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<インタビュー>ammo、『re:想-EP』『re:奏-EP』でメジャー進出 2枚のEPに刻まれたバンドのこれまでとこれから



インタビュー

Interview & Text:小川智宏

 2018年に結成された東大阪発のロックバンド、ammo(アモ)。2023年に結成5周年を迎えた彼らが、ついにメジャー進出を果たす。CDのみのメジャー1st EP『re:想-EP』には新曲5曲が、そして同時にリリースされる配信のみのインディーズEP『re:奏-EP』には共通のリード曲「何℃でも」のほか、これまでammoがライブで鳴らし続けてきた楽曲たちの再録バージョンが収録されている。ここにはammoが辿ってきた歩みも、岡本優星(Vo./Gt.)の書く楽曲の個性の変化も、つまりammoのこれまでとこれからがしっかり刻まれている。どんな思いでこの2作を作り、これからどう進んでいこうとしているのか、メンバー3人に話してもらった。

3人で鳴らす音には自信がある

――結成5周年を経て今回初のメジャーリリースになるわけですが、そもそもはどういう経緯で結成したバンドなんですか?

岡本優星(Vo./Gt.):ベースの(川原)創馬とは高校の同級生で。高校を卒業したタイミングでバンドをやろうということになって結成しました。初代のドラマーから何人か変わって、(北出)大洋が入ってくれて。この3人になって完成したなという感じがします。それまではいろんなトラブルがあったり、グルーヴのことだったり、心配することが多かったんです。でも大洋が入ってからは結構任せられるようになったので。背中を預けるじゃないですけど、ライブが楽しくなりました。

川原創馬(Ba.):うん、楽しいです。

北出大洋(Dr.):僕もammoに入る前からバンドをやっていたんですけど、今が一番楽しい。

――今年夏にはSpotify O-EAST でのワンマンライブもソールドアウトしましたが、お客さんが増えて、ammoの音楽がどんどん広がっている状況があって。そのあたりの実感はいかがですか?

岡本:実感が本当ないんですよね。毎回「本当に売り切れたん?」って思いながら当日を迎えて、「ほんまにいっぱい来てくれてるわ」って思って1日が終わって。で、また次のライブが解禁されてまた「売り切れるかな?」みたいな。ずっと実感がないままなので、なんでこうなってるんだろうって思います。

――でも自分の作る曲、この3人で鳴らす音っていうものに対する自信っていうのはありますよね?

岡本:それはもう、めちゃくちゃあります。でもどこがいいのかは、俺はただ自分のことに精一杯なので、2人のほうが分かるかも。

川原:どこがいいのか……曲がいい。ライブも頑張ってる。優星にしか書けない歌詞とか、優星にしか作れないメロディがあって。そういうのじゃないですか? 曲がキャッチーだから。でも最初、優星はめっちゃ音痴やったんです。

岡本:まあ、今もですけど(笑)。

川原:でも曲だけはめっちゃよくて。だから一緒にやってたんで、それが実ったなって。歌は練習したらよくなったから。最初から曲はめっちゃ良かったです。

――めちゃくちゃ「音痴」って言われてますが(笑)。

岡本:ほんとそうでしたね。歌い方がわからないというか。もう自分の好きなメロディというか音楽はあるんですけど、それをどう表現していいかわからなくて、だから曲を書いたみたいな感じなんです。「これなら歌えるわ」っていう。

――好きな曲を歌えないから、自分で歌える曲を作る、という。

岡本:そうですね。憧れてた人たちの真似ができなかったんです、ずっと。

――今はどうですか? 自分の歌は。

岡本:自分の曲は好きです。自分の好きを詰め込んだものなので誰にも負けてないなと思います。でも歌はまだ自信ないです。今も模索してますね。ammoを始めてからも、リリースするたびに変わっていってるんで、まだ完成してないと思います。

――メジャー最初の作品としてリリースされる『re:想-EP』とはバンドにとっても大きな節目だと思いますが、作っていく上での気持ちはどうでしたか?

岡本:やっぱり気合いは入りました。(メジャーから)声かかってるよって聞いていろいろやり取りしていく中でも気合いは入りまくってましたね。ちょっと空回りしたりもしましたけど、最終的にはいいものになったと思います。

川原:僕は変わらずでした。逆に何も変えないようにしたというか、そもそもメジャーのために曲を作っていることも知らなかったんです。だからほんまにいつものやり方でやりましたね。優星が気合い入っていることは感じていたけど、俺は寄り添ってアレンジをするだけなので何も言わないし、勝手にいい曲ができると思っていました。

北出:僕も特別気合が入ったとかはないです。でも僕の場合は、そもそも2人と一緒に制作するようになってからまだ2年弱なので、探り探りの部分があって。そこは前のCDを作った時よりはいい感じに一緒に作れたかなっていうのがあります。

岡本:でも、苦しい期間も多かったけど、メジャーデビューっていう節目がなかったら絶対できなかった曲もあるので。リード曲の「何℃でも」が一番最後にできたんですけど、これは他の曲を作った後で「あともう一押しほしい」というリクエストをもらって作ったんです。最後、ラストチャンスくらいの気持ちで捻り出した曲なので、一番苦しくもあり、できてよかったなっていう実感もありっていう曲ですね。

川原:「何℃でも」は本当に頑張りました。本当にカツカツのなかで作ったので。でも僕も、それまでの4曲の中でもともと「これをリードにする」って言っていた曲があったんですけど、実は「メジャー一発目でこれか」みたいなことを思っていたんです。でも僕は何も言わないスタイルをずっと貫いてきていたので、何も言わないようにしていたんです。そしたらレコード会社の人が言ってくれたので。そこから優星がこの曲を捻り出してくれた。だから思い入れもあるし、僕は今までの曲で一番好きだなって思います。


「何℃でも」MV

――北出さんが今回のレコーディングで印象に残っているのはどの曲ですか?

北出:大変だったのは3曲目の「ねー!」ですかね。自分的にも、たぶんammo的にも今までにない感じのビート感やったんで、いいニュアンスを出すのが難しかった。

――「ねー!」は確かにこの5曲の中でいうと一番新鮮なammoを感じる曲になっていますよね。

岡本:裏打ち(のリズム)は初めてかな。

北出:なんか、うまい具合に力が抜けて、普段やってなかったことができました。

――王道もあれば、「ねー!」みたいな曲もあって、「何℃でも」というリード曲ができて。たった5曲ですけど、すごく濃いものになりましたね。

岡本:完成してみんなで聴いたんですけど、マジで気絶しそうになりました(笑)。振れ幅がすごすぎて、5曲聴いただけで「ちょっと疲れたね」くらいの。マジで振れ幅すげえなって思いました。

――それができたことによって、ammoとしての新たな発見もたくさんあったんじゃないですか? 「これもありなんだ」っていう。

岡本:めちゃくちゃありました。リリースのたびに1曲はそういうのがありますけどね。だから楽しいです。聴いた人も絶対びっくりすると思います。

川原:でもマジで前作の『我々の諸々』を作ってよかったなって思います。あれがないとこれはできていなかったから。インディーズでシングル入れて5枚を作ってきたのを通じて「バーン!」っていう作品ができたから、ここからが楽しみだなって。

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バンドを始めた頃は配信で出すことにちょっと抵抗があった

――ある意味、この5曲だけ聴いてもどんなバンドかちょっと分からないところがあるのがいいなと思って。

岡本:確かにわからないですよね。ライブが想像できない。

――うん。それが面白いですよね。だからこそ今回同時に配信でインディーズ時代の楽曲を再録した『re:奏-EP』という作品がリリースされるというのも活きるなと。

岡本:ああ、そうですね。めちゃくちゃいいなって思いました。

――今までammoはCDでしかリリースしてこなかったわけですけど、今回初めて配信リリースをしようと決めたのは?

岡本:バンドを始めた頃は配信で出すことにちょっと抵抗があったんですけど、最近はもう否定派じゃなくなっていたので。どっちかというと「やれる機会があるならやってみたい」と思っていました。

――最初はちょっと抵抗があったんですね。

岡本:ありましたね。僕もCDを買っていたので、CDだけを売ってるのがかっこいいって思ってたし、そういうレーベルに入りたいと思って本当に入れたわけだから、最初はそうでした。でもいろいろな人に意見を聞いて、かなり考え方が変わりましたね。

――記念すべき最初の配信リリースで、過去曲をもう一度録り直すことで今までのammoを見せるような作品が作れたというのもよかったですよね。ずっとライブでやっている曲たちですけど、今回レコーディングしてみていかがでしたか?

岡本:もうちょっとうまくいくと思っていたんですけどね。ライブでいっぱいやってるからレコーディングも余裕やろって思ってたんですけど、結構手こずっちゃいました。上手くなってると思ってたんですけど、そんなことなかった(笑)。まだまだ頑張らないとと思いました。

川原:こだわり出したら止まらなくなりますからね。初めてとか2回目のレコーディングで録った曲が多いんですけど、その時はその場しのぎというか、その場でジャーンってやって「いいんじゃない?」って感じだったんです。でも今改めて録るってなったらいろいろ気にするようになっちゃって。それでめちゃくちゃ時間がかかりました。

――岡本さんは自分で自分の書いた昔の曲を見た時にどんなことを思いますか?

岡本:「若いな」って思いました。歌詞もメロディも、今じゃ絶対に作れないなって本当に思います。いい意味で「ヤバいな、こいつ」ってなりました。その時の俺がどんなことを考えていたかってわからないじゃないですか。だから「本当に俺が作ったのかな」っていう感じがしました。あの頃の感性を一瞬だけでも取り戻せたらなと思いますね。あの時に戻りたいわけじゃないし、進化もしていると思うけど、「こんなこと今じゃ言えないな」とかもあるから羨ましさもあります。こんなに変わるんですね、って。

――北出さんはこの曲たちができた時にはバンドにいなかったわけですけど、そういう意味ではより客観的にできたところもありました?

北出:今回は僕が叩いてない曲から選んでもらったので、楽しかったですね。もともとある曲を自分が叩いてまた作り直すっていう。すごくよくなったと思います。

――だから今の3人だから鳴らせる音になっているんですけど、岡本さんにとってはそこには昔の自分もいて。不思議な体験だったんでしょうね。

岡本:バンドの音作りも、歌い方とかクセも全部変わったのに、歌詞とメロディだけは変わらないからすごく面白かったです。


「これっきり」MV

――そんな2作を経てammoの次の物語が始まっていくわけですけど、そこから先の未来についてはどんなイメージを持っていますか?

岡本:節目だったり集大成だったりというのはありますけど、やることは変わりたくないですね。曲出してツアーして、曲出してツアーして、をとにかくずっとやっていきたいです。で、規模が大きくなればいいなと思ってます。次はZeppでやるので、ホールとか武道館とか、行けるように頑張りたいですね。

――3月3日、Zepp DiverCityで【ammo単発単独公演 " reALITY "】と題されたワンマンライブが開催されます。

岡本:はい。不安もあるんですけど、やるしかない。

――やっぱり今回も不安なんですね(笑)。

岡本:そうですよ。俺らみんなビビリですよ。

川原:3人とも長男なんで、家族に迷惑かけられない(笑)。

岡本:でも俺はずっとそうやってやってきましたし。ビビリじゃないとここまで曲を煮詰めることはできないんじゃないですかね。だからこそ曲はちゃんとラッピングして出すようにしたいと思っているし。ライブでは違うんですけど、そこで言ったこととかがずっと心に残っていて歌詞にしたりもするので、一回噛み砕く時間があって。だからこういう歌詞になるのかなと思います。

――だからライブで感情的なammoに出会った人は音源を聴くとちょっとびっくりするかもしれない。その逆もあるだろうし。

岡本:逆のパターンはめっちゃ言われますね。「こんなバンドと思わなかった」っていうのは。なんか「ごめん」ってなる(笑)。TikTokで見てライブに来てくれた子たちはどう思ってんのやろ、みたいな。

川原:蓋開けてみたら嫌われてないかなって(笑)。「嫌いにならないで」って思ってます。

岡本:でも自信はあるんです。ライブがよくなかったら全部意味がないと思っているので。だからライブに来てほしいです。

ammo「re:想 EP」

re:想 EP

2024/01/17 RELEASE
TFCC-81049 ¥ 1,500(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.何℃でも
  2. 02.koi
  3. 03.ねー!
  4. 04.ブルースを抱きしめて
  5. 05.やまない愛はある

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