音霊”については、自分たちが「やる!」って言い出して、周りの人たちを巻き込んでいった感じですね。

ISEKI:そうだね。今のことでいうと、「とりあえずやってみようか」と言える現場なんですよ。さっきのベンチの話もそうだけど、「やってみたら面白かった」ということも多いし、信頼感はすごく強いです。


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今はキマグレンの復習をやってる感じかもしれない

――9年ぶりにキマグレンの楽曲を二人で披露することで、改めて気づくことはありましたか?

KUREI:いろいろ感じることはあるけど……どう?

ISEKI:若いときはとにかくガムシャラだったし、「ヒット曲を書かなきゃ」というプレッシャーもあって。実は、曲の善し悪しについてはあまりわかってなかったんですよね。今はもっと俯瞰で見られるようになっているし、「初期の頃はシンプルに作ってたし、いい曲が多いな」とか「真ん中あたりから後半にかけては、だいぶ模索してるな」「でも、そのなかに光るものもあるな」とかいろいろわかるようになったんですよ。そういうことはKUREIとも意見を言い合ってますね。

KUREI:俺はすごくシンプルに考えていて、1stアルバム、2ndアルバム、“ギリ”3rdアルバムくらいまではいいなと思ってるんですよ。その後はちょっとこねくり回している感じがあって。プロデューサー、アレンジャー、レコード会社の担当者だったり、いろんな人の意見が散りばめられすぎてるんですよね。もちろんISEKIが言う通り、そのなかにも光るものがあるんだけど。

ISEKI:うん。光る部分を切り取りながら、今後のキマグレンに活かせればいいなと。

KUREI:そう考えると、今はキマグレンの復習をやってる感じかもしれないですね。


――おそらくリスナーの皆さんもそうだと思います。キマグレンが復活したことで、「久しぶりに聴いてみよう」という人も多いだろうし。

ISEKI:そうだったらうれしいですね。

KUREI:今の自分たちの音も聴いてほしいけど(笑)。


ISEKI:そろそろ新しい音源を作らないと……という話もやっと出てきてるんですよ。「これが今の俺らだぞ」という名刺が必要というか。ようやくそこまで気持ちが追い付いてきました。もしかしたらKUREIはもっと先に行ってるかもしれないけど。

KUREI:まあ、再結成から半年しか経ってないからね。

ISEKI:赤ちゃんだね(笑)。もし大人のスタッフが入ってたら、たぶん新曲のリリースも決まってるはずなんですよ。なんなら再結成発表前に曲ができていて、9月1日のライブで発表するっていう。音楽業界的にはそれが正解なんだけど、自分たちの人生においては正解じゃないと思ってるんですよね。


――どういうことですか?

ISEKI:要はキマグレンを長く楽しみたいんですよ。生き急ぐと持たないじゃないですか、フルマラソンだから。ビジネス的には短距離のほうがいいのかもしれないけど、僕らはキマグレンを長生きさせたいので、急ぐのはよくないのかなと。自分もKUREIもそれぞれの生活の土台があるし、昔のようなペースでキマグレンをやれるか?というと、それはちょっと難しいので。そのあたりのバランスも上手く取っていけたらいいなと思ってます。

KUREI:これから世に出て行くわけではなくて、ある程度知ってもらっていますからね。特に「LIFE」という曲の印象に引っ張られていると思うので、どうやって今の僕らを提示できるか?ということかなと。話し合いのほうが大事かもしれないですね。どんなものを作る? どう見せる? 誰とやる? みたいな。

ISEKI:しっくりくる人がいたら、そのたびに仲間に加わってもらって。そういう順序が大事なんだろうね、確かに。


――【キマグレン/KIMAGUREN Billboard Live TOUR 2025】はどんなツアーになりそうですか?

KUREI:去年の11月のビルボードライブ横浜は、“夏のアンコール”という感じだったんですよ。今回は何を提示しようか……と正月に「そろそろマジで考えないとな」と思って(笑)、「このあたりじゃない?」という曲をISEKIにLINEで送ったんです。引き続き夏っぽさもありつつ、言葉の強さやメッセージもしっかり伝えたいなと。僕らはパーティピーポーではないし、ちょっと陰キャな部分もあるんですよ。そのあたりも上手く伝えられたらいいなと思ってます。

ISEKI:それを二人でどう表現するか?ということですね。再結成してから初めてのツアーだし、キマグレンとして大阪に行くのはすごく久しぶりなんですよ。そこでちゃんと「ただいま」と言えるのかなと思ってます。

KUREI:縁のある場所に行きたいという気持ちもありますね。レギュラー番組を持っていた宮崎だったり、震災のときにライブをやらせてもらった福島とか。

ISEKI:まずは自分たちの軌跡を辿るということだね。

KUREI:うん。あと、仲良くさせてもらっているアーティストに恩返しすることも必要だと思っていて。声をかけてもらったら、できるだけ出たいんですよ。

ISEKI:その一つが、HYがやってる【HY SKY Fes 2025】だよね。

KUREI:デビューはHYのほうが全然早いんですけど、年は僕らのほうが上ですね。


――同世代はスキマスイッチとか?

ISEKI:二人のほうがちょっと年上ですね。

KUREI:ファンモン(FUNKY MONKEY BΛBY'S)が一つ上で、Aqua Timezの太志が同い年で。Def TechのMicroも同じ年ですね。


――Aqua TimezもDef Techもファンモンも紆余曲折ありながら、今に至って。

ISEKI:みんな、いろいろありましたね。


――先ほども話に出てましたが、キマグレンの新曲も期待してます。今年中には聴けますよね……?

KUREI:どうでしょう?(笑)。

ISEKI:ハハハハ。

KUREI:一つだけ言えるのは、誰かにお願いされているわけでもないし、締め切りもないんですよ。決まってることは何もないんだけど、最近はISEKIも「新曲作りたいよね」ってよく言ってて。

ISEKI:さっきも言いましたけど、ようやく「作りたい」と思うようになってきたんですよ。それは生きる喜びにも近いところがあって……。なんて言うか、40超えてから、ちょっとずつ安定志向みたいになってきちゃったんです。自分たちで会社もやってるし、いろんなイベントとかもやってるんだけど、それがルーティーンにはなってきて。作品を作る、0から1を生み出すというのはーー年齢を重ねれば重ねるほどーーなかなかできない経験になってるんですよね。ここにきてようやく「作りたい」という気持ちが出てきたし、そのための時間を作りたいと思ってます。


――すごく自然ですね。スケジュールありきではなく、表現欲求に従うというか。

ISEKI:そうなんですよ。何かに向けて、誰かに向けてではなくて、シンプルに「曲が作りたい」と思ってるので。それこそデビューする前の感覚が戻ってきた感じもあるし、それは大事にしたいなと。

KUREI:名曲ができそうな話になってるね(笑)。

ISEKI:そういうことは考えないようにしてる(笑)。


――お二人の話を聞いていると、9年のブランクには意味があったんだなと感じます。

ISEKI:この9年間、俺もKUREIも頑張ってきましたからね、生きることに対して。

KUREI:そうだね。

ISEKI:そういう二人の素の感じが、ビルボードライブ・ツアーでも出せたらいいなと思ってます。ウソがなく、ヘンにカッコつけもしない、ありのままのキマグレンを見てもらいたいですね。


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