Billboard JAPAN


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2022/05/09

SNS時代ならではのヒット?! Tani Yuuki「W / X / Y」

 1年以上経ってもチャートの上位にランクインすることは、もはや珍しくもなくなったが、それでも最新曲でもないのにチャートを急上昇してくると非常に目立つし、気になってしまう。2022年5月4日公開分のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で5位を記録しているTani Yuukiの「W / X / Y」も、そういった楽曲のひとつだ(【表1】)。

 「W / X / Y」は昨年5月26日に配信リリースされたTani Yuukiの5作目のシングルである。Tani Yuukiは、2020年7月にリリースした「Myra」でデビューし、TikTokやYouTubeなどをきっかけにロングヒットとなった。まさにSNS時代を代表するアーティストのひとりだ。ただ、「W / X / Y」自体はリリース当時は目立ったチャートアクションはなく、JAPAN HOT 100でも圏外だった。しかし、今年に入ってから急にストリーミングの再生回数が伸び始め、3月2日公開分のJAPAN HOT 100でついに19位にまで上昇し、4月13日公開分ではトップ10入りして9位まで到達。4月27日公開分では現時点での最高位である3位まで上り詰めた。ほぼ1年がかりでヒットしたと言っていいだろう。

 このロングヒットの主な要因は、やはりSNSである。とくにTikTokで振り付け動画が人気を呼んで再生されていくことで、ストリーミングを筆頭に、ダウンロードやYouTubeなどの動画再生数にも波及し、すべてにおいて右肩上がりに上昇している。こういった形のヒットはすぐに急降下することはない上に、カラオケの歌唱回数がどんどん増えてくていることもあり、まだしばらくはロングヒット状態が続くだろう。

 こういったTikTokの振り付け動画からのヒットは、各レーベルやプロダクションがもっとも狙っているヒットのプロセスでもある。そのため、TikTokで使われるために作っているような楽曲も多い。しかし、それは本末転倒でもあり、アーティストの才能を潰す危険性も孕んでいる。その点、Tani Yuukiは「Myra」も「W / X / Y」も歌詞の韻の踏み方やメロディの組み立て方が上手く、楽曲自体のクオリティが高いことがTikTokで使われる理由だし、ソングライターとしての底力がある。主戦場をTikTokやYouTubeに置きながらも、音楽性でしっかりと勝負しているのがTani Yuukiの強さなのだ。

Text:栗本斉

◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。

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