2020/08/17 12:10
8月5日に米津玄師のニュー・アルバム『STRAY SHEEP』がリリースされた。予想通り圧倒的な強さを見せてHot Albumsで首位を獲得したが、嬉しい誤算だったのはニュー・アルバムを含むすべてのカタログが同タイミングでストリーミング解禁されたことだ。これまで彼の楽曲はフィジカル、ダウンロード、そしてYouTubeの動画という3本柱で微妙にバランスを取ってきた。それがかえってプレミアムな印象にもなっていたことも否めないが、やはり海外を含む広がりという面において、ストリーミングは欠かせないと判断されたのだろう。いずれにせよ、気軽に新旧の楽曲にアクセスできるようになったのは嬉しい。
ストリーミングが解禁されたことで、各種音楽サービスのチャートは米津一色となっている。Hot 100でも、20曲が100位以内にエントリー。嵐や菅田将暉などへの提供曲が上位にチャートインしていることも含めると、その勢いの凄さが伝わるだろう。ここ数年で続々と大物アーティストのストリーミング解禁が行われてきたが、彼以上のの大きな反響はないといってもいい。サブスクが身近になった証明ともいえるのではないだろうか。
彼のこの英断の影響は、ストリーミングに限らない。例えば、新作アルバムにも収録されている「Lemon」の動きを見れば気付くはずだ(【表1】)。この曲は2年以上に渡ってHot 100にチャートインし続けているが、先週は51位だった。しかし、今回のリリースのタイミングで一気に8位にまで再浮上している。もちろんストリーミングのポイントが大きく加算されているのだが、YouTubeでの動画再生数も20位から5位へと急浮上したことも大きい。加えて、ラジオのオンエア回数も圏外から35位へ、ツイッターのつぶやき数も63位から22位へと一気に上昇している。単にストリーミングだけが増えたのではなく、総合的に楽曲のポテンシャルが上がっているといえる。
『STRAY SHEEP』はCD自体が早くもミリオン・セラーとなっている。よくストリーミングを解禁することで、フィジカルが売れなくなるという懸念を持たれることも多いが、米津玄師に限ってはまったく影響がない。むしろ、相互作用でセールスを伸ばしているのではないかとも思える。ストリーミングという新しい武器を手に入れた彼は、今後もさらに記録を塗り替えていくのではないだろうか。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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