2026/09/09 12:00
池内ヨシカツの個展【Liminal - 池内ヨシカツ展】が、10月13日から25日まで京都市京セラ美術館で開催される。
池内は音楽と美術を横断する独自の創作世界を追求し、香港、ソウル、バンコク、台湾など、これまでアジア各地で個展を開催してきた。
本展では、サウンドインスタレーションや油彩作品を通して、「聴くこと」と「見ること」という異なる表現を翻訳するのではなく、そのあいだに変化が生まれる条件そのものに焦点を当てている。
会期にあわせ、京都府との連携による、京都にゆかりのあるアーティストの支援を目的とした公募事業も実施される。審査員には池内に加え、山本浩貴(文化研究者/実践女子大学文学部美学美術史学科准教授)、レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)が参加する予定だ。
また、BE@RBRICKやワイングラスブランド「RIEDEL」とのコラボレーションアイテムも展開予定となっており、本展会場ではその予約受付も実施される。
◎池内ヨシカツ コメント
見ることと、聴くことのあいだには、翻訳できないものがあります。ひとつの色が特定の音に置き換わることはなく、その逆もまた同じです。音が時間のなかに消えていく一方で、絵は痕跡としてその場に留まります。そのあいだに生まれる関係は、あらかじめ決められたものではなく、そのつど形を変えていきます。近い距離で関わるものほど、ひとつの意味に置き換えることはできません。会場を移ろう光は、音と絵のあいだを通り抜けるように、空間全体の表情をゆっくりと変えていきます。今回の展覧会では、異なる表現をひとつに統合するのではなく、それらのあいだに変化が生まれる条件そのものを作品として構成しています。
◎山本浩貴 【Liminal 池内ヨシカツ展】個展紹介文
池内ヨシカツにとって、絵画と音楽の制作は密接に結びついたものでありながら、同時に互いに独立して存在するものでもある。いずれも彼にとって創造と表現の営みであり、幼少期から両者に親しんできた。
一方で池内は、絵画と音楽は相互に翻訳可能な形式ではなく、単に絵を音に、あるいは音を絵に「変換」しているのではないと強調する。むしろ彼が探求しているのは、それらのあいだに存在する「互換性の空隙」、すなわち翻訳不可能な領域である。「Liminal 池内ヨシカツ展」においても、彼が生み出す視覚的イメージと聴覚的サウンドは、自律しつつ共鳴し、共鳴しつつ自律している。一般に、池内の絵画は具体的なイメージを伴う「具象画」とされる。かたちのない音響的感覚と深く関わってきた彼の作品としては、意外に思われるかもしれない。しかし池内は、絵画を「見るという行為に入るための一時的な入り口」と捉えている。それは作者の感覚を直接的に図像へ置き換えたものではなく、それゆえに単純な抽象的形態へと還元されるものでもない。作品を眺めているうちに、鑑賞者は奇妙な感覚に襲われる。一見すると容易に認識できる日常的なモチーフが、徐々に見慣れないものへと変容していく。その認識のズレは、私たちに根源的な問いを意識させる。「本当は何が描かれているのか」「自分は何を根拠に見ていたのか」。本展には、池内が左耳に難聴を抱えるようになった経験も大きな影響を与えている。作曲家にとって大きなハンディキャップとなりうる経験を、彼は創造活動へと昇華させた。音の聞こえ方が変化したことで、池内は自身の身体から生まれる音へと意識を向けるようになった。
呼吸や心拍など、身体を有する人間が不可避的に発する音であり、それらは生命活動の証しでもある。難聴という経験は、身体の外側で鳴る音から、身体の内側で鳴る音へと、彼の関心を拡張させた。本展は、池内が身体の音に耳を澄ませることで生まれた音と、その絵画とが、それぞれの自律性を保ちながら共鳴し合う、視覚と聴覚による協奏曲である。
◎イベント情報
【Liminal - 池内ヨシカツ展】
会期:2026年10月13日(火)~25日(日)
休館日:2026年10月19日(月)
開館時間:10:00~18:00(最終入場時間:17:30)
会場:京都・京都市京セラ美術館 本館1F「光の広間」
入場料:無料
展示作品:油絵 20点・ドローイング 3点・彫刻 3点・サウンドインスタレーション
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