Billboard JAPAN


Special

<わたしたちと音楽 Vol.37>リーガルリリー 変化していく気持ちに向き合ってきたから叶えられること

インタビューバナー

 米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。

 今回のゲストは、4月4日にテレビアニメ『ダンジョン飯』第2シーズンED主題歌「キラキラの灰」をリリースしたガールズバンドのリーガルリリー。高校時代にたかはしほのか(Vo/Gt)が結成し、その後に海(Ba)が加入して今年で10周年を迎えた。現在は、原点回帰の意味を込め、東名阪ライブハウスツアーを開催中。楽曲「17」の歌詞にも綴ったようなモラトリアムな時期を経て、二人が今見据えているものとは。(Interview:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING] l Photo:Taku Fujii)

ガールズバンドというカテゴリー内に
多種多様な音楽がある

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――結成10周年おめでとうございます。バンドを結成したのは高校時代とのことですが、その当時から長く続けることを意識していたのでしょうか。

たかはしほのか:バンドを組んだときには、正直そこまでは考えていなかったですね。目標があったわけでもないんです。ただ、リーガルリリー結成前に男性メンバーと組んでいたバンドがあったのですが、そこに私がうまく仲間に入れなくって。結局、「男だけでやるから」と言われて離脱することになってしまったんです。まだ高校1年くらいで、異性に対して部外者扱いがあったというか……。それでムカついて(笑)、「女の子だけでバンド組んでやる!」と思ったんですね。


:私も高校時代から軽音部でバンドをやっていました。その男性の人数がそもそも少なくて、私もずっと女性と組んできました。リーガルリリーに入る前はあまりガールズバンドということは意識してこなかったのですが、男性メンバーのバンドに加入するよりも、自分がメンバーになるイメージを持ちやすかったかもしれません。


――この連載でお話を伺ってきた人の中には、“ガールズ”や“フィメール”といった冠をつけて肩書きをカテゴライズされることに違和感がある、というアーティストの方もいらっしゃったのですが、皆さんは「ガールズバンド」と呼ばれることはどう感じていますか。

たかはし:最初は何も考えてはいなかったですね。でも後に、ガールズバンドと呼ばれたくないということを公言しているバンドが現れて、「ガールズバンドって呼ばれるのが嫌な人もいるんだ」と考えるきっかけになりました。


:確かに事実として女性がやっているバンドではあるんだけど、ロックやパンクとかと比べると分け方が雑じゃないですか(笑)。ガールズバンドの中でもいろいろな分け方ができるはずなのに、例えばガールズバンドという括り方でプレイリストとかが作られたときに、そのアーティストのコアに辿り着けるのかな?という疑問はありますね。もともとその言葉自体にネガティブな印象はなくて、そのカテゴリーだから出られたイベントとかもあるはずなんですけどね。


たかはし:ガールズバンドという言葉は自分にとって馴染みがあるんだけど、よく考えたら“ガールズ=少女たち”ですよね。声質が男性と女性で違うから、それで分けるのは仕方がないにしても、これから先みんなのライフステージが変わっても“ガールズ”でいいのか、という感じはします。


これから訪れるライフステージの変化で
バランスがどう変わるかに興味がある

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――SCANDALが活動17年で「同一メンバーによる最長活動バンド(女性)」でギネス記録を作ったように、女性バンドが長く続けるのが難しい、という話にも繋がってくるかもしれないですね。お二方は、長く健やかに活動を続けていくために大切にしていることはありますか。

たかはし:基本的に子供の頃からずっと常識というものがよくわからないんです。例えば、夫が仕事に出て、妻は家で家事をして……という、常識とされているものから離れて生きてきたので……自分がもし妊娠をしたりしたら、ぎりぎりまで歌っていたいとは思いますね。大森靖子さんが大きなお腹でステージに立っているのを見て、「自分にもできるのかなぁ」なんて考えてみたりして。


:妊娠は、してみないとわからないよね。でも早くしてみたいですね。どこまで自分が妊娠しながら挑戦できるんだろうとか。今、私は25歳で、これからライフステージが変わるだろうし、いろいろなものと向き合っていかないとならないんだろうなと思っているところ。例えば、結婚したあとに妻としての自分が現れたり、出産して母親としての自分が現れたり……これまで通りアーティストとしての自分だけじゃないアイデンティティが現れたとき、どうバランスをとっていけるのかすごく気になっています。


――20代後半は、ライフステージの変化にリアリティを感じ始める頃かもしれないですね。2024年1月にリリースされた「17」で描かれた17歳という年頃も、いろいろな変化を感じた時期だと思います。どうして“17”にフォーカスしたのでしょうか。

たかはし:私は今年で27歳になるので、17歳は約10年前になります。17歳のときに“17”がキーワードになる曲をたくさん聴いていて、好きな曲がたくさんあるんですよ。自分も17歳のうちに17って曲を作ろうと思っていたんだけど、自分自身が渦中にいるときにはどうしても作れなくって……あのときがどういう状態だったか、自分ってどんな人間なのかは26歳くらいになってだんだんわかってきたような気がして、10年経った今、あの頃を思い出すような形で言葉にしていった先に、音楽ができました。


:私もライブハウスにはけっこう行っていましたね。自分のことで精一杯だったし、自意識が過剰で、なんだかいろんなことが恥ずかしくなっちゃって楽しめないような時期でもあったんですけど……1人でライブハウスに行って、自分しか知らない自分でいられる時間が支えになっていました。


ライブで生まれるお客さんとの相互関係で
互いにエンパワーメントされている

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――2月21日には、「春が嫌い」が配信されました。リーガルリリーの楽曲は“頑張れ”というようなわかりやすいキーワードは使わないけれど、心情に寄り添ってくれるような歌詞で、気付くとエンパワーされているようなものが多いと思っています。お二方には、曲を作るときに誰かを励ましたい、勇気づけたいといった気持ちはあるのでしょうか。

たかはし:ライブをやっていると、お客さんたちは自分たちが発したものを受け取っていろいろなモーションで返してくれる。私自身がそういうものに感動するし、それに勇気づけられているので、その思いを楽曲にも込めるようになりました。


:私はライブでも音源でも、一方的な矢印で私たちからお客さんを勇気づけたいというイメージは持っていないんじゃないかな、と思っています。自分が勇気づけられるときって、人から与えられたものからよりも、自分が自然発生的に何かを見つけたり気付いたりしたときだったりすると思うんですよ。だから自分の演奏や楽曲でそういう機会をたくさん作れたら、とは思っています。


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リーガルリリーとしての活動も、
ガールズバンドの前例のひとつに

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――このインタビューのテーマでもあるのですが、“女性であること”は、音楽活動をするうえで、あるいは生きるうえでどんな影響があると思いますか。

たかはし:人生においては、本当にホルモンバランスに振り回されてるんだなって最近気がつきました。自分を大切にせざるをえない時期ってあるし、自分を大切にすればするほど、作品に対しても大切に取り組める。でも一方で、自分の性格上「ちょっと危険なことがしたい」と思う時があるんですよ。めちゃくちゃ寒いところに行ってみたい、とか(笑)。そういう危険なチャレンジをすると体に負荷がかかって結果ホルモンバランスも乱れるし、もっと無茶できる体でありたかったなとは思うかも。


:通に安全に暮らすのにも、女性だとタフである必要があるよね。住む部屋を選ぶ時にも、安全な場所を選ぶには2階以上でオートロックで、という条件が発生してお金もかかるし。


たかはし:バンドでいうと、私たちの上の世代、例えばチャットモンチーのみなさんとかの活躍を見ていて、自分たちにできることとできないことを考えたりはしています。でも男性と比べて女性のバンドは前例が多くないので、もっと前例ができてきたら活動のしやすさも変わるかもしれないですね。今でもたくさん女性バンドが生まれているだろうし。


:「ちょっといいな」って思うところも正直あるけれど、私たちもこうやって長いことやれているし、今の私たちをカッコいいと思ってくれている人がいたら、そうやって共鳴して広がっていくんだろうなと思います。


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