2020/05/18 11:00
瑛人の「香水」が凄まじい勢いでチャートを上昇してきた。2019年4月に発表されたこの曲は、リリースタイミングでのチャートアクションは一切ない。しかし、リリースから1年以上経った2020年の5/4付で34位に初登場したと思ったら、先週5/11付で一気に5位とトップ10入り。今週は3位にまで上り詰めてきた。しかも、ストリーミングに関しては3週目の登場にして首位を獲得。他にも動画再生数が7位、ダウンロードが13位とまだまだ上昇する余地がある。
なぜここまで急上昇したのかというと、大きなきっかけはTik Tokだ。もともとこの曲は2019年からTik TokやYouTubeなどで、歌ってみた、弾いてみたなどのカヴァー動画が自然発生的に少しずつ増えていたのが、ここ数ヶ月で急増。加えてSpotify、Apple Music、LINE MUSICなどの各音楽サービスのチャートも一気に上昇していった。
このような動画からストリーミングへとつながるパターンは最近のトレンドであり、フィジカルのCDだけでは起きることのなかった現象だ。実際「香水」も配信のみのリリースである。そもそも瑛人はほぼ大きな露出のないインディーズのアーティストで、彼のツイッターのフォロワーもまだ3500人程度ということからも、楽曲が独り歩きしているのがわかる。タイアップやメディア露出などの実績がなくても、一気にヒットにつながるというのはストリーミング時代ならではだろう。
「香水」はシンプルな弾き語りで、サウンド的には地味といってもいい。しかし、どこか引っかかりのある歌詞や耳に残るメロディでここまで拡散することができた。逆に言えば、アイデアやセンス次第では、音源制作やプロモーションにお金をかけなくても大ヒットにつながる可能性があるということ。一度バズることでチャンスを掴めば、誰もがヒットアーティストになれる時代なのである。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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