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2024/03/28

<ライブレポート>望海風斗、2年ぶりドラマティックコンサート【Hello,】で作り上げた“五感を開放”する圧巻のステージ(ネタバレあり)

 現在ミュージカル俳優として活躍中の望海風斗が、【ドラマティックコンサート「Hello,」】を開催。3月20日の東京・日本青年館ホール公演を皮切りに、福岡・キャナルシティ劇場、愛知・東海市芸術劇場大ホール、大阪・SkyシアターMBSと、4都市全22公演を行う。


※以下、公演全体のレポートにつきネタバレを含みます。


 望海風斗は、2021年まで宝塚歌劇団 雪組のトップスターとして活躍し、退団後は持ち前の歌唱力を武器に、ミュージカル界のトップへと登りつめる。2022年にはミュージカル『next to normal』や『ガイズ&ドールズ』などに出演し注目を集めると、2023年には『ドリームガールズ』、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』といった超大作で主演を務め、2024年は1~2月に『イザボー』でタイトル・ロールを熱演。悪女なのにどこか清々しく人間的な魅力にあふれるイザボー役を体当たりで演じた。

 今回の【Hello,】は、2022年に開催された【Look at Me】に続く“ドラマティックコンサート”第2弾。春に開催されるツアーということで、「新たな出会い、素敵な出会いがみなさんにあればという想いを込めて」タイトルを「Hello,」としたそう。今までおこなった4回のコンサートのうち、初めてのコンサートはまだ宝塚歌劇団に所属していた頃であったこと、当時コロナ禍で座席は1席ずつ間隔を空けなければいけなかったことを振り返り、「今回のコンサートでは、みなさんが知らないうちに溜め込んでいた、心の凝り固まってしまった部分を開放してもらいたい」という、“五感の開放”がテーマ。全19曲にわたるセットリストもそんなテーマに沿ってセレクトされたそうで、その中でも自分が歌いたい曲を中心に選んだとか。それだけではなく、「ポップスや海外の曲など、いろんなジャンルの曲を歌い分けられたら面白いかなと思って」と、望海風斗の歌唱の魅力が存分に味わえる構成となっている。

 「POP STAR」(平井堅)から軽やかに始まったコンサートは、「真夏の夜の夢」(松任谷由実)でキラキラした妖艶さをまとい、「あゝ無情」(アン・ルイス)では高音の艷やかさもあいまってしなやかさを感じさせた。かと、思えば続いて歌われた「お祭りマンボ」(美空ひばり)ではそのエネルギッシュに圧倒されるとともに、会場が一体となって盛り上がる楽しい曲に仕上がった。

 この春は望海風斗にとって、宝塚歌劇団を卒業してから4度目の春、そして初舞台を踏んでから21度目の春ということで、「21年目に行く前に、少し懐かしい自分と再会してみようかな」という言葉で始まったのは、「勝手にしやがれ」(沢田研二)と「愛は枯れない」(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』より)のメドレー。宝塚歌劇団時代の男役を彷彿とさせるステージを見せようと思ったのは、昨年に開催された【宝塚歌劇 雪組 pre100th Anniversary 『Greatest Dream』】がきっかけだった。初めて参加したOG公演で、先輩たちが言っていた「男役のスイッチは何年経っても残っていて、押せばすぐ(男役に)戻れる」という言葉を実感し、「このスイッチをコンサートで使ってみたらいいんじゃないか」という想いで今回のコンサートが完成したのだそう。

 コンサートでは、カバー曲以外にもダンサーを交えた演劇のような一幕があったり、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』より「摩天楼のジャングル」や、ミュージカル『イザボー』より「Queen of the Beasts」、ミュージカル『ドリームガールズ』より「Listen」を披露し、演者としての望海風斗の魅力が詰まったパートも。さらにはコンサート初日である3月20日にリリースされたばかりのメジャーリリース第1弾曲「Breath」も披露し、歌手・望海風斗としての新たなスタートも見せてくれた。

 「Breath」は望海風斗がこの曲に込めたい想いを文字に起こし、その想いを受け取ったアンジェラ・アキが曲として形にした一曲。「生きていればいろんなことがあるけど、楽しかったり喜んだりする瞬間より、悲しかったり苦しかったり虚しかったり孤独だったり、そういう瞬間も大人になると多いですよね。でも、そんな時間も未来につなげることができるし、過去があって今がある。そんな“今の自分”というものをしっかり抱きしめてあげられるのは、自分自身しかいない。そういう曲になれば」という望海風斗の想いが込められている。また、「初めてこの曲を聞いた時、新鮮な空気で体中が満たされるという体験をしました。しばらく無言のまま、余韻だけで自分の内側と向き合う時間を過ごしたので、聴いてくださるみなさまにも、自分の呼吸を思い出し、本来の自分に立ち返る時間を過ごしてもらえたら」とも語っており、まさに「凝り固まってしまった心を開放してもらいたい」という、“五感の開放”をテーマにしたこのコンサートにピッタリの曲だった。

 生バンドの演奏とダンサーたちによる舞台表現、その真ん中でしっかりと輝き、最初から最後まで観客を楽しませたいという想いがいっぱいに詰まった【ドラマティックコンサート「Hello,」】。時にはステージを降りて客席と一体となって盛り上がり、また時にはその圧倒的な歌唱力で会場の視線を惹きつける。歌手として、演者として、そのどちらの魅力も併せ持つ、望海風斗という人のあたたかみを感じられるコンサートだった。


Text by 尹秀姫

◎公演情報
【ドラマティックコンサート「Hello,」】
2024年3月20日(水・祝) 東京・日本青年館ホール

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