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<対談>サイダーガール&梶原岳人『古見さんは、コミュ症です。』が繋いだ縁



サイダーガールインタビュー

 現在放送中のTVアニメ『古見さんは、コミュ症です。』のオープニング曲「シンデレラ」が人気を博すサイダーガールが2021年12月1日にニュー・アルバム『SODA POP FANCLUB 4』をリリースする。“映画館”をコンセプトにした本作には「シンデレラ」のほかに、今年配信された「待つ」や「ライラック」など、爽やかなサウンドがはじける全11曲が収録。今回、このアニメの縁で、『古見さん』で只野仁人の声を務める梶原岳人とサイダーガールの対談が実現した。もともと互いの作品のファンだという両者は、この日が初対面だったが、意気投合し、コラボの可能性まで話は膨らんだ。

左から(時計回り):Yurin(Vo. / Gt.)、知(Gt.)、フジムラ(Ba.)、梶原岳人

――今日はみなさん初対面なんですよね。まずはお互いの印象を聞かせてもらえますか?

Yurin:僕が梶原さんを最初に知ったのはずっとジャンプで読んでいて、アニメも観ていた『ブラッククローバー』でした。そこから『炎炎ノ消防隊』で僕らが「ID」でエンディングをやらせてもらって、今回『古見さんは、コミュ症です。』でご一緒できたので、縁がある人だなという印象が強いですね。

梶原岳人:僕はTwitterでも好きって言ってるんですけど、サイダーガールさんのファンでして……。『炎炎』が決まる前からいいなと思って聴いていたんです。今回、主題歌がサイダーガールさんって聞いて、また好きなアーティストさんと同じ作品でご一緒できるとは思わなかったのですごく嬉しいです。

――梶原さんがサイダーガールを聴き始めたきっかけは覚えていますか?

梶原:僕はYouTubeでいろんなミュージックビデオを観るのが好きで、吉祥寺で撮られた「メランコリー」がめちゃくちゃ可愛くて。サイダーガールさんの曲はどの曲を聴いても元気をもらえるので、「ID」を聴きながら『炎炎』の収録に向かったりして、自分のメンタルを上げたりしていましたね。

Yurin:嬉しいですね。お互いに知っていた上で、一つの作品で関われているということはより愛を持てる感じがしています。


▲「ID」

――『古見さん』のノンクレジット・オープニングの動画はYouTubeで250万回再生を超えています。これは、サイダーガールのこれまでの楽曲イメージに合わせて、監督がいちから作画されたそうですね。

Yurin:僕らのアルバムのアートジャケットを描いてくださっているイラストレーターのかとうれいさんの画風に寄せて作ってくれたと聞きまして、愛のある作品だなと思いました。自分たちにとっても思い入れが深くなりましたし、「こんなに寄り添ってくれるんだ」と感動しましたね。

――細かな描写や描きこまれたアニメーションは何度も観たくなりますよね。

Yurin:プールにアニメの登場人物がいるところの色味がすごく良くて。「シンデレラ」の爽やかだけどちょっと切ない感じとの親和性も感じました。歌詞とリップシンクが合っていて、こんなに動くアニメだとは思っていなかったので作画的にも感動しています。


▲『古見さんは、コミュ症です。』ノンクレジットOP

――梶原さんはいかがですか?

梶原:テンションぶち上がりでしたね。動きが尋常じゃないなと思いましたし、僕も淡い色味が大好きです。

Yurin:お洒落ですよね。

梶原:公開された時に友達に広めましたもん。「曲はサイダーガール!」って。個人的にはずっと青春系のアニメをやりたかったんです。普通の日常を楽しく生きるようなキャラクターをやってこなかったので、今回『古見さん』で只野くんを演じることができて嬉しいですし、曲の雰囲気と相まってこんな青春を送りたかったなと思う映像ですね。

――動画には海外からのコメントが多く寄せられているんですよね。『古見さん』というアニメを介して「シンデレラ」が海外にリーチしているのが分かります。

フジムラ:「シンデレラ」の演奏動画を上げてくださる方は海外の方が多いです。どれもクオリティが高くて、「こうやって世界に広がっていくんだ」と改めて感じました。

――英語が堪能で、海外経験もある梶原さんは、外国でのアニメ人気をどのように感じていますか?

梶原:ありがたいことに僕は海外の方に人気のアニメをやらせていただく機会が多い気がします。『ブラッククローバー』『炎炎』『古見さん』もそうですし、いろんな国の言葉でコメントをいただいたり、直接「作品観てます」って言ってくださる機会があったりして、これだけ世界中の人がアニメを観てくれているんだというのは最近特に実感しますね。

――「シンデレラ」の楽曲自体についても聞かせてください。フルサイズで聴いて、まず2番からの展開にびっくりしました。1番の爽やかな感じからはガラッと曲調が変わります。

:同じ展開はほとんどないですね。

Yurin:当時、ずっと聴いていたフューチャー・ベース(2010年代に生まれたエレクトロニック・ダンス・ミュージックの一つ)やヒップホップにインスピレーションを受けて、それを落とし込んだらああなった感じです。そこに猫の声とか水の音とかが入っていて、可愛くできたなって。『古見さん』で描かれている日常や多幸感を表現できたと思って、気に入っていますね。

――間奏から大サビへの展開も、バンドサウンドに打ち込み、さらに金管楽器も入ってきたりして、色とりどりのパレードのようです。

Yurin:もともとデモの段階でトランペットを入れていて、「どうしてもブラスを入れたいです」って話をして残してもらったんです。『古見さん』の学園生活をイメージして華やかにもなったし、ドラマチックな展開も作れました。

――「ID」もそうだと思いますが、アニメサイズからフルで聴いた時に、実はこんな曲でしたというのは、意識的な曲構成なんですか?

Yurin:そうですね。テレビサイズでは大衆的なものとして、よりたくさんの人に違和感なく届くようにと意識しています。そこからフルを聴いた時の2番からは、バンドとして、個人としてのエゴみたいなものを入れることで、もちろんアニメの曲でもあるんですけど、自分たちの曲でもあるというところのバランスを出しています。


▲「サイダーガール」

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ロック、グランジ、ファンク…アイデアいろいろ

――「シンデレラ」の核となるメッセージは、歌い出しの<些細なよろこびたちを育てていきませんか>という歌詞だと思います。このフレーズにはどのような思いを込めているのでしょうか?

Yurin:作っていた当時、原作のコミックスがちょうど学園祭の話が終わるぐらいだったんですね。キャラクターたちが劇をやっていて、お姫様、王子様みたいなのがキャッチーだなと思って、そこから「シンデレラ」というタイトルにしたんです。『古見さん』は、読んでいると幸せな気持ちになる作品だなと思ったので。日常の小さな積み重ねや些細なことから、登場人物たちが生き生きと楽しそうにしていると感じて、この歌詞ができました。

――梶原さんは「シンデレラ」についてはどんな思いがありますか?

梶原:「シンデレラ」はアフレコの段階からオープニングとして流れていたんです。特にテロップもない状態だったんですけど、僕は「あ、サイダーガールさんだ」って思ったんですよ(笑)。「また一緒になれた」って感じて。只野くんとして、古見さんに向けた感情や彼の周りの友達に対する気持ちとリンクさせられるんじゃないかと思いながら、毎回曲を聴いていたんです。歌詞が公開された今では、自分が古見さんに対して向けていた気持ちは間違いじゃなかったんだなと思ったりして。こうして話を聞いていても、自分が想像していたことと楽曲の実像が一致していたところがあったので、あの時、聴き込んでいてよかったなと思いました。

――アルバム『SODA POP FANCLUB 4』についても聞かせてください。これまでは1stから3rdまで、1曲目は全て疾走感溢れる楽曲でアルバムの勢いをつけるイメージでした。

Yurin:あー、確かに。

――今回の1曲目は「待つ」で、完全にこれまでのアルバム構成とは別物ですよね。

Yurin:今までサイダーガールは顔出しをせず、代わりに女性をモチーフにしたビジュアルを掲げてきたんですけど、去年からコロナ禍に入って、なかなかコミュニケーションが取れなくなったのもあって、アーティスト写真を一新したんです。バンドロゴもリニューアルして、新しいサイダーガールを見せていけたらいいなって。それを踏まえたアルバムなので、「今までとは違う流れを作っていこう」って、みんなで話して「待つ」を1曲目にしましたね。

――「待つ」は知さんが作詞・作曲ですけど、過去のインタビューを読むと最近はヒップホップに傾倒していると話していましたが、そこら辺の影響も若干あるのかなと感じました。

:ありますし、単純にトラックメイキング的なニュアンスをバンドで昇華したかったっていうのもあります。ライブもできないし、そもそも自分たちが表に出る機会もあまりない。1日が家の中で完結することが多いので、「ヘッドフォン・ミュージックみたいなものを広げていけないかな?」って思いながら作ったのがきっかけです。そういった意味では、今回のアルバムもヘッドフォンを構えるという意味の1曲目なのかなと思います。


▲「待つ」

――『SODA POP FANCLUB 3』収録の「週刊少年ゾンビ」もジャジーな曲調に、スクラッチ音が入っていたりして、「待つ」と通ずる部分も感じます。

Yurin:それぐらいからヒップホップに我々がちょっとずつハマっていったのかな(笑)。「ラップしてみたいな」っていう希望が漠然とあったりして。トラックもかっこいいので、バンドに落とし込む作業が面白くてやってたんです。

――梶原さんは、いちリスナーとしていかがですか?

梶原:大好きです。分かりづらい展開の面白さが、僕としてはツボの一つでもあるので。「シンデレラ」もそうですけど、1曲を通して最後まで聴きたくなる。「次はこういう展開になるんだ!」って耳に残るのは、サイダーガールさんの特に好きな部分です。

Yurin:ありがとうございます。自分たちでゼロから100に近いところまで作り込んでいくので、何百回、何千回と聴くことになるんですよ。そうすると、世に出す頃には僕らは飽きてるんですね(笑)。なるべくその飽きが来ないように、という狙いもありますね。

――梶原さんは2020年11月にアーティスト・デビューをしてから1年が経ちました。2年目を迎えた心境はどうですか?

梶原:正直、いろいろ思うところはありまして。もともと高校、大学で友達とバンドをやっていて、音楽が大好きだし、いろんな音楽に触れてはいると思っているんです。でも、自分で曲を作っていないので、人に提供してもらう曲と自分の思いや自分がやりたいことのラインが完全に一致することがないような気がしていて……。先ほどのトラックメイキングの話を聞いていて、自分が想像する音を好きなように鳴らして、それにファンの方が反応してくれるのが音楽の面白さ、魅力の一つなんじゃないかと思っているんです。そこは改めて挑戦したいなと思いましたね。

Yurin:その感覚になれるのは、アーティストとして一皮むけるタイプなので、どんどん挑戦して、作っていったほうがいいと思います。

梶原:やりたくなりました。

――梶原さんの歌う「Funny Bunny」や「魔法が解けたら」を聴いて感じたのですが、サイダーガールが楽曲提供をしたら絶対に合うだろうなと思うんです。みなさんはこれまでも何度か楽曲提供をされていると思いますが、梶原さんに提供するとしたらどんな楽曲がいいですか?

:「Funny Bunny」をカバーしてるんだったら、ロックバンドっぽい曲が合う気はしますね。

Yurin:意外とニルヴァーナっぽいグランジもかっこよさそうだとも思うし、アニメのオープニング・テーマになってるような疾走感のあるストレートでキャッチーな曲も合うと思うし、イメージがしやすいです。

梶原:嬉しいです。ありがとうございます。

フジムラ:声が綺麗なので、逆にファンクとかもかっこいいかも。

梶原:いいですね。好きです。

――梶原さんはいろんな音楽を聴かれるんですね。

梶原:そうですね。最近はストレートじゃないのもいいなと思ったりしていて。でも、真っ直ぐな音楽も大好きではあるので、サイダーガールさんはそのバランスがパーフェクトだと思っています。もっと自分たちで練られるのであれば、さらに遊びながらやっていきたいと思います。

――いつかライブで共演できるといいですね。

梶原:恐れ多いです……。

Yurin:ぜひ、よろしくお願いします(笑)!

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