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<対談>ミラッキ大村&DJ Mass MAD Izm*が気づいたドリカムが色褪せない理由



DCTインタビュー

 【史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2023】に向けて、全国各地で昨年開催された【ドリカムディスコ2022 -Road to DWL2023-】で披露されたDJ Mass MAD Izm*によるスペシャル・ミックスをCD音源化した『DREAM CATCHER 4 - ドリカムディスコ MIX CD -』が、ドリカムのデビュー記念日である3月21日に発売された。

 4年に一度のグレイテスト・ヒッツ・ライヴの開催を前に、全6公演分の選曲を担当したミラッキ大村、そして実際のミックスならびに各地のDJプレイを手がけたDJ Mass MAD Izm*の対談から見えてきたのは、ドリカム音楽の根底にあるブレない要素だった。(Interview: ノイ村/Photo: 辰巳隆二)

――今回の企画はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

ミラッキ大村:「ドリカムディスコ」という取り組み自体はこれまでも開催されていて、各地のダンサーとして活動している子どもたちを大きな舞台に立たせたいというコンセプトがあったり、「ドリカムにはこれだけ踊れる曲があるんだ」と、皆さんに楽しんでもらったりしてきたのですが、2022年はラジオの要素を盛り込みたいという話になり、私が放送作家として構成に入ることになりました。これまでDREAMS COME TRUEのアルバム『DOSCO prime』などにも(共同トラック制作者として)参加してきたMassさんによるDJパートを作ろうという話が生まれ、さらにラジオ的な企画を立てられないかということで、イベントの演出に加え、DJの選曲にもそういったものを取り入れようと。

 そうなった時に、私がラジオ番組でやっていた企画の一つに、バラバラな5つの楽曲を流して、「この共通点は何でしょう?」みたいなクイズがあったんですよ。それはもう本当にバラバラで「それぞれの楽曲に出てくるものを組み合わせると家が完成します」みたいな感じ(笑)。これがリスナーに好評だったので、そのドリカム・ヴァージョンを作ることになったんですね。それで各地の公演の縛りと選曲を決めていきました。なので、きっとそれを渡されたMassさんは「なんだこりゃ」と思ったんじゃないかと(笑)。

DJ Mass MAD Izm*:(笑)

ミラッキ大村:分かりやすい共通点があって渡しているわけではないので(笑)。かなりの無茶ぶりというのは承知で、Massさんがどう仕上げてくれるかを見守っていましたね。ただ、確実に「ドリカムディスコ」じゃないと聞けないものができるという期待はありました。

DJ Mass MAD Izm*:僕はむしろ、どんなものが来てもミックスできないとDJじゃないと思っているので、ミラッキさんの選曲に対しても「分かりました」と素直に受け取りました(笑)。ただ、DJミックスという観点からしてもドリカムの曲はしっかり踊れるものばかりで、もちろんテンポや作風はバラバラだったりするんですけど、根底にあるソウルやR&Bがしっかり軸として存在しているので、実際にやってみたらどんどん形になっていきましたね。実際にお客さんの反応を見ても「これで良いんだ」と手応えを感じられたので、そのまま全部作っていきました。

ミラッキ大村:私もMassさんのDJミックスを一人の観客として楽しんでいたのですが、やっぱり自然に身体が反応しちゃうんですよね。もちろん、身体の揺らし方は楽曲によって変わっていくんですけど、ずっと踊れるんです。アゲアゲばっかりというわけでもなく、「一旦ブレイクするところからこう来るんだ!」という驚きもあったりして、選曲した立場としては「こうなるんだ!」と唸り声を上げたり(笑)、ニヤリと笑ったりしながらノッていましたね。会場のリアクションも含めて、とても楽しかったですね。

――お二人の中で、今回のアルバムの中でも特にここが聞きどころだなと思う場面はありますか?

ミラッキ大村:今回、いちばん何がなんだか分からないのって(数字がタイトルに入る楽曲をまとめた)「ナンバー編」だと思うんですよ。そもそも括りがあって無いようなものじゃないですか(笑)。その中でも「7月7日、晴れ」からの「4月の雨」の流れが、聞いていてどうなっちゃうんだろうと思いましたし(笑)、「こう回収するんだ!」と衝撃だったんですよね。これは本当に言葉にするのが難しいので、ぜひ聞いてほしいですね。

DJ Mass MAD Izm*:これは全体を通して言えると思うんですけど、今のシーンって四つ打ち全盛時代というか、いわゆるEDMから入ってきたDJが多いと思うんですよ。そういう人たちは128から134ぐらいの一定のBPM(テンポ)をCDJや機材の数字で合わせることが多いんですね。ただ、僕はアナログの時代からやってきているので、テンポやキーが違う曲を繋げるミックスの技術というものが今回の企画によって発揮されたのではないかと思っています。例えば、遅い曲を単に速くしてしまうと、ドリカムのファンにとっては全然印象が変わって聞こえてしまうじゃないですか。あくまでいつも聞いているときと同じ感じになるように微調整していて、そういう部分がDJとしては聞かせどころだと思いますね。

――実際、私自身も本作を聞いていて、いわゆる「J-POPのミックスCD」とは違うと言いますか、それこそ吉田美和さんの歌声の魅力であったりとか、曲調を含めた原曲のムード、いわば楽曲の核となるものをしっかりと残した上で、踊れるミックスに仕上がっていることにすごく驚きました。この違和感の無さ、聞きやすさというのはやはり意識されたのでしょうか?

DJ Mass MAD Izm*:ドリカムが持っているソウル、ファンク、ディスコの世界観を壊さないことを大事にしています。正直、本当はもう何も足さなくていいくらいだと思うんですよ。ただ、今回の「ドリカムディスコ」は踊ることにフォーカスしていたので、リズムやベース、シンセサイザーを俯瞰し、アレンジャーとしての目線も踏まえつつ、あまり突発的なことはしないように、でも統一感が感じられるように肉付けしていくことを心がけていましたね。それが恐らく聞きやすさに繋がっているんじゃないかなと思います。

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――ただ、原曲の軸は残しつつも、ところどころには大胆な仕掛けが施されていますよね。特に「7月生まれ編」ではDJミックスにもかかわらず、1曲目から「LOVE LOVE LOVE」がバラードのままで始まったことに意表をつかれましたし、一通り聞かせた後にドラムンベースのリズムが入ってくるという流れはもっと衝撃的でした(笑)。でもちゃんと一つのミックスとしても、ある種のプレイリストとしても違和感なく聞けるというのが本当にすごいなと。

DJ Mass MAD Izm*:(笑)。DJでバラードを聞かせるとなったら、ひとしきり盛り上がった後に、最後にかけるのがよくある流れですよね。でも、やっぱり最初の掴みは大事ですし、テーマとして掲げているのは“踊れる”ということなので、「こういう順番で聞かせることで新たな見せ方ができるんじゃないか」と思って、作っていきました。それぞれのミックスを1週間ごとに作っていったので、やればやるほど、「こんなこともできるんだ」と思いましたし、お客さんの反応を見て「これも喜んでもらえるんだ」と思うこともあって、試行錯誤を重ねる中で、自分の中でも色々なドリカムが見えてきたし、どんどん面白くなっていったんですよね。で、最後に振り返ってみたら、こういうものができていたという。最初から完成像を想像していたのではなくて、ドリカムの楽曲に導かれていった、楽曲が持つグルーヴに誘われていった結果が今回のミックスだと思いますよ。

――ミラッキさんは長年のドリカムファンとしても知られておりますが、ファン代表として、今回の作品にはどんな楽しみ方があると思いますか?

ミラッキ大村:純粋に「ドリカムで踊る」というのもそうですし、やっぱり一見すると関係のなさそうな楽曲がどう繋がっていくのかを楽しむだけでも手に取る価値はあるんじゃないかなとは思いますね。全くバラバラな時代の楽曲が繋がっていて、それこそドリカムって色々な世代のファンの方がいると思うんですけど、これを聞くと「時代って飛び越えられるんだな」と感じるんですよ。それを再発見できる楽しさがありますよね。それはドリカムがその時代を捉えつつも、同時に先を行っていたということなんだと思います。30~40年前の楽曲だから古いのかというと、もちろん当時の流行の音も入ってはいるんですけど、今聞いても通用するなと思います。

DJ Mass MAD Izm*:実は今回、音が分かれているパラ音源を使わず、全部2ミックス(ミックスダウンした音源)を使ってるんですよ。色々な年代の曲に対して、その雰囲気や音をそのまま使っていることが多いので、それがより再発見という部分に繋がっているのかもしれないですね。今って80年代や90年代の楽曲が一周回って新鮮に受け入れられて、あえて昔の機材で作った楽曲がチャートのトップになったりするじゃないですか。今回のミックスはほとんど原曲をフル活用していて、あくまで僕は補強をしただけなんですけど、それを古くない、むしろ新鮮に感じられるというのは、そういう時代的なところもありつつ、何よりこれまでにドリカムがリリースしてきた音源のクオリティーの高さだったり、バランス感があってこそのものだと思いますね。

――2ミックスを使っているというのは驚きですね。ということはその気になれば、皆さんがお手持ちの音源でこれを作れるということですよね?

DJ Mass MAD Izm*:できると思いますよ。実際にやってみると、僕がどれくらい頑張ったのかがわかると思いますけど(笑)。いわゆるクラブ系のDJが作るミックスとは違うというか、ドリカムの意図やファンの皆さんの気持ちをアレンジとして表現しているので、「ミックスだから」と毛嫌いせずに、元をアップデートしたものとして楽しんでいただけたらすごく嬉しいですね。

――最後に、今回のミックス制作を経て、改めてお二人が考えるDREAMS COME TRUEの魅力について教えてください。

ミラッキ大村:いかにドリカムがミュージシャンとして底知れないのかということに改めて気付かされましたね。これまでも底なんてなかったし、「スピリラ」を聞いても思いましたけれども、これからも底は無いんだなと。ソウルやR&Bという太い幹をしっかりと守りながら、それでいて色々な場所に自由に手を伸ばしてきたんだなと、改めて実感しましたね。

DJ Mass MAD Izm*:DJミックスでフォーカスするとリズムだったり曲の雰囲気になるわけですけれど、それをここまで幅広くお腹いっぱいに取り入れられるのは、やっぱりソウル、R&Bマナーを日本人としてあれだけ表現できる吉田美和さんというヴォーカリストがいて、それを海外にも通じるようなトラックであったり演奏で支える中村正人さんがいて、その二人のガチンコのせめぎあいがあって成り立つもので、それこそがドリカムなんだと思いましたね。今回のミックスで色々な楽曲と向き合ったときに、2人のパワーがどの年代でも一切衰えていないことを見せつけられたんですよ。ずっとパワフルだし、ずっとグルーヴィーで、これを30年前からやっているというのが本当に信じられないですね。

ミラッキ大村:もう敵わないなと思いますよね(笑)。

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