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<コラム>記録更新が続くBE:FIRST 1st AL『BE:1』への期待に加えて「成長度合い」にも注目



コラム

マイルストーン達成を積み重ねる新世代アーティストの登場

 2022年に入ってから、音楽ビジネスは国内外で活気が戻ってきた。いや、むしろ加速してきたと考えられる。

 コロナ前と比較すると、今ではオンデマンドのストリーミングやTikTok、YouTubeなど、プラットフォームで音楽を消費する方法が普及した。結果的に、日本の音楽業界ではデジタルヒットが様々なプラットフォームと手法で数多く生まれる潮流が主流となり、定着した感がある。

 デジタルのヒットだけではない。並行して、昨今のアーティストの間では、「記録樹立」「マイルストーン達成」の話題が世界的に相次いでいる。音楽業界で記録樹立と聞くと、チャート1位、再生数1位、といった分かりやすいランキング形式のヒット情報の印象を抱く人は今でも多いはずだ。もちろん、以前から業界で重要視され、比較的万人受けがよいとされてきたセールス、再生回数、チャートの記録更新のニュースは依然飛び交っている。今年に入ってからも、世界の市場では、エド・シーランの『=(イコールズ)』やアデルの『30』、ビヨンセの『ルネッサンス』、ザ・ウィークエンドの『ドーン・エフエム』など、日本でも知られたグローバルアーティストのストリーミングの記録更新や、アルバムセールスのヒット記録が尊重されている。

 だが、現代の音楽シーンでは、こうした記録の解釈も多様化の流れがきていると感じる。注目されるのは、アーティストの成長度合いを示すマイルストーン達成の解釈だ。従来の音楽業界では、短期的なヒットを作る活動がよしとされてきた。しかし、デジタルヒットに中長期的な視点が求められる現代では、初週のセールスや楽曲再生数だけに留まらないアーティストを成長度合いで評価しようとする風潮が強まってきた。

 特に本記事で注目したいのは、マイルストーン達成を積み重ね、自らの実績を更新する新世代のアーティストたちの存在だ。

 日本も例外ではない。BE:FIRSTは、この流れを象徴する代表的なアーティストだろう。デビュー曲「Gifted.」から、Billboard JAPAN 総合ソング・チャートJAPAN HOT 100での1位獲得を始め、音楽チャートで40冠を達成した稀有な新人アーティストのデビューとなったが、2022年に入っても勢いは衰えるどころか、成長が続いている。

 デビューして1年という短期間で、BE:FIRSTはヒットチャートの常連となった。8月31日にリリースされる1stアルバム『BE:1』への期待が高まるなか、先行シングル「Scream」(7月25日配信開始)は、Billboard JAPAN総合ソング・チャートJAPAN HOT 100で1位。MVはYouTubeの急上昇チャートで1位を獲得した。


BE:FIRST - Scream

 一方で、持続的に成長するヒット曲や、時間を積み重ねた成長度合いを示すアーティスト活動も生まれている。3月7日に配信が始まった「Bye-Good-Bye」は、グループの活動のなかでは息の長いヒット曲になりつつある。リリース直後、わずか12日でMVが1,000万再生を突破して注目を集めたが、そこから5か月が経過した8月に入ってからもBillboard JAPAN総合ソング・チャートJAPAN HOT 100に23週連続でランクインし続けている。新たな記録という意味では、グループで初めて全世界ストリーミング再生数が1億再生を突破。Apple Musicのチャート「トップ100:日本」週間ソング・ランキングでは22位 (3月7日~3月13日)を獲得し、Shazamの日本Top200チャートでは4位獲得と、記録を更新し続けてきた。同曲の人気が複数のプラットフォームに拡大してきたことが示された。


BE:FIRST - Bye-Good-Bye

YouTubeを軸にしたBE:FIRSTの躍進ぶり

 6月に入ってからは、BE:FIRSTのYouTubeチャンネルの累計再生数が2億再生を突破したことが発表された。YouTube公式チャンネルは、活動開始時から将来的なグループ人気の波及を想定して、成長の土壌を作るうえで最適なプラットフォームだったと位置付けられる。MVだけでなく、ダンス練習動画やYouTubeショートなど、激しい振り付けやファッション重視のMVとはまた違った装いのメンバーが見られる動画の投稿が続いている。動画からの波及効果や、継続的なコンテンツ・リリースなどの結果、累計再生数2億再生というマイルストーンにたどり着いた。

 国内の音楽シーンにおいて、この記録を俯瞰してみたい。動画音楽ストリーミングやアーティストSNSを分析する専用データツールChartmetricで調べると、これまで実績が無く過去12か月にデビューした日本人アーティストとしては、BE:FIRST がYouTubeチャンネルの累計再生数と、新規のチャンネル登録者数の両方で日本1位であることが分かった。2022年1月の時点でチャンネルの累計再生数が8530万回だったことを鑑みても、わずか8か月で1億5000万回近く再生数が伸びた計算となる。前述の「Bye-Good-Bye」の長期的ヒットのコンテンツパワーの影響も無視できないが、YouTubeに特化した動画戦略が、現在のBE:FIRSTの成長戦略の鍵を握っているといえるだろう。


Chartmetricより

 国外を見ても、YouTubeで2億再生を達成しているデビューして間もないアーティストは稀有な存在だ。この記録が世界的にも膨大であることが伺える。特筆すべきは、韓国でデビューしたばかりのKep1erだろう。デビュー曲「WA DA DA」はYouTube、Spotifyでいずれも1億再生を突破。YouTubeのチャンネル累計再生数はすでに4億再生に到達する勢いで大きな成長を遂げている。


異例の「デビュー1年未満で日本3大フェス出演」

 記録の面では、BE:FIRSTは、【フジロック】、【ロック・イン・ジャパン・フェスティバル】、【サマーソニック】と、日本3大フェスにデビューから1年も経たずに出演を果たしたことも忘れてはならない。特に【フジロック】では、「Don’t Wake Me Up feat. BE:FIRST」でコラボしたイギリス人DJ兼プロデューサー、ジョナス・ブルーのステージにゲスト出演し同曲を披露。「#JonasBlue」が日本のTwitterでトレンド1位を獲得したのは記憶に新しい。従来であれば、3大音楽フェスにデビューしたばかりのアーティストが出演するのは極めて稀だが、アーティストにとっても、プロモーターにとっても、コロナ以降の日本のフェス・シーンに新たな風を吹き込む挑戦となったはずだ。

 音楽ビジネスでは、各プラットフォームが展開するチャートを軸にヒットを評価する業界構造や世間の目はこれからも続く。局地的なローカルヒットから、国や地域を横断するインターナショナル・ヒット、そして世界に広がるグローバルヒットの創出は今後も継続していく取り組みだ。一方で、アーティストを成長度合いで可視化する評価軸もどんどん浸透していくのではないだろうか。この潮流の代表格はK-POPアーティストだが、昨今ではラテン音楽やアフロポップなど、新たに登場してきたアーティストの記録的な成長に注目が集まるなど、世界的な兆しが見え始めた。従来の音楽業界が注目してこなかった領域で挑戦を続け、成長の記録を多くの人と共有できるアーティストに、音楽の未来を感じている人は多いのではないだろうか。(Text:Jay Kogami)

BE:FIRST「BE:1」

BE:1

2022/08/31 RELEASE
AVCD-63372 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.BF is...
  2. 02.Gifted.
  3. 03.Scream
  4. 04.Moment
  5. 05.Be Free
  6. 06.Softly
  7. 07.Betrayal Game
  8. 08.Milli-Billi
  9. 09.Spin!
  10. 10.Move On
  11. 11.Brave Generation
  12. 12.Grateful Pain
  13. 13.Shining One (Re-recorded)
  14. 14.Message
  15. 15.Bye-Good-Bye
  16. 16.To The First (Bonus track)

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