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<インタビュー前編>【オフコース・クラシックス・コンサート2021】が開催 その魅力とオフコースについて音楽監督・指揮の服部隆之に訊く



 オフコースの楽曲をクラシック・アレンジとともに演奏する【オフコース・クラシックス・コンサート】も、今年で3年目を数える。オフコースのデビュー50周年企画として2019年に制作されたアルバム『オフコース・クラシックス』の発売記念コンサートとしてスタートした【オフコース・クラシックス・コンサート】。デビュー50周年イヤー=2020年に予定されていたツアー形式での開催は、折しも新型コロナウイルス感染拡大の影響により、東京公演とその配信のみという形に変更となったが、3年目の今回は改めて、東京/福岡/名古屋/大阪/横浜の5都市を巡るツアーとして開催される。解散から30年あまりを経た今なお熱い支持を集め続けるオフコースの音楽を、最高のシンガーとともに「今」に響かせる【オフコース・クラシックス・コンサート2021】。その魅力について、音楽監督・指揮を務める服部隆之に訊いた。

「小田(和正)さんに直接お目にかかったことは一度しかないんです」

――昨年の【オフコース・クラシックス・コンサート】はコロナ禍の影響もあり全国開催は断念、東京での限定的な開催+全国配信という形での開催でしたが、3年目の今年は全国5公演のツアー形式で開催されます。

服部隆之(以下:服部):2019年に『オフコース・クラシックス』というアルバムを作って、横浜と薬師寺でコンサートを開催して――そのふたつのコンサートが自分の中でも「いいコンサートだな」という手応えがあったんですね。オフコースの楽曲に関しても、改めて「いい楽曲だな」っていう想いを強くしながら、2回のコンサートを行って、「次の年もやろうか」っていう話になったところで、コロナの状況になってしまったわけで。今年はそれでも、東京・福岡・名古屋・大阪・横浜のツアーをできることが嬉しいですよね。

――デビューから半世紀、解散してから30年以上経っているバンドの楽曲が、3年連続のクラシックコンサートという形で愛されているケースはなかなかないと思うんですけども?

服部:そうですね。ちょっとビートルズ的というか、根強い厚いファン層があるということと――『オフコース・クラシックス』で歌っていただいた歌手のみなさんもそうなんですけど、やっぱりみなさん、オフコース愛がすごいんですよね。ファンもそうだし、アーティストにとっても、オフコースは特別な存在だっていうことを、アルバムを作っている時にもすごく感じましたし。コンサートをオーガナイズするスタッフのみなさんも含めて、全員がオフコース愛に満ちあふれているんですよね。ひょっとしたら来年も再来年もあるのかも?ということすら考えてしまう勢いがありますね。


▲Off Course Classics Concert 2020|2020.11.28(sat) at Bunkamura Orchard Hall|Digest Movie

――こうして3年も続くと、服部さんのご自身の中でもある種のライフワーク的な位置付けになりつつあるのでは、とも感じるんですけど?

服部:来年はクビになっているかもしれないから、ライフワークになるかどうかわからないけど(笑)。でも、この状況の中でということもありますし、僕の中でも印象的なコンサートですね。不思議なのは……僕は小田(和正)さんに直接お目にかかったことは一度しかないんです。僕の祖父、服部良一の生誕100周年のトリビュートアルバム(『服部良一 ~生誕100周年記念トリビュート・アルバム~』/2007年)で、いろんな歌手の方が服部良一の曲を歌ってくださったんですけども。そこで「蘇州夜曲」という曲を小田さんに歌っていただいていて。その時のオフィスに打ち合わせに行ってお目にかかったのが初めてで。それ以降も会っていないし、小田さんのプロジェクトで一緒に仕事をすることもなかったんです。今回、デビュー50周年の企画が上がった時に、たぶんスタッフの方も小田さんとお話になったと思うんですけど。その時に、音楽監督は僕がいいんじゃないか、って確信して頂いたようで、そんな形でこの話がまとまったらしくて。直接お目にかかってはいないんですけど、たまにメディアで語られるところでは、僕の曲を聴いてくださっていて、気に入ってくださっているようなお話を聞いたことがあって。なかなか珍しいケースですよね。

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「作曲ってちょっと建築的な要素があるんです」

――今なおファンの多いオフコースの楽曲にクラシックアレンジで挑む上でのプレッシャーは感じましたか?

服部:プレッシャーはなかったですね。とにかく楽しかったんですよ。僕らは作曲を専門に勉強してきてこの世界に入ったわけですけど、そういう勉強をしてきた人間の心を、オフコースの楽曲はすごくくすぐるんです。もちろん、小田さんとか、鈴木(康博)さんの中から出てくる素晴らしいリリックとかメロディとか、それは感性から出てくるものなんですけど。アレンジの仕方にしても――たとえば「Yes-No」の、イントロで流れてるメロディとサビのメロディ、違う要素のものが実は重なってくるっていう、ミュージカルにも通じる音楽的な喜びがあったりもするし。あと、「Yes-No」もそうですけど、イントロからAメロに移る時にガラッとキーが変わったりする展開があったり――。

――「言葉にできない」もキーが変わりますよね。

服部:そうですね、「言葉にできない」もそう。音楽的なサプライズというか、「よく考えられてるなあ」って。小田さんは学生時代に建築を勉強なさっていたそうですけど、作曲ってちょっと建築的な要素があるんですよね、設計図を書くみたいな。小田さんの曲の作り方って、ただ内から出る感性だけっていうことではなくて――もっと客観的な、緻密な計画を感じるんですよね。なので、我々のような作曲家から見ても、なかなか深く考えて音楽を作ってらっしゃるんだなあと。もちろん、そういうものじゃないと音楽はダメって言ってるわけではないんですけど、僕らはそういうところにくすぐられてしまうので(笑)。

――そういうオフコースの楽曲を新たにアレンジするにあたって、どんなことを心がけられました?

服部:オリジナルに沿ってアレンジしたものもあれば、「愛を止めないで」とか「言葉にできない」とか、ガラッと雰囲気を変えたものもありますね。今回のコンサートでもインストで、「愛の唄」をサックスで演奏するんですけど、あれを小田さんが気に入ってくださっていて――原曲とはコード、和声も全部変えてあるんですけど、あの変えた雰囲気を小田さんが「いい」って言ってくださったんですよね。そういう経験もあったものですから、みなさんが知っている「愛を止めないで」とか「言葉にできない」とはちょっと違うし、「さよなら」もある意味、音楽的なデフォルメを試みていますけど。そういうことも小田さんは許してくださるかな、と思ってアレンジしてみたっていうものもありますね。

――アルバムでは小田和正さん曲オンリーでしたけども、コンサートでは「潮の香り」など鈴木康博さんの楽曲も披露されます。作曲家目線で見て、おふたりの楽曲の作風の違いは感じますか?

服部:そこに違いがある――と僕も思っていたんですけど、根っこが同じ気がするんですよね。たとえば、「でももう花はいらない」はビートルズ的な曲だなあと思うし、「潮の香り」はまた全然違う、アーバンなAORの薫りがするし。なんとなく小田さんとは違うイメージはあるけど、でも、仕事として関わっていくと――鈴木さんの持っている楽曲の引き出しの多さ、音楽の雰囲気も含めて、小田さんとは同じ根っこを持っていると感じるんですよね。他のメンバーのみなさんも、ひょっとしたらそうだったのかもしれないなって。音楽に対する趣向性は時とともに変わるものですけど、そんな中でも大元の部分で通じ合う瞬間があったのかもしれない、とは思いますね。



後編は9月17日(金)18時公開予定

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